あらすじ
累計43万部突破!ベストセラー『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』に続く、高校生への脳講義シリーズの最新刊がついに刊行。
なぜ僕らは脳を持ち、何のために生きているのか。
脳科学が最後に辿り着く予想外の結論、そしてタイトルに込められた「本当の意味」とは――。
なぜ脳は存在するのか、僕らはなぜこんなに大きな脳を持ってしまったのか、時間はなぜ存在するのか、この世界は現実なのか、人工知能にとって人間とはなにか、私とはなにか――
数々の問いを巡らせていくと、全てがつながり、思いもよらない答えを導く。
人気脳研究学者である著者が、3日間にわたっておこなった圧倒的迫力の講義録。
「というわけで、「ああ、そうか、ならば生きなくては」と僕は感じる。能天気なヤツかもしれない。
君らはどうかな。そうは感じないかな。
僕はね、どうせ生きるんだったら、せっかくなら楽しく生きようよ、と思わずにはいられない。だって、生きているだけで役に立っているんだよ。そんなシンプルな喜びって、他に何があるんだろう。
そうした生命の本質的な原理を、脳の研究をしながら、強く感じる」(本書より)
「いま一番思い入れがあって、一番好きな本」と自らが語る、渾身の一冊。
本書でシリーズ完結となる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
脳に関する本はまあまあ読んでる方だと思うし、池谷裕二氏の著書も何冊かは読んでいる。
この本はAIのことにも触れていて、その意味でも面白く、何よりも「人間の存在の意味はエントロピー増大にあるのではないか」との仮説は初めて見聞きしたもので、驚きでもあり、興味深く、それだけでも読んだ甲斐があったと感じた。
Posted by ブクログ
池谷先生の「脳講義シリーズ」の第3作目にして最終作。
1,2作目はちゃんと読んでたんだけど、あんまり連作というイメージが無かったな…。
全600ページ超とだいぶボリュームがあるんだけど、対話形式だからか意外とスルスル読めたり。池谷先生の平易な語りが良く作用していたなー。
脳科学に興味がある人間ならだれでも知っていることだけど、私たちは外の世界をそのまま正確に知覚しているわけではない。私たちに知覚できるのは私たちの感覚受容器の範囲のものであり、私たちに認識できるのは脳がそれを再構成した仮の世界でしかない。
そうした脳の働きを紐解きながら、その拡張性をAIという形で叶えられるかもしれない、というのが本作の基礎構成かな。
脳科学の本は結構読んできたけど、宮沢賢治の『春と修羅』を引用したのが今回が初かも。そうそう、「私」とは何かと問われると、結局宮沢賢治が語ったように「現象」としか答えられなくなるんだよ。
渦という現象を科学的に記述しようが、それは説明したことにはならない。なぜなら渦から要素を抜き出して、それを数学的に配置しただけだからだ。(私とは何か、に対して「タンパク質の塊」と答えるようなものだ。間違ってはいないが本質ではない)
あと初めて知ったのは、脳は強いシナプスと弱いシナプスがあって、その二つがあるからこそ決まりきったルートを通るわけではない…という点かな。
強いシナプスだけなら反射する機械になるし、弱いシナプスだけならそもそも反応しない。この2つがあって初めて、(おそらく自由意志と呼ばれるような)生物の自由さが生まれるのだろうなぁ。
というか、合の手をキチンと入れている高校生の頭の良さスゲーな。
自分が高校生の時、たぶんここまでしっかり理解できてなかったと思う…。
Posted by ブクログ
第23回小林秀雄賞
脳科学、めちゃくちゃおもしろい!!
哲学や倫理の話に発展したり、宇宙が関係したりと奥が深い。
著者が栄光学園高校の選ばれし10名にした3日間の特別講義の記録なので、対話形式で柔らかくまとめてあり、かつ細かく節を区切って様々な解説をしていてかなり充実した内容。
特におもしろかった話
・人工知能を使って本来もっている脳の能力を覚醒、活用することができる(LとRの発音の聞き分けや、絶対音感)
・人間の脳は睡眠状態がデフォルトで、繁殖や食事のために起きて行動する
・生きがいは人の不完全さから生まれる
・強いシナプスと弱いシナプスが存在する意味
弱いのがいるおかげで長い過程での変化に適応できる
・困難な方が記憶に残る(読みにくい字など)
・記憶があるから時間を感じることができる
669ページと長いけど、節ごとにタイトルがついていて、気になる項目だけ読むこともできるのでお勧め。
3日間の講義が1〜3章に分かれて、1日目は76節、2日目は79節、3日目は100節!
