あらすじ
――恋愛感情がない。性欲がない。それでも「普通」に暮らしている。5年間勤めた会社を辞め、街の小さな喫茶店「ブルー」でアルバイトをする鳴海優輝。心優しい啓介が営む「ブルー」には秘密を抱えた人々が集まってくる。デザイナーの北村、高校2年生のヒナ……。常連客の悩みに向き合う鳴海にも、周りに言えない想いがあった。多様なセクシュアリティを持つ人々を、やわらかく鮮やかに照らす、畑野智美の新たな代表作。
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Posted by ブクログ
―普通で居られたら楽なのだろうか
普通として生きるのがどうしてこんなに難しいのだろう。
登場人物の各々が何かを抱えて普通と違う何かを感じている
生きづらさを感じている人にとって一読してみると良い本と思います。
Posted by ブクログ
いまだにこの世は恋愛するのが当たり前みたいな風潮があるから、恋愛しない人やしたことない人は引け目を感じて生きづらさを抱えることになる。人間的に劣ってる感覚に陥る。だからといって普通を目指すのではなく、何よりも大事なのは自分自身を深く理解して、周りの声に左右されない自分で生きていくことだと思った。そして多様な性があることを世間の人に知ってもらうことだと思う。本やドラマでどんどん題材にしてほしい。
この本は装丁も綺麗で内容も装丁の雰囲気のまま、とても大好きな作品です。
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ひとりの青年の葛藤と成長を通して、性的マイノリティとして生きることの苦悩を描くヒューマンドラマ。
◇
脚付きのグラスに紫色のシロップを注ぎ、氷を多めに入れてからソーダ水を加えて軽くかき混ぜる。そして丸くすくったバニラアイスを載せさくらんぼを飾る。喫茶ブルーのクリームソーダの完成だ。
ストローを添えてトレイに載せ、女子高生2人が向かい合って座る壁際の席に運ぶ。歓声を上げさっそくスマホでクリームソーダを撮り始める彼女たちに「ごゆっくりどうぞ」と声をかけ、カウンターに戻った。
ランチタイムが終わっても店内には結構たくさんの客がいてめいめい寛いでいる。
ブルーは40年以上前から営業していて昭和の雰囲気が残る喫茶店だ。レトロカフェ人気が高まったこともあって、最近は常連さんだけでなく10代から20代の若い女性客の姿も見られるようになった。
僕はこの店でアルバイトを始めてまだ1年だけれど、会社勤めをしていたときに客としてブルーに来たことがある。その頃の僕は就職して5年が過ぎ、心身ともにとても疲れていた。 ( 第1章 ) ※全9章。
* * * * *
多様性やジェンダーについて、深く考えさせられる作品でした。
子どもの頃から友だちとの性的なズレを感じていた主人公の鳴海優輝は、大学でジェンダーについて学び、自身がアロマンティックアセクシャルであることを確信します。ただこの時点では、だからどういった生き方をすべきかということにまで、彼は思い至りませんでした。
就職後のことです。
ある日、会社の草野球に臨時で駆り出された鳴海は、ベンチで野球部員たちが繰り広げる下品極まりない猥談に気分が悪くなってしまいます。
それまでも同僚の男たちが猥談を始めるとそれとなく距離を取って加わらないようにしていましたが、狭いベンチ内では逃げ場がありません。
おまけに悪乗りした体育会系男たちの話はそこにいない女性社員への言葉による凌辱じみたものに及んだことで、鳴海の精神は限界に達したのでした。
その帰り道、偶然ブルーの前を通りかかった鳴海は、ガラス越しに見た店内の落ち着いた雰囲気に惹かれ、思わずドアを押していました。
物静かなマスターから漂う包容力の賜物なのか居心地のよさを感じた鳴海は、会社に辞表を出してブルーでフルタイムのアルバイトをする決心をします。
物語は、鳴海がブルーで出会う客たちやマスターの啓介一家とのかかわりを通して、自分らしく生きていくためのスタンスを模索する姿が描かれていきます。
ブルーで過ごす時間が鳴海にとって大きかったのは、孤独感から解放されたことです。どこにも居場所のなかった鳴海をきちんと受け止めてくれる人がいたことは、これからの生き方へとつながっていきます。
性的マイノリティと言っても実に多様であること、分類上は同じカテゴリーであっても個人個人で微妙にタイプが異なることなど、本作を読んで初めて知りました。
