【感想・ネタバレ】未成年(下)のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

「未成年」はドストエフスキー五大長編の中でも難解、つまらないなどという噂を良く聞いていたので、読み始めるのが少し躊躇われていましたが、
これこそ躊躇わずにできるだけ若いうちに読んでおきたい本だと強くお勧めできる作品でした。
主人公による一人称の手記として記述されているため、登場人物の激しい心の動きに主人公のこれまた激しい心の動きが重なりあって、確かに全ての筋を理解するのは難しいでしょう。
しかし、自分のことも他人のこともなかなかわからない主人公の目線に入り込んで、「あぁ、この人はこういう人だったんだ」と登場人物を徐々に理解しつつも、たまに裏切られたりする気持ちを共有して読み進めると、登場人物が皆「生きている」ことがわかってきます。

ドストエフスキーの作品の醍醐味はやはり、登場人物が本当に「生きて、悩んでいる」ことが"理解できる"のではなく、ジワジワ自分事のように"感じられてくる"ことだと思います。

「著者に作られた人」が登場人物ならば理解することもできるでしょう。
しかし、ドストエフスキーの作品の中では「生きている人」が動き回っています。
我々が現実世界において「生きている人」たちをはじめから理解することなんてできないのと同じく、ドストエフスキー作品の登場人物とはじっくりと関わり合って、徐々に分かり合っていくような気持ちで読んでいくのがよいと思います。

生きているものは総じて難解なのです。

0
2020年04月27日

Posted by ブクログ

ドストエフスキーの中で、頭一つ抜けて面白い。紙とインキでこんなことができるともっと早く知っていたら、物理をやってはいなかったに違いない。

繋がりがあるようでばらばらな話(逆のパターンは世に溢れている)が、未成年の思想を糊付けする、そんな、ばらばら感の点で最もドストエフスキーらしい。

物語の中に、罪、罰、白痴、悪霊、といった言葉も登場するが、これらは…ちょっと気を利かせ過ぎかも知れない??

0
2016年11月19日

Posted by ブクログ

養父マカールが亡くなってからの終盤の実父ヴェルシーロフの独白に近い対話が迫真。写真について、神について、恋愛における慰みでなく愛について。

白眉はヴェルシーロフが聖像を叩き壊す場面。その後も分裂する人間像が余すところなく描かれる。

タチヤナ・パーヴロヴナの人の良さも少ない叙述ながら、光っていた。

完全な理想的人物はありえず、どこか破綻しているが、憎めないのがドストエフスキーのメインキャストか。

最後の先達のコメントがこの小説の歴史的な意義を示しているのも嫌味がなく、構成的にさすがという他ない。

0
2016年11月16日

Posted by ブクログ

『未成年・上巻』の終盤あたりから面白さが増してきて、下巻は過去に起こった出来事や事件が、主人公・アルカージィを通しながら明るみになってゆく。

感銘したのは、アルカージィと実父ヴェルシーロフが感情をむき出しにして、じっくりと語り合うシーン。
父親をだんだんわかりはじめてきたと率直にその場で告白する息子と、父親は息子のナイーブな喚声が大好きだと言いながら、語る言葉一つ一つに深い思想がしみとおっている。

『未成年』はアルカージィの成長過程を描く手記で、回想と記述のプロセスによって自分自身を再教育している。
私が個人的に好きな登場人物、タチヤナ・パーヴロヴナ伯母さんは、主人公をバックアップするいい立役者であり、最も厳しい教育者であったように思う。

0
2015年08月18日

Posted by ブクログ

下巻のラスト200ページくらいは怒涛の展開なので先が気になってどんどん読めた。
ただ、五大長編のなかではやはり読みにくいしわかりにくくてあまり楽しめない部分もあった。