目から鱗の雑学をたくさん知れました。
Posted by ブクログ
小林秀雄賞、本当にどれもハズレがない笑。
面白く、わかりやすく。高校生の時に読んだらきっと、世界が変わって見えただろうと思う。あくまで脳というハードウェアに規定されている以上、人間が見ているものは"真実"ではなく、解釈であること。「私」という存在は現象であること・人間はすぐストーリー(フィクション)を作り出し、そこに囚われていることをすぐ忘れてしまうこと、もしかしたらこの世界はシミュレーションされたものにすぎないのかも…といったどこそこで読んだことのある主張が、わかりやすく平易な言葉とストーリーで語られている。初めてこういった言説に触れたら、衝撃だろうなあ。私にもそのいつかはあったわけだけれど。
時間について、それは人間に記憶があり、かつ記憶が脆く移ろいゆくものだから、時間を感じる、という点メモ。
…脳の記憶が脆いものだったからこそ、時間の流れが、心のなかで生じたんだ。記憶が褪せなければ、時間なんてものは無意味な概念だ。つまり、この世のイメージを形作ってきた自身の歴史が、つまり、記憶によってまとめあげたこの世界の眺めが、その後、徐々に褪せていく様子のことを、僕らは「時間の流れ」と呼んでいるにほかならない。(p.157)
もし記憶があせずに完璧にあったら、というマウス実験で「時間が止まる」という結果が面白かった。過去の記憶が鮮やかすぎると、それが現在のものなのか直近なのか、過去なのか判別がつかないからだという。記憶が淡くならないのは、時間がないことと同義、なるほどだった。
Posted by ブクログ
義務教育または一般教養に取り入れてもらいたい著者の1人である池谷氏の三部作の三冊目。
期待を裏切らない最高の読書体験ができた。
哲学や宗教とも融合する科学の視点は最高過ぎました。
Posted by ブクログ
1. 科学の本質と限界
科学者は仮説が「正しい」ことを証明できない。なぜなら、反例をすべて見つけることは不可能だから。
科学的態度とは「反例をひたすら探すこと」。
正しそうなことばかりを検証すると、バイアスの温床になる。
天動説でも地動説でも天体計算は可能。ただし、天動説は計算が煩雑なため、地動説が採用された。
科学は人間の理解可能な範囲内でしか成り立たない。人間の認知・計算能力が律速要因。
2. 視覚と運動の発達(動物実験)
猿の実験:生後一度も動いたことのない猿は、視覚情報を受け取れるにもかかわらず、物体を認識できない。
猫のゴンドラ実験:
2匹の猫が対になる仕組み。片方の猫は自分の足で歩き、もう片方(ゴンドラ猫)は移動だけする。
どちらも移動量・方向は同一だが、歩いた猫だけが視覚を獲得。ゴンドラ猫は視覚を獲得できない。
⇒能動的運動が視覚認知に必要不可欠。
3. 記憶と時間感覚
人間は記憶が徐々に薄れることで時間の流れを感じている。
遺伝子操作された天才鼠:一度覚えたことを一切忘れない。
問題点:過去の餌場と現在の餌場を混同し、行動が最適化されない。
⇒記憶の消失は「不要情報を過去と判断する」ために必要な機能。
4. 感覚と脳の可塑性
感覚野の神経細胞は一対一対応が時間とともに変化し、異なる刺激に反応するようになる。
