工藤精一郎のレビュー一覧

  • 死の家の記録

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    勤めは生業と割りきって、余暇で学問をしたまえ・・・遠山啓は著作集で説いた。その遠山が東大数学科を中退後、東北大学に再入学するまでに読み漁った西洋文学のなかで、特に印象深いと語ったのが"死の家の記録"。初読の時は何も響かなかったが、思えば生への自分の覚悟が足りなかった。アレから15年経つ。大勢が浴室に押しこめられ、洗い場に自分の場所を確保するにも金を必要とし、浴槽は垢だらけ。足枷をはめられたままなので服を脱ぐのも一苦労ながら、それでもクリスマスを前に、囚人達は入浴を喜ぶのである。自分を鼓舞するにジャスト。

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    2013年10月16日
  • 戦争と平和(二)

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    ネタバレ

    「過ちをおかした女を許してやるべきだとぼくは言った、しかし、ぼくが許すことができるとは、言わなかった。」

    ナターシャの恋愛事情。
    戦争前の平和なロシアでの社交界。

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    2013年09月04日
  • 死の家の記録

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    「イワンデニーソヴィチの一日」と、この「死の家の記録」は、
    私の中でベスト・オブ・シベリア流刑小説の地位を常に争っています。
    いや、これらの他に読んだことないんですが。

    こちらに関しては、貴族がいきなりシベリアに来て精神的にかなり参ってる感じにぐっときます。
    お風呂の不潔さにうひゃー、とか囚人服がベトベトしててうげーとか。
    特にお風呂(サウナ?)の描写は圧倒的に迫ってきます。
    囚人の垢とか髪の毛とかが、自分の足にからみついてきてぬるぬるしてる気がします。
    とにかくもう迫力があるんですよ。

    他に好きな場面は囚人がクリスマスなどのイベント事に心からウキウキしてるところかな。
    どんなにどん底に落

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    2013年03月15日
  • 死の家の記録

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    シベリア流刑囚として過ごした4年間の体験を元に執筆された本書には、ドストエフスキー諸作品の通定音が最も濃縮された形で表れている。共に暮らした囚人や兵士達に、時には犬畜生相手にまで向けられるその洞察力は、ふとした会話や行動から対象の内面に潜り込み、当人も自覚していないその愚かしい性質や特徴を暴き立てる。獄中に置いても貴族は仲間として扱わないその態度に嘆息しながら、それでも庶民の中に人間讃歌を見い出すことを決して諦めない。長編作品の登場人物のみならず『夜と霧』を始めとする多くの作品が、この家から生まれてきた。

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    2013年01月25日
  • 戦争と平和(一)

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    これを一人の人間が書いたのか!とおもう。500人を超える登場人物をひとりひとり緻密に書き分け、みな血が通った人間にしたてあげている。友人から「どういうストーリー」ときかれてうーんとうなってしまった。ピエールのことをいえばいいのか、アンドレイか、ナターシャか、ナポレオンか・・・一人一人の人生が生き生きと、そして丁寧にえがかれている。いくつもの物語が交錯して、まったくどう説明していいか見当もつかない。これはその時代のロシアを偉大な文豪が鋭利な刀で切り取ってきた作品ですとでもいえばいいのか。

    歴史はどうしてつくられるのか。一部の有名人によって形成されるのか。作者はちがうという。目に見えない動き、と

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    2013年01月15日
  • 未成年(上)

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    5大長編はどれも寝食忘れて読み耽ってしまうおもしろさです。
    この未成年は長編のなかではマイナーなイメージがある。
    読んだ当時は古本屋にしかなかったからこのリニューアルは嬉しい。
    主人公の回送シーンなどは涙が止まりませんでした。

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    2012年05月27日
  • 戦争と平和(四)

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    ロシア帝国の華やかな社交界における様々な人間模様、人間関係、ひとりひとりの感情の微細な変化をこと細かく描かれているトルストイのその文才には感嘆した。

