読みだしてから朝の目覚めがよくなり、身体が元気になったような気がします。気持ちが前を向きます。とっても、おもしろかったです!
脳についての本です。脳について知ったり、考えたりすることは命、生きることにもつながっています。それで脳が活性化すると、身体も活性化するんでしょうか。
脳と言えば、すごい勢いで世界中で研究が進められているイメージです。普通の「脳本」は、そんな研究のなかから色々な研究事例が紹介される「解説本」だと思います。たしかに研究紹介もありますが、この本はちょっと違います。
著者の池谷裕二(いけがや・ゆうじ)さんは、「脳」そして「人工知能」の研究者です。だからご自身の研究成果も書かれていますが、本書は「特別」なのです。
それは、池谷さんが日々の研究で考えたこと、「洞察」されてきたこと、それをメインメッセージとして書かれていることです。個々の研究紹介は、そこに至る道筋です。
本の「おわりに」のあとのページに、「本書を読んで迷子になった方へ」と書いてあります。池谷さんが作成された本書の「見取り図」にアクセスできるQRコードが載せられています。
この「見取り図」をみてちょっとびっくりしました。
ナンバリングされた各章の略したタイトルが四角で囲まれ、全体でみると約80個が「ハート形」に配置されています。たぶん脳の形も意識されています。
その「四角」を、脳の神経回路みたいに関連する項目同士が線で結合されているんです。
この本は、高校生脳講義シリーズ三部作の完結編とのことです。前作『単純な脳、複雑な「私」』から10年の時間をかけて準備されたそうです。
準備に取り掛かった池谷さんは、考えに考え抜かれたのでしょう。この「見取り図」をみればわかります。
池谷さんが講義をはじめる前の部分、17ページに「メビウスの輪を巡る旅」と書かれています。読み終わって感じるのは、この本はまさに「メビウスの輪」だったな、といことです。
メビウスの輪は、表と裏がつながっています。一辺分まわると出発点の裏側に、もう一辺分まわると元の出発点、つまり原点に戻ります。
その象徴的フレーズがタイトルにある「夢を叶えるために脳はある」です。「講義の旅」がはじまり、巡り巡ってまた原点に戻ったとき、池谷さんが考えた、その言葉の意味の表と裏を知ることになります。
脳の本と言えば、頭をうまく使うとか認知症予防の方法なんかのhow-toを期待してしまいます。
でもこの本にはあてはまりません。
「メビウスの輪を巡る旅」のとおり、原点に戻り、how-toは残らないかもしれません。しかし、役に立つかわかないですが、新たな「視点」は得られます。脳、生命、宇宙についての視点です。「旅」から戻ってきたわたしは、自分が微妙に変化しているのに気づきました。
わたしに起こった変化について言えば、頭蓋骨の暗闇に閉じ込められた自分の脳を想うようになったこと、そして、ときどき自分の心や意識にたいして「おまえは誰だ?」と問うようになったことでしょうか(笑)
講義の最後に「補講」が追加されています。そこで人工知能の仕組みを解説されています。17ページほどです。
内容は、信号機の赤、黄、青の色をみて止まるか進むかを判断する人工知能作りです。
こうなってるんだ!シンプルなので分かりやすいです。