瀬川貴次のレビュー一覧
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後白河法皇のもとに桂木が召されることになり、桂木が男であることが分かってしまうのではないかと陽羽の心配をよそに讃岐は泰然自若たる様子。果たして、その夜、仙洞御所に雷が落ち、後白河法皇は崇徳上皇の祟りではないかと恐れる。そして、次から次へと怪しいことが起こり、寂漣の身にもいろいろと厄介なことが起こる。最後に解決に向け秘策を考え出したのは希家であったが、やはり後ろで背中を押したのは目をきらきらとさせる陽羽であった。実際の偏屈定家もこんな破天荒で陽性の陽羽を娶っていたならなあ。もっと楽に生きていたやかもしれない。式子内親王への思慕というのも後世のつくり話というか、興味本位から出たものだろうな。実際の定家にはそんな話は似合わない。
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容姿端麗、頭脳明晰、高貴な血筋で完璧な左近衛中将の宣能は唯一怪異譚が大好きという困った趣味を持つ。その趣味に付き合わされている平凡な貴族・右兵衛佐の宗孝コンビのシリーズ第三作。
今回のテーマは謎の茸と天狗の怪。
食べると楽しくなって可笑しくなって踊りだす茸(ワライタケ?)により奇妙な体験をする者が続々現れる。
その中には尼寺に住む宗孝の二の姉君も。
そして中将仲間で一番のプレイボーイ・宰相の中将雅平が今のめり込んでいる恋もどうも怪しい。
更には山寺にも天狗が現れる。
今度こそ本物の怪異か?と息巻くが、宣能と宗孝が調べるとどうも裏がありそうで。
『わたしはね、右兵衛佐、怪異を装う人間が大嫌いなのだよ』
『悪ふざけ、あるいは私利私欲で神秘を汚すのは許せない。断じて、本当におそろしいのは人間だとかなんとか、そんなつまらない理屈はいらないのだよ』
珍しく苦々しく吐き捨てる宣能に、宗孝は怪異を純粋に追い求める彼の姿を知る。
しかしまたもや話は後宮の人間模様と宗孝の姉君たち、そして母上まで関わっていく。それだけではなく、宣能の父・右大臣や叔母であり主上の妃である弘徽殿の女御もまた…。
宣能が追い求める怪異と、その裏で分かってくるドロドロな争いが対照的。そんなものを見たいわけではない、本当の怪異として見ていたいのに、結局は人間の嫌なところを見てしまう。何だか宣能が切ない。
だからこそ宗孝のような素直な若者をコンビにしたいのだろう。
しかし宗孝の姉君たちもまた一筋縄では行かない者ばかり。またもや出てくる十の姉君は、いわば忍びの者のような感じなのか。そして終盤に出てくるその敵方らしき者も今後とも関わりがあるのか。
それより何より、宣能と父・右大臣の関係がますます剣呑な感じでハラハラする。
そして右大臣、どこまで黒いのか。最後の最後に話がグルっと回って何が何だかという、まさに怪異。 -
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平安怪異譚<ばけもの好む中将>シリーズ第二作。
頭脳明晰で容姿端麗な貴公子なのに何故か大の怪異好き中将・宣能と、十二人もの異母姉たちがいるせいか怖がりで奥手ででも健気な青年貴族の宗孝コンビが今回やって来たのは『泣く石』の噂の現場。しかしそこには『泣く石』ではなく、『泣く赤子』がいて…。
第二作にして怪異は少なめ。さらに宣能の出番も少なめ。
逆に宗孝と、宣能の妹で不思議な能力を持つ初草の君とのコンビがクローズアップ。さらには宗孝の姉たちも。
『泣く石』の現場で赤子を拾ってしまった宗孝は、その赤子の産着の間から出てきた和歌の書かれた紙を手がかりに両親探しを始めるのだが、初草の君がその手蹟は兄・宣能の書簡の中にあったものと同じだと気付いたところから、宗孝はとんでもない想像をしてしまう。
そしてこんな時に限って不在の宣能。探偵役がいない中、ワトソン宗孝は真実に辿り着くことは出来るのか。
冒頭の禁断の恋のワンシーンからして、この赤子が表沙汰に出来ない存在であることはわかるのだが、宗孝の想像(決めつけ?)は無いだろうと思いつつ、見当違いな宗孝の行動を追う。
しかしそこに新たな姉君たちの存在が絡んできて、見当違いだと思っていたことが見当違いではなかったのか?もしかして本当は宗孝は優秀な探偵だったのかと揺れ動く。
初草の君の不思議な能力も後押しし、まさか本当にそうなのかという気持ちになってくるのだが、さてその結末は。
結果的にはやっぱり美味しいところは宣能が持っていき、宗孝は宣能にやっぱり振り回されていたのだが、宗孝のそんな一人大騒ぎも結果的には決して無駄ではなかったことが分かってホッとする。
今回出てきた四の姉君。あまりにモテすぎて辛くて寂しい場所へ引きこもったものの、それでも通ってくる殿方がいる。う~ん、羨ましいような面倒くさいような。
