猪瀬直樹のレビュー一覧
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涙なくしては読めない。
あの東京五輪誘致の舞台裏での猪瀬家族の闘い。
この作品は、猪瀬さんの奥様•ゆり子さんへのレクイエムであり、“素人政治家”の反省文でもあるんだろう。
しかし、この作品が私の心を震えさせたのはそこではない。
猪瀬直樹が生み出してきた作品は何がっても否定出来ない後世に残る名作ばかりだ。
『天皇の影法師』『昭和16年の敗戦』『ミカドの肖像』などなど。
この作品はこれらの名作の“行間”が埋まって行くような感覚になるのだ。
作品に“裏舞台”は必要ないという意見もある。
きっとそれは正しい。
しかし、舞台裏が分かって通われる血もある。
名作の“行間”にゆり子さんがいた。 -
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今考えるとすごい速度で出版されたんだな。
3.11以降の政府の動きなんかをベースに、東京都の副知事が世界と渡り合える、あとマスコミと渡り合える「言葉の力」について書いてる。ということは、東京都が進めている、言葉の力を陶冶するプロジェクトの紹介でもあるわけです。
自分の考えを伝える技術、って云うけども、本書に書いてある程度の能力であれば在野にいっぱいいる程度の人材だと思うのです。顧みれば、まぁだいたいはまともに「正社員」とか「公務員」とかやってない人々で、このくらいの空間把握や、情報伝達の技術を持っている人はいくらでもおる。
問題は、そういう人がまともに今の世の中で公務員をやっ -
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この本を読んで猪瀬都知事のイメージが随分と変わりました。小説家としての語り口は洞察が鋭く、都知事としての知識バックボーンの骨太さを感じました。
”国民ひとりひとりが「プランナー」になってほしい。”
という言葉からは、地域づくりに関してそのまちの構成員に主体性を求めている猪野瀬氏の姿勢が伝わってきます。
”アメリカ人は思いつきでなんでも書く。日本人は困ると白紙回答。”
なるほど、確かにこれは僕の留学経験からも納得させられる事です。恐らくその背景には、「正しい解はひとつであり、それ以外の回答を書いても恥をかくだけ」という意識が自然と日本の教室文化から醸成されてしまっているのだと思い -
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昭和天皇の崩御前後の、妙な空気は体験している。連日のご容態
報道、日に何度も行われるバイタル・データの発表。行き過ぎた
自粛ムードはCMの「お元気ですか?」の台詞までを消した。
そして、故小渕恵三が掲げた新しい元号「平成」の文字。
本書では大正天皇崩御の際に起こった東京日日新聞(現・毎日新聞)
の元号誤報事件が、晩年の森鴎外が執念を見せた「元号考」に繋
がって行く。
新元号は光文。東京日日新聞はどこよりも早く新元号を報じた。
しかし、蓋を開けてみると新元号は「昭和」に決まっていた。
世紀の大誤報と言われる事件はいかにして起きたのか。その後の
東京日日新聞社内の対応が詳細に綴られている。 -
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ふと、都知事選を前にして、なんとなく手にとってみました。
で、なんでしょうこの、「地に足の着いた信頼感」は。
「東京というこの大都市をどう成長させるか、これは東京都の仕事である。」
といったことを、さすが道路公団民営化を成し遂げただけあって、
非常に説得力を持った論旨で、様々に展開されています。
「弱者対策、とくに雇用対策を解決しなければいけない。
バラマキ減税ではなく実際に必要な資金を提供したり
職業訓練をしたり、積極的な施策が必要なのだ。」
至極納得出来る話で、「釣り方を教えるので、魚は自分で釣ってくれ」と言う、
以前に麻生さんも仰っていた「自立自助、天は自ら扶くる者を -
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私を猪瀬ファンに変えた作品です。
この著作を端的に言えば、「五島慶太伝」+「東京都市開発論」その比率、3:2。
前編である『ミカドの肖像』に比べて扱ってる事件が古いものが多いので、その辺の取っ付き辛さがあるかもしれませんが、『ミカド』より文章が上手だなあという印象です。続編扱いですが、単独で呼んでも十分楽しめます。
資料の引用の仕方も信頼性が高いので安心して読めます。「日本の鉄道史」と「イギリスの都市計画史(田園都市=Garden City)」という一見相容れない要素を結びつけるという発想の素晴らしさには目を見張るものがありますが、その両方に興味がないと結構なボリューム感があるの -
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天皇制について、というと今の日本人は近寄りがたい雰囲気を感じるかもしれない。
学校教育では天皇制や戦争について学ぶことはないし、天皇というと(ネット含む)右翼左翼の激しい罵り合いレッテルの張り合いにうんざりしていることもあってつい避けてしまう。
しかしこの本は数々の興味深いエピソードで構成されており、とても刺激的で面白く読める。
天皇制とはこうであるとか天皇制は良いか悪いかといった話は出ない。
天皇制について多角的な視点からのルポタージュである。
しかし本書によって、天皇観や日本観に新たな一面がみえることは確実で、発売後25年たった今でもその魅力は色あせることがなかった。
しかしこういうが -
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2013年2冊目。
再読だったが、改めて、「こんな教育受けてみたかった!」と思う事例が満載。
世界基準に置いていかれていることを強く感じる。
今からでは遅くはないと、言葉の力の強化に努めたい。
どの仕事であれ「言葉の力」が必須であることが分かった以上、
あらゆる仕事に就いてゆく子ども達を育てる教育者こそ、
本書を読みとおして欲しい。
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2011年58冊目。(2011年12月15日)
「感性とはすなわち論理なのだ(p.140)」
直感的に物事を捉える背景には、それまでの人生経験や歴史の中にリンクする部分がある。
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