柴田哲孝のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ストーリー的には、基本構造はとても単純。
人を殺し、金を持って逃げる男と、それを追う探偵。
突き詰めてしまうと、それだけ。
そこに、東日本大震災がリアルタイムに絡むことで、
物語にリアリティと奥行きが出て来る。
被災地の描写は、正に我々がリアルタイムで見ていた、
ニュースの中の映像そのもの。
漂う寂寥感と無力感。
そこに、謎の女が絡み、追う者・追われる者・
追うことを依頼した者の思惑が絡んでくる。
が、ストーリーはあくまでシンプルである。
本作は、東日本大震災を経験した者は、
思わず襟を正しながら読んでしまう、
そんな一冊である...というのが全てか。
ただし単純な話ではあるが、著者の筆力で
ぐいぐいと引き込まれて読めるのはさすが。
エンタテインメントとも言い切れないが、
とても興味深く読ませていただいた。 -
Posted by ブクログ
このところ軽めのものばかり読んでいたので、
久々に「ガツんとした骨太の作品」が読みたくて。
結果的に、期待に違わぬ骨太感。
ストーリー的には派手な展開は何も無い。
警察的には「地味な」変死体発見から物語が始まる。
はっきり言って「面倒くさいから」、
事件性無しで済ませたい上司。
が、ベテラン刑事は何か引っかかるものを感じる。
そのベテランを慕う若いペーペーの刑事。
どちらも仕事の合間を縫って、
警察内部ではもう「処理済み」のこの案件を
個人的に追い続けて行く。
刑事の勘と執念は侮れない。
上司に内緒で有給を使ってまで現地調査をする
二人の前に次々と新しい事実が現れてくる、
最終的には、なかなかな「え、そう来るか」的な
どんでん返しが待ち受けている。
本作をこれから読まれる方に、
一点だけアドバイスさせていただくと...
登場人物が多くて、またそれぞれの人生が
かなり密度濃く語られて行くので、
半端な気分で飛び飛びに読んでたりすると
途中でついて行けなくなります(^ ^;
本作は「一気読み」をおすすめいたします m(_ _)m -
Posted by ブクログ
「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、この本を読んでまさにそう思った。どんな推理小説よりも謎めいていて、また圧倒的に面白い。乱歩も横溝もこんな面白い作品は書けないだろう。むろん、ノンフィクションとはいえ著者の主観も入っているから、すべてが「事実」だとは思わない。著者の親族にインタヴュウしているので、そういった点も差し引いて考える必要はあるであろう。ただ、それでもやはり絶対的に面白く、また「途轍もない」作品であることには変わりはない。昔から未解決事件について関心はあったが、これほど深い闇が広がっているとは思いもよらなかった。キイ・パーソンを挙げてみても、一般に名前を知られているだけでも佐藤榮作や岸信介といった首相経験者や、笹川良一や児玉誉士夫といった大物がつぎつぎに浮上してきて、しかも相互になんらかの形でかかわりを持っている。よく知られた日本共産党やGHQといった陰謀説に加え、南満洲鐵道までかかわってきて、もうとにかく圧倒される。あまりにもスケールが大きいのだ。こういう戦いに挑んでゆく著者の姿勢もすばらしいが、それをひとつの物語として整理してゆくことがどれだけ大変なことであろう。自殺説、他殺説、陰謀説、替え玉説、言及されるそれぞれの内容じたいにも興味は持ったが、あえて結論は濁して書いてあり、また、矢板玄氏に対してすべてを訊けたわけでもなさそうだ。そういった部分での消化不良感はあるが、しかしそれも気にならないくなるぐらいのクオリティがあるので、とにかく読ませる作品になっている。読み終えたあとも、事件のことを調べずにはいられなくなる。わたしもまた「下山病患者」なのかもしれない。
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Posted by ブクログ
いや、これは...
久々に骨太というか...
読みでがある大作でした(^ ^;
ここんとこずっと「日常の謎」的なミステリばかりで、
こういう固く、太く、重いものとはご無沙汰で。
若い頃は落合信彦とかむさぼり読んでたし、
こういうものも決して嫌いではないのですが...
なかなか頭が着いていかず(^ ^;
とにかく話のスケールがでかい。
戦後国鉄の三大ナゾの事件の一つがテーマで、
GHQやらCIAやら総理大臣やらまで巻き込んで。
さらに満州事変から日中戦争、戦後の安保まで含む
その「大きな歴史の流れ」の裏面に隠されてきた
下山事件の真相に迫るというハラハラドキドキ。
しかもこの下山国鉄総裁轢死事件で大きな役割を果たす
「亜細亜産業」に筆者の祖父が務めていたという。
「もしや、まさか祖父が犯人なのでは」
という疑問から取材を始めた柴田氏。
身内だからこそ手に入れられた、
新出の証拠や証言を織り交ぜつつ、
これまでの「下山事件研究」各説を丁寧に参照し
事件の真相を暴いていく。
近代史に明るい方だと、もっと楽しめるのでせう(^ ^;
そして最後の最後に「特定した」実行犯は
さすがに名を伏せられております。
が、これがおそらく事件の真相なのだろうな...