離人症とは「現実の中にいる感覚の喪失」。脳の島皮質の機能低下が原因。
島皮質=情報ハブ。身体からの信号が脳に伝わらなくなると、現実感が喪失する。
5. 睡眠の進化論
植物は常に眠っているような状態。
動物は「起きるように進化」した。眠るのがデフォルトと考えるべき。
6. 条件付けと脳の反応制御(報酬とトラウマ実験)
赤色の錯覚実験:
モノクロの縞模様を見ているとき、脳内に赤色の信号が出た瞬間に報酬を与えると、その縞模様が赤く見えるようになる。
トラウマ克服実験:
縞模様提示 → 電流でトラウマ形成 → 後に縞模様の脳活動に報酬 → 縞模様=快に変化 → 寧ろ縞模様に近づくようになる。
⇒ 意識的に説明していないのに、脳の学習が起こる点が興味深い。
7. 人工知能と学習理論
deep learningと人間の学習の共通性:
困難学習:難しいほど記憶定着(例:ノイズ・書き損じ付き教材)。
地形学習:正解以外も含める(例:6を学ぶ際に、歪んだ6や似た数字の5も学習)。
交互学習:一つのブロックを完結させず、他ブロックと交互に学ぶ。
8. AI vs 人間の判断力
人間の強み:少量の情報で推論可能。
AIにバイアスを設計し少量データで判断させた→判断可能になったがミス増加。
⇒ 意味がない。AIは人間ができないことをやるべき。
9. 生物・社会現象の分布モデル
コントラフリーローディング:
努力なしで得る報酬よりも、努力して得る報酬を好む性質。
多くの動物に見られる(例外:猫)。
ランダム再分配モデル(マクスウェル=ボルツマン分布):
所持金を無限に再分配すると、必ず富の偏在が起きる。
10. 脳内空間・概念のグリッド構造
嗅内野は60度の斜交座標系で空間を出力(90度でないのが特徴)。
この構造は、場所認知だけでなく、概念の配置にも応用される。
⇒ 人の心は「グリッド構造」に基づいている。
11. 色覚と信号の解釈限界
感知できる色が多くても、信号が混線しないと中間色は知覚不能。
例:シャコは多数の光受容体を持つが、信号が混じらず色の違いを理解できない。
12. 神経細胞・シナプスの構造と情報伝達
神経細胞の発火はシグモイド関数を用いた連続モデルで処理。
パッチクランプ法:微細ガラス管とイオン水で神経細胞の電流を測定。ノーベル賞技術。
シナプスの不安定性:
伝達が確率的
強度がばらつく
接続が強化/弱化する
強いシナプス上位20%が全情報の80%を伝達(パレート則)。
強いシナプスだけでは発火しない。どの経路を使うかは弱いシナプスが決定。
⇒ 魚のような単純動物は強いシナプスのみで行動決定→柔軟性がない。
13. 現実とは何か
指が増えても、それに対応した信号が脳に届けば自分の指と認識できる。
視覚信号を舌に入力すると、舌で「見る」ことも可能。
⇒ 人間は現実を見ているのではなく、脳内の刺激再構成された像を「現実」と認識している。
14. 非科学的とは?
非科学的=今の人間の脳では理解不能な現象。
脳の拡張によって理解可能になる可能性がある。
例えば可視光外の光を見れるようになれば、透視も実現可能。
Posted by ブクログ
読みだしてから朝の目覚めがよくなり、身体が元気になったような気がします。気持ちが前を向きます。とっても、おもしろかったです!