    なによりも、国家とはまさしく幻想の共同体にすぎないことを思い知らされた。一個体としての人間の集合体で支えられている組織は、時としては皇帝の一声でダイアモンドよりも強固になることもあれば、逆に泡のように脆くなることさえある。国家は結局は人間によって支えられている。

    個人的にはアンドレイ・ボルコンスキイの心情の変化は興味深かった。

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    2012年03月24日
  • 死の家の記録

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    法を犯して罪を背負った人々に、足枷をはめさせ労役を科し、鞭の浴びせて自由を奪う。
    そんな死の家に押し込まれた囚人たちの生活模様を描いた物語。
    壁の中での生活は、本当に人を更正させることができるのか。
    考えさせられる小説です。


    この作品は、ドストエフスキーの実体験をもとにリアリズムの手法によって書かれていて、19世紀ロシアの監獄のスケッチとしての価値もあり、また、優れた観察眼による緻密な人間描写は、文学としての完成度を最高のものにしています。

    「カラマーゾフの兄弟」を始めとする、ドストエフスキーの後年の大作たちの原点とも言える、大変素晴らしい作品でした。

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    2012年02月03日
  • 死の家の記録

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    ドストエフスキーの経歴を考えれば、この内容は生の体験から得た情報がたくさん入っているようでとても真剣に読んでしまいました・・・
    もちろん、書いてある事の心情だったり、そういう描写もとても良かったのですが、シベリア流刑を受けていた囚人たちの生活、行動、そういう事が詳細に描写されていて想像しながら読むのがとても面白かったです。

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    2012年01月02日
  • 戦争と平和(一)

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    間違いなく読んで良かったと思える小説でした。

    物語がひと区切りする時にはトルストイの哲学的な考察が挟まり、正直1回読んだだけでは総てを理解し受け止めることは出来ません。
    戦争の場面は読んでいて集中力が途切れることがしばしばあったし、読んでいて退屈を覚えるくだりも結構あるけれど、物語の緻密な構成と豊かな人物描写が実に魅力的。
    読み進めていくうちに登場人物達に対する愛情が深まり、愛を知る喜びも、大切な人がこの世を去る時の喪失感も、今までの人生で感じてきた総ての感情が作品を通じて呼び起こされて、自分自身の過去についても振り返らずにはいられませんでした。

    この作品を読んでいる間、私の心は1800年

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    2011年12月02日
  • 戦争と平和(四)

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    長い、とにかく長い。
    別に登場人物のかけあいや心理描写は長くてくどくて結構なのですが
    エピローグの二部の所が死ぬほど長く感じました。っていうかくどい・・・
    回りくどい説明口調で更に読みにくい。トルストイ自身の考えを述べているのでしょうけど、殆ど頭に入りませんでした。
    要約すると10ページくらいでまとまるのでは?
    読後感がそこで全てそぎ落とされた感じです・・・ちょっと切ない。
    それでもこの作品はすごかった。最初から最後も良い意味でも悪い意味でも。

    今は同じ作者のアンナカレーニナを読んでいますが、そっちの方が断然読みやすいです。私自身が歴史にあまり興味が無いというのもありますが・・・

    こんなに

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    2011年11月09日
  • 戦争と平和(一)

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    ネタバレ

    全4巻、2500ページ余りからなる巨作です。19世紀初頭、ヨーロッパに吹荒れたナポレオンの嵐、そしてナポレオンによるロシア遠征(ロシアでの呼称は「祖国戦争」)とその失敗、アウステルリッツの戦いなどの歴史的背景を盛り込み、戦争に関わる貴族、軍人、そして農民たちを描いています。登場人物は550人を超えるが、それぞれの人を人間味溢れ、魅力的に描くのがトルストイの特徴でもあります。

    実は、学生のときにチャレンジしたのですが、1巻を読み終えることができずリタイアした思い出があります。今回も1巻には苦戦しましたが、1巻の後半になると、アウステルリッツの戦い、三帝会議など歴史物のテンポの良さが出てくるので

