工藤精一郎のレビュー一覧
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切れ目なく続く展開と交差の連続。
瀕死のアンドレイと、一度は彼を裏切ったナターシャの再開があまりに美しく、震えた。
導かれるまま、いやらしくもない、劇的な場面の応酬で、☆五つ。
指導者がすべての手綱を握っているかのように思われがちだが、そうではない、抗いがたい何かによって時代が動いていく。
指導者は戦争を始める事もできなければ、終わらせる事もできない。そこに彼の感情や思想はなんの影響力ももたない。
ではいったい、戦争とはなにか?
実際の戦争を細かに描写しながら、個人の心の中や民衆の生活の中にあるそれを見事に浮き彫りにしていく。
戦場と社交界
個人感情と神
それぞれのものだと思っていたものが、当然のように互いを行き来し、混ざりあい、影響しあう。
「戦争」と「平和」ではなく、「戦争と平和」という状態。 -
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ネタバレ頭では「自分は特別な人間だから普通の道徳を超えていい」と考えていた人間が、実際に一線を越えた瞬間から生身の人間としてどう壊れていくかを観察していくのが面白い。実際にやってみるとバレるんじゃないか。普通に振る舞わないと。なんでこんなことしたんだみたいに理論と自分の精神が全然一致していない。そして本人がその矛盾を理解できていないことも面白い。
黙っておけば誰も怪しんでいないのに、ザミョートフに自分が犯人であることをかなり危うい形で仄めかしてるのは何で?と思った。絶対に捕まりたくないのに、自分だけこの秘密を抱えているのがしんどい、相手がどこまで自分を疑うか試したいとか?捕まりたくないのに本人の精神状態が犯人としての行動を漏らしているように見える。 -
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貧困に苦しむ主人公が金貸しの老婆とその妹を殺害し、罪の意識と犯行発覚の恐怖に苛まれながら生きていくストーリー。
当時のロシアの社会情勢を背景に、殺人を犯した人間の心理がありありと描かれており、読んでいるとこちらまで気分がどんよりと落ち込んでいくような凄みがある。
ロシア文学特有の文化として、1人の人物に複数の愛称があるため、うっかりしていると誰のことか分からなくなってしまう。小学生の頃に本作に挑戦して、何が何だか分からないと挫折した原因はこれだったと思い出した。
物語は全体的にジメッとして暗いが、緻密な心理描写には圧倒的な読み応えがあり、先の展開が気になって手が止まらなくなる。 -
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ネタバレラスコーリニコフ、働かないのに、ばあさんを殺して金品を奪うことはできるなんてね。
ばあさんだって、金持ちなのに働いてたぞ。
地道に働く人を見下してるんだろうね。
いや、自分以外の人間を全て見下してるのかな。
「自分は境界を越えられる特別な存在か?」
を試す実験台にされたばあさんと、ついでに巻き込まれたばあさんの妹は不憫でしかたない。
罪を犯したあとからのストーリーでは、犯人だとバレバレの挙動不審者になっていた。
このあと、ラスコーリニコフに幸せな未来は来そうにないな。
難しい小説だと思い込んで、ラスコーリニコフの妄想的思考と現実は乖離しているのではないかと予想しながら読み進めたけれど、そこには乖離はなさそうだというのが上巻での発見。
途中まで複雑な解釈をしながら読んだことを後悔する。
『罪と罰』は、素直に読めばよし。
下巻は、ラスコーリニコフの崩壊の物語かな。
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ロシア文学へ初挑戦。
タイトルや出版年から堅苦しい難解な内容を想像したが、苦労する箇所はあったものの全体的に読みやすく、面白い物語だった。
◼︎苦労した箇所
●人名の把握が困難
ただでさえ日本人にとって馴染みのないロシアの人名であるのに、ミドルネームやニックネームが多用されている。
しかもそれが会話文のみならず、「地の文」でも統一されずに用いられているので、1人の登場人物について様々な呼び名が飛び交い、「これ誰だっけ?」が頻発する。
ネットで拾った相関図を手元に置きながら読み進めたが、それでも苦労した。
◼︎良かった点
①全体的な読みやすさ
19世紀後半〜20世紀初頭の海外文学はときどき触れるが、聖書の引用や宗教に基づいた文脈が多く、自分のような無学かつプレーンな人間には理解できない場面が多い、
しかし本書は人間ドラマや心理的な葛藤が多く描かれており、現代文学と大差なく読みやすい。
②価値観や感覚に対する共感
登場人物たちの言葉や考えに共感できるので、没入感がある。
特に妹の婚約者のルージンの妻を選ぶ基準(金に困っている女であれば、金のある俺を生涯愛し、命を掛けて尽くすだろう)や、破談になった際の心情(新居に家具を入れる予定だったのに、違約金をふんだくられた)が、現代の価値観と照らし合わせても違和感ないものと感じた。
③登場人物たちの誠実さと、救済
母や妹をはじめ、友人のラズミーヒンやキーパーソンのソーニャなど、主人公が罪を犯そうとも誠実に向き合い、自分の人生を犠牲にしてでも尽くそうとする姿が印象的だった。
本作を読んで実存主義というものに興味が湧いたので、キルケゴールやサルトルも読んでみたい。