脳についての本です。脳について知ったり、考えたりすることは命、生きることにもつながっています。それで脳が活性化すると、身体も活性化するんでしょうか。
脳と言えば、すごい勢いで世界中で研究が進められているイメージです。普通の「脳本」は、そんな研究のなかから色々な研究事例が紹介される「解説本」だと思います。たしかに研究紹介もありますが、この本はちょっと違います。
著者の池谷裕二(いけがや・ゆうじ)さんは、「脳」そして「人工知能」の研究者です。だからご自身の研究成果も書かれていますが、本書は「特別」なのです。
それは、池谷さんが日々の研究で考えたこと、「洞察」されてきたこと、それをメインメッセージとして書かれていることです。個々の研究紹介は、そこに至る道筋です。
本の「おわりに」のあとのページに、「本書を読んで迷子になった方へ」と書いてあります。池谷さんが作成された本書の「見取り図」にアクセスできるQRコードが載せられています。
この「見取り図」をみてちょっとびっくりしました。
ナンバリングされた各章の略したタイトルが四角で囲まれ、全体でみると約80個が「ハート形」に配置されています。たぶん脳の形も意識されています。
その「四角」を、脳の神経回路みたいに関連する項目同士が線で結合されているんです。
この本は、高校生脳講義シリーズ三部作の完結編とのことです。前作『単純な脳、複雑な「私」』から10年の時間をかけて準備されたそうです。
準備に取り掛かった池谷さんは、考えに考え抜かれたのでしょう。この「見取り図」をみればわかります。
池谷さんが講義をはじめる前の部分、17ページに「メビウスの輪を巡る旅」と書かれています。読み終わって感じるのは、この本はまさに「メビウスの輪」だったな、といことです。
メビウスの輪は、表と裏がつながっています。一辺分まわると出発点の裏側に、もう一辺分まわると元の出発点、つまり原点に戻ります。
その象徴的フレーズがタイトルにある「夢を叶えるために脳はある」です。「講義の旅」がはじまり、巡り巡ってまた原点に戻ったとき、池谷さんが考えた、その言葉の意味の表と裏を知ることになります。
脳の本と言えば、頭をうまく使うとか認知症予防の方法なんかのhow-toを期待してしまいます。
でもこの本にはあてはまりません。
「メビウスの輪を巡る旅」のとおり、原点に戻り、how-toは残らないかもしれません。しかし、役に立つかわかないですが、新たな「視点」は得られます。脳、生命、宇宙についての視点です。「旅」から戻ってきたわたしは、自分が微妙に変化しているのに気づきました。
わたしに起こった変化について言えば、頭蓋骨の暗闇に閉じ込められた自分の脳を想うようになったこと、そして、ときどき自分の心や意識にたいして「おまえは誰だ?」と問うようになったことでしょうか(笑)
講義の最後に「補講」が追加されています。そこで人工知能の仕組みを解説されています。17ページほどです。
内容は、信号機の赤、黄、青の色をみて止まるか進むかを判断する人工知能作りです。
こうなってるんだ!シンプルなので分かりやすいです。
Posted by ブクログ
揺さぶられる。すごい読書体験。
記憶が全て。
不完全だからこそ楽しめる。
真実の相対性に備える。
「世の中は夢か現か 現とも 夢とも知らず ありてなければ」古今和歌集 読み人知らず
◯身体を使った経験がないと「見える」ようにならない
◯いま生き生きと感じているこの世界は、過去の自分から派生したもの
・海馬を切除するなど記憶が更新されないと心の時間は止まり、記憶を強化して過去と現在を混同するようになっても心の時間は止まる
◯記憶によってまとめあげられたこの世界を眺め、その後、徐々に褪せていく様子のことを、僕らは「時間の流れ」と呼んでいるにほかならない
・手が停止した「思索」と、手が動く「確認」という作業を、何度も繰り返しながら試行錯誤する。成績がよい人ほど、この往来がうまくできている。
◯寝ている状態が、生物にとっては普通の状態。動物は「寝る」ようになったのではない。「起きる」ようになった。
◯ヒトにとって「わかる」という行為は、そこになにかしらの秩序や類似性を見出すこと
◯科学とは、きわめてヒトくさい、ヒトの限られた思考の中で、ヒトならではの解釈を施す行為。分析や解析というのは、いわば、真実の歪曲化。
・人工知能と比べた脳の違いは「思い込み」の能力
・ダニング-クルーガー効果:できない人ほど自信過剰→だから成長する
・目的主導でも消去法でもいまある選択肢に限定→未知への適応力が求められる時代
・手段動機よりも内発動機のほうが持続的で成長するが、就職面接では手段動機で理論武装してしまう
・バイオフィードバック(状態の見える化)をするとコントロール可能
例)血圧、耳の動き
・楽しいことを考えると、やる気に関わる即座核が活性化(1分以上かけて明瞭に思い出す)
・知好楽:楽しむ力は大切by孔子
◯「好きこそものの上手なれ」ではなく、「下手こそものの楽しかれ」
◯生き甲斐は、ヒトの不完全性から生まれる
・自然淘汰だけでは説明できない進化。性淘汰?
