柴田哲孝のレビュー一覧
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ネタバレ戦後史上最大の謎といわれる「下山事件」。その実行犯は自分の祖父なのではないか? という疑問から始まる、とてもスリリングなレポでした。吉田茂、白洲次郎、伊藤律などなど、聞いたことのある人物の名前が次々と絡んできて面白かった。
自殺か他殺かも意見が別れるなか、最後の証人・柳井乃武夫が、「"自殺説"というのはまったく考えられない。線路上の轢死体を我々はマグロと言うんですがね。運転士には本当に迷惑な話なんです。それを運転士の親方の、運転屋で一生暮らしてきた下山総裁が自ら飛び込んでマグロになるなんて、絶対にあり得ないんです。当時の国鉄内部の空気としてはそうでしたね」と証言したというの -
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古き良きハードボイルドのお手本のような(^ ^
殺し屋の男はあくまで孤独でストイックで、
女は男の唯一のより所になるが、さらわれてしまい(^ ^;
ただ清く正しすぎて、正直 展開は読める(^ ^;
が、そんなことは気にならない程度で、様式美の範疇。
「悪い」警官、小心者の売人、メンツで動く殺し屋など、
それぞれの登場人物がじつにリアルに描かれている。
また、実際に起きた事件や災害などをうまく絡めて、
物語が「起こるべくして起こった」描写が見事。
柴田氏の筆致は、あくまでドライでクールで
「観察する眼」に徹しているように見える。
それでいて緩急が自在で、緊迫するシーンでは
読みながらこちら -
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柴田哲孝のノンストップ・アクション・ミステリー。
妻の殺害容疑で千葉刑務所に服役している笠原武大は、脱獄を果たす。ある目的のために...
そして、祖父母に育てられていた笠原の娘の萌子が、誘拐される。
果たして、犯人は誰なのか。
笠原の捜索の指揮を取るのは、公安の田臥と室井。
なぜ公安の自分達が、脱獄犯を探すのか?
追うものと追われるもの、それぞれの思惑と疑念が複雑に交差する。
ハラハラドキドキしながらも、脱獄犯の笠原が、持ち前の頭脳と体力で、様々な困難を乗り越えて行く姿に、思わず共感してしまいます。
また、この父にこの娘あり。
娘の萌子の活躍に、途中ハラハラしますが、最後は、思わず -
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非常に「分類しにくい」小説である(^ ^;
秩父山中に暮らす「未知の犬科の生物」が、
家畜や人を襲うようになって、「まさかとは思うが、
ニホンオオカミが生きてんじゃね?」
って話になって。
人的被害も出ているので、「害獣駆除」という話になる。
が、ありがちだが「お役所仕事」で後手後手に回る
行政の無能ぶり。
いわゆる「社会派小説」という側面もある。
正体不明の「犬科の大型ほ乳類」に襲われるあたり、
パニック小説でもあるわけだし、
敵の正体が判明するまでは「謎解き」要素も多く、
ミステリ小説でもある。
綿密な取材に基づき、科学的にも論理的にも
破綻のない「敵の正体」は、さすが柴田氏の
面 -
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究明に至らず未解決のまま真相が闇に葬られた国鉄三大事件と呼ばれる事件があった。
無人列車が暴走して線路脇の商店街に突っ込み死傷者をだした三鷹事件、
夜間にレールが外され通過中の列車が脱線転覆し乗務員三人が死亡した松川事件、
失踪した初代国鉄総裁下川定則が翌朝に轢死体となって発見された下川事件である。
ある日、著者が親族との宴会の席で酔った大叔母が、兄は下川事件に関わってかもしれないと口走った。
下川事件のことを全く知らない著者は、事件について調べていく。
三越百貨店に運転手を待たせて入店した下山総裁は行方不明となり、翌朝常磐線の北千住綾瀬間で轢死体として発見された。
自 -
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ストーリー的には、基本構造はとても単純。
人を殺し、金を持って逃げる男と、それを追う探偵。
突き詰めてしまうと、それだけ。
そこに、東日本大震災がリアルタイムに絡むことで、
物語にリアリティと奥行きが出て来る。
被災地の描写は、正に我々がリアルタイムで見ていた、
ニュースの中の映像そのもの。
漂う寂寥感と無力感。
そこに、謎の女が絡み、追う者・追われる者・
追うことを依頼した者の思惑が絡んでくる。
が、ストーリーはあくまでシンプルである。
本作は、東日本大震災を経験した者は、
思わず襟を正しながら読んでしまう、
そんな一冊である...というのが全てか。
ただし単純な話ではあるが、著者の -
