柴田哲孝のレビュー一覧
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柴田哲孝『幕末紀 宇和島銃士伝』光文社文庫。
伊達宇和島藩八代藩主・伊達宗城の密命を受けて脱藩し、柴田快太郎という、柴田哲孝の高祖父にあたる人物を主人公に幕末に起きた数々の事件の裏側を描いた創作時代小説。
柴田哲孝自身の祖先を登場させ、幕末の史実や人物を何とかパズルのようにつなぎ合わせたというような時代小説だった。そして、柴田哲孝が自分の祖先は、時代の中で一役を担っているのだと誇っているかのようで余り良い気はしない。少なくとも柴田快太郎なる歴史上の人物など聞いたことも、書物でも目にしたこともない。
伊達宗城の密偵にして射撃の名手であった柴田快太郎の目を通して、桜田門外の変、池田屋事件、 -
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柴田哲孝『殺し屋商会』双葉文庫。
最愛の家族を失ったり、騙されたりして、悲しみにうちひしがれる被害者に成り代わり、法で裁かれなかった悪党に鉄槌を下す殺し屋商会の活躍を描いた連作短編集。
味はあるが、物語としては曖昧な決着で、消化不良というのが正直な感想だ。
『殺し屋商会 復讐代行相談所』の水鳥川亜沙美と殺し屋のロンホワンのコンビが主人公で、極めて淡々と復讐の殺しを実行する様子が描かれるが、少しずつ水鳥川亜沙美とロンホワンの過去が明らかになる。
『第一話 復讐代行相談所』。上級国民なる言葉が話題となった元役人の老人による悲惨な交通事故がモデルだろう。一人娘と孫を交通事故で失い、一年後には -
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柴田哲孝『野守虫』光文社文庫。
シリーズ第4弾。
凶悪犯として生きざるを得なかった竹迫和也という男の悲惨極まりない人生を最後の最後に汲み取る刑事の片倉康孝。
旅行中の片倉刑事が凶悪犯の竹迫の逃走先を訪れ、さらにはそこに片倉の元妻まで現れるという余りにも出来過ぎの展開なのだが、流石は柴田哲孝、警察小説として違和感を薄めるように巧く仕上げている。
タイトルの『野守虫』とは、怪蛇のような日本の妖怪のことらしい。そして『野守虫』の刺青を背負う竹迫和也……
強盗の罪で刑期を終えて出所したばかりの竹迫和也が再び強盗を働き、所轄に検挙されたが、弁護士との接見中に脱走する。竹迫は定年間近の刑事・片倉 -
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柴田哲孝『奇蹟の馬 サイレンススズカ』ハルキ文庫。
『伝説の名馬 ライスシャワー物語』に続く競馬で活躍した名馬を描いたノンフィクション。
競馬のことは全く知らないし、余り興味も無いのだが、柴田哲孝の作品となれば読まずにはいれない。
競馬という人間の欲望を満たすためのギャンブルのため、人間のエゴにより創られたサラブレッド……と競馬など何も知らぬ自分が言ってしまうのは簡単なのだが、柴田哲孝は名馬と呼ばれたサラブレッドたちとその名馬を育てる厩務員たちの生き様を鮮烈に描いてみせる。
レースにはドラマがあり、ドラマを創り出す名馬がいる。しかし、その人生の終わりの瞬間は余りにも残酷だ。サラブレッド -
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関東の刺客・ライスシャワー。
小さな黒い仔馬が、時のスターであるライバルを打ち負かし、雌伏のときを乗り越え、そして見る者の心を震わせる走りで、ヒットマンから主役となる―。
この本を読んでいると、改めて、競馬が、数字やデータ遊び、富くじではなく、血の通った生き物による戦いであると感ぜられる。
本文中でライスシャワーが精神力で走る…と繰り返されていることや、牧場でのエピソードなどから、ライスシャワーに「人間味」みたいなものを感じる。
競馬を知らない人には、本書におけるライスシャワーを通じて、競馬の面白さ(と壮絶さ)を知ってもらえると思うし、もちろん、競馬ファンが読んでも、名馬物語は世間に数多あ -
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柴田哲孝『伝説の名馬 ライスシャワー物語』ハルキ文庫。
今から20年以上前に祥伝社文庫から刊行されたノンフィクションの復刊。復刊にあたり、加筆訂正。
競馬のことは全く知らないし、余り興味も無いのだが、柴田哲孝の作品となれば読まずにはいれない。20年以上前の刊行当時は柴田哲孝の名前に馴染みが無く、手に取ることが無かった。
読んでみれば、後にライスシャワーと呼ばれる真っ黒な仔馬の誕生から、名馬と呼ばれるまでに成長し、各レースで素晴らしい結果を残すまでの軌跡が硬質な文章で綴られる。そして、僅か6年で生涯を閉じることになる衝撃の結末……
本体価格780円
★★★★