・何かしら惹かれる秩序・規則
例)抽象画、音楽
・創発:系全体が安定化するプロセスで、自然に発生する部分的な秩序
・マクスウェル-ボルツマン分布:平等なルールをひたすら貫いて繰り返すだけで、偏った分布になる。これが安定した状態、系としてエントロピーがもっとも高い状態。
例)平等なトレードをひたすら繰り返すと「大金持ちはごく一部、その他大勢は貧乏」に行き着く
・自然界は六角形に行き着く
・ヒトは3色のセンサしかない。他の色は幻色=非スペクトル色
赤と青の光を混ぜて作った非スペクトル色の紫はマゼンタ
光スペクトル上の紫はバイオレット
というのも嘘→すべての色は様々な振幅、波長の光=電磁波
・白は「センサがすべて均等に刺激された状態」
ホワイトノイズ:ラジオの周波数があっていないときに聞こえる雑音
白い香り
・シグモイド関数:脳の認知の精度に合致
・生命は非平衡開放系であり、散逸構造の分子の渦
◯渦という構造は、そこだけを見るとエントロピー増大の法則に反して、矛盾した存在に見えるけれど、系全体としてエントロピー増大にしっかりと寄与している。
・実はこの世界も未来人がシミュレーションした仮想
→証明することも、否定することも、原理的に不可能
・脳の認知限界が科学の範囲
→科学の定義を変えるか
・ホジキン-ハックスレイ方程式:神経細胞の発火シミュレーション
→シナプスの強度のばらつきは対数正規分布
→20%のシナプスで80%の情報を運ぶパレート則
・強いシナプスだけではギリギリ発火に足りない
→弱いシナプスが必要
→脳の民主化
→すべての神経細胞が、なにかしらの強いシナプスに出入力を行っている
◯弱いシナプスと強いシナプスという二重システムは、脳の機能を、桁違いに柔軟にした。
◯自然を効率よく破壊するために、脳が発達した
→僕らは宇宙を老化させるために生きている
→生きているだけでもう役に立ってしまう
→ならば生きなくては
→せっかくなら楽しく生きよう
◯僕らに見える側面は、どれもが正しい、とも言えるし、あるいは、どれもが間違っているとも言える。そうやって、結局は、真実の相対性に帰着する。
Posted by ブクログ
三日間の講義録を編集したものなんだけど、これはかなり面白い。著者の本というと高校生のとき、だからもう20年も前に勉強方法についての本を読んでいてそれが結構記憶に残っている。その著者がこんな本を書いているというのがなんかすごいことに思うし、それを自分が読んで感動しているのもすごいことだなと。
最近の脳科学の知見というのももちろん知ることができたし、個人的に1番面白く感じたのは生命の目的が宇宙の老化を促進することだという仮説。生物体は負エントロピーを食べて生きている、環境から秩序を引き出すことにより維持されている。これはエントロピー増大の法則に反するが、たとえば排水口に生まれる渦なんかは非平衡開放系で生命と同じで、結果的にはいち早くエントロピーを増大させる。表紙が渦に考える人物があしらわれているのもそこからなんだろな。
他にもこの世界がポストヒューマンのシミュレーションである可能性が高いとする説を紹介していたり、脳科学に留まらずいろんな分野の研究を踏まえてどう生きるかを考えさせてくれた。
Posted by ブクログ
ボリュームは多いが、高校生への講義録ということもあり、簡単に読める。
内容は脳を中心として、脳機能、人工知能、人間とは?自分とは?といったことを丁寧に幅広く解説している。
自分が何者なのかを考えるきっかけとなった良い本。
Posted by ブクログ
著者の脳講義シリーズは三部作の全てがお勧めながら今回の完結編は全ての人にお勧めの大傑作。
3日間に亘る講義を近しい形で体験すべく、3日に分けて読み進めた。生徒の1人が感想で述べているように、最終日はこの講義が終わってしまうのが残念でならない気持ちでついページをめくるスピードが遅くなった。日々の生活がちっぽけに感じてしまうこともあるが、一方で人生の意味を考え、意義とモチベーション、そしてより良く生きる為の知恵を与えてもくれる。
Posted by ブクログ
精神論の話かと思いきや、自分の苦手分野がたっぷり詰まった内容だった。
そりゃ、この分厚さで精神論語られたら読むの疲れるな。
苦手だけど、とても知的好奇心が満たされるワクワク感じる秘密がたくさん。とても面白かった。
また今度読むときがくるだろう。
