【感想・ネタバレ】大人になったら、のレビュー

あらすじ

三十五歳の誕生日を迎えたメイ。「いつから彼氏いないんですか?」「何が目標なんですか?」――失礼な後輩に憤慨しつつも、カフェの副店長として働く日々はそれなりに充実している。毎日同じメニューを頼むお客さんも、そんな日常の一部だったのだけど……。久しぶりの恋に戸惑う、大人になりきれない私たちの恋愛小説。〈解説〉渡辺雄介

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あなたは、『三十五歳』という時代をどのように思うでしょうか?

このレビューを読んでくださっている方の年齢はマチマチです。『三十五歳』を、未来に見る方もいれば遠い過去に見る方もいる、そして、現在進行形という方も間違いなくいらっしゃるでしょう。同じ『三十五歳』と言ってもそこに見えてくるものは異なるはずです。

では、『日本人女性の平均寿命は、八十七歳と少し』という現代社会にあって、『一生を六十分のドラマと考えたら』『三十五歳』はどのような時代になるのでしょうか?

 『三十五歳は起承転結の起が終わり、承の半ばに差しかかろうとしているぐらいだろう。これから転があり、結はずっと先で、何が起こるかまだわからない』。

確かにこの考え方には一理あると思います。

 『とにかく、三十五歳は、まだまだ若いはずだ』。

この考え方は間違いないのだと思います。しかし、本当にそうでしょうか?『まだまだ若い』と呑気に構えていても良いものなのでしょうか?

さてここに、『今日で三十五歳になった』という一人の女性が主人公となる物語があります。カフェの副店長として仕事に奔走する主人公を見るこの作品。そんな女性が『これが、恋なのだろうか』という瞬間を感じるこの作品。そしてそれは、”30代女性が読むと、共感が止まらなくなります。胸キュンも少し”とおっしゃる畑野智美さんが綴る”恋愛物語”です。

