これはとても楽しく読めた。
高2になった始業式から始まる、遥とマーリン、バンちゃんとアルト、4人の一年。
いじめもスクールカーストもない、むしろ動画配信が発覚して処分を受けそうになったクラスメイトを全員で慮るようなクラスが描かれ、今の世の中にはあり得ないかも知れないが、読むのがしんどくなるような内
...続きを読む容の本もある中で、こういう物語に出会うと心が安らぐ。
クラス分け、部活紹介、憧れの先輩、学食、帰り道でのお喋り、期末テスト、夏休みの海の家、文化祭の準備、就学旅行での告白、球技大会、卒業式…。
川西さんの動画配信発覚以外は特別なことは何も起こらないが、かつて通り過ぎてきたことばかりの描写に大昔の高校2年生の頃を思い出した。
思えば、男子ばかりのクラス(私の高校は男3:女1の割合だった)の1年生でもなく、もちろん受験のための授業ばかりの3年生でもなく、2年生の時が一番楽しかったもんな。
『陸上とは違う何かがしたいと思っていたのに、何もできなかった』という遥に『違う何かしてたじゃん』と返すマーリンだったが、全く同感。
志望校目指して勉強したり、友達とダラダラしたり、まあ、色々悩みはあったと思うが、待ち受ける未来に対しておしなべて希望のほうが勝っていた時代が懐かしい。
そんな中、学校をサボって行った水族館をきっかけに、川西さんの事件を経て大きくなっていく、遥の中に芽生えたアルトに対する微妙な想い。
これもまた、高校の頃ってこんな感じだったなあと思い返す。
じれったいような、自分の気持ちを持て余すような気持ちが丁寧に描かれていて、とても好い。
花火大会でのこともありがちで、分かっていてもお互いちゃんとした対応が取れないんだよね。
雪の中、海が見えるベンチでの会話がとても切なかった。