ピピピ信号で作り上げられてる世界なら、何か嫌なことがあっても、「ピピピ」の変換と思うと痛みも軽くなるかも。
運命の人に会ったとき電気が流れるって、一昔前そんな言葉を聞いたけど、これって案外科学に基づいてる?って思ったり。
高校生があんなに素晴らしい感想を言ってるのに、チープな感想だけれども
見取り図がハートってとこも⭐︎
脳に遊ばれて楽しく生きたい。
Posted by ブクログ
池谷裕二先生の脳に関する講義三部作の集大成。哲学を可視化すると科学になり、科学を昇華すると哲学になる。
高校生向けの授業形式のため内容は分かり易く、また、参加している高校生のレベルが高いため質疑応答がさらに高みの議論へと発展する。知的好奇心は大いに刺激され、SFが具現化しつつある未来にワクワク感が止まらない。
人工知能と脳との対比による仕組みや役割の理解、ディープラーニングを考察した結果のアノテーションの重要性、そして地球はエントロピー増大という第2法則に従って我々"動"物が存在という仮説。「わかった!」は永遠に訪れず、そして本書を読むと訪れない方がよさそうだが、「進化しすぎた脳」から15年足らずでここまで脳科学が進化していることに驚嘆。非常におすすめ。
Posted by ブクログ
高校生に語る脳の授業という話だ。
ただ、脳の話ばかりじゃなかったよなぁ。
脳の機能、心とのちがいは?とか、AIによって脳は拡張されるのかという話とか、さらには進化の話とか。
科学の話なんだけど、哲学的というか、思想的な印象をもった。
いろいろ考えを広げてくれた、ということだ。
正直、咀嚼しきれていない部分もある。
エントロピーの話から、え?と思うくだりがあった。
エントロピーというのは、放っておくと世界は雑然としていくというか、混沌に向かっていくという話だったと思う。
つまり自然、地球は混沌に向かいたがっている。
自然なままでは美しく調和がとれている地球。
そこに混沌をもたらすのが人間の存在だ、と。
人間は自然破壊もしてしまうけど、それが問題となるのはむしろ人間の側であって、地球は混とんに向かいたがっているのではないか、と。それを老化とも言っていた。
地球を老化させる存在として、人間はある、と。
だから、私たちは愚かな部分も含めて自分の存在を肯定できる、と。
読んでいるときは、ふんふんと読み進めていたが、あとからふと、俺なにか読み落としてないかと思えてきた。
俺の理解が、どこかでずれたんじゃないか。
地球の老化をすすめるために、というのは必ずしもわからないわけではない。でも、とりようによって、環境汚染を肯定しているように思えるところも、首をかしげる。
環境破壊も地球が望んでいることだから、と肯定するのは、ニヒリスティックじゃないか。
高校生相手に、目をキラキラさせている話題じゃないだろう。
ここは、俺が誤読しているのだと思う。
誤読もまた、読書だ。
いずれ、読み返して理解を深めたいところ。
読み返したとき、あぁ俺はそこを読み落としていたのか、と、著者がいうのはほんとはこういうことだったんだね、と赤面することになるだろう。
それまで、一応、自分の理解として書き留めておく。これもまた、読書の愉しみということで。
Posted by ブクログ
発売日(2024年3月)に購入し、しばらく本棚のインテリアとして背表紙を眺めていました。
脳科学の分厚い本ですが、読み始めると池谷氏のわかりやすい説明と、斬新な考え方に引きこまれページを捲る手が止まらなくなります。
「夢を叶えるために脳はある」という題名は平凡に感じましたが、読み終わると「そういう意味だったの?!」と印象が変わります。
ヒトの脳は思い込みで判断したり、過去の経験に基づいた推測が得意なんです。
みさなん おはよういござます
よしろく おねがしいます
こんな間違いだらけの文章だって、(無意識で)きっちり補正してしまいます。
AIだったら、この文章はどのように理解されるのだろうかと思います。
斬新な考え方では、次の発言が印象に残りました。
動物はなぜ眠るのか?と言う問いは設定が間違っている。
動物は「起きる」ように進化した。
視点を変えると、アプローチの方法に幅ができますね。
ヒトの脳は非常に発達しているが、物理的な限界があり実は大したことはない。
騙し合いのゲームであるポーカーで、人工知能がヒトに勝った。
人工知能は人の心を理解しているのか?
