池谷裕二のレビュー一覧
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分かりやすい語り口で、テレビの情報番組などに出演される池谷先生による脳科学の基礎を切り口に”記憶”について詳しく述べた一冊。
この本、初版は2001年です。今から20年ほど前。当然、述べられている内容は現在からすると最先端ではないのかもしれません。ところが私が手にしたのは2020年の第51刷です!科学を題材にした新書で20年も読み継がれているというのは、最早これは教科書と言っても良いほどの定番と呼べる本ではないかと思います。
確かに読み始めると、記憶に関して読者の好奇心を刺激し、どんどん引き込まれていきます。記憶の種類や、記憶の仕組み、人間の脳とコンピューターとの比較など興味深い視点が次々と展開され、さすが池谷先生のベストセラーとうならされます。特に記憶に関してはテスト前に覚えなければならない事をすぐに覚えられなかったり、一度覚えたことを忘れてしまって困ったりと誰もが経験する事を科学的に説明されており、その説明が非常に腑に落ちます。いくつかの例を挙げておきます。
「なかなかすぐに記憶できない」→人間が目で見たりした事象を全て記憶してしまうと、脳の記憶容量がすぐに満杯になるため、何度も経験して重要なことだけを選択して記憶するようになっている(反復して学習するのはこのためですね)。
「歳をとると記憶力が落ちる」→物事を記憶するまでに反復する根気や、新しい物事に対する好奇心の衰えが記憶を阻害するだけで、記憶力そのものが退化しているわけではない。
「コンピューターの方が物事を正確に記憶できるので、人間の脳よりも高性能?」→ 生物が生きていく局面で、よく似た状況に過去の経験を生かすには、全く同じであることよりも、よく似た状況であることを認識することの方が重要で、より高等な生物の脳の方が記憶にあいまいさを含有している。
そして、学習とその効果については、比例ではなく幾何級数的な関係があると述べています。最初はなかなか学習の効果が実感できなくても、次第に累積(べき乗)の相乗効果が出てくるというもので、要は効果がなかなか実感できない期間中も継続して努力し続けると、後に累積で一機に効果が表れるというもので、”継続は力なり”を科学的に裏付けてくれる事実です。
脳科学の最新知識というわけではないですが、”科学的に”記憶力の仕組みを分かりやすく解説してくれている本書、さすが20年以上も読み継がれているだけのことはあるというのが正直な印象でした。 -
購入済み
良かった
脳というハードはどのようなくせがあるのか、意識というソフトはハードによってどう規定されているのか、という初心者向けのさっくりとした内容。
ハエにも人間の鎮痛薬が効くということに驚いたが、よく考えたら人間の薬って、動物実験が行われているから当然なのかも。
それを当然と思わず驚いてしまうというのが癖なのか。 -
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ヒトが物事を判断するときそれは何によって判断していると言えるのか。本当に自分がそれを判断したと言い切れるのか。そもそもその自分というものをどの程度本当に理解しているのか?そうした問いに脳科学の観点から答えてくれる一冊。
ココロの盲点はバイアスにある。ではそのバイアスを取り除けば”正しい判断”を下すことが本当に出来るのだろうか?この本では様々なバイアスを提示する中で、それらとうまくつきあうヒントを与えてくれる。大切なことは、そうしたバイアス(つまりココロの盲点)があるということを認識した上で物事を判断している、ということを知ることだろう。そうすればその判断の妥当性がどこまであるのかということもおのずと分かるかもしれない。 -
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年齢とともに記憶の種類が変わる。
たとえば絶対音感を体得(記憶)できる臨界期は3から4歳。幼いころに体をよく動かした人は成長した後でもスポーツ全般にわたって優れた運動能力を発揮する。丸暗記も中学生のころまで。
年を取って物事を記憶するには、丸暗記よりも物事をよく理解して、その理屈を覚えることで記憶するしかない。だからり必然的に学習方法も変えるしかない。それは理論的に物事を認識して記憶する方法を身に着けるしかない。そのコツは、「法則性をつかむ」、「理解して覚える」。
またただ見て覚えるのではなく声に出してみる。目の記憶よりも耳の記憶のほうが心に残る。
記憶するには復習が必要。
1週間後に1回目、それから2週間後に2回目、そして2回目から1カ月後に3回目の復習を行うことで一生忘れないような強い記憶を作ることが可能となる。
