畑野智美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
畑野智美作品3冊目。今回もとても面白く、一気読みしてしまった。
この前に読んだ『消えない月』はかなり重い読後感だったが、本作は最後が前向きな終わり方で少し救われた気持ちになった。
物語の中で印象に残ったのは、大卒である程度の学力があっても、派遣切りをきっかけに簡単に貧困へ転落してしまう現実。決して特別な人の話ではなく、誰にでも起こり得ることのように感じられて怖かった。
もし本当にそういう状況になったとき、どこに頼ればいいのか、どう行動すればいいのか、愛と同じように自分には分からないとも感じた。そんな中で、雨宮が友人としてそばにいてくれたこと、さらに福祉の仕事をしていたことが大きな救いだったと思う。自分が同じ状況になったとき、連絡が取れなくなったら心配してくれる友人はいるだろうか…と少し考えてしまった。
そして何より衝撃だったのは愛の父親。あまりにも酷い人物だったが、その一方で腹違いの弟・勇気がとてもまっすぐに育っていて、その対比に胸が熱くなった。
誰でも一歩間違えれば転落してしまう社会の怖さを感じつつも、人とのつながりが救いになるのだと感じさせられる作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ個人的にはとても面白く、先が気になってしまい1日で読み切ってしまった。怖さもあるのにページをめくる手が止まらないタイプの作品。
畑野智美さんの作品は『大人になったら、』を先に読んでいたのだが、その解説で渡辺雄介さんが「畑野智美はレッテル貼りの潔癖症」と書いていたのが印象に残り、他の作品も読んでみたいと思って手に取ったのがこの作品。確かに本作では「ストーカー」というレッテルを貼られた人物が、非常に丹念に描かれていると感じた。
物語はストーカーする側とされる側の視点が交互に描かれる構成で、それぞれの心理が見えてくることで、より物語に入り込めた。単なる被害者と加害者という関係ではなく、登場人物それぞれの感情や背景が丁寧に描かれている。
結末については、静岡でこのまま穏やかに暮らしていけるわけではないだろうとは思っていたが、やはり…という展開。警察に相談するなどできる限りのことをしていても防げない状況には、やるせなさが残る。
個人的に1番つらい立場だと思ったのは弟の和樹。ほんの一瞬コンビニに出かけたその間に松原が現れ、しかも松原は彼の後をつけて静岡まで来ていたのだから、その気持ちを想像すると本当に苦しい。
一方で松原も、外見だけを見れば普通に魅力的でモテそうな人物なのに、強いトラウマを抱えていることがうかがえる。やはり幼少期の環境が人格形成に大きく影響するのだと考えさせられた。
もちろん悪いのは松原だが、さくらの行動にも少しもどかしさを感じた場面があった。合鍵を渡しているのに自宅の鍵を変えないことや、LINEのやり取り(ブロックせずとも既読付けなくていいのでは…)など、なぜそこまで相手に余地を残してしまうのかと感じてしまう部分もある。
怖さとやるせなさの両方が残る読後感で、読み終えてもしばらく引きずるタイプの作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレゆるっと流れていく家族の時間のなかに、主人公を含むきょうだい其々が悩んだり笑ったり怒ったり悲しんだりする様子が描かれていく。
自分の実家と少し似ているなと感じて、義理の兄さんがこの家に来るのが怖いと言っている意味が分かります。他人から見たら少し気持ち悪い結束感がある。
主人公は自分を後回しにしてしまう優しい人。
ふらふらしているように見える部分もあるけれど、この家族の中に居ると、なんかそうなるのがわかる気がしました。
あまねに向き合うために、この春から少し、変化して行くんだろうな。
いつかまた、賑やかな我が家になる未来が想像できて、読後は気持ちよかったです。春に読み終えるのが良さそうな感じ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごく読みやすくて、落ち着く作品だった。
ヒーローもののように焦らされたり悲しくなったり嬉しくなったりの気分の変化はなく、ただ静かに日常が流れていく様を読んでいく感覚。私はこういうのが好き。
仕事に熱心なわけでもなく、恋愛も過去のものに囚われて意欲もなく独身。そんな自分は何年経ってもきっと何も変わらない。なにかの出来事に心に大きな変化があって人間性が大きく変わる、なんてこともなかなかない。
でも、本当に些細なことで、目標ができたり出会いがあって前向きになったりして。そんなリアルな人生が描かれていて、共感しやすかったです。
最後、恋愛で心に大きな傷が残っていた2人のことを「この街の春は、東京よりも遅く来る。」という一言で表していたのが胸に残りました。きっと、不器用ながらもお互い歩み寄って、その人の嫌なところもダメなところも支えていきたいと思える関係になるんだと思わせてくれる素敵な一言だと思いました。 -
Posted by ブクログ
ふわーっと読めて、さらっと大事なことが書かれている。
他人軸で生きている時って、自分では他人軸になっているなんて気付けない。よくある話なのだけれど、よくある話だからこそ気付くチャンスがないから、ある意味一番危険だと思う。
たとえばパワハラを受けているとか、暴力を受けているとか、明らかな事実があれば周囲が気付いて助言ができるが(その人が受け入れるかは別として)、日常に馴染んでしまっている小さな抑制、抑圧ほど、目には見えないから他人も本人もスルーしがち。
そのまま一生を終えてしまうこともあるけれど、気付いて人生に変化がもたらされる時は、結局人との出会いと自分で“気付くこと“であると感じた。
ずーっと枕を変えたいと思っていて行動に移せず。この本を読んで、いかに自分に合う寝具が睡眠の質を上げてくれるか痛感した。
ケチらずに良い枕買おう。 -
Posted by ブクログ
自分を大切にして、自分らしく生きること。女性にとっては特に難しいことなのかも。主人公の依里、その周りの人々を見ると、そう思ってしまう。
私も周囲から求められている役回りを、知らず知らずのうちに演じてしまうことがあるなと。
婚約者直樹の死をきっかけに、自分の生き方を見つめ直す依里を自然と応援したくなる物語だった。
そして、要所要所に盛り込まれている「寝具の選び方」や「快眠のコツ」がとても参考になった。
読んでいるうちに寝具専門店で、自分に合った枕を買いたくなってウズウズしてしまって…
近々、見に行ってみよう。
好みの本だったけど直樹の死に関する部分だけは、やっぱり納得いかず不完全燃焼。