『六月二十二日、今日で三十五歳になった』と『目覚まし時計』の『ボタンを押して止め』るのは主人公の葛城命(かつらぎ めい)。『とにかく、三十五歳は、まだまだ若いはずだ』と思うメイですが、『でも、若くなんてないのだ』とも思います。『子供もいなければ、結婚もしていない。八年前、二十七歳の誕生日に、十年間付き合ったフウちゃんと別れてから、彼氏もいない。好きな人もいないし、気になる人もいない』というメイは、『だからといって、恋愛を諦めたわけではないし、仕事に人生を捧げていて恋愛どころではないわけでもない』という今を思います。『もう起きなくてはいけないと思っても、起き上がれない』というメイは、『高校二年生、十七歳の誕生日の放課後、同級生だったフウちゃんに告白された』時のことを思い出します。『「葛城のことが好きだから、付き合ってほしい」と言われ、うなずいた』メイは、『窓から陽が射して、世界が輝いて見え』ます。『十八年も前のこと』にも関わらず、『ほんの数年前のことのように感じる』というメイは、ようやく『起き上がり、ベッドから出』ました。そんなメイは、『キートスという』『駅の反対側にあるカフェ』で副店長として働いています。『北欧風にまとめたお洒落な店として、雑誌の取材も何度か受けているが、チェーン店』という『キートス』へと出勤したメイは、『新卒で今年入社したばかりの社員』である杉本を探します。そんなところに『おはようございます』と『鶏の唐揚げを揚げてい』た『ベテランアルバイトのレナ』が声をかけてきます。杉本のことを訊くと『レジ開けしています』と言われホールへと向かうと、『レジの前に立って、ぼうっと天井を見上げ』る杉本の姿がありました。『どうして、レナちゃんが唐揚げを揚げているんですか?』と訊くメイに『早いですね』と言う杉本。『オープン準備ができているか確認するために、早めに来たんです』と返すメイは、『今日のシフトは十一時から二十時までの中番だが、三十分前に来』ました。『僕ができないって疑ってるんですか?』と言う杉本に、『疑ってるわけではないです。初めてひとりで入ったら、完璧にできないのは当然だから。それよりも、最初の質問にまず答えて』と返すメイは、質問を繰り返します。それに『僕ができないって言ったら、やってくれるって言うから』と答える杉本は、『レジ開け』も『なんか、わかんなくなっちゃった』のでできていないと説明します。『マニュアル、渡したよね?』と訊くメイですが、『今の時代、紙のマニュアルっていうのも、違う気がする』等言い訳ばかりする杉本。『帰国子女で』『今年で二十五歳になる』杉本は、『すごくかっこよくて、背が高』く、『配属されてきて三週間しか経っていないのに、彼目当てのお客さんもいるくらい』の存在になっています。そして、『笑顔で頼まれると、断れなくなってしまう』という『アルバイトの女の子たち』。『店長は未だにガラケー使っていて…やっていることの古さに気づけずに、昔のままで何も変えないでいいと思っている』と続ける杉本に、『わかった。そういうことは、店長がいる時にまた聞きます』とだけ言うと、更衣室へと移動したメイ。『杉本君と話していると、大事にしてきたものを無神経に壊されている気分になる』と思うも『わたしが怒って反論したら、仕事が進まなくなる』と思うメイは、『まだひとりで厨房のオープン準備ができないかもしれない、と思いながら任せたわたしと店長の判断ミスと考えた方がいい』と結論します。そんなメイは『十一時に開店してすぐに来る常連のお客さんがいる』、『その人は、必ず鶏の唐揚げの南蛮漬けランチセットを頼む』と『開店までに、レジ開けをして、レナちゃんが揚げた鶏の唐揚げを南蛮漬けのタレに漬けて、他の下準備ができているか確認しなくてはいけない』と考えつつ、『まずは、制服に着替え』ます。そして、『開店してすぐに来る常連のお客さんは、レジカウンターの正面、ガラスに接した椅子席に必ず座る。眼鏡をかけ、スーツを着た男性で、いつもひとりで来る』と思うメイ。『雨の日も、雪の日も、台風の日も、欠かさずに来て、同じ席に座る。そして、鶏の唐揚げの南蛮漬けランチを頼む』という客が『いつも通りに注文されたので、いつも通りに出した』というメイ。そんな『メイ』に『あのお客さん、いっつも来ますよね』と『小さな声』で話しかけてきた杉本に『七年間、毎日来てるから』と返すと『マジっすか?』と『引いているような目をする』杉本は、『何してる人なんだろう。毎日、スーツですよね』と続けます。『ずっと謎だった』客の『正体が判明したのは、四年前』のこと、『新しくアルバイトに入った女の子が彼』のことを知っていました。『彼は、隣の駅にある予備校の数学教師』で『羽鳥先生といい、数学のカリスマ講師として有名な人』と知ったメイは、『年上だろうと思ってい』ましたが、実際には『同い年』でした。『あのお客さんが何してるか、わたし知ってる』と語るメイは、『教えないけど』と続けます。それに『ええっ、教えてくださいよ』と『かわい子ぶっているような、言い方をする』杉本を見て、『特定の彼女はいないらしい。だが、特定ではない彼女は何人かいるようだ。かわい子ぶれば言うことを聞いてくれたり、お金を出してくれたりする年上の女もいるのだろう』、『彼の性格は三週間でよくわかった。どんな顔をしても、わたしはだまされない』と思うメイは、『教えません。それより、お喋りしている場合ではないよね』、『厨房で、ランチの準備をしてください』と指示を出します。『キートス』で副店長として働くメイの三十五歳の今を見る物語が描かれていきます。

“三十五歳の誕生日を迎えたメイ。「いつから彼氏いないんですか?」「何が目標なんですか?」 ー 失礼な後輩に憤慨しつつも、カフェの副店長として働く日々はそれなりに充実している。毎日同じメニューを頼むお客さんも、そんな日常の一部だったのだけど…。久しぶりの恋に戸惑う、大人になりきれない私たちの恋愛小説”と内容紹介にうたわれるこの作品は、1979年5月にお生まれの畑野智美さんが39歳の時に刊行されています。

そんなこの作品は内容紹介だけでなく、本の帯に”8年ぶりに、恋をした”と大きく記されている通りそこには”恋愛物語”が描かれていきます。ただ、それ以上にこの作品を読んで感じるのは『三十五歳』という人生の分岐点にさまざまに思い悩む女性の姿をリアルに描いていく物語です。その一つが”恋愛”であることには違いないのですが、そこにはその先の結婚、子育てというものを俯瞰する感覚、一方で仕事に対しての思いが対になるように描かれていくのです。そんなこの作品を執筆するに至る畑野さんの思いを”小説丸”というサイトに見つけましたのでまずはご紹介しておきたいと思います。

