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Posted by ブクログ
あらすじに惹かれて。鳴海くんの一線を引いているような冷静さが私は好きだった。優しくていっしょにいたら居心地がいいだろうな。「恋愛」をしない自分と周囲の人々とでは世界が違うように感じているからこその俯瞰的な考え方なのかな。
多様なセクシュアリティって言われていろんな名前が付けられているけど、きっとそれだけじゃ分類なんてできない。そしてどうしたってそれはマイノリティになる。
「普通」に恋愛して結婚することが難しい人がいる。それを当然のことだとする世の中になるのだろうか。瀬山さんの「コーヒーがないとカフェじゃないのかな?」の言葉で自分にも凝り固まった偏見があるのだとハッとした。
Posted by ブクログ
ひとりの青年の葛藤と成長を通して、性的マイノリティとして生きることの苦悩を描くヒューマンドラマ。
◇
脚付きのグラスに紫色のシロップを注ぎ、氷を多めに入れてからソーダ水を加えて軽くかき混ぜる。そして丸くすくったバニラアイスを載せさくらんぼを飾る。喫茶ブルーのクリームソーダの完成だ。
ストローを添えてトレイに載せ、女子高生2人が向かい合って座る壁際の席に運ぶ。歓声を上げさっそくスマホでクリームソーダを撮り始める彼女たちに「ごゆっくりどうぞ」と声をかけ、カウンターに戻った。
ランチタイムが終わっても、店内には結構たくさんの客がいてめいめい寛いでいる。
ブルーは40年以上前から営業していて、昭和の雰囲気が残る喫茶店だ。レトロカフェ人気が高まったこともあって、最近は常連さんだけでなく10代から20代の若い女性客の姿も見られるようになった。
僕はこの店でアルバイトを始めてまだ1年だけれど、会社勤めをしていたときに客としてブルーに来たことがある。その頃の僕は就職して5年が過ぎ、心身ともにとても疲れていた。 ( 第1章 ) ※全9章。
* * * * *
多様性やジェンダーについて、深く考えさせられる作品でした。
子どもの頃から友だちとの性的なズレを感じていた主人公の鳴海優輝は、大学でジェンダーについて学び、自身がアロマンティックアセクシャルであることを確信します。ただこの時点では、だからどういった生き方をすべきかということにまで、彼は思い至りませんでした。
就職後のことです。
ある日、会社の草野球に臨時で駆り出された鳴海は、ベンチで野球部員たちが繰り広げる下品極まりない猥談に気分が悪くなってしまいます。
それまでも同僚の男たちが猥談を始めるとそれとなく距離を取って加わらないようにしていましたが、狭いベンチ内では逃げ場がありません。
おまけに悪乗りした体育会系男たちの話はそこにいない女性社員への言葉による凌辱じみたものに及んだことで、鳴海の精神は限界に達したのでした。
その帰り道、偶然ブルーの前を通りかかった鳴海は、ガラス越しに見た店内の落ち着いた雰囲気に惹かれ、思わずドアを押していました。
物静かなマスターから漂う包容力の賜物なのか居心地のよさを感じた鳴海は、会社に辞表を出してブルーでフルタイムのアルバイトをする決心をします。
物語は、鳴海がブルーで出会う客たちやマスターの啓介一家とのかかわりを通して、自分らしく生きていくためのスタンスを模索する姿が描かれていきます。
ブルーで過ごす時間が鳴海にとって大きかったのは、孤独感から解放されたことです。どこにも居場所のなかった鳴海をきちんと受け止めてくれる人がいたことは、これからの生き方へとつながっていきます。
性的マイノリティと言っても実に多様であること、分類上は同じカテゴリーであっても個人個人で微妙にタイプが異なることなど、本作を読んで初めて知りました。
性的マイノリティの人たちは、人口の1割近くを占めるそうです。けれど、カミングアウトすることなく、苦痛を感じつつもマジョリティの中に紛れている人は決して少なくないとも言われています。
彼らにとって生きにくい社会であるという現実は、残念ながらそうそう変わらないでしょう。それは、マジョリティ側のスタイルが正しいとする人が圧倒的に多いからです。
そんな社会の中では、マイノリティが身の置き所を見いだすのは難しい。
だからこそ、そんな人たちの「居場所」となるようなカフェを作ろうとする鳴海の姿に心打たれたし、未来に対する仄かな希望の光が見えたような気がしました。
Posted by ブクログ
多様なセクシュアリティがテーマの一冊です。最近になってよく見かけるようになったテーマですが、今作はセクシュアリティのグラデーションにまで言及されていて、勉強になりました。
はじめは、主人公の鳴海くんのまるで第三者のような淡々とした世の中への目線に、苦手かもと思いながら読み進めました。それが、段々と彼の心情があらわになり、人間味が出てきたからか、話に没頭することができました。
子どもに対するセクシュアリティの対応は難しいですね。どんなセクシュアリティでも受け止められる大人でありたいけれど、親であったり関係が近ければ近いほど、苦労のない『普通』を願ってしまう気がします。
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