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「あの事件をやったのはね、もしかしたら、兄さんかもしれない…」祖父の23回忌の席で、大叔母が呟いた一言がすべての発端だった。昭和24年(1949)7月5日、初代国鉄総裁の下山定則が三越本店で失踪。翌6日未明、足立区五反野の常磐線上で轢死体となって発見された。戦後史最大のミステリー「下山事件」である。陸軍の特務機関員だった祖父は、戦中戦後、「亜細亜産業」に在籍していた。かねてからGHQのキャノン機関との関係が噂されていた謎の組織である。祖父は何者だったのか。そして亜細亜産業とは。親族、さらに組織の総師へのインタビューを通し、初めて明らかになる事件の真相!日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞受賞のベストセラーに、新たな取材、情報を加筆した完全版、待望の電子化!
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Posted by ブクログ
究明に至らず未解決のまま真相が闇に葬られた国鉄三大事件と呼ばれる事件があった。
無人列車が暴走して線路脇の商店街に突っ込み死傷者をだした三鷹事件、
夜間にレールが外され通過中の列車が脱線転覆し乗務員三人が死亡した松川事件、
失踪した初代国鉄総裁下川定則が翌朝に轢死体となって発見された下川事件である。
ある日、著者が親族との宴会の席で酔った大叔母が、兄は下川事件に関わってかもしれないと口走った。
下川事件のことを全く知らない著者は、事件について調べていく。
三越百貨店に運転手を待たせて入店した下山総裁は行方不明となり、翌朝常磐線の北千住綾瀬間で轢死体として発見された。
自殺説、他殺説入り乱れて捜査が進むも、下山総裁は自殺したとされ一方的に操作は打ち切られた。
調べるほどに他殺を裏付ける数々の状況証拠の先に、アジア産業があった。
そこはGHQ、政治家、右翼など戦後日本のキーマンたちが秘密裏に集まるライカビル四階に、その会社は存在した。
GHQとCIAの対立、国鉄利権、反共政策、全ての線の交点に下山総裁は立っていた。
真実は明かされることはなく、これも数ある解の一つに過ぎない。
しかし、真実に迫る実体感がある。戦後日本の国の成り立ちの裏が垣間見える。
Posted by ブクログ
「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、この本を読んでまさにそう思った。どんな推理小説よりも謎めいていて、また圧倒的に面白い。乱歩も横溝もこんな面白い作品は書けないだろう。むろん、ノンフィクションとはいえ著者の主観も入っているから、すべてが「事実」だとは思わない。著者の親族にインタヴュウしているので、そういった点も差し引いて考える必要はあるであろう。ただ、それでもやはり絶対的に面白く、また「途轍もない」作品であることには変わりはない。昔から未解決事件について関心はあったが、これほど深い闇が広がっているとは思いもよらなかった。キイ・パーソンを挙げてみても、一般に名前を知られているだけでも佐藤榮作や岸信介といった首相経験者や、笹川良一や児玉誉士夫といった大物がつぎつぎに浮上してきて、しかも相互になんらかの形でかかわりを持っている。よく知られた日本共産党やGHQといった陰謀説に加え、南満洲鐵道までかかわってきて、もうとにかく圧倒される。あまりにもスケールが大きいのだ。こういう戦いに挑んでゆく著者の姿勢もすばらしいが、それをひとつの物語として整理してゆくことがどれだけ大変なことであろう。自殺説、他殺説、陰謀説、替え玉説、言及されるそれぞれの内容じたいにも興味は持ったが、あえて結論は濁して書いてあり、また、矢板玄氏に対してすべてを訊けたわけでもなさそうだ。そういった部分での消化不良感はあるが、しかしそれも気にならないくなるぐらいのクオリティがあるので、とにかく読ませる作品になっている。読み終えたあとも、事件のことを調べずにはいられなくなる。わたしもまた「下山病患者」なのかもしれない。
Posted by ブクログ
いや、これは...
久々に骨太というか...
読みでがある大作でした(^ ^;
ここんとこずっと「日常の謎」的なミステリばかりで、
こういう固く、太く、重いものとはご無沙汰で。
若い頃は落合信彦とかむさぼり読んでたし、
こういうものも決して嫌いではないのですが...
なかなか頭が着いていかず(^ ^;
とにかく話のスケールがでかい。
戦後国鉄の三大ナゾの事件の一つがテーマで、
GHQやらCIAやら総理大臣やらまで巻き込んで。
さらに満州事変から日中戦争、戦後の安保まで含む
その「大きな歴史の流れ」の裏面に隠されてきた
下山事件の真相に迫るというハラハラドキドキ。
しかもこの下山国鉄総裁轢死事件で大きな役割を果たす
「亜細亜産業」に筆者の祖父が務めていたという。
「もしや、まさか祖父が犯人なのでは」
という疑問から取材を始めた柴田氏。
身内だからこそ手に入れられた、
新出の証拠や証言を織り交ぜつつ、
これまでの「下山事件研究」各説を丁寧に参照し
事件の真相を暴いていく。
近代史に明るい方だと、もっと楽しめるのでせう(^ ^;
そして最後の最後に「特定した」実行犯は
さすがに名を伏せられております。
が、これがおそらく事件の真相なのだろうな...
と思わせられる説得力がある。
事件の直接関係者が、ほとんど鬼籍に入られた現在では
証明のしようもないとは思いますが。
そして、この本に書かれている内容が正しいとすると、
日本の「政府」というもののあきれた本質は、
決して今に始まったことではなく、
むしろ第二次大戦前から何も変わっていない、
という暗澹たる気持ちにもさせられる逸品(^ ^;
証言者を追って謎解きしていく部分は
ミステリのような感覚で読めます(^ ^
白州次郎氏だの、エリザベス・サンダース・ホームだの、
巷間で伝わる「美談」と全く違う側面が見えてくるし、
日本の「裏面史」としてもとても興味深い(^ ^
エンタテインメント作家でもある柴田氏の筆は、
適度に「息つく間」を与えてくれるので、
ノンフィクションにありがちな「読みにくさ」とは無縁。
とにかく登場人物が多く、混乱しがちなので、
メモを取りつつの一気読みをオススメします(^ ^
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