では、ヒト同士はよく理解し合っているか?
本質は、ヒトは思考範囲に限界があるので結果的に判断を間違える。
人工知能はあくまでも最適解を選択するだけで、心理戦などしていない。
ポーカーが楽しめるのは、ヒトの能力が低いからだとも言える。
ヒトの脳が大したことがないのは、ルールが明確な将棋や囲碁ですら人工知能の指す手がわからないことからも明らかである。
人工知能に対する理解を深めることは、ヒトの脳に対する理解を深めることに繋がる。
「わかった!」「なるほど!」は本人の自己陶酔にすぎない。
完了した感じが伴い、知識欲を減退させ、思考停止を招く。
ヒトは自分の理解の及ぶ範囲の中で「わかった!」を繰り返しながら知識や知恵を蓄積していく。
自分に都合よく世界を解釈する機能がヒトにとっての「心」であり、考えるというプロセスそのものだ。
人工知能がヒトには理解できない理論をみつけても、ヒトは信じる/信じないを決めるしかない。
ヒトの脳に理解できない論理は、「非科学的」説明に過ぎない。
例えば、1000年前の人にとって相対性理論は非科学的な説明。
科学はヒトの脳で理解するためのものだ。
池谷裕二さんは「生きているのはなぜだろう」という絵本を出している。
その絵本での答えが本書でも丁寧に説明されていた。
秩序のかたまりである生物は、エントロピー増大の法則に反する存在だ。
しかし、地球上に生命が生まれたのは、地球をより早くぶっ壊すためでエントロピー増大の法則に反していない。
個々の生物に注目するのではなく、全体から見ると秩序を壊す働きをしている。
ヒトは脳まで発達させて、効率よく地球を破壊することに勤しんでいる。
森林を伐採し、石油を採掘し、大気を汚染し、山を切り崩し、地下を掘り起こし、地球破壊に抜群の影響をもたらしている。
誰もが生きているだけで、宇宙の老化を早めるのに役立っている。
睡眠と覚醒
夢と現実
記憶と意識
などなど、いろんな話題が満載で、「脳」に関係した新しい発見や考え方に多く出会える本です。
人工知能の仕組みについての理解を深めるのにも役立ちました。
Posted by ブクログ
膨大な内容で、感想など一言で書けない。話題も多岐にわたるので、その時その時の読み手の状況で得るものも違うと感じた。自分は、生物としてのヒトが学ぶことの意味を改めて認識できたような気がする。厚い本なのでじっくり読むのがおすすめ。
Posted by ブクログ
池谷氏の脳に関する本の最新刊。
昔同氏の本を読んで大きな衝撃と感銘を受けた印象が残っている。
最新の知見を踏まえてどんな話が盛り込まれてるのか期待して手に取った一冊
メモ
•夢は見る というが、視覚時に反応する脳の部位、電気信号と付け合わせれば、夢で何をみてるか大まかにあてることができる。寝てる時、その日にあったことを脳は復習している
•脳AI融合プロジェクト 脳に人工知能チップを埋め込んだら、、
•相対音感によって認識の受容性を高めている
•自分の脳活動がみえてきれば、制御することはそれほど難しいことではない
•脳が他人の脳とつながるとどうなるか。
p111から
Posted by ブクログ
脳の活動は究極のところ脳細胞のなかでおきる電気反応だという話は知っていても、そこで「理解したつもり」になっていた自分が恥ずかしくなった。
本書は最新の脳科学や人工知能(機械学習)を平易に解説しながら、哲学的なところにまで切り込んでいく良書。
ヒトの脳は、五感というセンサーで読み取った情報を電気反応に変える。そしてその反応が繰り返し起きることで記憶し、判断とその結果を繰り返し経験することを通じて思考回路が生まれる。それが心だったり人格というもの。脳の中で電気反応が起きているだけに過ぎない。だとすると、心や人格とは何なのか。まったく同じ経路でできた人口知能に生まれる心や人格のようなものとは何が違うのか・・・。
わかったつもりのようになって、またわからなくなって、もう一度よんで、と何度も読んでしまう本。
