猪瀬直樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
祖父、父と続く官僚の三代目として産まれた三島由紀夫は本人も父の命により官僚となるが、半年で退職し作家になる。この本の面白いところは三島由紀夫を官僚家系としての視点で見ている点にある。それから、圧倒的な取材による事実の蓄積により実際の三島由紀夫像が浮かび上がる面白さもある。
絶対にヒットさせたかった長編デビュー作の「仮面の告白」から読み取る三島由紀夫という人間像。三島由紀夫の同性愛に関する考察はとても納得のいく内容だった。
絶頂期に書き上げた名作「金閣寺」三島由紀夫が作家として乗っているだけではなく、人間として、男としてある意味生まれ変わった時期でもあったという新発見は驚きがあった。
そして、壮絶な死へと繋がるきっかけと推測される「鏡子の家」。有名過ぎる三島由紀夫の最後へとどう繋がり、三島由紀夫が憂いた日本とは何かが描かれている。
やはり、三島由紀夫という作家は面白い。こんな面白い人間が書いた小説は面白いに決まっている。まだ、未読の小説もたくさんあるので、これから少しづつ読み進めて行きたいと改めて感じた。
また彼の予見した国になってしまった現代の日本を見て彼ならどう考え、どう感じるだろうかと空想にふけてみるのも面白い。 -
Posted by ブクログ
東日本大震災における東京都の活動、そしてその旗振りをした猪瀬氏について述べられた本。
単なる「地方公共団体」にとどまらない、日本の大局を見据えた東京都の決断を知ることができる1冊。
東日本大震災が日本という国に大きな揺さぶりを与えたのは事実だし、震災以後の動向から無縁でいることは、日本国民の多くにとって不可能である。
猪瀬氏は、東京都という直接被災したわけではない自治体の首脳であるにもかかわらず、日本の未来を思い、できることを果たした。
日ごろからさまざまな出来事にアンテナを張り巡らせつつ、一見すると自分から遠い場所で起こったことであっても、その影響を常に考え、自分にできることを通して行動せねばならない、と感じた。
ここ1年のネット論壇における震災観が凝縮された1冊なので、物珍しい言説は少ないかもしれないけど、現状と将来の現実的展望をしっかりと把握できる本だった。 -
Posted by ブクログ
言葉の力を見なおすべきだ。というお話。
全体が見えていないと細部に意味は見出せない
日本から世界的時間軸が失われ始めたことが言語力の低下の原因
ドイツ→どうしてそういうパスを出すのか
2006WCイタリアv.s.ドイツ→退場者が出て1人仲間が減った時のイタリア選手は誰もベンチを見なかった
ファティックに欠ける日本人
ファティックとは→どうでも良いような会話を続けながら、人と人とをつなぎ合わせる行為のこと
子どもへの読み聞かせでは辺緑系に刺激がある(泰羅雅登さん)
辺緑系→理性以前に人の行動をつかさどる役割
なぜ、日本のアーティストは世界で通用しなかったのか?
「答えは単純です」
「欧米の芸術の世界のルールをふまえてなかったからです」
村上隆 -
Posted by ブクログ
軍部が暴走したことが日米開戦の引き金、と言われてきたが、開戦前の内閣および新たに作られた総力戦研究所の奮闘と困惑が記されている。
近衛内閣時代に決定された基本国策(日米開戦)を、あえて東條内閣にすることで、開戦回避に向けて努力をしようとする天皇、そしてその意を汲んだ東條首相は、流れを変えようとするが、自分の組織の都合で思考・発言し、決断を迫る海軍・陸軍に打ち手を阻まれ、結局開戦を選択してしまう。
開戦前に新設された総力戦研究所では、日米開戦のシミュレーションの結果、必敗を提案したものの、内閣には受け入れられなかった。というか、分かってはいるが、それを目の前に突き付けられても判断が出来なかったということだろう。
これまでの、努力の積み重ね、議論で得られた方向性を、ただなぞっていくだけで、それを変えられなかったのは、東條首相だけでなく、各組織体の幹部の無責任に起因するのだろう。どこの組織にもあてはまりそうで、ちょっと怖い気持ちにもなる。
しかし、猪瀬直樹氏の丁寧な取材に基づく、精緻な筆致が印象的である。 -
Posted by ブクログ