性的マイノリティの人たちは、人口の1割近くを占めるそうです。けれど、カミングアウトすることなく、苦痛を感じつつもマジョリティの中に紛れている人は決して少なくないとも言われています。
彼らにとって、生きにくい社会であることは残念ながらそうそう変わらないでしょう。それは、マジョリティ側のスタイルが正しいとする人が圧倒的に多いからです。
そんな社会の中では、マイノリティが身の置き所を見いだすのは難しい。
だからこそ、そんな人たちの「居場所」となるようなカフェを作ろうとする鳴海の姿に心打たれたし、未来に対する仄かな希望の光が見えたような気がしました。
Posted by ブクログ
静かで、するすると読みやすい。
自分も少し前にデミロマンティックという言葉を知り、必ず「そんな長い間何で彼氏いないの?」と言う言葉にうんざりしていた身としては僅かに救われた気持ちになったので、主人公の気持ちにも共感した。
主人公はどこまでもフラットな立場に見えるけど、そんなかれにすら偏見がある(自覚はしている)。きっと自分もそうなんだろう。都度客観的に自分を見つめ、気にしていけたらいいと思う。
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セクシュアリティが主になっている本。自分が生きやすい場所、幸せを感じられる場所、自分らしくいられる場所、そんな場所を見つけられていることが素敵だとおもう。世界にはいろんな人がいて、自分の知っていることが全てじゃない。知らないこと、出会ってきていないことや人を、変わった人だと思うのではなく受け入れ合える、認め合える社会になるといいな。
Posted by ブクログ
ジェンダーや恋愛指向を描く作品。
物語りなのでちょっと綺麗にまとまりすぎている感はあるものの、
とても優しい世界、かつ無理をしすぎずに生きていくところが良かった
Posted by ブクログ
表紙が素敵で読もうと開きました
何が正解とか絶対とかはない
自身の境遇に名前があることで救われる、安心出来るときがある
でも逆に、こういう人達はこう、と勉強した気になって決めつけはしないで
ひとりひとりをみて、向き合いたい
Posted by ブクログ
静かで、あたたかくて、とても良かった。
周りと違うことは決して「おかしい」ことではないけれど、「普通」と呼ばれる枠に入れないことを焦ったり苦しく思ったりする気持ちは分かるなぁと思いながら読んでいた。
Posted by ブクログ
セクシャルマイノリティについて新しい知識を得て、考えられるだけでなく、仕事や人生における居場所作りもテーマになっている気がしました。相手の境遇に共感したり、共感できなかったりという心の動きが、主人公の鳴海くんや周りの登場人物を通して描かれています。周りのキャラクターもみんな素敵な人で、ストーリー全体に流れる雰囲気にも癒されます。畑野智美さんの作品を他にも読みたくなりました。
Posted by ブクログ
凪の海のような、音もなく降る霧雨のような、静かでただじっと見ていたくなる風景みたいな物語だった。現実はこんなに優しくはないし、もっと痛いこと苦しいことを味わう人が多いと思う。日が暮れて夜になっていく空の色、と主人公が言ったソーダを飲んでみたい。
Posted by ブクログ
主人公の性質に共感する部分があったので、帯に惹かれて購入
もしかしてマイノリティ?って思った時の不安と、特徴で分類されて名前がついてることの安心感、ずっと拭えない「いつかは、」の期待
全てに身に覚えがありすぎたなぁと
主人公もそうなんだけど、ある程度したらだいたいの人は向き合えてくると思う。
ただ、子供が好き・欲しいと思ってる人にとっては、多くのセクシャルマイノリティって受け入れるだけじゃ解決にはならなくて
向き合って割り切って生きてくしかないんだよねーと改めて思った。
Posted by ブクログ
喫茶店を舞台にしたセクシュアリティの多様性がテーマの繊細なお話だった。
他の人と違う自分に悩んでる人に読んでほしい、ほっとするような温かさがあった。ラストもとても良かった。装丁の紫が綺麗。
Posted by ブクログ
水色でもピンクでもない、薄紫ベースのグラデーション表紙で色がまず綺麗だなと、惹かれて手に取りました。話の中で紫色について書かれているところがあったので、今作で大事なカラーなんだと思う。