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柴田哲孝『WOLF』角川文庫。
ノンフィクション作家・有賀雄二郎を主人公にした未確認生物シリーズ。最初に有賀が登場した『KAPPA』から22年、50歳を過ぎた有賀は千葉の海でロングボードを楽しむ健在ぶり。
今回のテーマは非常にリアリティがあり、ロマンが感じられた。
奥秩父で狼らしき謎の動物が家畜や人間に被害を与える事件が頻発する。林野庁の埼玉環境保全担当からの依頼で、有賀はカナダの大学で森林科学を学ぶ息子の雄輝と共に事件の調査に乗り出す。果たして、謎の動物の正体は絶滅したはずのニホンオオカミなのだろうか。
柴田哲孝の作品はフィクションでありながら、ノンフィクションのようなリアリティがあ -
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このところ軽めのものばかり読んでいたので、
久々に「ガツんとした骨太の作品」が読みたくて。
結果的に、期待に違わぬ骨太感。
ストーリー的には派手な展開は何も無い。
警察的には「地味な」変死体発見から物語が始まる。
はっきり言って「面倒くさいから」、
事件性無しで済ませたい上司。
が、ベテラン刑事は何か引っかかるものを感じる。
そのベテランを慕う若いペーペーの刑事。
どちらも仕事の合間を縫って、
警察内部ではもう「処理済み」のこの案件を
個人的に追い続けて行く。
刑事の勘と執念は侮れない。
上司に内緒で有給を使ってまで現地調査をする
二人の前に次々と新しい事実が現れてくる、
最終的には -
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探偵・神山健介シリーズの第五作。相変わらず面白い。物語は東日本大震災の発生した2011年3月11日のいわき市で始まる。同僚の議員秘書を殺害し、6000万円を奪い、逃走した坂井保邦を追って、神山健介は愛犬のカイと共に沿岸の被災地を北上する…
このシリーズはシリーズを重ねるたびにスタイルを変える探偵小説で、今回は大きな社会問題を題材にしている。東日本大震災、原発事故の描写がドキュメンタリー作品のようにリアルであり、現実と虚構の境目が分からなくなるほどだった。
これだけ東日本大震災と原発事故の現実を描いておきながら、最後にどんな答えがあるのか興味深かったが、十分に納得のいく答えが用意されていた。 -
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「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、この本を読んでまさにそう思った。どんな推理小説よりも謎めいていて、また圧倒的に面白い。乱歩も横溝もこんな面白い作品は書けないだろう。むろん、ノンフィクションとはいえ著者の主観も入っているから、すべてが「事実」だとは思わない。著者の親族にインタヴュウしているので、そういった点も差し引いて考える必要はあるであろう。ただ、それでもやはり絶対的に面白く、また「途轍もない」作品であることには変わりはない。昔から未解決事件について関心はあったが、これほど深い闇が広がっているとは思いもよらなかった。キイ・パーソンを挙げてみても、一般に名前を知られているだけでも佐藤
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いや、これは...
久々に骨太というか...
読みでがある大作でした(^ ^;
ここんとこずっと「日常の謎」的なミステリばかりで、
こういう固く、太く、重いものとはご無沙汰で。
若い頃は落合信彦とかむさぼり読んでたし、
こういうものも決して嫌いではないのですが...
なかなか頭が着いていかず(^ ^;
とにかく話のスケールがでかい。
戦後国鉄の三大ナゾの事件の一つがテーマで、
GHQやらCIAやら総理大臣やらまで巻き込んで。
さらに満州事変から日中戦争、戦後の安保まで含む
その「大きな歴史の流れ」の裏面に隠されてきた
下山事件の真相に迫るというハラハラドキドキ。
しかもこの下山国鉄総裁 -
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帯によると、事実に基づいたフィクションとのこと。太平洋戦争に秘められた五つの物語。傑作『下山事件 最後の証言』や『GEQ』と同じように事実とフィクションの境界線の無い物語であるようだ。どの物語も悲惨な戦争という史実に隠された真相に迫り、非常に興味深い。
『超空の要塞』では、あの東京大空襲を日本政府は事前に把握していたという驚愕の真相が描かれており、『下山事件 最後の証言』の流れで物語が展開するので、真実味が増している。
『目ン無い千鳥の群れ』も『超空の要塞』からのつながりで、真珠湾攻撃の真相に迫る面白い物語である。アメリカが事前に真珠湾攻撃を知っていたという、今では常識の話ではあるのだが…