夢を叶えるために脳はある、というタイトルも興味深い。夢は脳が作り出したもの。脳は現実を変えていくために、叶えたい未来を夢としてつくりあげているということなのか。あれ、ところで現実って脳の中で起きているただの電気反応じゃなかったっけ?あれ、いまこれを考えている自分ってなんだっけ?と、どこまでたどりつかない道にはまりこんでしまう。
またしばらくしたら読んでみたい。
Posted by ブクログ
脳科学者の著者が高校生に行った講義録を編集して書かれた本。
とにかく分厚くて読み通すのに時間がかかったけど、途中で関連する別の項目がある場合は参照先が示されているなど、造りが親切。
Posted by ブクログ
高校生を対象に行なった講義の内容をベースとして編集・再構成された脳科学、認知心理学、哲学、人工知能など広範囲にわたる素晴らしい書籍です。
もし自分が高校生の時にこんな講義を受けたらどう感じたのか。圧倒されてポカンとしてしまったのか、一部でも興味を持って自分で調べようと感じたのか、わかりません。
学際的と簡単に呼べぬほど、脳科学を中心として様々な領域のヒントが満載で、何度も繰り返し読みたくなりました。
Posted by ブクログ
一切空ってところにいかに高校生をポジティブに導くか?という実験として読みました。面白い。なぜ脳が大きいのか?ってのと、エントロピー増大マシンとしての私は最高。
Posted by ブクログ
656ページの大作。
最初から、心脳問題が出て来たり、面白さに引き込まれる。
自由意思とは何か、科学とは何かなど、矢継ぎ早に、興味のあるテーマの話が続く。
時間とは人間の記憶があること、以前の記憶をどんどん忘れることにより生じている。
だから時間は前にしか進まない。
時間の話は、確かめようがない。
だから専門家も素人も同じ土俵で議論ができて面白い。
結論、メチャメチャ面白い。
読み易い。
脳は何のためにあるか、
私とは何か、
科学とは何か、夢と現実の違いは何か?
Posted by ブクログ
私が、私だと思っているのは適正な認知なんだろうか?と、様々な例をあげて考えさせられた。
人間の脳はすごい。
個人的に衝撃を受けたのは、脳がくっついている双子。
なんとなく、相手の考えていることは意識に入ってくる、でも、2人で1人かというと、それは違う、、、
人間の脳はすごい。
この講義にちゃんとついていって、的確に質問したり感想を述べることができる高校生もすごい!
Posted by ブクログ
いろいろなネタがてんこ盛りで、部分部分は面白いのだが全体を通して何の本だったかと問われたらうまく答えられない。巻末にリンクのある「見取り図」もあまり助けてはくれず。
『単純な脳、複雑な「私」』を読んだときほどのインパクトは得られず。こちらがこの手の話題に慣れ親しんできたせいかもしれない。面白いかどうかというと面白いのだけれどね。
Posted by ブクログ
星を5つ付けられなかったのは、私の脳みそが追い付かなかったからである。
興味深い内容であるのは分かるが、半分くらいしか理解できなかった。
サブタイトルに「高校生と」脳を語り尽くす、とあったから高校生でも理解できる内容かと思って読み始めたが、高校生と言っても普通の高校生ではなかった...笑
人工知能について、人間と人工知能の違いは「思い込み」であり、人間は思い込みをするからこそ大雑把な印象で一足に結論に飛んでしまう。反対に、人工知能には思い込みはない。であるからビッグデーターが必要だという。そして、人工知能に思い込みをするように仕掛けると、人間と同じようにビッグデーターは不要になるそうだ。とても不思議である。
それから、夢か現かという話も面白かった。
今、自分が夢を見ていないとどうして言えるのか。
確かに言われてみれば、現実だと証明するのは難しい。
他にも私たちは未来人に実験されているなんていう仮定の話も面白かった。まるで星新一の世界のようだ。
本書には、前作があるようなので、機会と気合があったら読んでみたいと思う。