 “『大人になったら、』を構想していた頃、2015年に『感情8号線』を出しました。それとは違うタイプの恋愛小説を書こうと考えていたとき、30代半ばの友人や知り合いと話していると、みんな恋愛や結婚で、すごく迷ったり悩んだりしていました。
女の子は「結婚したい」「子どもがほしい」、でも「相手がいない」と言うんです。彼女たちの周りには、相手になりそうな男性がいないわけじゃないのに、何で?と思っていました。だけど男性の側も「結婚したい」「けど、彼女もいない」と言うんです。すぐ近くに対象がいるのに、なぜ?と不思議でした。ほしいものはすぐ近くにあるのに、実際に何を求めているのか、よくわからない。30代半ばのモヤモヤした空気感に触れて、『大人になったら、』を書こうと考えました”。

少し長い引用ですが、畑野さんのおっしゃりたいことが朧げながらも伝わってくるように思います。短いようで長い人生、その中に私たちはさまざまな悩みと葛藤しながら生きていきます。それは将来が見通せないからこその悩みでもありますが、未来に無限の可能性があった20代までと異なり、30代という時代は、その先に見える景色がよりハッキリしてくる分さまざまな思いに囚われる年代だと思います。まさしく、”モヤモヤした空気感”が漂う時代なのだと思いますが、この作品の主人公・メイは、『十年間付き合ったフウちゃんと別れ』たことで結婚という未来が見えなくなり、一方の仕事においてもまさかの『店長試験』を『三年連続で、不合格』という結果の先に『副店長』という今の人生を生きています。そうです。この作品は、”30代半ばのモヤモヤした空気感”の中に一人の女性の”恋愛”と”お仕事”を見る物語なのです。

では、まずは”お仕事”から見てみましょう。”お仕事”という意味で外せないのはこの作品の多くの場面で舞台となる『北欧風カフェ』『キートス』です。

 ● 『キートス』ってどんなお店?
  ・『店の名前は、キートスという。Kiitosと書く。フィンランド語で、「ありがとう」という意味』

  ・『青い看板に白い壁の外装は、フィンランドの国旗の色をイメージしている。内装も北欧風にまとめたお洒落な店として、雑誌の取材も何度か受けているが、チェーン店』

  ・『都内はここだけだが、札幌と大阪にも一店舗ずつある』

  ・『北欧風のカフェでも、ごはんとおかずと味噌汁という定食屋のようなセットをメインとしている。開店と同時にランチタイムがはじまる。十二時になるころには満席になり、十四時までは途切れずにお客さんが来る』

どことなくイメージができるかと思いますが、『北欧風のカフェ』は国内3店舗の一方で『系列店』には『赤と緑と白の看板を掲げたイタリアンレストランや安いことが売りの居酒屋やデザートに力を入れているファミリーレストランもある』というかなり大規模なレストランチェーンというのが組織の実態のようです。そして、主人公のメイは『北欧風カフェ』『キートス』で、副店長として店長を支えつつ店舗の運営を切り盛りしていく姿が描かれていきます。なかなかに気苦労が多い仕事のようですが、まとめるとそこには3つのドラマが描かれています。

 ・『問題を起こすようなミスはしない。仕事をなかなか憶えないくせに、頭はいいのか、適当に立ち回るのはとてもうまい』という新人の杉本への指導の中で『杉本君と話していると、大事にしてきたものを無神経に壊されている気分になる』と苦悩する姿を見せるメイの物語

 ・『大学生の子たちの試験やサークルの合宿、フリーターの子たちのかけ持ちしているバイトのスケジュール、諸々を考慮して作らなくてはいけない』というシフト作りに代表されるさまざまな人が働く職場の中で気配りを重視しなければならない副店長ならではの仕事に奔走するメイの物語

 ・『三年連続で、不合格になる人なんていない』と、『店長試験』に落ち続け、『このままでは、わたしは、四十歳になっても独身で副店長という不名誉な感じのパイオニアになってしまう』とこれからの自身の行く末を不安視する中に、自らの進むべき道を模索するメイの物語