「夢」は脳の情報を整え記憶を強化するために必須な過程であり、記憶は夢を見ることによって保存される。 -
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ネタバレ「記憶力を強くする」というタイトルの本ですが、記憶力を良くするためのトレーニング法だとか、記憶するための技術的なテクニックについて書かれた本ではありません。これまでに明らかになっている記憶の仕組みに関する知見を細胞レベルや分子レベルのミクロの視点で説明するとともに、記憶力を良くするために具体的にどのようなことに心掛けたらよいのかをマクロな視点で説いた本です。
第1章では、記憶の司令塔である海馬の細胞は脳を使えば使うほど増えること、
第2章では、海馬の構造や働き、記憶の種別と階層構造等、
第3章では、神経細胞の伝導、シナプス伝達のメカニズム等、
第4章では、記憶の仕組みと脳の可塑性、ヘブの法則等、
第5章では、LTPの発見とそのしくみ、
第6章では、記憶力を良くするために心掛けること、
第7章では、薬と記憶力に関する話題、
第8章では脳科学の未来として、知能のドーピングに関する倫理、神経細胞の移植治療、「再生」に関する研究等
について説明されています。
第5章までが科学的な説明、第6章が実践編、第7章はトピックス、第8章は将来展望といった構成になっています。
本書を読んで、印象に残った記述は次のようなことです。
・神経細胞の数は減る一方で増えないのは、過去の記憶を保持し、脳の個性を保つためであり、細胞がすっかり入れ替わってしまって、別人にならないようにするためである。しかし、記憶の司令塔である海馬の細胞は、脳を使えば使うほど増える。
・人間が瞬間的に把握して記憶できる対象の数は7個程度あり、「マジカルナンバー7」として知られている。
・海馬は、ベートーベンの「運命」の冒頭と同じθリズムを出すときに活性化する。
・乳幼児は海馬が完成していないので、幼児の頃のエピソード記憶がない。
・人間の記憶が大雑把で曖昧なのは、変化する環境に対応するため。
・LTPのおきやすさと学習能力が深く関連しており、LTPが記憶の分子メカニズムと考えられる。
・「歳のせいで覚えが悪い」というのは間違いで、歳を取るとエピソード記憶が発達し、むしろ論理だった記憶能力は向上する。
・記憶力が高くなれば、ストレスに対する耐性が増す。
・事象を記憶するときに同時に事象の「理解の仕方」という手続きが無意識に記憶され、この手続き記憶は相互に関連しあって、互いの知識の理解を深めてくれる。努力を継続していると、急に視界が開けてものごとが理解できるようになったと感じる瞬間がある。
・記憶力を良くするには、何よりも大切なことはのごとに興味を持つこと、ストレスのない余裕を持ったスケジュールで勉強すること、ものごとの法則性を見つけ出して関連付けて理解すること、声に出すこと、覚えた知識を他人に説明してエピソード記憶として覚えること、復習は1か月以内にすること、記憶は夢を見ることによって保存されるので十分な睡眠をとること、手順を踏んで学習すること、平均的にやるのではなく、まずは一つ得意科目を作ること。
・記憶力を増強させる夢の物質「K九0」が見つかった。
・K九0の試験研究の結果、NMDA受容体にリン酸が結合すると記憶力が増強されることがわかった。
・記憶力増強薬には「知能のドーピング」という問題があるが、安全性が十分に保証されていれば公認されてもよいのではないか。
・現在の脳科学では、記憶の「再生」という現象はほとんど解明されていない。それは、「意識」の実態がほとんど解明されていないため。
・海馬は「記憶を司る重要な脳部位」であると同時に、様々な脳疾患の病巣部位として医療現場では「厄介者」でもある。海馬が「高次脳機能」と「疾患」という諸刃を背負い込んでしまったのは、外界への適応に必要な可塑性を有する器官として選ばれたからだと考えられる。
記憶力を良くするための具体的な方法に関しては、ほとんどがこれまでに聞いたことがあるような話であり、目新しい内容ではありませんが、分子・細胞レベルの科学的な説明を踏まえた上での方法提示ということで説得力があります。
この本は、特に脳のメモリー素子である「LTP」の説明に重点が置かれていると感じました。特に印象に残っているのは、NMDA受容体がLTPを起こすしくみに関する説明です。
この書物が発行されたのは2001年であり、それ以降に脳科学は大きく進歩していると思われますが、脳科学は門外漢なので動向をあまりよく把握しておりません。
iPS細胞によるパーキンソン病治療などのニュース、プロ囲碁棋士に勝つなどAIの発展も目覚ましく、脳科学に関連する話題はホットです。
