長谷川眞理子のレビュー一覧
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ここのところ山岸俊男さんの本を3冊続けて読んでいるのだけれど、それは社会心理学者の山岸俊男さんが観る社会の景色を共有したいとおもってからだった。
でも、山岸さんの本はかつて読んだ記憶があるのだが、専門的で重厚で立ち向かうのに苦労した記憶があった。
この本も、そして数日前に読んだ『リスクに背を向ける日本人』もそうだが対話を書籍にしているので、対談相手が見つめてる景色との対照性で、ずっと読み易くなり山岸さんが観ているだろう景色もくっきりと立ち上がってくる。
そして今回の対談のお相手の長谷川眞理子さんが行動生物学、進化生物学を専門にしているということもあって、山岸さんの見つめる現代社会の姿を、 -
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カタツムリは学習する。フィンチは道具を用いる。イルカは言語を使う。犬は意識を持つ。オランウータンは鏡の自分を認識する。ニホンザルは文化を伝達する。ゾウは仲間の死を悼む。そしてそれらの全ては、性と子孫を持つ。
個体が生きるために必要な能力でないため忘れられがちだが、生殖に失敗した個体から種に引き継がれる形質は一つもない。
すなわち獲物を捉える強力な爪と牙よりも、なんでも食べる消化能力よりも、どんな病気にもならない免疫機構よりも重要なのが生殖能力であり、全ての生物が、複雑で困難な生殖と出産という継承システムを現代に至るまで脈々と成功し続けている。
そんな進化と遺伝の賜物である生殖能力は、生物のあ -
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社会心理学者と進化生物学者の対談。話がかみ合っていて、内容は結構深い。逆説的なタイトルは、集団内で問題を起こさないようにするネガティブな協調性として取り上げているようだ。理念ではなく、客観的事実に基づいて政策決定することを主張する最初の章は読みごたえがある。
多産か少産かの戦略の違いは、その生物の置かれた環境に関係している。生存環境が飽和状態であれば、子どもの数を限定して、一人の子に資源と時間を割いて育てる必要がある。生存環境が飽和していない場所では、子どもは産みっぱなしでいい。
ヒトは母親だけで育児はできない。子育てを母親だけでやる社会はどこにもない。配偶者、家族、属している集団メンバー -
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生物学について、このような本を待っていた。原理原則が明確で、トピックも豊富。そして、多くの謎に迫りたくなる本。分かりやすいのに、内容は深い理想的な本。
・変異の主な源泉は、突然変異と性による遺伝子の組み換え。
・分子時計
・種にも色々ある。1)形態的 2)生物学的 3)認識的 4)進化的
・輪状種
・熱帯地方は、冷温帯に比べて気候が安定しており、予測性の高い環境と言える。そこで、熱帯地域には、安定して存在するミクロな環境が多数存在するのでは。
・また、熱帯は気温と湿度が高いので、生産性が高く、死んだ生物の分解も速くなり、餌条件がよくなる。
・数理モデルに基づいた最適化の理論と自然淘汰の結果が -
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生物学、その中心的テーマたる進化というものについて、この分野の代表的な研究者による入門書。生物学の入門書としてはバツグンに面白い。手堅い内容でありながら、その語り口は恐ろしいほど分かりやすい。生物学、進化論といった学問うんぬんの前に、「我々はどのようにして、かくあるようになったか(そして、どうなっていくのか)」という生物学(だけに限らないけど)の基本的なテーマの好奇心を刺激させる圧倒的な魅力が、この本を読みやすくしてるんだろう。生物そのものに関心を抱かない人なんていないだろうし。そして、そんな生物に対する熱い思いが冷静で堅実な著者の筆致からひしひしと伝わってくる良書でした。
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進化生物学の第一人者が遺伝子、言語、自意識の謎に迫るとても興味深い本。
人間とは一体何者なんだ?というテーマに様々な観点から論じるが、結局のところ人は幸せになったのかということを問うている。各テーマにおける著者の考えを自分なりに深く掘り下げ思考するのに最適な本。
人類600万年史。ホモ属の200万年史、ホモ・サピエンスの30万年史のほぼ全てにおいて人類は狩猟採集生活を行い、定住はせず、食料を求めて移動していた。
この人類の進化史において、身体の構造、酵素の働き、脳の基本的な働きなどこのような生活に適応するするように進化してきた。
約1万年前、農耕と牧畜という新しい生計活動が始まった。
この人 -
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久々のジャレド・ダイアモンド。第三のチンパンジー「完全版」もう30年も経つとは… その後の研究成果で博士の予想が外れてたりもしてるが、今読んでも興味深いテーマ。他の動物と比べたヒトの特異点を探っていき、「大躍進」の秘密を探ろうという内容。700万年前に類人猿と分岐して以来、解剖学的に現代人と同じ人類は10万年前に現れているが、「大躍進」はたかだか1〜2万年前で、何がそのきっかけになっているのか。言語が最も重要で、それによって文化や芸術も発展してきたと予想。どの本でもそうだが、博士の博識ぶりに感嘆させられる。ユヴァル・ノア・ハラリがサピエンスを書くときに相談を持ちかけたのももっともだと思わせる。