畑野智美のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
性加害、いじめ、虐待、DVなどの被害者のために作られた街のお話です。
こんな街が現実にあったら救われる人は多いんじゃないかな…というか、現実がこの街みたいに優しい世界だったらいいのになぁと思います。
日本にはまだまだ性加害やいじめなどの完全に犯罪なのに犯罪となかなか認定されず被害者が泣き寝入りするしかない事件が山ほどあって、本当に暗澹たる気持ちになります。
被害を受けて仕事を辞めざるを得なくなったり、転校したり、なぜいつも被害者ばかりがこんなに苦しまなければならないのか…。
主人公のスミレは大学時代に同じサークルの男性からの性加害に遭います。数年後サークル同窓会で、同じサークル仲間が全員そのことを知っていたことを知ります。更に、サークル仲間たちは、その事件を男性側の片思いが成就した甘い恋愛事だと思っていたと知り、強いショックを受け仕事に行けなくなります。
友人女性から「みんなが(そういう体験が)あること」「気にしすぎ」「自意識過剰」などと言われるのが最悪のセカンドレイプで…。
でも、セクハラや性暴力を容認し、女性の人権をないがしろにする社会にその友人も順応させられてるんだよなぁ。
被害者たちの街で心と身体を回復させ社会に復帰するのにも、当然その人その人でハードルは異なる。
スミレのまわりにはスミレと同じ性加害の被害者もいるが、同じような経験をしていても、人それぞれにバックボーンは異なる。スミレのように比較的良好な親子関係で学歴が高く仕事ができる女性もいれば、中卒で家族仲が悪く彼氏の家を転々としていたような女性もいる。
人によっては辛い経験を乗り越えるのではなく、被害を無化して以前と同じような環境に戻ろうとする人もいる。
なんで?と思ってしまうが、本人には避難する原因となった被害の他にも周りが気づかないようなコンプレックスやトラウマがあって、優しくて正しいこの街で疎外感を深めてしまうこともある。
被害者の救済や社会復帰は本当に難しいものだと思いますが、主人公がなんとか前向きに新しいことに挑戦するラストに少し希望がありました。 -
Posted by ブクログ
水色でもピンクでもない、薄紫ベースのグラデーション表紙で色がまず綺麗だなと、惹かれて手に取りました。話の中で紫色について書かれているところがあったので、今作で大事なカラーなんだと思う。
多様性について・ジェンダーについて、上澄みだけ掬ったに過ぎないが、改めて知る機会がなかったので読んで良かった。読めてなかったら、「そういう性格の人」で片付けて、嫌な固定概念を押しつけてしまったかもしれない( ;∀;)。気をつけよう。
『とにかく僕は「普通の子」に見られたいのだ。自分の性や恋愛について、誰にも言わないのは自分自身が偏見の強い人間である証拠だ。そのくせ、誰かに「普通の子」と言われるとは引っかかってしまう。』
2025.6 -
Posted by ブクログ
ネタバレ派遣切りにあった愛がホームレスに至るまで。ひとつひとつが不幸な出来事ではあるが愛の選択の積み重ね、全てそっちじゃない方を選んでいる。今の世の中は確かにこうなってる。でも愛には雨宮がいた。こんなに親身になってくれる人が、そうそういる訳はないのに、助けても言えない。でも貧困って思考もおかしくなってしまうほど、正常ではないんだろうな。通常でも小難しく書かれた役所の書類はわからないのに…
愛には神様がいたけど、大多数の人には現れない。この本は2019年の本だけど今ならもっと神様はいないかも。手を差し伸べる余裕がなくなってる。厳しい現実。
-
Posted by ブクログ
加害に遭った人たちの街が本当にあるのかと思って思わずネット検索してしまった。実在はしないよう。世の中にこういうコミュニティがあってもいいと思う反面、コミュニティ内で全てが完結してしまうのもこわい。
当事者にならないと本当の辛さはわからないけれど、自分がニ次加害を無意識に加えないように、自分の物差しを常に疑うようにしたい。
自分が我慢すればいいみたいな風潮はやっぱり無くなってほしいし、自分自身もやらないようにしていこうと思う。
読みながらあっちこっち思考が飛んで、色んなことを考えさせてくれる本。というより、考えざるを得ない状態になってしまう。 -
Posted by ブクログ
主人公がタイムマシンを使い過去に行ったことで未来の世界が変わってしまう物語。あらすじだけ文字にするとよくありそうなSF物語である。けれど、日常にフォーカスされた話であるからこそ、たったひとりの人間の行動が世の中の出来事に大きく反映されているのだと納得できる。
誰かに影響を与えていない人なんて、この世にいない。一本早い電車に乗る乗らない、コンビニで寄り道をするしない、たったひとりの選択で未来の世界が変わってくる。そう考えると、自分が生きていることにすら責任が伴うように思えてくる。
だけど、重く考え過ぎず生きたい。というより考えなくても、どんな世界線で生きたとしても、出会うべき人とは必然的に出会うことも、この物語を通して感じた。俗に言う運命の人なのかもしれないが、どうせ出会ってしまうのであれば、悪あがきをせず自分の今の気持ちを尊重して楽しく生きていきたい。
パラレルワールド、バタフライエフェクトといった現象を体現している小説。自分がいま生きている世界線がファンタジーに思えてきた。