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    2011年10月29日
  • 父と子

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    ネタバレ

    本書は、ニコライやパーヴェルら父の世代(古い貴族的文化)とアルカージイやバザーロフら子の世代(新しい民主的自由的文化)の思想的な相違と衝突によって描かれている。ニヒリストである主人公バザーロフの持つ否定と破壊。しかし意志と知識を持ち合わせ前に進むエネルギーを持ち、かつ人間味も兼ね備え、そしてそれらが悲劇的に融合していく。

    いつの時代にも、世代間には、相違があるだろうが、それを子の世代、父の世代がそれぞれどのように寛容になれるか、人間の器を問われますね。

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    2011年10月23日
  • 戦争と平和(三)

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    ネタバレ

    前巻から思っていたのですが、やっぱりニコライ老公爵は私は嫌いです。
    今巻で亡くなりましたが、その最後もマリヤと和解しているように描かれていましたが、私としてはうーん。という気持ちです。


    アンドレイとナターシャがまさかの元鞘。
    私がアンドレイだったら絶対に許さないし、私がナターシャだったら絶対に赦してくれなんて言えない。
    二人はアナトーリの事で色々と面倒くさそうだなあ。死んじゃったのに。
    ピエールは最後においおい!って感じで終わりましたが・・・
    あと一巻だと思うと名残惜しい気がします。皆どのようにして平和を掴むのか・・・

    戦争の一番の被害者は民衆だなー、と、略奪行為をする兵士たちを見ながら

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    2011年10月01日
  • 戦争と平和(二)

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    ネタバレ

    ナターシャとアンドレイが愛し合った時にはわくわくしたけれど・・・うーん。
    やっぱり歳の差が大きかったのかな。

    はつらつとした少女と、落ち着きはらい、息子もいる大人の男では時間の感じ方が違うと思いますし。
    不誠実な事をしたね。
    ナターシャはアナトーリーとアンドレイを忘れて、新しい一歩を踏み出すしかないんじゃないかな。アンドレイはもう許さないだろうし、アナトーリーは言うまでもない。

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    2011年09月12日
  • 未成年(下)

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    ドストエフスキーの小説のストーリーはいつもよめないですね。だからこそ飽きずに読んでいられる。

    貴族、ヴェルシーロフと農奴の女の間に生まれた私生児、
    アルカージイの手記という形でつづられる物語でした。
    タイトルにもあるように、アルカージイは19歳だったかな?
    未成年なんです。そんな青年の未熟さや愚かしさを隠そうともせず、
    アルカージイは(物語の中での)事実を述べていきます。

    あまりにもおしゃべりで、なんでもかんでもしゃべってしまうところなんかには、
    辟易としてしまうような部分もありました。
    また、賭博にはまったり、父の金を当てにして豪奢な生活を
    おくるところなんかには、未成年らしいなぁとも思

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    2025年06月14日
  • 未成年(上)

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    ドストエフスキーの五大長編の中ではもっとも好きな作品です。まだまだ無力さを持った未成年の主人公が力を尽くして未熟さから脱しようとしている様が好きだったりします。

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    2011年07月19日
  • 死の家の記録

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    こんな格好のいい題名の本はドストエフスキーしか認めません!!
    読み応えありました。
    お風呂のシーンがかなり衝撃的。また読み返そう。

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    2011年02月16日
  • 未成年(上)

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    個人的には、罪と罰よりも面白いと思う。
    ちょうど主人公に近い年齢で読んだため、20年後にもう一度読み返してみたい作品。

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    2010年12月28日
  • 死の家の記録

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    思想犯として逮捕され、死刑を宣告されながら刑の執行直前に恩赦によりシベリア流刑に処せられた著者の、四年間にわたる貴重な獄中の体験と見聞の記録。

    獄中体験記ということで、初めはグロテスクなシーンが多いのではと想像していたが、実際に読み始めてみると、囚人たちの人間味あふれる個性に強く惹かれ、あっという間に読み切ってしまった。
    獄中の中にあって不自由な生活を強いられてはいても、「人間」を失うことのない囚人たちの生き様に、深い興味を覚えた。

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    2010年05月15日