多様性について・ジェンダーについて、上澄みだけ掬ったに過ぎないが、改めて知る機会がなかったので読んで良かった。読めてなかったら、「そういう性格の人」で片付けて、嫌な固定概念を押しつけてしまったかもしれない( ;∀;)。気をつけよう。
『とにかく僕は「普通の子」に見られたいのだ。自分の性や恋愛について、誰にも言わないのは自分自身が偏見の強い人間である証拠だ。そのくせ、誰かに「普通の子」と言われるとは引っかかってしまう。』
2025.6
Posted by ブクログ
マイノリティ、LGBTQの他にもあるらしい。個人的には偏見は持ってないつもり。でも、ちゃんと理解してるかと言われると違う気がする。ちょっと考えさせられる内容だった。
Posted by ブクログ
恋愛感情を持てない主人公と一緒に、恋愛の価値観やどう生きるかみたいな事を模索した様な感じ。
恋愛にしても生き方にしても考え方は人様々。
普通が何かを限定する事は難しいけれど、納得出来るものだといいね。
どこかに自分居場所を見つけられれば強くなれるのかな。
Posted by ブクログ
ジェンダーや多様性、を謳う社会になってきているけど、じゃあ実際自分はどう考えているのか、と考えさせられる内容だった。「30才・女性・未婚」とかいうキーワードだけで勝手な前提のもとに話してしまったり、無意識の決めつけが自分にもかなりある気がする。
条件やキーワードだけで括らずに、その「人」と向き合って受け入れ、自分を大切にする生き方を選ぶことの大切さを教えてもらった。
Posted by ブクログ
ちょっと前に読んだマリアージュプランと似た設定の29歳男性が主人公。
ジェンダーの一つアセクシャルでアロマンティックなことを悩んでいる。バイト先の奥さんがポリアモリーだったり高校の同級生がリアコで女装趣味のクリエイター達と触れ合うことで自分の方向性が見えてくる。
自分のセクシャルは家族に言いにくいというのが、これだけオープンになったように見えて1番分かってもらいたい人にはなかなか言えない世の中なんだと感じた。
Posted by ブクログ
自分はアセクアロマなのかなと思いながらカフェでアルバイトをする主人公鳴海。
性的な感じがしない、安心な感じがする鳴海に離したくなる気持ちがわかるなあ。特に鳴海は決めつけられることに抵抗があるから、話してる側の失言も嗜めてくれそうだし、居心地がいいだろうなあ。
そんな居心地の良さを、悩んでる人たちのシェルターみたいな場所作りに活かしたいって素敵な案だと思う。
ずっと安心した気持ちで読み終えられた。世の中がどこでもこんなに優しければいいのにね。
Posted by ブクログ
雨の日に、半分ビニール傘越しに「喫茶ブルー」を見ているとても綺麗な表紙。
鳴海君の色なんですね。
自覚している性は〇〇で、恋愛対象はこうで、性的志向は、こうな人は〇〇、というふうにラベリングというか、カテゴライズされるというのは当事者の人は安心するものなのかな。
身内には「普通」であってほしい、というのも理解できるし、どんな人にも色々な生きづらさがあると思う。
理解できなくても、知ろうとする、分かろうとする、傷つかない人が増える世の中になっていってほしい。
ラストがとても良かった。
Posted by ブクログ
小さな喫茶店ブルーを舞台に、そこに集う人々の物語。恋愛感情やジェンダーなど様々なセクシャリティーの多様性をテーマにしている。知らないことは差別を生む。知っていろんな人の気持ちや考えを知ることが、お互いを理解し相手の気持ちを想像できるようになる第一歩だと思った。悩みを抱えているが故にフラットに人と接することができる鳴海優輝は、多くの人にとってオアシスとなっていく。最後がとても良かった。
Posted by ブクログ
今回も多様性の話。ポリアモリー、見た目の性と心の性が違うこと、恋愛感情を持つということ、遠い存在に持つ感情。誰にでも話せる話じゃないし、全員が理解してくれるわけじゃない。私も私で自分自身を理解していないのかもしれないなぁと思った。
気になった言葉。
差別されたくないし、自分も差別しないように心掛けていても、全てを平等に見ることは難しい。
苦手だからと何かを排除することは、自分が受けてきた差別と同じだとも感じた。
知識を得て、言葉を知り、客観的に自分を考え、少しでも楽に生きていける道を探している。