まさしく”お仕事小説”の醍醐味を見せてくれる物語がそこに展開していきます。これは、リアル社会でも同じことでしょう。仕事のなんたるかを覚える時期を過ぎ、後輩の指導にあたりながら、会社員としてその先を見据える動きが見えてくる時代、それが30代だと思います。女性ならではの複雑な思いの先に悩みを深めていくメイ。そんなメイが”お仕事”の側面において結末でどんな姿を見せてくれるのか、これは間違いなくこの作品の一つの読みどころです。

そして、もう一つが”恋愛物語”としての側面です。主人公のメイには、高校時代から十年にわたって付き合ってきた男性がいました。それこそが、フウちゃんと呼ばれる男性・風太の存在です。『フウちゃんと付き合っていたころは、結婚したいと思っていた』と過去を振り返るメイ。半同棲という時代を過ごしてきたメイは、『フウちゃんと結婚して子供を産むという未来を、一度も疑わなかった』という思いの中に生きていました。しかし、あることが原因でそんな時代は一気に終わりを迎えます。

 『わたしはどうして、フウちゃんと結婚したいと考えていたのだろう。フウちゃんは、わたしにとっても、結婚を現実的に考えられる相手ではなかった。結婚しようと言い合っても、子供のままで、ままごと遊びをしているようだった』。

そんな風に過去を振り返るメイは、だからと言って新たな恋に踏み出すこともできない今を生きています。

 『結婚したいのか、子供が欲しいのか、よくわからない』

高校時代からの友人であるみっちゃんに『考えるだけじゃ駄目なの。行動しないと。あっという間に、四十歳になっちゃうよ』と言われるメイですが、自分が何をすべきなのか、何をしたいのかがそもそもわからなくなっていきます。

 『恋人がいたから、結婚したい、子供を産みたいと思っていたのであり、わたしひとりでは、どうしたいとも考えられない。その可能性を考えられる相手もいないのに、結婚や出産を望むのは、おかしい気もする』。

そんな風にある意味で自身の置かれている立場を冷静に分析してもいくメイは、『出会いがないわけじゃない』と、『店長や杉本君の他に、羽鳥先生や鯨岡さんというお客さんもいる。大ちゃんの他にも男友達はいるし、マスターみたいによく行くお店の店員さんと話したりもする』という周囲の状況を見渡します。しかし、

 『考えて悩んだところで、誰もわたしのことを好きなわけではないから、話は進みようがない。そして、わたしは八年間、誰のことも好きになれなかった』。

結局のところ堂々巡りを繰り返すメイの姿が描かれていきます。これでは、読んでいてもどかしい思いが読者の側にも込み上げます。そんな物語は、漠然と恋の思いに悩むメイが、上記した通り、”お仕事”に奮闘する姿が描かれていきます。

 『子供を産むのも、店長になるのも、何をするのも、早い方がいい。でも、三十五歳では、もう遅いんだ』。

『三十五歳』 という、人生に思い悩む時代だからこそのさまざまな葛藤の日々を生きる主人公・メイのリアルな日常を描いていく物語。そんな物語は、主人公が悩みの中にいることもあって、なんとも鬱屈とした読書の時間が続きます。何事にもおいてもなかなか前に進まない、あまりにもどかしく、場面によっては腹立たしい思いを見せながら物語は展開していきます。そんな物語は、後半数ページになって一気に動き出します。後半数ページ、さらには後半数行に、それまで見えていた鬱屈とした世界が一気に別物に展開する驚き。読者の心をも幸せが包み込んでいく鮮やかな展開。ある意味で読者の大半が予想していたであろう展開にも関わらず、自然とあたたかいものが込み上げるその結末に畑野さんの上手さを改めて感じさせる、そんな”恋愛物語”がここには描かれていました。

 『いい人生とは、なんなのだろう。恋愛や結婚が全てではないと思っても、好きな人と一緒にいることがいい人生という気がする』。

そんな思いの先に続く主人公・メイの思いの丈を見るこの作品。そこには、”8年ぶりに、恋をした”というメイの揺れ動く内面が丁寧に描かれていました。カフェの副店長の”お仕事”のリアルを見るこの作品。”恋愛物語”の味わいを堪能するこの作品。

