畑野智美のレビュー一覧
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「40歳以上独身女性限定のシェアハウス」
コロナ禍、一人暮らしの40歳を迎えたミチルは「アネモネ」という飲食店でアルバイトしている。
コロナの影響で収入も減っていき、生きていけないと思い、【若葉荘】に住むことになる。
シェアハウスでの暮らしは適度な距離感があって心地良い。
【若葉荘】での出会いと別れ。
40代からの心身の揺らぎや孤独、将来への不安を抱える女性たちの姿。
「おばさん」と認めてしまうと、できないことが急激に増えていく気がする。トキ子さん、真弓さん、美佐子さんも自分のことを「おばさん」といって甘えたりしないし若者ぶって無理することもない…
そのミチルの気持ちが凄く共感できる。
私も歳の流れにゆったり乗っていきたい。
心はいつでも若々しくいたい。
いつかみんなが通る年齢でもある。
良い歳の重ね方をしたい。
ひとり、ふたり、若葉荘から居なくなり
そしてまた、新たな住人がやってくる。
リアルな現状と心情を描いた物語だが
文体が柔らかくとても穏やかに読めた。
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Posted by ブクログ
心に傷を負った人たちの街。優しくて穏やかで、でも少しだけ息苦しさもあって。
面談で、加害者側の視点で事件を語った被害者に対して担当者がかけた言葉「あなたはあなたが見たことを信じればいい。そしてそれを話せるようになってください」に、ハッとした。自分視点で物事を語るのは、主観的であまり良くないことのように思えてしまうけど、そんなことはないのかもしれない。
すごくがんばっていて、がんばりすぎて周囲から心配されていて、その心配の通りくじけてしまった留美ちゃんを見ていて寄り添うことの難しさを痛感した。留美ちゃんが街を出た後どうなったのかわからないままなのが気がかりだけど、人生ってそういうものだから。畑野さんの作品はいつも、人と人の関わりは人生のほんの通過点だと教えてくれる。
雪下くんが街を出て行ったのはどんなに前向きな旅立ちであっても寂しさが大きくて。
いつか、元気で再開してほしいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初はなかなか進まなかったけど、途中からとてもおもしろくなりました。
私も過去に彼を亡くした事があるので、重なることもありとても切なかったです。タイムマシンで、彼が生きてた頃にいきたいと当時も思っていました。
お父さんとの再会の時、息子は顔が多少変わっても分かりますよね。2人の会話が切なかったです。お母さんの草餅のところも涙が出そうになりました。
彼を亡くして数年後私が結婚の挨拶に行った時、彼の両親は泣いて喜んでくれました。その時は申し訳ない気持ちも大きかったのですが、母になった今は長谷川さんに幸せになって欲しいと思う気持ちが分かりました。
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Posted by ブクログ
ひとりの青年の葛藤と成長を通して、性的マイノリティとして生きることの苦悩を描くヒューマンドラマ。
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脚付きのグラスに紫色のシロップを注ぎ、氷を多めに入れてからソーダ水を加えて軽くかき混ぜる。そして丸くすくったバニラアイスを載せさくらんぼを飾る。喫茶ブルーのクリームソーダの完成だ。
ストローを添えてトレイに載せ、女子高生2人が向かい合って座る壁際の席に運ぶ。歓声を上げさっそくスマホでクリームソーダを撮り始める彼女たちに「ごゆっくりどうぞ」と声をかけ、カウンターに戻った。
ランチタイムが終わっても、店内には結構たくさんの客がいてめいめい寛いでいる。
ブルーは40年以上前から営業していて、昭和の雰囲気が残る喫茶店だ。レトロカフェ人気が高まったこともあって、最近は常連さんだけでなく10代から20代の若い女性客の姿も見られるようになった。
僕はこの店でアルバイトを始めてまだ1年だけれど、会社勤めをしていたときに客としてブルーに来たことがある。その頃の僕は就職して5年が過ぎ、心身ともにとても疲れていた。 ( 第1章 ) ※全9章。
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多様性やジェンダーについて、深く考えさせられる作品でした。
子どもの頃から友だちとの性的なズレを感じていた主人公の鳴海優輝は、大学でジェンダーについて学び、自身がアロマンティックアセクシャルであることを確信します。ただこの時点では、だからどういった生き方をすべきかということにまで、彼は思い至りませんでした。
就職後のことです。
ある日、会社の草野球に臨時で駆り出された鳴海は、ベンチで野球部員たちが繰り広げる下品極まりない猥談に気分が悪くなってしまいます。
それまでも同僚の男たちが猥談を始めるとそれとなく距離を取って加わらないようにしていましたが、狭いベンチ内では逃げ場がありません。
おまけに悪乗りした体育会系男たちの話はそこにいない女性社員への言葉による凌辱じみたものに及んだことで、鳴海の精神は限界に達したのでした。
その帰り道、偶然ブルーの前を通りかかった鳴海は、ガラス越しに見た店内の落ち着いた雰囲気に惹かれ、思わずドアを押していました。
物静かなマスターから漂う包容力の賜物なのか居心地のよさを感じた鳴海は、会社に辞表を出してブルーでフルタイムのアルバイトをする決心をします。
物語は、鳴海がブルーで出会う客たちやマスターの啓介一家とのかかわりを通して、自分らしく生きていくためのスタンスを模索する姿が描かれていきます。
ブルーで過ごす時間が鳴海にとって大きかったのは、孤独感から解放されたことです。どこにも居場所のなかった鳴海をきちんと受け止めてくれる人がいたことは、これからの生き方へとつながっていきます。
性的マイノリティと言っても実に多様であること、分類上は同じカテゴリーであっても個人個人で微妙にタイプが異なることなど、本作を読んで初めて知りました。
性的マイノリティの人たちは、人口の1割近くを占めるそうです。けれど、カミングアウトすることなく、苦痛を感じつつもマジョリティの中に紛れている人は決して少なくないとも言われています。
彼らにとって生きにくい社会であるという現実は、残念ながらそうそう変わらないでしょう。それは、マジョリティ側のスタイルが正しいとする人が圧倒的に多いからです。
そんな社会の中では、マイノリティが身の置き所を見いだすのは難しい。
だからこそ、そんな人たちの「居場所」となるようなカフェを作ろうとする鳴海の姿に心打たれたし、未来に対する仄かな希望の光が見えたような気がしました。 -
Posted by ブクログ
仕事を失ってから、あっという間に世の闇に接することになる主人公のじわじわとした転落の姿がリアルすぎる。普通に暮らしていたはずなのに、少し外れたところ(それでも日常に背中合わせなくらい近い距離)には闇がぱっくり口を開けて主人公を待っている。
読み始めた時にはポジティブな印象を持っていたタイトルも、意味がわかった時にはあっと驚くとともにヒリヒリした気持ちになってしまった。でも、これ以上にこの作品を代表するタイトルもないと思う。
フィクションでありながら貫かれるリアリティこそが、このお話を圧倒的に刺さるものにしている。
読んでみて辛い気持ちになったけれど、読めてよかった一冊。強烈で痛切な読後感を残していった。