工藤精一郎のレビュー一覧

  • 罪と罰(下)

    Posted by ブクログ

    聖なる娼婦ソーニャの存在。ラスコーリニコフが導き手として求めていたものは、英雄ナポレオンではなく彼女であったにちがいありません。娼婦と殺人者、神を愛する者と無神論者。一見対照的な2人の間に、言葉では語りつくせない魂の結びつきがありました。

    0
    2025年08月11日
  • 罪と罰(上)

    Posted by ブクログ

    選ばれた人間には後の行いのために現行の秩序を乗り越える権利があるという理論の下、金貸しの老婆を殺害した主人公ラスコーリニコフ。しかし、思わぬ計算違いから老婆の妹にまで手をかけ、罪の意識に苦しめられることになります。貧しい人々の報われない不条理、痛ましさ、それ故の優しい心。作者が見続けたペテルブルグの本当の姿を描いた、ドストエフスキーの代表作です。

    0
    2025年08月11日
  • 死の家の記録

    Posted by ブクログ

    この本は表面上は『妻を殺した貴族の監獄の記録』と言うことになっていて、小説の形を取っているのだが、実際はドストエフスキー自身の監獄の体験記と言う形のドキュメンタリーである。

    ストーリーと言うものはほぼなく、監獄の情景や人間の、密度の濃い描写が延々となされるため、読み続けると疲れるかも知れない。しかし時々手にとって少しずつ読んでみることで、19世紀ロシアの『滅び去った民衆』、つまり『最底辺の人々』の暮らしぶりに自分を共鳴させることができる。

    その意味で、『カラマーゾフの兄弟』よりも現代に流行ってもいいと思える一冊。格差社会の現在の日本の中で、我こそは最底辺だと自称する自虐的な人たちが最近

    0
    2009年10月04日
  • 戦争と平和(四)

    Posted by ブクログ

    最後の最後まで、完璧。
    トルストイの中でもっとも感銘を受けた作品となった。
    こんな作品に出会える事が、あと何回あるだろう?
    そう思って寂しくなるほど。

    でもエピローグは読む必要がないと思う。

    0
    2009年10月04日
  • 戦争と平和(三)

    Posted by ブクログ

    切れ目なく続く展開と交差の連続。
    瀕死のアンドレイと、一度は彼を裏切ったナターシャの再開があまりに美しく、震えた。
    導かれるまま、いやらしくもない、劇的な場面の応酬で、☆五つ。

    指導者がすべての手綱を握っているかのように思われがちだが、そうではない、抗いがたい何かによって時代が動いていく。
    指導者は戦争を始める事もできなければ、終わらせる事もできない。そこに彼の感情や思想はなんの影響力ももたない。
    ではいったい、戦争とはなにか?
    実際の戦争を細かに描写しながら、個人の心の中や民衆の生活の中にあるそれを見事に浮き彫りにしていく。
    戦場と社交界
    個人感情と神
    それぞれのものだと思っていたものが、

    0
    2009年10月04日
  • 戦争と平和(二)

    Posted by ブクログ

    ☆五個じゃ足りん。
    まだこれがやっと折り返し地点なんて。

    ナターシャから放たれる輝き。ニコライとの兄弟愛。
    ソファ室での親密な告白。そして音楽と踊り。
    その感じ易い性格から違う男に惹かれる自分に気づかないナターシャ。
    華やかで感動的な場面を多く見せる第二章。


    結局は愛だ恋だの一悶着なんよね。
    おれは、ナターシャの不貞も、アナトーリの傲慢さも、容認派。
    許せないけど、仕方ないと思う部分も大きい。
    自分もきっと同じようにしてしまうので。

    0
    2009年11月16日
  • 戦争と平和(二)

    Posted by ブクログ

    作品中最も美しい第2巻。
    夢のような舞踏会と窓辺のナターシャとソフィー、アンドレイの場面が印象的。

    0
    2009年10月04日
  • 父と子

    Posted by ブクログ

    全然違う時代にかかれたのに主人公の若者たちに共感しまくり。なんかすっげーわかるわ・・・もうとりあえず古い価値観は全て否定したい!みたいな。そして分かり合えない父と子。大人と若者。いつの時代も存在するギャップってやつなんですね…。名作は時代を超える。たぶん。

