江口夏実のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレまずは、アニメ化万歳! しかし、嬉しさはあれど驚きはそこまでじゃない。『鬼灯の冷徹』とベクトルこそ違えど、作品のレベルでは決して負けちゃいない、このオカルトコメディがアニメ化しなかったら、それこそ、ファンに喧嘩を売っているっつーより、裏切りに近かろう。
アニメ化に向けて尽力してくれた方々に感謝しつつ、この(8)の感想をねっとりと語っていきたい。
この(8)で、ファンに最もインパクトを与えたのは、何と言っても、やはり、新キャラである銭ちゃんだろう。
ぶっちゃけ、アニメ化よりも、仮面を外した彼女の素顔を見た時の驚きの方が遥かに大きかった。江口先生、やってくれたわ、と思わず、ニンマリしちゃったのは私だけじゃあるまい。
モグラと一進一退の化かし合いを繰り広げ、最後は、自分の欲に足元を掬われる形で手痛い敗北を喫した狐面の男が素顔を晒さなかったので、適当な事は言えないにしろ、ほとんどのファンは、彼の正体を何となく察していただろう。
だからこそ、銭の顔にビックリさせられながらも、狐面の男と一緒にいて、なおかつ、良い塩梅のサポートが出来た訳だ、と納得もした。
化かし合いに負かされた狐面の男は、自分の代わりに、モグラと「契約」を積極的に結ぼうとしている銭ちゃんに、珍しく、ガチ焦りを剥き出しにして、荒げた声で止めようとしているが、もしも、本当に、銭ちゃんがあのアイドルの血を引いていて、男の好みも近しいとなったら、ある意味、自然な流れだ・・・多分っつーより、確実に、あの怖い女上司が、彼女に彼を押し倒して食べちゃう作戦を授けたんだろう。
何にせよ、両親から良い所をしっかりと受け継いでいるであろう、利発な銭ちゃんが、これから、モグラたちと共に行動する事で、どう成長して、両親をハラハラさせるのか、楽しみだ。
真木たちが通う大学で繰り広げられた、文学喫茶vsおむすびの売り上げ対決も、青臭い若々しさがぶつかりあって微笑ましく、面白かったからこそ、間髪入れずに突入した新章、これがまた、江口節が炸裂していた。
モグラとキツネの化かし合い、こちらにも幽霊がしっかりと絡んでいたが、どちらかと言わずとも光の笑いを意識しているモノだった。しかしながら、この新章で姿を見せている幽霊っ娘は、どう見ても、ヤバい・・・悪意を持って悪事を働いているのではなく、自動的にトラウマスイッチが入った際に災難を勃発させる、そういう取扱注意案件だ・・・・・この事案、モグラたちは、どう対処し、上手い具合に解決するのか、ドキドキだ。
この台詞を引用に選んだのは、変な言い方だが、感心したから。
ギャンブルに必勝法は絶対に存在しない。
ただ、相手を負かす方法となったら、意外にあったりするものだ。
今回、モグラが使った手法も、その一つじゃなかろうか。
長い人生を生きており、多くの人間を見てきたモグラだからこそ、狐面の男のタイプを正確に見抜き、この勝ち方が出来た。
普通の人間が真似しちゃいけない類の作戦だな、これは。
(・・・・・・普段なら・・・もっと冷静だった!だが、どうしても、この現金が目に入った!!最初から、300万賭けられたら、流石にワシでも警戒した!それを・・・最初に10万で勝って火を付けて、次に30万で勝たせて喜ばせといて、最後に大金を見せて、脳をバグらせた。このために・・・この一瞬の油断のためだけに、大金を!!!)(by狐面の男)
この台詞を引用に選んだのは、やっぱり、この狐面の男はあのキャラで、なおかつ、こういうスタンスだからこそ、彼女は彼を何だかんだで見捨てないどころか、惚れたんだろうなぁ、と思えるものだったので。
きっと、狐面の男は、彼女とくっつくつもりはなかったんだろうけど、気付いたら、退路を完全に断たれてて、男としての筋を通さなきゃいかんわってトコまで誘導されたんだろう。
彼なら、上司が一枚、噛んでいるであろう彼女の作戦に途中で気付いただろうけど、何だかんだで、特別な感情があって、いつもの逃げ足の早さや抜け目のなさ、幻術を駆使する逃亡スキルを発揮できなかったのかもな。
「・・・くそめ・・・化かし返されたぁ~」
「どーもなあ・・・気の抜ける奴だなぁ。狐といやァ、時にえげつない化かし方もしたりする。アンタは、どうにも金に汚いくせにとぼけてる。変な奴」
