真梨幸子のレビュー一覧
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連作短編集。
連作短編集という手法を活かしきった物語だった。
脇役として登場していた人物が、次の物語では主人公として登場する。
あちらこちらにすでに見知った人たちが配置されていて、それぞれの物語の微妙な関係性を教えてくれる。
脇役しか与えられていないときには見えていなかった部分、壊れていたり歪んでいたりする部分が、主人公となった物語では前面に押し出されてくる。
真梨さんの物語はいつもどこかグロテスクだ。
歪んだ感情に支配された人たちが織りなしていく物語。
誰もが心当たりがあるけれど、自分にはないと思いたい・・・そんな負一色に染められた感情があからさまに物語の中心にある。
好き嫌いが分かれる物語 -
Posted by ブクログ
2016年9冊目は、「フジコ」シリーズ以来の真梨幸子。
あらすじ:西新宿の花街に建つ洋館「鸚鵡楼」。1962年そこで惨殺事件が発生する。時は流れ、「鸚鵡楼」は取り壊され、その場所には高級マンションが建てられる。人気エッセイスト、蜂塚沙保里はそこでセレブライフを送っている。そんな彼女は、過去に付き合っていた男の呪縛、思い通りにならない自分の息子、と二つの悩みを抱えていた。そんなある日……。
西新宿、十二社の地を中心に、各章ごとに、時間を経て、主人公(語り手)が変わってストーリーが展開してゆく。しかも、読み手の不安感や嫌悪感をざわつかせなから。その上で、とてもフェアにミスリードさせ、ヒントを与 -
購入済み
面白い。しかし恐ろしい。
世の中には騙そうとか陥れようとか、悪意による嘘がたくさんあるが、最も恐ろしいのは悪意のない嘘。
本能と欲望にのみ忠実であることは心に自由に生きたと言える。
しかし法と理性の世界では罪以外の何者でもない女。
なぜこんなことを?どうして?
理由なんてない。
そうしたいから。
作中の彼女に私も随分惑わされた。
ラストには同情してしまう程。
「女ともだち」の続編との事だが、あまり本編とは関係はないような気がする。
こちらから読んでも問題ない。
出来ることなら私も彼女の様に生きたい。 -
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真梨さんの文庫。
「聖地巡礼」の改題されたもの。
真梨さんは本当に文庫化されるときによくタイトルを変える。
文庫化されるのを待って購入するわたしは、何が文庫化されたのかわからなくて混乱する。
こういう罠をしかけるのは、出来たらやめて欲しい。まあ、慣れたけれど。
五つの短編。
真梨さんによくある、なんとなく繋がっているタイプの短編。
ここら辺りは真梨読者としては前提で読む。
もうひとつよくあるのは、名前は出ているくせに誰のことかわからなかったり、勘違いする仕掛け。
これも地雷原を歩くとき(歩いたことないけれど)のように慎重に読むのもお約束。
今回も女性らしいイヤらしさが溢れており面白い。
本 -
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ネタバレ鸚鵡楼での惨劇?クラシックな館での連続殺人か?うーん、クローズドサークルもんだな、面白そう・・・。
って位の動機で読みだした。おお、昭和の香りが香る花街の女郎館での殺人かぁ…ん?いきなり話のトーンが変わる!
章ごとに目まぐるしく主人公(叙述者)が変わり、時代も変わる。戸惑いながらも読み進むと最終章で鮮やかに話の縦糸がつながる仕組み。ただしあくまでも本格モノというより、殺人事件を元にそれに絡むことになった人々の愛憎劇と言う色彩が強く、本筋と関係ないドラマ部分も多い。
とはいえ、文章も上手いしプロットがしっかりしているので最後まで一気に読めた。
ただ残念なのが主婦会の話が無駄に多いことや、男娼の細 -
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ネタバレ2012.11.17.sat
【経緯】
帯に、「私が死んだ時、『代表作』と呼ばれるのはこの小説であってほしい。」とあったので。
【感想】
メインキャラクターが複数人いて一人称と三人称が交錯するという珍しい文体でありながら、それが物語を形作るのにとても心地よくページをめくらせる真梨さんの手腕にまた驚かされた。ほんとうまいわこの人。
ただ、「イヤミス」がうりの真梨さんにそれを期待して読む人にとっては、いつもより毒気が薄いので物足りないのかもしれない。
わたしは「勢いのある物語力をもつ作家さん」として好きなので問題ないです。
真梨さんのだす本だす本のキャラクターたちって愛すべき要素よりも理解 -