この本を読んだことをきっかけとして、脳科学に関するニュースにさらに関心を持ち、最近の脳科学に関する本も読んでみようと思いました。 -
Posted by ブクログ
認知バイアス=脳のクセについて一問二~複数択形式で学べる。
それにしても脳って信用できないんですね~。
自分の脳だけ信用できないのかと悩んでました。
いろんな’思い込み’は人間にありがちだったりするんですね。
もちろん自分にも。
80個の専門用語が出てくるけれど、文章も平易で解説も分かりやすかった。
ユニークで洗練されたイラストも良いです。
本の後ろの方に参考文献が記されているので、もっと深く知りたくなったときにも便利。
錯視用語と図形の紹介も50例。
巻末に本文に出てきた認知バイアス用語の索引がちゃんとあるのが感心した。
設問タイトルが文学や話題になった文言などのパロディになっているものもあるのに遊び心を感じてニヤリ。 -
Posted by ブクログ
ブルーバックスの中でも根強い人気があると聞いて読んでみた。
記憶を強くするためのノウハウ本のようなタイトルですが、実際は脳、記憶に関するマジメな科学本。読みやすいしとても面白い。
脳は人体の中でも特に不思議で未解明の部分が多いらしいけど、本作で紹介される記憶の仕組みについての説明も面白くて、かつ身に覚えがある現象がたくさん紹介されていて飽きずに読める。
これを読んだことによって記憶力が強くなったかはわからないが、繰り返し読んでここで得た知識を長期記憶化しようと思う。
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人の脳には約1000億個もの神経細胞(ニューロン)があることがわかりました。(略)この並び方は非常に明確で、人によってちがったりはしません。(略)脳のしわの数も人によるちがいはありません。
31 玩具を入れた環境で育てたネズミの方が、海馬がよく発達していることがわかりました。(略)神経細胞が鍛えられて活性化したというわけです。
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人間が瞬間的に把握して記憶(短期記憶)できる対象の数はどういうわけか7個程度なのです。
59
このようにグループを作ってものを覚えることを専門用語で「チャンク化」といいます。
※10桁の数字は覚えられないが、電話番号のように間にハイフンが入れば覚えやすくなる。
68「スクワイアの記憶分類」
記憶には「短期記憶」と「長期記憶」がありました。
「長期記憶」はさらに細かく「エピソード記憶」「意味記憶」「手続き記憶」「プライミング記憶」と分類されます。
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記憶の階層システム
※エピソード記憶(顕在記憶)<短期記憶(顕在記憶)<意味記憶(潜在記憶)<手続き記憶(潜在記憶)<プライミング記憶(潜在記憶)
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保存情報が相互作用するということは、まったく異なるものごとを関連付けることがということです。情報を関連付け、まったくちがった新しいものが形作られるかもしれません。これこそが「創造」という行為です。私たちが想像したり、思索したり、創造したりという行為は、記憶が相互作用できる神経回路にたくわえられているということの恩恵なのです。
153
「語呂合わせ」は連合によって記憶を助けようとする典型的な例です。つまり、連合させれば閾値以下のものでも覚えられるというわけです。
203
覚えた直後にどっと忘れて、それを乗り越えて残った記憶はわりと長く保持される傾向にあるというわけです。これは「エビングハウスの忘却曲線」として知られる現象です。
204
記憶の神経回路は相互作用しているので、ある程度の類似性があることを覚える以前の記憶が妨げられてしまうのです。これを「記憶の干渉」といいます。(忘却を早める方法)
213
学習したものが少し時間をおくと高度化するという不思議な経験をした人もいることと思います。
「レミニセンス(追憶)現象」=寝ている間に記憶がきちんと整理整頓される
240
アセチルコリン(神経伝達物質)のはたらきを増強する薬として、もっとも有名なものは「サリン」です。※地下鉄サリン事件の被害者の後遺症として、記憶が勝手に蘇ってきて止まらなくなる症状があった -
Posted by ブクログ
ネタバレQ:1000人に1人かかって死亡する感染症がある。それに対抗するワクチンがあって、でもそれは10000人に一人副作用で死亡する。
これをきいた母親はどうする人が多いか?