『三十五歳』という複雑な思いが交錯する時代のリアルを鮮やかに描き出す素晴らしい作品でした。

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2025年06月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

縁もゆかりもない地への転勤か独立かの二つの選択肢がある中で、転勤を選ぶ主人公は初めて見たかもしれない。でもメイちゃんらしい選択だなと思った。適度に流されつつその中で幸せを模索する感じが好き。スーパーウーマンの女性主人公には疲れてしまうことも多いから、ある意味平凡な女性像を描いたこの物語には励まされた

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2024年11月08日

Posted by ブクログ

自分のやりたいもの、なりたいことを見つけ、周りの環境や人に真摯に向き合い、悩み、もがいた先に光が見える世界が広がっている可能性を不器用な主人公を通して描いていると思った。恋が全てじゃない、でも時間って有限かもしれない。今自分の中にある矛盾の一例を見れた気持ち。

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2024年07月15日

Posted by ブクログ

年齢とともにあがる恋愛の難しさ、周りの恋愛・結婚・出産への焦燥や、「誘いにくくなってしまった」という寂しさ、人を好きだと感じる喜び…様々な感情の描写がリアルで、苦しいほどに共感した。いつの間にか恋愛をしていること、既婚、子持ちが社会的ステータスのようになって、それらがないだけで「恋人は作らないの?」「いつ結婚するの?」「子どもが欲しいとは思わないの?」と周りは身勝手に詮索してくる。恋愛をしていないからこそ得られる幸せもあるし、自分にしか分からない恋愛への不安や恐怖だってあるというのに、恋愛で苦しむ彼らは恋愛至上風情だ。なにより、出産にはタイムリミットがあること、年を重ねるほど相手が見つかりにくくなっていくことなんて、人に言われる前に自分が1番分かっている。1番言われたくないこと、自分でも分かっているのにどうしようもできないことを、話のネタ程度の適当さで指摘されるのは辛い。
みっちゃんは羽鳥先生を「普通の男じゃない」と評し、「もっと普通な人を探しなよ」とメイに言った。たしかに羽鳥先生はたった一度の恋を引きずりすぎていたかもしれないし、普通じゃないかもしれない。けれどメイだってフウちゃんから先に進めない「普通じゃない」女性かもしれない。「普通な人」を選ぶのは難しい。人はみんな「普通」より度合いが高いものと低いものを組み合わせた結果外見や性格が構成されている。つまり皆どこかしらは「普通じゃない」し、普通な人が仮にいたらそれは「つまらない」「没個性」と言われてしまう。普通じゃないから面白いし、普通じゃないから普通じゃない自分と噛み合う相手がいる。恋愛なんてそんなもので、一緒にいたいと思える人、欠点を補い合える人を求めればいいのではないか。欠点がある人だから欠点をさらけ出せるし、長所を称えあえるのではないだろうか。

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2024年06月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

35歳になったメイ。周りは子持ちで、親友のみっちゃんも婚活ばかり。当分は結婚しないと思ってた大ちゃんも若い奥さんと突然結婚。でも当のメイは十年前に別れたふうちゃんのことが忘れられず彼氏もできない。そこで羽鳥さんにあったことをきっかけに、店長試験を受け前に進む。

店長試験という非日常な成功に輝くメイを見て大人になっても前に進むことの大切さと、中学生の恋をしているメイを見て20代のうちにしっかり恋愛しなきゃとおもった。でも、マイペースに生きているメイを見て結婚するのは、特に男の場合はまだまだ焦らなくていいんじゃないかなとも思った。博士進んだら卒業する頃には28で遅いなって思ったけど、よみおわったまだまだ全然20代じゃんって感想。

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2024年05月12日

QM

購入済み

読みやすい

主人公の人柄も登場人物も、みんなそれぞれの悩みも全然ありふれたもので、自分の周りにもこういう人いそうだ~!と思いながら読んだ。人それぞれ色んな過去、生き方と夢があって、十人十色が当たり前なのについ忘れがちな世の中(結婚出産出世などに関しては相手にその気がなくても勧めてしまう)だけど、もっと自分に正直に生きていきたいね。かっこわるくても。面白かったです😊

