【感想・ネタバレ】猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」第8巻 日本人はなぜ戦争をしたか 昭和16年夏の敗戦のレビュー

あらすじ

「模擬内閣」の結論は「敗戦必至」。しかし、戦端は開かれた――。

収録作の原題は『昭和16年夏の敗戦』(1983年8月世界文化社刊、1986年8月文春文庫、2010年6月中公文庫)。日米開戦の知られざる事実を掘り起こし、「記録する意思」を貫徹した、猪瀬直樹36歳、初期の力作。

開戦直前の昭和16年夏、「内閣総力戦研究所」に軍部・官庁・民間から集められた、将来の指導者たる選りすぐりのエリート36人。平均年齢33歳の若き俊英は「模擬内閣」を組織し、シミュレーションを重ねて戦局の展開を予測する。結論は「敗戦必至」。しかし、戦端は開かれた――。埋もれていた記録と証言から明らかにされる開戦秘話。最高意思決定機関の空虚とは何か。官僚的意思決定とは。そこに成立する日本国とは。近代日本への問題意識が凝縮する一作。

本書には巻末に文庫にはない、初期著作における問題意識の萌芽と発展に関連して「特定財源の起源と田中角栄」(原題「田中角栄はなぜ不死鳥か?」『BIG MAN』1981年11月号初出)を収録。『昭和16年夏の敗戦』の成立事情にも触れる。また、園田英弘氏「『記録する意思』と『現実を直視する勇気』」、若田部昌澄氏「敗戦を繰り返さないために」、橋爪大三郎氏「現実から目をそむける意思決定の恐ろしさ」(いずれも2002年刊『猪瀬直樹著作集第8巻』のための書き下ろし)を収録、社会学、経済学の立場から本書を解説する。

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Posted by ブクログ

対米戦争は「日本陸軍=東條英機の暴挙」海軍と国民は犠牲者、が刷込まれた固定観念
教育の効果は大きく恐ろしい
本書は猪瀬直樹氏が「事実」を整理・突きつけ、日本国の責任を告発した歴史に残るもの
歴史は意思決定の積み重ねが生んだ「必然」の記録
責任を問われるべきは、一つ一つの意思決定なのだ
歴史を学ぶことの必要性と意義がそこにある

「総力戦研究所」 現代に知られていないが日本国が機能していた証左
言葉では総力戦といっても、戦争の根本概念が変わったので、戦略・組織体制・人事全てが変わらなければならないはず
「パラダイムシフト」
過去の成功体験・現在の担当者の自己保身などから組織は現状肯定
強力なトップリーダーがなければ進まない
ex銀行のリテールシフトもそう 中小末残との優先順位 リレバン
 スルガ銀行のようには出来ない 当行も主要地銀も 首都圏はありうる
志村正 海軍大臣 (海軍大学首席・総力戦が卒論)
「対米戦争に勝てるわけが無い」と言い切る凄さ
わたしも彼の一割のレベルにでも近づきたいと思う

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2020年08月21日

Posted by ブクログ

伊勢湾での海軍夜戦模擬演習のあと、山本五十六連合艦隊司令長官は研修生に感想を求めた。「潜水艦対策や砲撃戦は見事でしたが、航空機に対する備えが弱いような気が・・・。」海軍の弱点を衝かれ、山本が唸った。「よし、ウィスキーを1本やろう」 山本にみる戦争回避派と、軍部開戦派とのそれぞれの人間関係、さらには内閣総力戦研究所の研修生との関係を織り交ぜながら、日米開戦への過程を詳細につづる。東條英機の苦悩は、あらためて太平洋戦争の意味を考えさせられる。

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2010年10月06日

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ものごとを始めるのは簡単だがやめるのは難しい。ということか。。開戦前にあれだけの答えがでていながら、そして関係者が皆知っていたのに、やめられなかった、ということか。

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2010年08月10日

Posted by ブクログ

まさか模擬内閣があったとは。。。
ここまで詳細に書くためには、、、全国津々浦々、取材に取材を重ねて、、、とても大変だったと思う。

やっぱり、石油の供給が第二次世界大戦のキモ。その数字を都合よく捻じ曲げて、何とか需要を満たせると判断したのが、負け戦の始まり!が、よくわかった。

猪瀬さん、令和の世では面倒なおじさん扱いされてますが、、、都知事に、片山財務大臣の元夫、やっぱり凄い人だったのだと再認識。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

1983年の書。

各省庁と民間から集められた精鋭が、日米開戦後の必敗の筋書きを正確にシミュレートしてみせ、それを東條英機が直接聞いたにも関わらず止まらない開戦への流れ。読んでて恐ろしくなるほどの典型的な日本的集団的意思決定プロセス。自分の会社の会議の雰囲気とそっくりで空恐ろしくなった。

東條英機が、単なる小心で忠実な能吏に過ぎない、という評価はもはや定着した感あるが、1983年当時は、センセーショナルだったんだろうか。

東條英機の孫が学校で先生からも虐められたくだりは、泣けてくる。歴代最も人気のない総理大臣だろうが、その時その場で最善を尽くしたのであろう特定の個人に全てを帰するのは、何か違うと思ってしまう。

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2021年05月18日

Posted by ブクログ

昭和史を考える上で、やはり中心となるのは、なぜ戦争に至ったのかという点であり、その背景を理解するための良質のドキュメンタリーである。 特に大きな判断根拠であった、石油備蓄とその需給に関する試算が、以下に「判断ありき」の数字合わせであったかという点に、通常のビジネスにもつながるものを感じる。