    0
    2009年10月04日
  • 父と子

    Posted by ブクログ

    バザーロフにどっぷり浸かってました。ツルゲーネフの無常観みたいなのは凄く好き。ロシア文学は犬猿していたのですが、これにてはまりました。

    0
    2009年10月04日
  • 戦争と平和(一)

    Posted by ブクログ

    登場人物を覚えるのが大変!汗
    ロシア語って覚えにくい、、けど物語が壮大で意外にサクサク読み進められる。

    戦闘シーンは個人的に興味が浅いのか、あまり面白いとは思えなかったけど当時の戦争に対して、それぞれの立場からどのように考えていたかが知れて示唆深い。なんといっても現代を生きる私たちでは理解し得ない感情も、地位や性格含めなるほどだからかと多少納得できたのはとても良い読書体験だった。

    戦争をイケナイと考えることはそうだしその通りなんだけど、ここまで深く学ぶことにも人間が同じ過ちを繰り返さないためにもとても意義のあることな気がする。感情的にだけじゃなく、当時の背景を知るって凄い大切なことやな。

    0
    2025年12月08日
  • 罪と罰(上)

    Posted by ブクログ

    ロシア文学不朽の名作。
    金貸し老婆を殺害した大学生ラスコーリニコフ。偶然成立したかのような完全犯罪の犯行後の苦悩。家族や友人たちとの複雑な関係性。嫌疑を抱く予審判事との心理的攻防。追い詰められ緊迫した対決。
    果たしてラスコーリニコフは逃げおおせるのか、犯罪者として裁かれるのか。
    底辺に流れるのはペテルブルグの下層民の貧困生活。特に飲んだくれ元官吏の死や娼婦に身を落としたその娘。悲惨な家族の生活などもラスコーリニコフの心理的苦悩を増幅させ、最後まで目を離さず一気に読み通せる大作。

    最初に挑んだのはロシアに興味を持っていた高校時代。今回はインフルエンザに罹り自室隔離状態になったのでゆっくり完読。

    0
    2025年12月06日
  • 罪と罰(上)

    Posted by ブクログ

    罪を犯した人の心理描写の変化がとてもリアル。自分が悪いことしたような気がしてくる。しばらく読み直したくない

    0
    2025年11月05日
  • 罪と罰(下)

    Posted by ブクログ

     自分勝手な考え方により、自分の行いを正当化して犯罪に走ってしまう。これは犯罪を犯す人全般に共通して言える心理だが、その犯罪後の公開により、自分という人間を貶めたり、自分の罪を人に告白することで、罪悪感を軽くしようとする考えや、他人への善行により、人間としての自分の価値を高め様と考え、行動することに非常に共感した。特に、自分の罪に対して自分自身で自らを罰する行動を行うことで、より精神的にも肉体的にも辛い状況に追い込まれること。そこから、自分自身で這い上がる力がない場合には、只、無償なる愛と呼ばれる人との繋がりのみがその人を救う力を授けるだけだと考える。

    0
    2025年10月10日
  • 死の家の記録

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    読むのにとても時間がかかった。内容は非常に面白いが、時系列がバラバラで、実質短編集のような内容である。
    登場人物一人一人に魅力的な個性がある。
    これが事実をベースとした話だということは驚きである。囚人の入れ替わりとか、お酒の密輸とか、現代だと考えられないようなことが行われていたと知った。
    監獄の中でどのようなことが行われていたのかを知るのは、歴史的な意味でも楽しかった。
    監獄周辺地域との交流が盛んだというのは面白い。

    監獄の内にも外にも心優しい人がいて、微笑ましかった。もちろんイヤミな人もいたけど、このような人達の助け合いは心の支えになったんだと思う。

    ドストエフスキーもそうだが、他のロシ

    0
    2025年10月01日
  • 戦争と平和(三)

    Posted by ブクログ

    3巻は、ボロジノの会戦の記述(ナポレオン登場)多く、戦争が人々の日常生活にまで及びます。トルストイの戦争に関する考察も入ってきます。戦場の様子は身の毛もよだつ恐ろしさ。