トリシャートフについてもっと知りたかったなぁ。
なかなか魅力的なキャラだったと思う…。

0
2022年12月07日

Posted by ブクログ

文体的に語り手が未成年者とは思えないのが一番の違和感で、逆に行動はいかにも未成熟でとても未成年感があって、これがまた「なんでそんなアホなことを!?」的な違和感を感じさせるので、だいぶつっかえつっかえで読むのに時間がかかってしまった。終盤は、少なくとも『罪と罰』『悪霊』『白痴』と同様な怒涛の展開で、急転直下の結末になだれ込む。もうちょっと未成年者らしい語り口の翻訳で読んでみたい。それこそ自分が未成年者だった時に読んでいたらどう感じたんだろうか。

0
2021年11月15日

購入済み

時代を映した複雑で混雑したお話

なかなか複雑で細かいところまで理解できませんでしたが、活劇的な話の展開が、あの時代にしてあったのだとちょっと感動です。解説を読むと、パリコミューンやロシアの農奴制廃止、資本主義の台頭による貧富の格差など、恐ろしいほどの混沌があって描かれたお話なのだと思いました。

0
2020年10月05日

Posted by ブクログ

ドストエフスキーの本は一度読んだだけでは理解が完全ではないと言われてますが、この本は苦戦しました。
まず、登場人物が多い!
これから読む方は書き出しながら読むのをお勧めします。

内容としては、とにかくごちゃごちゃしています。
というのもヴェルシーロフが何人もの女性を抱えるのは今で言う「ゲス不倫じゃないか!」とも言えますが、調べてみるとこの頃のロシアは離婚という法律がなく、一度結婚したらずっと離婚をせず、ヴェルシーロフのようにカテリーナに結婚を申し込むような二重三重結婚はよくあることだそうで、日本人の感覚で言うとちょっと信じられないから余計に混乱してしまう理由の一つでもあると思います。

一番好きなシーンは戸籍上の父親マカール公爵とアルカージイとの会話。
マカール公爵は彼にとって有益な言葉を沢山残して、またその語口が凄く好きだなと思いました。

まだ、よくしっかり内容を掴む為に、時間を置いて再読したいと思います。

0
2017年08月29日

Posted by ブクログ

散漫な印象ながらもかなり面白かった!
高い理想を掲げながらも、混沌とした現実に巻き込まれる主人公アルカージイの一人称で語られる文章と心情がリンクしてて、狙ってこの文体を書いた
のならドストエフスキーはやはりさすが!というほか無い。

この頃のドストエフスキーは保守派の思想なのだが、決して社会主義を排他するものでないのが分かる。社会主義=無神論では決してなく時に矛盾す
る「民衆の心理」を鮮やかに提示している

0
2010年12月05日

Posted by ブクログ

なんだか少し話に入り込めなかったというか、ついていけなかったというか。登場人物はそれほど多くないのだけれど、なんでだろう。
もう一回読んだらまた変わるかなあ。

0
2019年01月12日

Posted by ブクログ

私には難しかったです。まず登場人物の名前! 同一人物でも何の断りもなく複数の名前で呼ばれるので、中盤辺りからは誰が誰やらわからなくなってしまいました。そこを圧して最後まで目は通しましたが、テーマも非常に複雑で、どこがメインで、なにをどう考えれば良いのか、個人的には理解できませんでした。新しい訳がでたらまた読んでみようと思います。
ただ1つ、面白く思ったのは、解説の「マカールの言う神の名を頻繁に唱える無神論者とは、ドストエフスキー自身のことではないのか」という指摘です。通読中は気付かなかったのですが、言われてみれば確かにそうかもしれません。個人的に、ドストエフスキーは神を信じてはいないが、神を信じる人々を尊敬し、自身も信じられるようになることを望んでいるのではないかと常々感じながら彼の作品を読んでいるので、こうして自分の信心の薄さをこっそりと告白しているというのは充分ありうると思います。そういう深い読みができるようになれれば、もっと読書が楽しくなるのでしょうね。精進したいと思います。

0
2015年11月23日

シリーズ作品レビュー

「小説」ランキング