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2014年11月22日

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日米開戦前。昭和16年夏。
軍部、官庁、民間から招集された内閣総力戦研究所の研究生36名。平均年齢33歳の彼らは「日本とアメリカもり相手戦わば?」という問いに対して結論を出した。その答えは「日本必敗」という現実。
日米開戦は避けねばならぬ!と主張した彼らの意見は聞き入れられず、その年の12月に真珠湾への奇襲攻撃が結構され戦争が勃発してしまう。
なぜ日本人は必敗と知りながら戦争に突き進んだのか?この本を読んで初めて知った総力戦研究所の存在がとても新鮮な驚きがありました。
東条英機氏に対する考え方も少し新鮮で面白かったです。

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2013年04月29日

Posted by ブクログ

軍部が暴走したことが日米開戦の引き金、と言われてきたが、開戦前の内閣および新たに作られた総力戦研究所の奮闘と困惑が記されている。
近衛内閣時代に決定された基本国策(日米開戦)を、あえて東條内閣にすることで、開戦回避に向けて努力をしようとする天皇、そしてその意を汲んだ東條首相は、流れを変えようとするが、自分の組織の都合で思考・発言し、決断を迫る海軍・陸軍に打ち手を阻まれ、結局開戦を選択してしまう。
開戦前に新設された総力戦研究所では、日米開戦のシミュレーションの結果、必敗を提案したものの、内閣には受け入れられなかった。というか、分かってはいるが、それを目の前に突き付けられても判断が出来なかったということだろう。
これまでの、努力の積み重ね、議論で得られた方向性を、ただなぞっていくだけで、それを変えられなかったのは、東條首相だけでなく、各組織体の幹部の無責任に起因するのだろう。どこの組織にもあてはまりそうで、ちょっと怖い気持ちにもなる。
しかし、猪瀬直樹氏の丁寧な取材に基づく、精緻な筆致が印象的である。

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2013年04月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

軍事問題に精通している自民党 石破氏が国会答弁中に歴史認識について言及する中で紹介した本。

日本が敗戦するのは、S20年であることは、周知の事実だが、この本では、S16年となっている。

というのも、実は、S16年には、国家公認の疑似内閣が結成され、戦争に踏み切った場合のシュミレーションが行われ、ひとつの解答を得ていたのだ。

このシュミレーションは、単純な軍事的衝突だけでなく、国民への物資配給についての見解など国民生活の細部に至る総合的な検証がなされていること。また、疑似内閣の構成員が若手エリートコースを歩む陸軍、海軍、マスコミ、省庁関係者等であり、次世代の日本において大きな影響を持つ確率が非常に高い人間が選抜されていた点に特徴がある。

結果として、軍事的衝突に勝算は無く、国民生活への甚大な被害は免れない。つまり「敗戦する」という結果をS16年夏に出し、内閣に提出した。しかし、内閣はこの結果を活用することが出来ず、戦争に突入し敗戦した。

戦争を感情論で片づけていないため、政治的判断の難しさに関して非常に参考になる一冊である。

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2012年06月14日

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太平洋戦争は軍部の暴走という認識が改まった。
戦争に向かう過程は現在の日本型意思決定システムに通じるものがある。

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2010年12月30日

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太平洋戦争で日本が敗戦したのは昭和20年。
昭和16年夏、戦争に突入する前である。
なぜ、戦争勃発前に「敗戦」したのか、なぜ「敗戦」してもなお太平洋戦争に突入したのか、本書では当時の資料をもとにその謎を解き明かす。

大変素晴らしい本であるが、近代史等の予備知識なしに読み進めるのは大変労力を要するので、学生ならば歴史資料集、手元に資料集がなければ山川出版社の「もう一度読む日本史」を傍らに置いて読むことをお勧めする。

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2012年05月29日

Posted by ブクログ

第二次大戦で日本が敗れることを予見していた人は少なからずいたっていう本、ドラマって結構あったと思う。この本では政府が組織した研究所でもそう結論づけたところがあったとする所が目新しかったのだろう。さらに東条首相もその結論の重大性を認識していたからこそ、口外しないように研究所員に言っていたのだろう。
かしながら、戦争は起こってしまった。
残念ながらこの本を読んでもなぜ戦争をしたのかはもやもやしたままだ。「短期なら持ちこたえられる」という楽観論や「米国の仕打ちにはもう黙っておれぬ」という義侠心がそうさせたのか?
誰かの決断によって為された訳ではなく空気によってみんなで決めたということなのだろうか?
首相のころころ変わる現代の日本人のこのような決定方法はずっと進化、変化していないように思われる。現代の日本にも現代版の「総力戦研究所」が必要なのではないか。

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2011年10月18日

Posted by ブクログ

太平洋戦争前、当時の政府において数多くの人が破滅への道だと考えながら組織や過去の成功体験に縛られ流されていく。後から結果論でいうことは簡単だが、本当に意思決定というのは難しいと思う。

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2011年02月28日

Posted by ブクログ

昭和16年 30代を中心とする若き頭脳が、政府の依頼で日本開戦後のシュミレートを行いました。そして数度の条件変更・行動指針変更を強いられても、出た結論は日本は負けるということ。
彼らに悲壮感は感じられないが、日本必敗の結論を政府が黙殺した事には無力感を感じたことでしょう。
本をほとんど読まない私でも、スムースに読めたので、太平洋戦争に興味あればどうぞ。

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2009年10月04日

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