    登場人物それぞれの境遇が大きく変化し、読みどころ多し。再会を果たす人々もあり、期待感増し増し。戦場で負傷したアンドレイの心情描写は、白眉です。ピエールの行動にはビックリで、ナターシャと共に心の成長が見られます。

    起承転結の“転”に当たる3巻は、まさに「戦争」と「平和(人々の様子)」の核心に迫っているのではないかと思いました。

    以下、ネタバレ的感想、つれづれです。



    ・アンドレイの妹マリヤの身に大きな変化(父の死、領地

    0
    2025年09月11日
  • 戦争と平和(一)

    Posted by ブクログ

    ロシア国内と国外(戦争の場面)に分かれます。

    【国内】5つの家庭(ドルベツコイ家、ロストフ家、ボルコンスキイ家、クラーギン家、べズーホフ家)の人間模様が混み入っています。貴族の社交場がはじめに描かれますが、考えようによっては、人間同士の駆け引きは戦争のようです。

    遺産を巡る争いで、父の財産を受け継ぐのがピエール(男性)。純粋といえば純粋ですが、ごちゃごちゃ色々考えているわりには、何だか肝心なところがはっきりしない人。

    そんなピエールの財産目当てに付け込むワーシリイ公爵。自分の娘エレンとピエールを結婚させようと画策します。

    そのエレンが魔性の女のようで、うわー怖い!エレンがピエールを誘惑

    0
    2025年09月07日
  • 罪と罰(下)

    Posted by ブクログ

    最後の盛り上がり。後半一気読み。

    主人公の危うい考えは、差別、貧困、不条理、暴力、病の溢れた社会に放り出されれば、誰しも近しい思いは持つのではないだろうか。たとえ殺人は犯さなくても。
    いじめや、差別、宗教二世で起こった、ここ最近の日本の若者が起こした事件。隠れラスコーリニコフは、世間に沢山いるのかもしれない。
    でも忘れてはいけないのは、再起できるということ。愛があれば。きっと。

    0
    2025年06月29日
  • 罪と罰(下)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本書のタイトルは罪と罰だが、テーマとして「愛と許し」があげられる。
    殺人を犯した主人公は、ソーニャの愛に触れることで自首へと至り、互いに愛し合っているこを自覚することで希望を見出す。愛されていると感じたからこそ、川へ身を投げることをやめることができた。
    一方、スヴィドリガイロフについてだが、解説の中で、ニヒリズムの行き着く先の暗示として彼の自死が述べられている。彼もソーニャと心を通わす前の主人公と同じく、世の中を悲観的な目で見ているが、彼は主人公とは対照的な最期を迎える。彼はドゥーニャを愛していたが思い届かず、拳銃自殺を選ぶ。ニヒリズムが法的な罪ではないにせよ、悲惨な答えに行き着いてしまうこと

    0
    2025年05月01日
  • 罪と罰(上)

    Posted by ブクログ

    人間の欲、思想、価値観の違い、生き方の難しさを描いたドストエフスキーの名作。
    主人公、ラスコーリニコフは貧乏な大学生、彼がなぜ金貸しの婆さんを殺害したのか、途中までは金が欲しいだけかと思っていたが、読み進めるうちに彼の複雑な思想によるものだとわかった。世の中、きれいごとだけではなく、また人の中には複数の人格がいるという、人生を表した物語のように感じた。下巻は、ラスコーリニコフに罰が下るのかどうか、気になりながら進めることとする。

    0
    2025年03月17日
  • 罪と罰(下)

    Posted by ブクログ

    長年読もう読もう思っていて、なかなか手が出せずにいた「罪と罰」を、ようやく読むことができて、まずは良かったと思います。固く重苦しい話かと思っていましたが、コメディ的な要素も多くあって、それなりに楽しく読めました。

    マルメラードフが死にかけているところに、派手派手な格好でやってくるソーニャなんか、哀しいけれど、笑ってしまいます。ラスコーリニコフの母親のおろおろしたところもとてもコミカルで、これを楽しいと言ってしまっていいのかどうかとも思いますが、楽しいです。

    文庫本の裏表紙にあるあらすじですが、全然本質をついていないように思いました。罪の意識とか良心の呵責とか、そういうことかなぁ。まぁ、広く

    0
    2025年02月17日