阿部智里のレビュー一覧
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若君の余裕ある振る舞いがカッコいい。
相手より何枚も上手で、すべてを見通しているかのような強者感がある。
何が起きても、結局は若君の掌の上なのではないかと思わせる安心感が心地よかった。
ただ強いだけではなく、人間らしい一面も描かれているからこそ、その存在に惹かれる。
雪哉もただ振り回されるだけでは終わらない。
若君の狙いを理解し、機転を利かせて何度も危機を切り抜ける姿が頼もしく、その成長が物語をさらに面白くしていた。
登場人物たちは皆、それぞれに思惑や意外な一面を抱えている。
善人とも悪人とも簡単には言い切れず、人を決めつけることの危うさや、相手を侮ることの恐ろしさを何度も突きつけられた。
また、前作『烏に単は似合わない』の印象も少し変わった。
あの作品の仕掛けはフェアプレー・ミステリとは言い難いと思っていたけれど、宮中の策略や人間関係の複雑さを示す役割も果たしていたのかもしれない。
続編を読んだからこそ、「あれで良かったのだ」と納得できた。
さまざまな思惑が交錯する終盤は圧巻だった。
忠誠とは何かを考えた末に雪哉が下す選択には深く考えさせられる。
前作はあまりにも綺麗に完結していたので、「同じ面白さはもう作れないのでは」と思っていた。
しかし本作は前作とはまったく異なる方向性で、それに劣るどころか、それ以上に夢中になって読めた。シリーズとしての期待を大きく超えてくれた一冊だった。 -
Posted by ブクログ
全巻最終、予告のように登場した新たなる主人公、『傾城の落女』澄生(すみき)の生活。
並行して金烏の正室を選ぶ登殿シーンから始まる。八咫烏シリーズ第1巻を思い起こさせるような雅な色調と姫君の実家の静かな攻防。
巻が進むにつれ、とびきり美しい澄生が勢いを増してしたたかになる。
一方、金烏代凪彦は博陸候(雪哉)に疑問を持つまで成長させられてゆく。
「この世には、知らなかった罪、知ろうとしなかった罪がありますが、私は知った上でそれを見なかったことにした罪こそが重いと考えます」
「確かに、民に政を任せるのは、完全無欠の方策とは言えません。でも専制を許された君主によって暴虐の限りをつくされた者がそれ以上にいるということを、閣下は都合よくお忘れなのではありませんか?」
風刺をこめた政治色の強い台詞がちょくちょく見えた。
澄生に関しては、巻末に「やはり‼︎」と嬉しいことが2つも!続巻の楽しみが増えた。
一方、政治の実権を握り本音が見えない太々しい博陸候にため息をつき、可愛かった少年時代の雪哉が恋しくなった。また2巻も読み直さねば。 -
Posted by ブクログ
やっぱり入り込めますね、このシリーズ。
また貴族側のお話となり、新たな金烏代の皇后選びが始まります。若宮時代の面々がいないのは、シリーズ前半を何度か読み直した者としては、とても寂しい時節の物語です。
が、新たな面々も、いじらしく、子憎たらしく、愛嬌があって、なかなかいい感じです。シリーズ通してダークな雰囲気がありますが、今回は小休止のように、軽快で読みやすいと思いました。
とはいえ、とにかく雪哉が気に入らんですね。なんだこいつ。若い頃のひねくれながらも人への優しさが見えた頃が見る影もありません。
茂丸さんがとても惜しまれます。彼が生きていてくれたらと、この巻になっても思ってしまいます。
今回は、はじめ君がやってくるまでの話の経過が分かり、次に期待を持てる終わり方で非常に満足。
次から、長束兄さんやはじめ君が、雪哉を懲らしめてくれることを楽しみにしています。
「長さん、安さん、懲らしめてやりなさい!」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ雪正のあのひと言、それ自体も許せないけど、それ以上
に雪哉にああ言わせた事は許せない。
(私たちの雪哉になんてことを!引っ叩きたい)
雪哉が子供の頃から雪正は何も変わってない。
忍でさえ言ってたのに…あの梓が育てた子だからまっと
うなはずだって。梓も、自分の知ってる雪哉を信じると。
雪正が嫌いなのは母親のはず。雪哉はただ生まれてきた
だけ。 …これで郷長なんてね。
理想郷を唱える紫苑の宮は、まるでカルトのリーダー。
そこで路近の言葉を思い出す。「人が最も残酷になるのは
自分こそが被害者なのだと思い込んだ時」
反感を持つ者たちを目的の為に利用しているだけ。
全く共感できない。
雪哉をよく知るはずの長束の目にさえ、山内の民を蔑ろ
にしているように見えるのなら、博陸侯のやってること
は間違いだらけなのかもしれない。でも、非難するだけ
でなく、誰か正面から博陸侯に助言したり、提案をした
り、協力した人はいたのだろうか?真っ当な意見なら、
博陸侯は聞いたと思うのだけど。
皆、全てを博陸侯のせいにしてるけど、博陸侯がいない
山内を想像してみたらいい。北家、西家、南家、東家、
権力と富が欲しいだけの貴族をどう統制するのか、紫苑
の宮はどんな方法で山内を変えようとしているのか、
聞いてみたい。
民主主義。響きはいいよね。でも、欲深くずる賢い人間
を相手にしている事を忘れちゃいけない。路近も言って
たように、きれい事だけでは済まない。
凪彦は、博陸侯のような覚悟は持てないと自覚したけど
紫苑の宮はどうだろう?奈月彦だって雪哉に頼った部分
がある。”きれい”じゃないところ。紫苑の宮は?
もうここまで来たら、個人的には、山内がどうなろうが
関心ない。(外界に来い、雪哉!)
ただ、雪哉に幸せになってもらいたいだけ。
毎回、阿部先生には驚かされてるので、最終巻(上下)
にどんなお話を聞かせてくれるのか、とても楽しみに
してる。覚悟してます。