あらすじ
東京の都市開発を東急グループ五島慶太を軸に検証した近代日本論。
『ミカドの肖像』の続編として書かれ、「ミカド三部作」の一環をなす『土地の神話』(1988年11月小学館刊行、1993年5月新潮文庫、2013年2月小学館文庫)を収録。
「電車通勤」というごく当たり前のライフスタイルの背景には、東京の都市開発をめぐる理想と挫折の物語があった。ロンドン近郊の田園都市をモデルにした街づくり構想に取って代わったのは、鉄道敷設の野望に満ちた一大不動産事業。関東大震災後、東京という特異な街がいかにして出来上がっていったかを、東急グループ創始者・五島慶太を軸に検証する。現代に暮らす日本人の自画像を描く、『ミカドの肖像』に続く出色の近代日本論。
本書には巻末に文庫にはない、会田雄次氏との対話「『土地の神話』をめぐって」(『週刊ポスト』1988年1月5日/10日合併号初出)や、船曳建夫氏との対話「天皇のディスコース」(『週刊読書人』2001年9月28日号初出)を収録。また、泉麻人氏による文庫版解説「五島慶太のシム・シティー」(新潮文庫版)のほか、吉岡忍氏の書評「田園調布はなぜ“田園都市”になれなかったか」(『週刊文春』1989年2月2日号初出)などを収める。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
私を猪瀬ファンに変えた作品です。
この著作を端的に言えば、「五島慶太伝」+「東京都市開発論」その比率、3:2。
前編である『ミカドの肖像』に比べて扱ってる事件が古いものが多いので、その辺の取っ付き辛さがあるかもしれませんが、『ミカド』より文章が上手だなあという印象です。続編扱いですが、単独で呼んでも十分楽しめます。
資料の引用の仕方も信頼性が高いので安心して読めます。「日本の鉄道史」と「イギリスの都市計画史(田園都市=Garden City)」という一見相容れない要素を結びつけるという発想の素晴らしさには目を見張るものがありますが、その両方に興味がないと結構なボリューム感があるので読んでいてしんどくなる作品だと言えます。
個人的には容易に入手可能な五島慶太伝の中ではかなり批判的な作品なので「逆に」新鮮で面白いなと思っています。
猪瀬氏は人を疑うことの本当に巧みな方だと思います(良い意味で)。ただ、五島慶太伝としては田園都市開発にスポットを当てているので、1940年以降の記述に関しては省略も多く、読む人によっては物足りないと感じるでしょう。さらに本論に関係のない人物の解釈については十分とは言えず「不当な評価かなあ」と思う部分もあったりします。
また、文中疑問として投げかけられている部分が最後まで結論らしい結論が無かったりと、読んでいてどういう方向に落ち着くのかがよくわからない印象も持ちました。
とはいえ、戦前の都市開発史を論じた読み物としてフツーに面白い作品だと言えます!
久々に面白い本を読ませていただきました。
Posted by ブクログ
東京開発において、渋沢栄一の息子がかかわった田園都市株式会社の発足から、関東大震災、太平洋戦争を経た東急電鉄のかかわりについて記載してある。鉄道が不動産業という認識を持つことで、東急は大きくなっていったようだ。