畑野智美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
私が父のことをあまり良く思わないのは、きっと自分と似てるからなんだろうな、特に自分の嫌なところが。
歳を取って、鏡に映る顔の形やちょっとした仕草や口調が似てくるのを自覚すると、益々そう思うようようになった。
だけども、ほんとは自分の嫌なところは、多少の遺伝はあったとしても、自分の人生の、自分の責任なんだよね。
息子を持って、二人とも独立した今となって、もっとこう接してあげていたら良かったとか、こう育てていれば良かったとか思うけど、彼らの人生には、私はまた間接的にしか関与できなくて、彼らの人生は自分で作り上げるものなんだよ。今度の次男の就活でつくづく思った。
ずっと長い、父と私、私と息子たちとの生活を経て、そういうことが漸く分かって来たのも今更なのだけど、この小説の、主人公と父の関係を見ていて、そういうことを改めて思った。
前置きが長くなったけど、この小説、ファミレスのチェーン店に勤める主人公・佐藤善幸がネットに書かれた良からぬ噂によって、都心の店から、遠く離れた故郷の町の店に飛ばされてきたところから始まる。
幼馴染みのシンゴ、その母の茜さん、高校の同級生でシンゴの恋人の吉田さん、行きずりから恋仲になった綾さん、女にだらしない父、それを赦してこの日まで来た母と祖父、店の上司・同僚とアルバイトの面々…、これらの人との交わりの日々がグダグダと描かれる。
それにしても、このグダグダ感がリアル過ぎ。
したいことが何もない、将来の確たる希望もない、ただ生きるために生きている、欲望に任せて彼女と交わる、執着もなく、愛情も薄く、若者だけでなく、多分人間誰しもが持つ怠惰な欲望がこれでもかというように描かれて、自分の怠惰な心にグサッと来る。
だけども、それでも「立派な社会人になる」程度のささやかな望みの中で、恋を実らせ、仕事に生きることも、ちゃんとしたひとつの人生と思わせて、エンディングのささやかな幸福感が余韻あり。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ刺繍屋さんのお話
勤めていた飲食店潰れてアパートは取り壊し、1人露頭に迷っていた主人公が住み込みで働ける店を見つける。
それが刺繍屋さん。刺繍屋さんのの店主は恋愛というものがどういうものか理解できないが、主人公の孤独そうで子犬みたいなところをほっとけなくて働いてもらう。
平和な日々を過ごすが、ある日店主を傷つける男性を殴ってしまう。自分の中の凶暴性に向き合わなくてはいけなくなる。
男女で一つ屋根の下、普通なら恋愛・結婚と言われる年齢だが、そもそも普通とは何か。
感情とは何かにわ一般的なものに当てはめなければならないものなのか。葛藤するお話
一般的に の重みがよくわかる作品。特に感情に関しては一番一般的にが通用しないと思う。
一般的に を自分が他人に言うべきではないと思った作品であった -
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『大人になったら、』という題名に興味を持ったので読んでみた。
解説にもある通り、葛城命という主人公の身の上やその思想を描く筆致は見事だった。
小説内では基本メイと呼ばれるが、彼女はいわゆる「35歳独身の拗らせ女」と呼ばれる人である。そのことは解説でも書いてある。
彼女はキートスという喫茶店の社員であり、出世欲と結婚願望は、明確には意識していないものの「なんとなくある」。これも本当に「よくいる」という感じだ。
つまりは本当に「片腹痛い」もっと言えば「イタイ」と思わせる書きぶりであり、読者の感情を揺さぶるに足る表現力があるということの裏付けであろう。
しかし結局、私の中に最終的に残った読後感は、
なんとも言えない不快感や疲れであった。
多くの読者に読まれて感情を動かす物語世界を描くことと、本当の名作とされる小説の違いは、
まさしくこのことであろう。
小説を読んだ後、自分の中に何が残るか。
不快感を味合わせるくらい良い表現で分かりやすい作品と、なんだかよくわからないがためにさらに深く読んで考える必要のある作品とがあれば、
私は後者が好きだ。
その点でこの小説のよい点を挙げると、葛城命という人間を反面教師的に受容できる点であろう。
羽鳥先生との将来が暗示されて物語は幕を閉じるわけだが、私はその先にとてもではないがいい未来は想像できない。
いい未来を想像させないことは作家としては凄いのだ。しかし、ネガティヴなニュアンスで心の箱に終われてしまうのだ。
それは果たして「いい小説」と言えるのだろうか。私はそれが疑問なのだ。
これは自分の中である種の「教訓」となった。言ってしまえば、「イタイ人と付き合うと大変だ」ということだ。
教訓となっていることは凄いのだ。
しかし、それは「ネガティヴな教訓」なのだ。
良いか悪いかはさておき、とにかくそうなのだ。
しかし、現代の女性を象徴するような社会的な姿とそこに息づくリアルな心情があることも確かに感じるため、そこに考える余地はあるような気がした。
ジェンダーの観点からもう一度読み返そうかな。 -
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40歳以上・独身女性のみのシェアハウス。コロナ禍で飲食店のアルバイト店員をしていたミチルは生活費を抑えるためシェアハウスに入居する。
そこには事情がありながらも自立して生きる女性達がいた。一緒に食べ、時には交流し、でもあっさりとした付き合い。
ミチルは人と出会い、環境が変わる中でひとつの決意をする。
シェアハウスの暮らしの描写がとてもよい。清潔でちょっと副菜もらったり、百円でハイボールを購入したり。人たちもよい。自分もシェアハウスに入居したかのような体験ができます。
明るくワイワイシェアハウスではないけど、落ち着いた清々しい物語。瀬尾まいこ先生や小川糸先生を好む方に良さそうです。 -
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漫画家の藤波夏帆は、『月収十五万円、六畳一間で夢をかなえる』でデビューして以来、節約・ライフスタイルエッセイを中心に、そこそこの人気を保ってきた。だが38歳を前に、これまでの作品で伝えてきたメッセージや世間でのイメージ、そして脚本家の彼氏との間にズレを感じ始める。自分が本当に描きたいものは、何だろう。新連載に向けて始めた取材と観察は、やがて夏帆の生活にも波を起こし始め・・・。
最初エッセイなのか?と思いながら読むくらいにはわりとありそうな話かつ、ご都合主義がない結構苦い展開である。おいおい、この年齢の女子を捕まえておいてそれはないだろう・・・というくらい彼氏がひどい。私ならもう無理すぎて秒で別れる選択しかない。でもこういう長年阿吽の呼吸で、しかも自分からアタックしたようなパターンだと、なかなか別れる踏ん切りがつかないものだというのもよく分かる。読んでいてゔっとなる場面がいくつもあって30-40代の女にはリアルすぎる。最後はここで終わりなの?というわりとあっさりな感じだが、だらだら彼氏と続いたり編集者さんと恋愛関係に持ち込まなかったのは良かった。