#癒やされる

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2024年03月22日

Posted by ブクログ

35歳、独身女性の止まっていた時が動き出す。仕事でも恋愛でも、その時が来たら歯車が急に動き出すことがあるけど、今まさにその転換点を物語通して見ることができて、あったかもしれない人生の追体験。
最初からメイちゃんの心配はしてなかったけど、正直言って、みっちゃんは心配。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

30代半ばの独身女性メイが仕事、恋愛、自身の将来に向き合い、悩みながら少しずつ自分なりの答えを見つけていく過程が描かれた小説。

ジャンルは恋愛小説となっていましたが、物語のメインはメイの内面の成長だと思いました。恋愛要素は少しのスパイスという位置付けです。

周囲が変化していく中で、自分だけが取り残されているんじゃないかと焦りや不安を感じたり、自身の結婚観や、仕事、人との関わり方を見つめ直す。この年齢の心境がリアルに描かれていて、メイと歳が近ければ共感する部分が多そうです。

恋愛面は奥手でなかなか進展しないやり取りがとても可愛らしく、微笑ましい気持ちになります。
人生のターニングポイントにいるメイを応援したくなる作品でした。自分も頑張ろうと背中を押された気分です。

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2025年10月25日

Posted by ブクログ

メイの悩みがとても共感できる。

メイの等身大の悩みは、自分が感じてきた悩みと同じところもあり、身に沁みた

羽鳥先生は少し怖い気がするが大丈夫だろうか。

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2025年09月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

P40 "恋人がいたから、結婚したい、子供を産みたいと思っていたのであり、わたしひとりでは、どうしたいとも考えられない。その可能性を考えられる相手もいないのに、結婚や出産を望むのは、おかしい気もする。"

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

葛城メイ、35歳独身。
メイは命と書く。
父親は「僕の命」と言って育ててくれたが、ある日家を出ていった。
母親も病を得て逝ってしまった。
学生のころから付き合っていた恋人がいたが、別れることになってしまった。
いま、頼れるのは友人のみっちゃんと、大ちゃんだ。

メイはカフェの副店長として働いている。
お店の仲間やお客さんとの交流は、時々イラッとするがそれなりに充実している。
そんなメイに訪れた久しぶりの恋の予感。

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2025年05月04日

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35歳独身の都内カフェ店員(副店長)、彼氏無しのメイが主人公。社員として飲食チェーン店に勤めているが、将来の展望があるような、ないような宙ぶらりんの状況。若い人に『目標は何ですか?』と詰められるが、答えるほどの何かの目標を持っているわけでもない。何となくわかるなあ。

僕も流通業の会社には入ったが、『店長になりたいか?』『将来は何になりたいの?』と聞かれても明確な答えは自分に無かった。『僕は○○屋です(でした)』と明確に答えられる人をある意味では羨ましく思った。

メイは同級生、元カレ、同じ店の同僚、常連さん…いろんな人に囲まれながら毎日を過ごし、店長試験をいろんな人の協力で4度目でやっと受かる。そして、札幌のお店の店長として辞令を受け、東京から旅立つ。

テレビドラマ化するには、ドラマチックなこと、ドロドロとした怨みなどがあることなく、緩い日常の連続ではあるが、これはこれでいい話だったなあ。

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2025年04月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

恋愛小説は苦手なのに35歳独身というワードに惹かれて購入。結果、読んでよかった。両頬を思い切り平手打ちされたあと、背中を思い切り叩かれる気分。
最初の方は主人公メイちゃんの環境に共感とイライラに襲われ(父親はずっと最低だし新入社員も最初は超いけすかない!)ぐあああああってなってたけど、ページをめくる手は止まらなかった。文章がうまいというより共感力で読ませる感じ。
メイちゃんの等身大の悩みとか、その中でも自分にできる一歩を踏み出す勇気とか、踏み出しすぎて逆に爆死する痛さとか、も~~~~~ぜんぶわかるわかるわかるってなった。
あとみっちゃんが幼馴染の男の子の結婚に号泣した気持ちも痛いほどわかった。自分のことを熱烈に好きな相手って、ずっと好きだって思うよね。はああ黒歴史。
わたしもこれから独身と既婚子持ちの絶対に埋まらない溝も、35歳独身の立ち位置も、じわじわと味わっていくんだなぁ……
でも最後の一文は拍手喝采。これで終わるの最高すぎる。わたしも一歩踏み出してみようかな。