最後の一文が、私が読書をしたい理由なのかもしれないと思った。
Posted by ブクログ
マイノリティに優しい世界入門編。多様性の時代。いろんなタイプの人がいる。だけど、身内は「普通」であってほしいからこその葛藤。学生時代に学んだことをようやく実感を伴って理解しつつある。
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自分の当たり前が他の人にも当てはまるとは限らない。みんなそれぞれ、と常に思っておかないとね。そうしないと、ついつい自分の考えを押し付けそうになってしまうわ。
Posted by ブクログ
わかりやすい文章で、読みやすかった。全体的に雨が似合う雰囲気の話だな、と思った。
喫茶店「ブルー」は店長の啓介さんの人柄か、悩みを抱える人たちが安心して過ごせるような落ち着いた店。そこでアルバイトする鳴海優輝は常連の北村さんやヒナちゃんたちと関わり合う中で、さまざまなマイノリティの人々の悩みを知るようになる。世界のすべてを知っている人なんて、いるのだろうか。自分を「普通とはちがう」と思っている人たちとの出会いは、優輝に色々なことを考えさせる。
今よりむかし、チェーン店ではない喫茶店がちょいちょいあって、そういう店に行くととても落ちついた。コーヒーが好きな人が経営してると思っていたけれど、そうか。自分が過ごしやすい居場所を作りたい人が経営してたのかも。
主人公の優輝が腹を立てる表現も、あまり温度が無くて台詞で「僕はもう会いません」とか、怒っていい場面でも目の前の人の体調の心配をしたりして、とてもやさしい。カッとなるという選択肢をもともと持っていないみたいだ。
疲れた時にはこういうタイプの主人公の話を読む方が楽かもしれない。雑味を入れないようにしているのか、自営業の人が多いのに、お金の話はほとんど出ない。
バラエティ番組でお笑い芸人が披露する下ネタやイジリなども、どことなく遠ざけるような描写があって、作者の姿勢を感じた。好ましいと思う。
Posted by ブクログ
この本は性的なマイノリティがほぼほぼのテーマになっていて、主人公の鳴海くんはそれで悩んでいるんだけれど、
性的なことではなくても、少数派ってどんなことでも肩身が狭くなるのよね(;_;)
皆と同じじゃなくてもいいのにね。
どうしてこんな気持ちになるんだろう、って私もいつも悩んでいる。
鳴海くんは悩みつつも大抵フラットで、そんな所が居心地がよいのか、回りの人にはいつも恵まれている。
淡々と進んでいく?ストーリーは意外にも読みやすかったです。
マイノリティ上等。
自信は持てないまでも自分を否定しないようにしたいし、息子にもそう教えたい。
Posted by ブクログ
アセクシャル・アロマンティックの性的自認を持つ青年が主人公。
アセクシャル・アロマンティックという人たちがいるというのは、昔、NHKドラマ「恋せぬふたり」で初めて聞いた。
今は性的嗜好を自認してカミングアウトして生きていく人もいる中で、この物語の鳴海優輝はアセクシャル・アロマンティックを自認しつつもカミングアウトせずに生きている。
生きづらさを感じながらも、同じように何かを抱えている人が集まる「喫茶店ブルー」で働きながら、少しずつ自分の居場所を作ろうとする。
職場にもジェンダーの人がいるし、以前読んだ「正欲」も性的嗜好がテーマの話だった。
人は十人十色だから、少数のカテゴリーに仕分けするほうが間違いではあるだろうけど、マジョリティが強くなってしまうのでは否定できない。
よく、性別で仕分けられて、会話の端々に興味本位で恋愛事情を質問されたり、からかわれたりして深く傷つくこともあるという話を聞く。
少しずつでも、人のプライベートなことを傷つけないような、優しい世界になって欲しいと思った。
Posted by ブクログ
性的マイノリティ、恋愛感情そのものがない、などいろんな人がいるのは理解できる、できるというか、人はそれぞれでそんな人もいるんだなーと
ストーリーは淡々としていて、息を潜めている感じが、ブルーという喫茶店の雰囲気と勝手にリンクした
水族館、いや、深海みたいな潜水してる感じ?
鳴海の周りは良い人が多くてよかった
Posted by ブクログ
全体的に面白かった 話自体が鳴海みたいな色だった
人と話すときに自分の前提ってやっぱり怖いなぁとも思った
欲を言えばコトリはもう少し絡んで欲しかった