畑野智美のレビュー一覧
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1日で読み切った。それくらい続きが気になって読み続けてしまった。
松原の育ってきた環境と、性格と、友人関係と、仕事環境と。色々な角度からストーカー加害者の心情や背景が描かれていて、松原がどういう人間なのか。どういう考え方をするのか。というのが、すごく伝わってきて、気持ち悪かった。たぶん読みながらしかめっ面になってたと思う。
さくらちゃんが家族とか大事な人に迷惑がかかるから、悪い影響が出てしまうのではと、1人で抱え込んでしまう気持ちはとても分かる。じゃあどうすればよかったんだろうとモヤモヤする。
私だったら、と考えてはみるものの、そもそもさくらちゃんと考え方も性格も異なるので、なんの解決策にもならない。
ぐるぐる考えながらこの読後感を味わうことにします。 -
Posted by ブクログ
ストーカーという存在を、とても真っ直ぐに描いた作品だった。
読んでいて何度も「どうしてこんな結末になってしまったんだ」と考えさせられる。被害者だけでなく、加害者側の歪んだ思考も描かれることで、その異常さや恐ろしさがより伝わってきた。
特に印象に残ったのは、「ストーカーは風化しない。誰よりも何よりも努力して、運も味方につける」という言葉。その執着の恐ろしさに納得すると同時に、ぞっとした。
一方で、その執着の果てに、唯一の理解者ともいえる住吉との繋がりさえ失い、松原は本当の意味で独りになってしまう。その結末には何とも言えない虚しさが残る。
終盤の展開は衝撃的だっただけに、その後の松原の独白はあまり頭に入ってこなかった。そこだけが少し惜しかったが、ストーカーという存在の怖さを真正面から描いた作品として印象に残った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルと表紙絵から想像したのは、なんらかの理由で眠れない女子が、様々なアドバイスをもらいつつ、睡眠と生活を立て直していく話。ざっくりとはそうなんたけど、思ったより重い感じだった。
主人公の依里は、婚約者の直樹を事故で亡くしている。出張だと言って、既婚者の女性と温泉旅館に泊まり、帰りにバス事故で2人とも亡くなったのだ。眠れなくなった依里は、たまたま訪れた寝具店でお勧めの寝具を一式買って、どうにか眠れるようになる。そして、今はその寝具店でパートとして働いている。そこへ偶然、直樹と共に亡くなった女性の夫、高橋が客として訪れ、直樹に囚われていた依里に少しずつ変化が…。
話の核として、連れ合いを不倫の果てに亡くしたかもしれない、依里と高橋の心の軌跡がある。
そこへ依里の仕事を通して、枕やマットレス、羽毛布団の知識が披露される。私は、すごく勉強になった。
もう一つ、寝具店のパワハラマネージャー、お客さんのモラハラダンナ、自分のことは後回しになりがちなお母さん、など、抑圧される女性の描写もある。そして、依里と高橋も、自覚ある無しの違いはあるものの、相手に合わせてしまう面があるという推察が語られる。相手が亡くなってるだけに、自覚のなかった依里は特に複雑だろうなあ。2人が本当に不倫関係だったかどうかは、直樹が巻き込まれた感があり、でも真相は永遠にわからない。依里も高橋も私もモヤモヤである。
依里と高橋が、2人で事故現場を訪れ、なんらかの区切りをつけられて、それぞれ自分の人生を考えられるようになったのは、後味の良いラストだった。2人は今後付き合うのかどうかは、ちょっと曖昧なままで消化不良だけど! -
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ネタバレ【あらすじ】
あの人と過ごす「おやつ」の時間が、
今日を乗り切る力をくれる。
おいしいものを愛する作家陣が、
心とおなかの空腹をあたたかく満たす短編小説集。
●作品紹介
妻子ある政治家と逢瀬を重ねる画家の朱莉。
マスコミを避けるため延泊した伊豆の山奥のホテルで回想する、
これまでのこと。
――島本理生「楽園の代わりのカッサータ」
なりゆきから、派手めギャルとして高校生活を送る陽子。
クラス替えで再会した関優征は、かつて放課後をともにした相手だった。
――織守きょうや「ファースト・アンド・オンリー」
両親の交通事故がきっかけで瀬戸内海の島に住む叔父に引き取られた碧。
果樹が茂る庭の手入れをし、
その恵みをいただく中で回復していく少女の物語。
――友井羊「春とマーマレード」
アイドルグループの一員として活動している泉水。
テレビ番組のお題で、まもなく卒業するメンバーの大地と一緒に、
スイーツをプロデュースすることに。
――畑野智美「アンパッサン」
息子の大学進学にあわせて上京した尋乃。
そっけない息子の隣で思い返すのは、
幼い彼とふたりで東京に滞在したときの記憶で……。
――名取佐和子「ドーナツ息子」
休学中の高校を中退して、食の仕事に進もうかと悩む美也。
東京で郷里の友達、瀬里が暮らすシェアハウスに滞在するなかで、
食事とスイーツづくりを担当することになり――。
――伊吹有喜「ストロベリーの歌」
【個人的な感想】
どの話もほっこりするだけじゃない、深い悲しみや辛さが描かれていて読んでいて飽きなかった。 -
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畑野智美さんの『水槽の中』を読みました。
読み終わったあと、しばらくぼんやりと自分の高校時代を思い出してしまった。
この物語に描かれているのは、同じ高校に通う遥、マーリン、バンちゃん、アルトの4人の1年間。友情、恋愛、勉強、そしてなんとなく見え隠れする将来の不安……。誰にでもある、でも二度と戻らない特別な高校2年生の日々です。
ドラマチックな大事件が起きるわけではありません。むしろ、どこにでもある「平熱の日々」。でも、だからこそ彼らの心の機微がダイナミックに伝わってきて、胸がギュッとなる。
「水槽の中」というタイトルが、まさにあの頃の、世界のすべてだった狭くて透明な空間を象徴しているようで、なんとも引き込まれました。
大人になって忘れていた、あの頃のヒリヒリした空気感に浸りたい人におすすめしたい一冊です。