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2025年03月21日

Posted by ブクログ

恋愛から遠ざかり、仕事での中途半端な立ち位置に悩む主人公メイ__
昔思い描いていた"大人"と今の自分が違ったっていい。若い頃の煌めきを懐かしく思いながらも、過去に戻りたくはない。年齢を重ねて得た確かなものを大事に抱えて、少しずつ進んでいく姿が素敵だった。

メイと羽鳥先生の初々しさを感じる恋愛も良かった。普通じゃなくていいんだよ!

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2025年02月17日

Posted by ブクログ

心身共に一応健康で働いて一人暮らしして親友もいて、それだけで幸せと思えたらいいのに「普通」に縛られて苦しくなるんだよな、、でもメイは少しずつでも前に進んで人生が好転していってる。最後も意外とドラマチックな展開で後味がよく素敵な物語だった。

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2025年01月30日

Posted by ブクログ

畑野さんの作品初めて読みました。
自分と同世代なのでとても共感しました★
メイちゃん強い人だなと思います。
きちんとした目標がなくてもしっかり生きてる。
羽鳥先生の言葉も素敵でした!
今後の展開も気になります♪

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2024年10月01日

Posted by ブクログ

恋愛を拗らせまくってる時に読んだから、違う環境にいる時にまた読んだら違う感想が生まれそう。
恋とか愛とか付き合うとか結婚するとかじゃない優劣のない好きっていう感情があるよなぁ。
登場人物各々の「好き」の大事の仕方が違う様が書かれた作品だな、と思った。
急いで読んでしまったから次はゆっくり読みたい。

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2024年07月09日

Posted by ブクログ

国道沿いのファミレスでと同じ作者さんの本で気になって買ってみた〜
なんかところどころ似たような表現があった気する
この作品は特に激動があるわけでもなく超絶ハッピーエンドで終わるわけでもなく起承転結が弱い作品だけど、どこかにいる誰かの日常を覗き見してる気分になった

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2024年06月15日

Posted by ブクログ

大人になったら、
こうするって考えていたことは
あたりまえじゃなくて、
普通でいるって難しい。
自分一人でなんとかできないことは苦手。
公式は作れる!

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2024年06月10日

Posted by ブクログ

35歳独身女性の日常を小説にしようとしたら、たいていこうなるだろうなと思われるような設定。みっちゃんのような女友だちもいがち。
でも飽きることなく読んでしまったのは、ほんとにリアルだから。
結婚に焦っているわけでもないけど、このまま仕事をバリバリやるぞという気概に満ちあふれているわけでもない。出産できる年齢は限られているから悩んでしまうけど、行動を起こすわけでもない。
子育てに追われている友だちを見ると幸せそうに思えるが、そうなりたいわけでもない。
今の生活も十分に楽しんでる。でも何か忘れ物をしている気になる。
フツーに生きてきました。これの何がいけなかったのだろうと考えてしまう。
一生の問題なのに、結局は縁とかタイミングという言葉に終着しそうで、それも納得いかない。

飲食業界のことも知れておもしろかった。

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2024年06月09日

Posted by ブクログ

35歳独身女性の主人公に、年齢も環境も全然違うのにとても共感しました
話にぐいぐい引き込まれていって、わかる、わかると思って読んでました
作者の筆力なんでしょうね
いいところで終わってしまって、その後が気になります

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2024年09月16日

Posted by ブクログ

耳をすませばを高校生の時に観て、大人になったら小説家になると決めて小説家になった作者
私も綺麗な日本語を書く小説家になりたいと思った時期があったことを思い出した

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2025年09月18日

Posted by ブクログ

大人になったらという題名 通り少しずつ大人になっていく女の子の物語です。
35歳という年齢で恋愛経験が少なく 自分がいつもいつまでも子供っぽいなって
悩みはあるけれど、素敵な友人囲まれて色々な思いに気づかされていく
同じ年代だったらもっと 共感できたかもしれない
でも女性としての悩みはなんとなくわかる
あー 自分もそうだったなって
素敵なハッピーエンドなんで読むと幸せになるかもです