「言語力」とは、「情報を正確に理解したうえで、相手の表現の
意図や背景を推論し、根拠を挙げて自分の意見を述べ、話し合って
与えられた課題を解決できる力」のことだ。(p86)
☆ ☆ ☆
基本的な技術を習得しなければ、スポーツをうまくやることは
できないように、言語も基本は技術であるとのこと。
たとえば複数の家具が置かれた部屋の俯瞰図を見て、その配置を
文章でわかりやすく説明する技術。
絵画を鑑賞して、論理的に感想を述べる技術など。
確かに、そんな技術があることは知らなかった。
グローバル社会で共有されている言語技術を、今の日本は持っていないと。
言語力がないから「キレる」社会になるのかなとも思った。
そして、論理的に判断ができずに一見クチのうまい指導者にのせられてしまう。 -
Posted by ブクログ
東京都の副知事、猪瀬直樹さんの本。
いわゆる「団塊の世代」らへんの人なりに東日本大震災や情報化といったキーワードと向き合い社会問題と対峙していく、という姿勢を否応なく感じた。
活字好き90年代生まれとして、猪瀬さんの言葉の活用や可能性を真摯に追い続ける姿勢を応援したい、と強く感じた。
だがその一方、「マンガやアニメよりやっぱ活字でしょ、活字こそ正当な文化の継承者」的なノリが随所にあり、90年代生まれとしては「社会意識の高いマンガやアニメをいっぱいあるよ!!」と思わず反発したくなるのは否定できない。
ただ、社会の多数を占めるのは猪瀬さんぐらいの世代であり、マンガやアニメみたいなオタクカルチャーとは縁が遠くなりがちな世代、というのも事実。
今の若者文化的なネット社会の流儀は、決して世代を超えてどこでも使えるものではない、と俺は思う。「先進的な60代はこう考えている!」というのを知り、Twitterみたいなネットツールを世代を超えて活用する上でのヒントになりそうだと感じた。 -
Posted by ブクログ
成熟した日本では決断する力がない政治家が怠慢に見える
著者の猪瀬氏からすれば問題解決能力がないってことでしょうがそれでは「決断する力」とはどんな能力なのか
・刻々と変化する状況に対応
・走りながら考える
・スピートこそ命
・迅速な意思決定
・一度決定したらブレない
こんなキーワードが文中に散りばめられています
猪瀬氏は自分や石原氏を変人と言うが時代が変人を求めているのだろう
いまの時代は民間的な感覚を持つ人がリーダーとして求められている
震災時には被災地に足りない一般職員を派遣
首都公務員として夕張市を助ける…のちに東京都の若い一公務員が市長戦に出馬…石原都知事みずから応援演説のくだりは感動的
他にも成長戦略としての水・発電所・地下鉄など東京都の積極的な姿勢を見ると国家としての成長戦略とは邪魔をしない事なのではないかと現場である地方自治体任せでOKに感じる -
Posted by ブクログ
ネタバレ軍事問題に精通している自民党 石破氏が国会答弁中に歴史認識について言及する中で紹介した本。
日本が敗戦するのは、S20年であることは、周知の事実だが、この本では、S16年となっている。
というのも、実は、S16年には、国家公認の疑似内閣が結成され、戦争に踏み切った場合のシュミレーションが行われ、ひとつの解答を得ていたのだ。
このシュミレーションは、単純な軍事的衝突だけでなく、国民への物資配給についての見解など国民生活の細部に至る総合的な検証がなされていること。また、疑似内閣の構成員が若手エリートコースを歩む陸軍、海軍、マスコミ、省庁関係者等であり、次世代の日本において大きな影響を持つ確率が非常に高い人間が選抜されていた点に特徴がある。
結果として、軍事的衝突に勝算は無く、国民生活への甚大な被害は免れない。つまり「敗戦する」という結果をS16年夏に出し、内閣に提出した。しかし、内閣はこの結果を活用することが出来ず、戦争に突入し敗戦した。
戦争を感情論で片づけていないため、政治的判断の難しさに関して非常に参考になる一冊である。 -
Posted by ブクログ
■本の概要
内容は主に、東京都副都知事 猪瀬直樹氏が、震災を通して考え行動してきたことで、以下の3部構成。
1.災害などの非常時のリーダーのあり方
2.「想定外」をなくすために日常的にやるべきこと
