池谷裕二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第23回小林秀雄賞
脳科学、めちゃくちゃおもしろい!!
哲学や倫理の話に発展したり、宇宙が関係したりと奥が深い。
著者が栄光学園高校の選ばれし10名にした3日間の特別講義の記録なので、対話形式で柔らかくまとめてあり、かつ細かく節を区切って様々な解説をしていてかなり充実した内容。
特におもしろかった話
・人工知能を使って本来もっている脳の能力を覚醒、活用することができる(LとRの発音の聞き分けや、絶対音感)
・人間の脳は睡眠状態がデフォルトで、繁殖や食事のために起きて行動する
・生きがいは人の不完全さから生まれる
・強いシナプスと弱いシナプスが存在する意味
弱いのがいるおかげで長い過程での変化に適応できる
・困難な方が記憶に残る(読みにくい字など)
・記憶があるから時間を感じることができる
669ページと長いけど、節ごとにタイトルがついていて、気になる項目だけ読むこともできるのでお勧め。
3日間の講義が1〜3章に分かれて、1日目は76節、2日目は79節、3日目は100節!
目から鱗の雑学をたくさん知れました。 -
Posted by ブクログ
小林秀雄賞、本当にどれもハズレがない笑。
面白く、わかりやすく。高校生の時に読んだらきっと、世界が変わって見えただろうと思う。あくまで脳というハードウェアに規定されている以上、人間が見ているものは"真実"ではなく、解釈であること。「私」という存在は現象であること・人間はすぐストーリー(フィクション)を作り出し、そこに囚われていることをすぐ忘れてしまうこと、もしかしたらこの世界はシミュレーションされたものにすぎないのかも…といったどこそこで読んだことのある主張が、わかりやすく平易な言葉とストーリーで語られている。初めてこういった言説に触れたら、衝撃だろうなあ。私にもそのいつかはあったわけだけれど。
時間について、それは人間に記憶があり、かつ記憶が脆く移ろいゆくものだから、時間を感じる、という点メモ。
…脳の記憶が脆いものだったからこそ、時間の流れが、心のなかで生じたんだ。記憶が褪せなければ、時間なんてものは無意味な概念だ。つまり、この世のイメージを形作ってきた自身の歴史が、つまり、記憶によってまとめあげたこの世界の眺めが、その後、徐々に褪せていく様子のことを、僕らは「時間の流れ」と呼んでいるにほかならない。(p.157)
もし記憶があせずに完璧にあったら、というマウス実験で「時間が止まる」という結果が面白かった。過去の記憶が鮮やかすぎると、それが現在のものなのか直近なのか、過去なのか判別がつかないからだという。記憶が淡くならないのは、時間がないことと同義、なるほどだった。 -
Posted by ブクログ
1. 科学の本質と限界
科学者は仮説が「正しい」ことを証明できない。なぜなら、反例をすべて見つけることは不可能だから。
科学的態度とは「反例をひたすら探すこと」。
正しそうなことばかりを検証すると、バイアスの温床になる。
天動説でも地動説でも天体計算は可能。ただし、天動説は計算が煩雑なため、地動説が採用された。
科学は人間の理解可能な範囲内でしか成り立たない。人間の認知・計算能力が律速要因。
2. 視覚と運動の発達(動物実験)
猿の実験:生後一度も動いたことのない猿は、視覚情報を受け取れるにもかかわらず、物体を認識できない。
猫のゴンドラ実験:
2匹の猫が対になる仕組み。片方の猫は自分の足で歩き、もう片方(ゴンドラ猫)は移動だけする。
どちらも移動量・方向は同一だが、歩いた猫だけが視覚を獲得。ゴンドラ猫は視覚を獲得できない。
⇒能動的運動が視覚認知に必要不可欠。
3. 記憶と時間感覚
人間は記憶が徐々に薄れることで時間の流れを感じている。
遺伝子操作された天才鼠:一度覚えたことを一切忘れない。
問題点:過去の餌場と現在の餌場を混同し、行動が最適化されない。
⇒記憶の消失は「不要情報を過去と判断する」ために必要な機能。
4. 感覚と脳の可塑性
感覚野の神経細胞は一対一対応が時間とともに変化し、異なる刺激に反応するようになる。
離人症とは「現実の中にいる感覚の喪失」。脳の島皮質の機能低下が原因。
島皮質=情報ハブ。身体からの信号が脳に伝わらなくなると、現実感が喪失する。
5. 睡眠の進化論
植物は常に眠っているような状態。
動物は「起きるように進化」した。眠るのがデフォルトと考えるべき。
6. 条件付けと脳の反応制御(報酬とトラウマ実験)
赤色の錯覚実験:
モノクロの縞模様を見ているとき、脳内に赤色の信号が出た瞬間に報酬を与えると、その縞模様が赤く見えるようになる。
トラウマ克服実験:
縞模様提示 → 電流でトラウマ形成 → 後に縞模様の脳活動に報酬 → 縞模様=快に変化 → 寧ろ縞模様に近づくようになる。
⇒ 意識的に説明していないのに、脳の学習が起こる点が興味深い。
7. 人工知能と学習理論
deep learningと人間の学習の共通性:
困難学習:難しいほど記憶定着(例:ノイズ・書き損じ付き教材)。
地形学習:正解以外も含める(例:6を学ぶ際に、歪んだ6や似た数字の5も学習)。
交互学習:一つのブロックを完結させず、他ブロックと交互に学ぶ。
8. AI vs 人間の判断力
人間の強み:少量の情報で推論可能。
AIにバイアスを設計し少量データで判断させた→判断可能になったがミス増加。
⇒ 意味がない。AIは人間ができないことをやるべき。
9. 生物・社会現象の分布モデル
コントラフリーローディング:
努力なしで得る報酬よりも、努力して得る報酬を好む性質。
多くの動物に見られる(例外:猫)。
ランダム再分配モデル(マクスウェル=ボルツマン分布):
所持金を無限に再分配すると、必ず富の偏在が起きる。
10. 脳内空間・概念のグリッド構造
嗅内野は60度の斜交座標系で空間を出力(90度でないのが特徴)。
この構造は、場所認知だけでなく、概念の配置にも応用される。
⇒ 人の心は「グリッド構造」に基づいている。
11. 色覚と信号の解釈限界
感知できる色が多くても、信号が混線しないと中間色は知覚不能。
例:シャコは多数の光受容体を持つが、信号が混じらず色の違いを理解できない。
12. 神経細胞・シナプスの構造と情報伝達
神経細胞の発火はシグモイド関数を用いた連続モデルで処理。
パッチクランプ法:微細ガラス管とイオン水で神経細胞の電流を測定。ノーベル賞技術。
シナプスの不安定性:
伝達が確率的
強度がばらつく
接続が強化/弱化する
強いシナプス上位20%が全情報の80%を伝達(パレート則)。
強いシナプスだけでは発火しない。どの経路を使うかは弱いシナプスが決定。
⇒ 魚のような単純動物は強いシナプスのみで行動決定→柔軟性がない。
13. 現実とは何か
指が増えても、それに対応した信号が脳に届けば自分の指と認識できる。
視覚信号を舌に入力すると、舌で「見る」ことも可能。
⇒ 人間は現実を見ているのではなく、脳内の刺激再構成された像を「現実」と認識している。
14. 非科学的とは?
非科学的=今の人間の脳では理解不能な現象。
脳の拡張によって理解可能になる可能性がある。
例えば可視光外の光を見れるようになれば、透視も実現可能。