1・ワクチンをうつ
2・ワクチンをうたない
答え 2 が多い。
ワクチンで死亡する可能性があったとしても、ワクチンがうたないよりは死亡率は下がるにもかかわらず。
こういった思考の癖(わな)は自分にもあてはまりそう。自分の脳にだまされないように気をつけなきゃと思った。
ほかにもたくさん脳の癖がわかる設問がたくさん。心理学と似てるようで違う。
脳の癖から脱出したら、可能性が広がりそう。 -
Posted by ブクログ
池谷氏が書き溜めた脳に関するエッセイやコラムを集めたのが本書。それゆえ断片的である感じも否めないが、ただそれぞれのテーマに沿って脳の話が根拠をもって語られており、誰でも必ずどこかには興味を持てるのではないか。
以下、面白いと思った部分の抜粋。
◼️p240 私の印象では、意識的学習より、無意識の学習のほうが、 ヒトの人格や成長に与える影響がはるかに大きいように感じています。芸術や料理のセンス、デザインや企画などの考案、こうした能力は、おそらく明示的な意識というより、無意識の学習の賜物でしょう。
◼️p260-261 もちろん、自動判定装置が正しい反射をしてくれるか否かは、本人が過去にどれほどよい経験をしてきているかに依存しています。だから私は、「よく生きる」ことは「よい経験をする」ことだと考えています。すると「よい癖」がでます。「頭がよい」という表現には多義性がありますから、その定義を一概に論じるのはむぶかしいのですが、私は、頭のよさを「反射が的確であること」と解釈しています。その場その場に応じて適切な行動ができることです。苦境に立たされても、適切な判断で、上手に切り抜けることができる。コミュニケーションの場では、瞬時の判断で、適切な発言や気遣いができる。そんな人に頭のよさを感じます。このような適切な行動は、その場の環境と、過去の経験とが融合されて形成される「反射」です。だからこそ、人の成長は「反射力を鍛える」という一点に集約されるのです。そして、反射を的確なものにするためには、よい経験をすることしかありません。
◼️p320 ごく初期の生物を見たほうが、脳の本来の役割がわかるというものです。こうした生物では、脳は、外界の情報を処理してら適切な運動を起こす「入出力変換装置」です。餌ならば近寄る、敵や毒ならば避けるといった、単純ですが生命にとって大切な反射行動を生み出す装置です。つまり当時の脳は、とことん身体感覚(入力)と身体運動(出力)の処理に特化した組織だったはずです。こうした経緯を、発展的に再考すれはわ、すべての高次脳機能が身体制御という原始機能がコオプトされたものであったとしても、もはや不思議ではないでしょう。〜ヒトの心理作用の多くは身体性を下地としていると考えてよいと思います。
我々は人間という存在の優位性を強調するあまり、動物とは異なる脳の意義を唱えがちだ。しかし人間といえどもやはり動物。脳の活動は身体性と深く結びついているのではないかという主張は改めて人間というものを考えさせる。
この本を読んでいると(たしか「ホンマでっかTV」でも誰かが言っていたが)、脳というのは非常によくできているので極力本能に忠実にいた方が良い結果をもたらすような気がする。