そして十の姉君。こちらは八面六臂の活躍で毎回その登場振りには弟の宗孝もビックリ。今後も宣能と宗孝の前に意外な形で現れそうだ。
他にもどんな個性的な姉たちが出てくるのか楽しみ。
一方で宣能の方は妹の初草とは仲が良いが、父や叔母とは奇妙な距離感がある。何故なのか、そこも彼の怪異好きと関わるのか、そこは今後のお楽しみだろうか。 -
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ライトノベル風平安怪異シリーズ第一作。
タイトル通り、怪談に目がなく、聞くと現場を確かめずにいられない佐近衛中将宣能(のぶよし)と、彼に振り回されるヘタレな右兵衛佐宗孝(むねたか)コンビが様々な怪異譚の謎解きに挑む。
おびただしい血痕が残る建物、三本の角を生やした鬼女、四つ目の集団の行列。
怪異と書いたが、実はいずれも物理的な解決が出来る。つまり怪異でも妖怪でも鬼の仕業でもなく、人によるもの。
これは裏表紙の内容紹介にも書かれているのでネタバレにはならないと思うのでご安心を。
しかしそこにはとある陰謀が見えてくる。げに恐ろしきは人の業なり、ということか。
ライトノベルっぽくスルスルと読める。平安時代ならではの衣装や役職名の難しさもあるが、そこに躓くことなく現代風な会話のやり取りを楽しめる。
主人公の宗孝は異母姉が何と十二人もいて、男は宗孝一人。大切に育てられたのか姉たちに何かと世話をされたのか、怖がりで押しに弱いヘタレだ。これといった才はないが、舞と武芸は少し出来るようだし、いざというときには頑張りを見せる。
一方の宣能は容姿端麗で頭脳明晰、穏やかで人間関係もそつなくこなし、女性たちからの熱い眼差しもさらりとかわす非の打ち所のない男だ。ただ何と言っても唯一の欠点(?)は怪談話に目がないこと。
この凸凹コンビのやり取り含め、面白い。
ただ宗孝の名誉のために書き添えると、当時は鬼や妖怪や霊の存在が当たり前にあるものと信じられていて、肝試し程度ならいざ知らず、自ら進んで怪異に近付くなど狂気の沙汰、つまり宣能の方が変人なのだ。
宗孝は迷惑だと思いつつ宣能に気後れして強くは抵抗出来ないが、宣能はそんな宗孝を上手く利用しつつきちんと評価もしている。
また宗孝の姉たちも個性的。
帝の更衣(妃の一人)である八番目の姉だけは帝に見初められるだけの容姿も中身も女性らしい人だが、その八の姉に仕える十一の姉を始め他の姉たちは押しが強い。
中でも第三話に登場する姉は独特で、まだまだ何らかの絡みがありそうだ。
登場していない他の姉たちも続編で出てくるのか、楽しみにしたい。
宣能の方にも個性的な妹がいる。彼女のある才を発揮した活躍は今後も楽しめそうだ。そして宣能が何故『ばけものを好む』のか、宗孝なりの解釈は当たっているのか。
読み終えればとても狭い世界で起きた事件だった印象だが、これは狙いがあるのか。
今のところ9作まで出ているようで先は長い。宣能がいつか本物の怪異に出会えるのか、どんな展開や物語が待っているのか、楽しみになってきた。 -
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定家と寂連を彷彿とさせる、というよりは、うまい設定の仕方をしているシリーズの最終作。寂連の全国行脚を上手に位置付けたなあ、と思います。
鵺、義仲、そして、大魔王の登場に終の物語だな、という感を持たせるあたりが設定のうまさかな、と思います。
作を追うごとに中心にいる少女の言動が面白くなっていくのだけれども、それが急速に鎌倉時代初めという時代の女性から離れて行って、それはそれで面白いのだけれども、うーん、と唸りながら、でも、面白いからいいか……、と思ったところです。
3作品を通してみると、私には式子内親王とのやりとり、関わりがとても面白かったなあ。
背景にあるものとしては、今作の崇徳上皇にあるいろいろ、そして、登場人物とのかかわりがもっともよかったと思います。
軽く読み進める本です。外出せずに楽しみたいときにはとても良い本だと思いました。 -
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日本の平安時代にとてもよく似たパラレルワールドでのお話、という感じです。歴史の本に載っている実在の人物の間に、本作の主要登場人物が実在のモデルとなったであろう人物と良い感じのズレを伴って登場してくるのが楽しく読めました。
怪異譚好きの宮仕え少女の造形は、森谷明子さんの紫式部のシリーズに出てくる女性の若いころを連想しました。
分かり易い表現で貫かれていますが、それが、かえって、そこまで書かなくても読み取れますよ、という感じを持たせるところが、ところどころにあるように思わせました。人物が分かり易いのが、そんな感じにさせるのでしょう。
最後の2ページも、やっぱりねえ、と思わせる感じで、次の1冊に進むかどうか、ちょっと迷っています。