3.東京都が今採るべき攻めの政策(地下鉄,水道,電力)
■感じたこと
・エネルギー政策や増税などで迷走している「決断する力」の無い日本政府と比べて、東京都は即断即決でこんなにうまく機能しているんだぞ、という自画自賛が多いが、実際に言うだけのことはしているようなので頼もしい。だんだん猪瀬氏のことを応援したくなってきた。
・東京都は、東京都だけのためにあるのではなくて、地方自治体のトップランナーとして手本となり、困っている自治体(被災地や経営破たんした夕張市)への職員・ノウハウ提供などで貢献することが「義務」であると捉えているとのこと。また、水道事業の運営ノウハウをベトナムに売り込んだりもしてるらしい。尖閣諸島購入の話もあるし、ホント、国と地方自治体の境界が分からなくなってくる。こういうところから、地方分権・道州制への流れになっていくのかも。
・震災時に、TwitterからのSOSで東京都から独断で救助ヘリを飛ばして、障害児童施設に閉じ込められた400名を救助したというエピソードは、これからの新しい公益サービスの姿を感じさせる。
・電力の「地産地消」として、東京の近くに天然ガス火力発電所(石油火力発電所と比べて低コストでエネルギー効率が良い)を新規に作るというプロジェクトについても結構具体的な方策まで検討している模様。自然エネルギーの効率が上がるまでは、脱原発の現実解として、これしか選択肢は無いんだと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ■概要
本書は、黒船を起点に日米戦争に至る日本人の精神を、日米未来戦記を解き明かすことで描いたノンフィクションである。Ⅲ部構成で、日米未来戦記がどのようにⅠ勃興し、Ⅱ流行したか、最後にⅢ物語と現実が交錯していくさまを描いている。
■サマリー
[Ⅰ太平洋へ向かうベクトル]
黒船の衝撃が旧体制を崩壊させ、日本人は外圧対策として日清、日露戦争へと進んだ。日露戦争後、脅威の対象は、太平洋を越えて対峙する黒船の国アメリカに向かった。最初の未来戦記、水野広徳の『次の一戦』は、そうした米国に備えよと軍備拡張を主張した。米国では、極東で力を増す日本の脅威を綴ったホーマー・リーの『無知の勇気』が人気となった。
[Ⅱ日米未来戦記の流行]
第一次大戦の時代、日米未来戦記はブームを迎えた。樋口麗陽、押川春浪、佐藤歌鋼次郎、、、といった流行作家が次々生まれた。米国は悪だ、恋やヒーローの冒険、軍拡プロパガンダ、出版社の思惑などが互いに刺激しあう。一方、第一次大戦下の欧州を視察した水野は、近代戦争の悲惨さを知る。英国では、ジャーナリストのバイウォーターが、軍事データと知識に基づく緻密な日米戦シュミレーション『太平洋海権論』『太平洋大戦争』を書き上げた。
[Ⅲ物語と現実の交錯]
水野は、『海と空』『日米興亡の一戦』で東京が空襲される悲惨な姿を描いた。他の作家たちの空襲は、SFや楽天的なエンターテイメントの要素が強く、開戦の空気を励ますことになった。山本五十六は、バイウォーター『太平洋大戦争』をほぼ踏襲する作戦を立て、戦争の結果も同じシナリオを辿った。
■特徴
・通常の歴史書と違って、一般庶民の空気感を読み進めながら感じることができる。
・詳細で緻密な文章から、知らなかった歴史の事実をいくつも発見することができる。
・「日本人は、なぜ米国と戦おうとしたのか」「なぜハワイを奇襲したのか」など、推理小説のように読むことができる。 -
Posted by ブクログ
『言葉の力』
サブタイトルには《「作家の視点」で国をつくる》とある。
著者は、日本の言語技術を底上げして国力を上げる必要性があると説いているように思える。
第二部に「霞ヶ関文学、永田町文学を解体せよ」とあるように、日本中枢の現状を特に憂いているように思える。
小泉純一郎元首相には「言葉」があったが、その後の首相たちを見ていると「言葉の力」が次第に失われている、とある。
まあ、これには激しく同意できる。
一般的には第一部・第三部を読めば良いと思うが、結局、言語技術を上げるには、沢山の本を読み、歴史を学ぶことにあると感じた。
しかし、言語技術を上げなきゃいけない人ほど本を読まないという現実がある、というジレンマがあるとも思った。