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2025年08月06日

Posted by ブクログ

35歳の独身カフェ店長、全く共感ポイントないかなぁと思いながら読み進めていくと意外にもいつの間にか羽鳥先生の登場ばかり待って先を急ぎたくなり、その時にはメイに感情移入している自分に気づくのだった。元カレの思い出や、心の友や、いつでも行けるカウンター席のバー、必ず食べるメニュー(焼飯)、そして目指したかった目標とそれに向けてのオンプロセス、このお店使っていいよと言ってくれるパトロン?まで選択肢あり、ちょっと恵まれすぎでしょ〜と、子どもいて普通の(とは何か問題もあるが)結婚生活を送ってる側人間にしてみたら、彼女がとても輝いて見えた。しかも札幌での新生活!最期の春まで眩しかった。

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2025年05月14日

Posted by ブクログ

30代独身で抱える同世代への想いや焦燥感、将来の自分に対する漠然とした不安などが描かれていて、当時自分には言語化できなかった思いが詰まっていて共感する点も多かった。

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2025年01月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

35歳の誕生日を迎えた主人公の女性が、女性の正しい生き方とは?という問題に日々モヤモヤしながらも答えを見つけ出すお話。
高校の時から付き合っている彼氏と社会人になっても付き合っていて、そのうち結婚して子ども産んで…という王道のルートを当たり前に自分にも訪れると思っていた主人公は、彼との失恋により王道のルートからは外れ、35歳になっても彼氏はおらずこのままだと結婚も出産もしない「普通」ではない人生を歩むのかと不安になったりする…いやいや、結婚するのも出産するのも普通じゃないから。そもそも普通の生き方ってなんだ?。
仕事も仕事で、そこまで力を注ぐわけでもなく…後半で少し動きはあるけどもう少し意識持って働けーって私は思ってしまったけど、多分主人公みたいな感じの働き方をしてる方には共感されると思う。
特に大きな事件も出来事もなく、主人公の日々を見守る感じのストーリーに私は少し退屈してしまった。

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2024年10月30日

Posted by ブクログ

大ちゃんが結婚できて良かった。
恋愛対象じゃないけど結婚できなかったらキープというみっちゃんの気持ちは片想い男子に失礼だなぁと思いつつ、自分を好きな人ずっと自分のこと好きって思ってしまうのは男女一緒なのかなぁと共感もある。

若い頃の好きって衝動は強いし加齢すればするほど10代のようには動けないと思う40手前な今日この頃

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2024年10月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本屋さんで絶賛のポップがあり惹かれて読んでみる。

働く女性なら、メイちゃんに共感できるとこがたくさんあるなと感じた。
友達関係や仕事関係に恋愛。どれもなかなかうまくいかず悩むことはあるけど、自分の強い意志といい人たちに囲まれて幸せを掴もうとしているメイちゃん、素敵!と思えた。

なんだけど、、常連の羽鳥先生はちょっと拗らせすぎというか、、、最終的にはストーカーのように思えてしまいなんだか微妙でした(;;)

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2024年10月06日

Posted by ブクログ

共感できるかと思いきや、できず!!
ポイントとなる働く女性の心情がズレてたように感じた。
後輩社員のイケメン杉本くんはなんかイケメン帰国子女だから許されただけなの?デリカシーなさすぎコミュ力なさすぎでさすがに最後まで受け入れられなかった。

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2024年09月30日

Posted by ブクログ

ただただ、共感。
何にも解決していないのだけれど、時は止まらず、少しずつ変化して、流れていく感じ。
色々悩んで、考えて、何が最善かわからなくて、このままで良いのかなというもどかしさ。
周りと比べる必要はないのに、勝手に比べて、優劣、勝ち負けを決めてしまう。
それでも少しずつ進んでいるそんな話。

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2024年08月21日

Posted by ブクログ

恋愛小説というよりは仕事とか人間関係が中心で、ヒューマン小説って感じだったかな。
内容があまりにリアルすぎて「ああぁぁ〜…」って考えさせられることもしばしば…。
仕事かぁ…仕事ねぇ…。

遠くに転勤するのってすごいなぁ…私この歳になっても地元にかじり付いてる、楽なんだもん。(笑)

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2024年07月05日

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