【感想・ネタバレ】美しく残酷なヒトの本性 遺伝子、言語、自意識の謎に迫るのレビュー

あらすじ

■他の動物とは違う“ヒトの本性”がわかる! ヒトは美しくもあり、また残酷な生き物だ。赤子のときは利他的な行動を取るのに、なぜ大人になるにつれて利己的になってしまうのか。「人の能力を決めるのは遺伝か環境か」という論争はなぜ不毛なのか。チンパンジーにヒトのような言語能力はあるのか。魚にも自意識はあるのか――。遺伝子、言語、自意識という3つの謎を進化生物学の知見から読み解き、“人間の正体”に迫る。 ■本書の要点 ●ドーキンスの『利己的な遺伝子』は誤解されている ●チンパンジーは言語の意味を理解できない ●魚にも自意識がある!? ●ヒトは本来、他者に優しい生き物 ●潔癖、肥満、運動不足という「現代病」 ■目次 ●第1章:生き物の世界 ●第2章:ヒトに固有の特徴は何か ●第3章:「遺伝か環境か」論争の不毛 ●第4章:ヒトは本来「利他的」なのになぜ争うのか ●第5章:「現代病」に陥る人類 ●第6章:ヒトを育てる、人を育てる

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Posted by ブクログ

もとは月刊誌『Voice』2021年1月号~23年12月号連載のエッセイ風の「巻頭言」。だれもが目にする巻頭言がこの内容! ちょっと驚き。
ヒトの本性とはなにか。それが生物学的に平易に解説されている。進化心理学の入門書として読むこともできそうだ。
ただ、書名と帯がオカシイ。著者は、ヒトの本性が「美しく残酷」だとは言っていない。帯には「人間の遺伝子は利己的か? 利他的か?」とあるが、こんな議論もしていない。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

進化生物学の第一人者が遺伝子、言語、自意識の謎に迫るとても興味深い本。
人間とは一体何者なんだ?というテーマに様々な観点から論じるが、結局のところ人は幸せになったのかということを問うている。各テーマにおける著者の考えを自分なりに深く掘り下げ思考するのに最適な本。

人類600万年史。ホモ属の200万年史、ホモ・サピエンスの30万年史のほぼ全てにおいて人類は狩猟採集生活を行い、定住はせず、食料を求めて移動していた。
この人類の進化史において、身体の構造、酵素の働き、脳の基本的な働きなどこのような生活に適応するするように進化してきた。
約1万年前、農耕と牧畜という新しい生計活動が始まった。
この人類という生物の進化史を考えると、最近の変化は異様なほど速く、この環境に遺伝子は全く追いついていない。現代の諸問題から来るストレスのほとんどは環境の影響だろう。

第4章ヒトは本来「利他的」なのになぜ争うのか
は大変興味深い。社会の運営をどうするのが良いかについて、全員に共通する目標はすぐに設定できないという論点。このあたりがポイントになる。
この章の中でジョン・ダワーの『戦争の文化』が紹介されている。現代社会の紛争をより深く考察するために必読の書だろう。

あまりページを割いて論じてはいないが、ソーシャルメディアは社会の分断を深めているというテーマ。最近の選挙等を見ていると真にその通りだと思う。またの機会に著者のこのテーマを深堀りしたエッセイを読んでみたい。

この本は月刊誌『Voice』の巻頭言の連載をベースにしたもの。各テーマとも進化生物学者の目線での考察。簡易な文章で僕にとってはとても有益な本だった。

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2025年07月29日

Posted by ブクログ

人間の遺伝子は利己的か、利他的か。その二項対立を超えた本性を描き出す。進化の歴史が育んだのは仲間を思いやる美しい力と他者を排してでも生き延びようとする残酷な力の共存である。利己性は個体を守り利他性は集団を強くした。どちらも人間を形づくった不可欠な戦略だった。だが現代ではこの二つが社会の中で軋みを生む。自己を優先する行動が連帯を壊し思いやりが損得に揺らぐこともある。それでもどちらの力を育てるかは私たちの選択に委ねられている。美しさを選ぶ意志こそが人間の進化の続きなのだ。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

ヒト以外の動物の自意識に関する研究が面白かったです。

技術の発達にヒトの進化が追いついてないために現代社会では様々な齟齬が生まれているというお話でしたがまさにその通りですよね
これから先、人類はどのような進化の道を辿るのか興味が尽きません。


エピジェネティック→遺伝子は同じでも表現型に違い、育つ環境からの刺激により遺伝子の働きをオンオフする

動物のコミュニケーション→情報の伝達、受信者を操作
ヒトのコミュニケーション(言語)→心の共有
ダワー「戦争の文化史」
内集団と外集団の区別

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

人類学関係の参考文献で名前は存じていたが、一般向けの書籍は少なそうだったので初めて触れたように思う。
人類学の入門書といった構成でもなく、いくらか筆者のキャリアについて触れられたのは収穫にせよ、ある程度文化人類学のテキストに触れた読者からすると、既知の内容も多く一方で表題は版元の意向もあってか扇情的なのが気になる。
PHP新書に手放しで称賛したくなるものが少ないのは最近の個人的な印象。

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2025年08月23日

Posted by ブクログ

ヒトが他の動物と何が違うのかということを、専門の人類学者の領域をややはみ出して、個人の考え、感想を付け足して論じている。進化論の解釈や、「利己的な遺伝子」の一部の評価に対する反対、人間らしさは調理という認識など、著者なりのこだわりポイントが随所にちりばめられている。根っこに今の人間社会が決して一番進化している、とは思っていない、これはAIやデジタル、食物技術の進化、また愚かな戦争など最近の様々な技術やコミュニケーションの歴史上あり得ないスピードでの変化に対する著者の危機感を感じた。個人的にも環境問題はじめ今の世の中は昔より破滅に向かっている気もするので、その点が一番共感できた。ただ★3なのはやや話が散らかっている印象をもったため(雑誌の連載だから仕方ないけど)

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2025年08月11日

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