と思わせられる説得力がある。
事件の直接関係者が、ほとんど鬼籍に入られた現在では
証明のしようもないとは思いますが。
そして、この本に書かれている内容が正しいとすると、
日本の「政府」というもののあきれた本質は、
決して今に始まったことではなく、
むしろ第二次大戦前から何も変わっていない、
という暗澹たる気持ちにもさせられる逸品(^ ^;
証言者を追って謎解きしていく部分は
ミステリのような感覚で読めます(^ ^
白州次郎氏だの、エリザベス・サンダース・ホームだの、
巷間で伝わる「美談」と全く違う側面が見えてくるし、
日本の「裏面史」としてもとても興味深い(^ ^
エンタテインメント作家でもある柴田氏の筆は、
適度に「息つく間」を与えてくれるので、
ノンフィクションにありがちな「読みにくさ」とは無縁。
とにかく登場人物が多く、混乱しがちなので、
メモを取りつつの一気読みをオススメします(^ ^ -
Posted by ブクログ
面白いので5回読みました。
でも。誰がどんな理由で事件を起こしたのか?何度読んでも全く分かりません。少し前の事件関連本は、GHQが首謀としていたものが多かった気がしますが、実際はそんな単純なものでなかったということ。アメリカ、日本の企業、政治家達、それぞれがお互いを利用していたのだろうから、関係者全員犯人だ!とすればいいのかもしれません。
戦後混乱の中、貪欲に金と権力を追い続けた男達がいました。皮肉にもアメリカに占領され属国になる恐れのあった日本という国を救ってきたのは彼らです。金に汚くても世界と対等にかけひきできる強さをもつ政治家、クリーンだけど融通のきかないどこまでも真っ直ぐな政治家、時代はどちらかを必要とし、必要としなかった方は消される運命なだったのは仕方のないことだったのでしょうか。
権力、金に対する強い欲求は共感できないからこそ、それらに翻弄される男達の不可解な行動に嫌悪するどころか気になって仕方ありません。 -
Posted by ブクログ
何処までが史実で、どこからがフィクションなのか。
太平洋戦争の広く知られた知識が、どんでん返しを食らうような連作5話。
『異聞 東京大空襲』
3.10の東京大空襲が、すでに3月5日の時点で知っていた日本人がいたとは。しかも、一方の米軍も日本から反撃に出ないとわかっていて、無防備のまま低空で爆弾を投下したと。
日米のなれ合いの空襲?
死んでいった何十万人の民間人の死は何だったのか。国家の非情さを痛感させられる。
『異聞 真珠湾攻撃』
12.8の日本軍による真珠湾攻撃も、アメリカ側では事前に感知されていたことは、ある程度知られた話でもある。
日本の歌「目ん無い千鳥」が奇襲攻撃の暗号であり、米軍側も察知していた日米合作の謀略と。「真珠湾奇襲攻撃作戦は、最初から馴れ合いだった」。
また、真珠湾という浅瀬の場所を奇襲に選んだ日本側特に山本五十六の判断、さらに攻撃対象にしたのは旧式の船舶ばかりで肝心の燃料の備蓄タンクと修理ドックを攻撃しなかったという疑問。
山本の言葉通り1年か1年半で終わらせる予定だった日米の思惑を狂わせたのは、ソビエトの存在。これは、次の『異聞 海軍甲事件』にもつながる。
前線視察中だった連合艦隊司令長官山本五十六の搭乗機が、米軍戦闘機に撃墜され、戦死した事件。
機上即死との軍部の発表には、隠された事実があると。
検視では、墜落後しばらく生きていた山本が、軍部によって殺された可能性が。
何故なら、山本は密かにアメリカへの亡命を企てていたからとか。
軍人の象徴的存在だった山本元帥にそんなことがあったとは、まさにどこまでが真実か衝撃的である。
『異聞 久米島事件』
久米島での凄惨な出来事は、読むのもおぞましい。戦争は、人間をここまで鬼にしてしまうのか。
『ノモンハン事件』
国境を局地的に譲ってもなんということもないノモンハンで、何故紛争が起きたのか。その原因が、そこにあるというチンギス・ハーンの墓にあり、古書によるとチンギス・ハーンは源義経だったと。
清王朝がチンギス・ハーンの後裔であったなら、日本が承認した満州国を世界が認めないわけにはいかなくなる。満州はそもそも日本の国土だった・・・・。
まことに、どこまでが真実でどこからがフィクションか。
「歴史とは常に、後世の権力者によって都合良く捏造された架空の物語なのだよ」 -
Posted by ブクログ
巻頭で「この物語はフィクションである」と述べられているが、安倍元首相狙撃事件と旧統一教会を題材にしていることは、明らか。
また、フィクションであると断らなければ、ここまでリアルに描ききれなかっただろう。
現実世界では、旧統一教会がらみの宗教二世による単独犯説と認定されているが、この小説ではその見解に異を唱え、宗教二世の容疑者以外にプロの狙撃者がいたという説を採っている。
なにしろ、壇上に立った被害者を低い位置から狙撃したはずが、解剖をした担当医の所見では、致命傷になったのは逆方向からの高い位置からの着弾によると。
事件現場となった演説会場は、他に比べていかにも狙撃しやすい場所であり、その場所の選び方にも何か作為があったのでは記されている。警察幹部も巻き込んだ暗殺計画なのか。
その背景には、元首相がトランプと口約束してしまったトマホークの購入だったり、”令和”年号問題だったり、東京オリンピックの利権も絡んでいると。
さらには、”国葬”の理由や、元首相と宮内庁の間には、以前から対立があったとの記述も。
1987年の赤報隊による朝日新聞阪神支局襲撃事件から説き起こしたこの”小説”、どこからがフィクションでどこまでが事実なのか、考察の虫が掻き立てられる問題作。