畑野智美のレビュー一覧
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畑野智美作品3冊目。今回もとても面白く、一気読みしてしまった。
この前に読んだ『消えない月』はかなり重い読後感だったが、本作は最後が前向きな終わり方で少し救われた気持ちになった。
物語の中で印象に残ったのは、大卒である程度の学力があっても、派遣切りをきっかけに簡単に貧困へ転落してしまう現実。決して特別な人の話ではなく、誰にでも起こり得ることのように感じられて怖かった。
もし本当にそういう状況になったとき、どこに頼ればいいのか、どう行動すればいいのか、愛と同じように自分には分からないとも感じた。そんな中で、雨宮が友人としてそばにいてくれたこと、さらに福祉の仕事をしていたことが大きな救いだった -
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ネタバレ個人的にはとても面白く、先が気になってしまい1日で読み切ってしまった。怖さもあるのにページをめくる手が止まらないタイプの作品。
畑野智美さんの作品は『大人になったら、』を先に読んでいたのだが、その解説で渡辺雄介さんが「畑野智美はレッテル貼りの潔癖症」と書いていたのが印象に残り、他の作品も読んでみたいと思って手に取ったのがこの作品。確かに本作では「ストーカー」というレッテルを貼られた人物が、非常に丹念に描かれていると感じた。
物語はストーカーする側とされる側の視点が交互に描かれる構成で、それぞれの心理が見えてくることで、より物語に入り込めた。単なる被害者と加害者という関係ではなく、登場人物そ -
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ネタバレゆるっと流れていく家族の時間のなかに、主人公を含むきょうだい其々が悩んだり笑ったり怒ったり悲しんだりする様子が描かれていく。
自分の実家と少し似ているなと感じて、義理の兄さんがこの家に来るのが怖いと言っている意味が分かります。他人から見たら少し気持ち悪い結束感がある。
主人公は自分を後回しにしてしまう優しい人。
ふらふらしているように見える部分もあるけれど、この家族の中に居ると、なんかそうなるのがわかる気がしました。
あまねに向き合うために、この春から少し、変化して行くんだろうな。
いつかまた、賑やかな我が家になる未来が想像できて、読後は気持ちよかったです。春に読み終えるのが良さそうな感じ -
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ネタバレすごく読みやすくて、落ち着く作品だった。
ヒーローもののように焦らされたり悲しくなったり嬉しくなったりの気分の変化はなく、ただ静かに日常が流れていく様を読んでいく感覚。私はこういうのが好き。
仕事に熱心なわけでもなく、恋愛も過去のものに囚われて意欲もなく独身。そんな自分は何年経ってもきっと何も変わらない。なにかの出来事に心に大きな変化があって人間性が大きく変わる、なんてこともなかなかない。
でも、本当に些細なことで、目標ができたり出会いがあって前向きになったりして。そんなリアルな人生が描かれていて、共感しやすかったです。
最後、恋愛で心に大きな傷が残っていた2人のことを「この街の春は、東京 -
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35歳独身女性、大規模チェーン店の正社員でカフェ『キートス』の副店長として働くメイ。彼女の成長と少しの恋の物語。登場人物それぞれの解像度が高く共感できる。35歳という中途半端な年齢であり、人によって大きく岐路が分かれるこの年齢は、どうにもならないモヤモヤを抱えて生きている人が多い。メイは恋人も家族もおらず、仕事での目標もない。そんな女性の物語です。
著者とはまさに同じ年代で、感じてきたことやその感覚が近しいと思う。
役職ある立場で働き、会社の駒となり突然の辞令で異動する。社員である自分とパートアルバイトさんたちとの間には距離があり、お互いに本音で語らうことはない。
必死に働くことやプライベ -
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ふわーっと読めて、さらっと大事なことが書かれている。
他人軸で生きている時って、自分では他人軸になっているなんて気付けない。よくある話なのだけれど、よくある話だからこそ気付くチャンスがないから、ある意味一番危険だと思う。
たとえばパワハラを受けているとか、暴力を受けているとか、明らかな事実があれば周囲が気付いて助言ができるが(その人が受け入れるかは別として)、日常に馴染んでしまっている小さな抑制、抑圧ほど、目には見えないから他人も本人もスルーしがち。
そのまま一生を終えてしまうこともあるけれど、気付いて人生に変化がもたらされる時は、結局人との出会いと自分で“気付くこと“であると感じた。
ずー