「無粋は好かん。兄さんよ、ふとした時に、人間を化かしておちょくる。こりゃ、一つのオバケの嗜みなンよ。おめーら、常日頃、自分が賢い思っとるじゃろ。それを、おちょくンのよ・・・ま、全力で阿呆やる、うつけ人間が、まだおるとわかっておもろかったわ。ま、じゃから、『負けたよ』。持ってけ、有り金じゃ!!」(by狐面の男) -
Posted by ブクログ
ネタバレこの(7)で、『出禁のモグラ』が好きになったファンは多いんじゃないでしょうか?少なくとも、私はこの作品に対する好感度がしっかりと上がりました。
私好みのストーリー展開にしてくれる江口先生には、驚きを通り越して、怖さすら感じるほど。ここまで、ドンピシャなのは、藤田和日郎先生や羽海野チカ先生、みなぎ得一先生などか。
この(7)では、「詩魚ちゃんの夏休みの課題」と「真木君全財産消失事件」が収録されているので、まず、前者の感想から書こうと思います。
私自身は、7月中に問題集などの課題を片付けて、8月半分を使って読書感想文を書くタイプだったんですが、詩魚ちゃんの課題をやろうって気持ちはあるんだけど進まない、特に、彼女の数学に対する苦手意識には、激しく同意出来ました。
そんな詩魚ちゃんを手伝うべく、自然と集まったモグラたちの奮闘と挫折はコミカルさの中に現実味もあり、人に勉強を教える楽しさと難しさを、江口先生は魅せてくれています。
この『出禁のモグラ』のファンの中に、教職者がいたのなら、共感と共に、「そうか、こう教えればいいのか」と目から鱗が落ちたかもしれませんね。
もう一つの、「真木君全財産消失事件」は、前者のモノとは違うリアリティと、これまで真木君が関わって来たオカルトとは異なる意味合いの怖さがありました。
コミカルなテンポでストーリーは動いちゃいるんですが、正しい意味合いでの「騙されない」って心構えと、騙す者の手法に対する知識がなければ、人は簡単に騙され、搾取されてしまうのだな、と実感させられます。
真木君から全財産を騙し取ったのは、怪しげなお祭りに出店していた、何気にオシャレだからこそ、より胡散臭さを醸してくる狐面なのだが、まぁ、何と言うか、どっかで見た感じのある輩。口が上手く、幻術が得意、そんで、金に目が眩みやすい・・・やはり、彼なのか?
ある意味、自分の注意不足であったこともあって、モグラは真木君の全財産を狐面から奪い返すべく動き出す。もちろん、暴力は使わない。あえて、相手が好きで、なおかつ、得意分野でもあるギャンブルって手段で、真っ当に獲り返そうってスタンスが良い。狐面は、怒らせちゃいけない男を怒らせちまったわけだ・・・
この台詞を引用に選んだのは、そうなんですよね、杏子さん、と心から思ったので。
人間、その時は、色々な理由で真面目に勉強に取り組んで覚えるんですけど、現役から遠ざかって、その知識を使わなくなると、あっという間に忘れちまうんですよね。
これは記憶力の良さ云々っつーより、人間あるあるかもしれません。
私も今、高校の数学の問題を解け、と言われたら、杏子さんと同じ反応をしてしまうでしょう。
「アラ、懐かしい!あ~、習ったわ!習ったのは覚えてる。けど・・・(猫附杏子37歳、高校の記憶は遠ひ思ひ出。解き方は忘れた!!!)(by猫附杏子)
こちらの台詞を引用に選んだのは、改めて、藤史郎さんの立派さを感じ取るものだったので。
こんだけ立派な考え方を持っているんだったら、そりゃ、杏子さんがベタ惚れになるのも当然です。
モグラには、恩がある藤史郎さん。しかし、それはそれ、これはこれ、金に対してはモグラに譲歩しません。
実際、金の貸し借りは人間関係を壊しやすくするんですから、可能な限りはしない方が良いんでしょうね。
「私は金を対価と考える。対価としてなら出す。奢ると決めた時も出す。家族の分も出す。だが、貸し借りはしない」
「・・・クソ~~~・・・立派な正論、言いやがって」
「私はたとえ、出雲の神相手でも利害が一致しないのなら貸さない」(by猫附藤史郎、モグラ) -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白い、名作だ、と言われる漫画に必要な条件や定義は色々とあるだろうが、私個人としては、前の巻より面白いってのは大事かな、と思っている。つまり、この(6)は(5)を上回っているので、『出禁のモグラ』は名作、と呼ばれるべきだ、と力強く言いたい訳だ、私は。
これまでも、『出禁のモグラ』では、怖いっ、と感じる事は多々あった。前シリーズなんか、何度も鳥肌が立ってしまった。
しかし、その恐怖はオカルト的だったり、鬱屈した人間の闇の部分に対するものだったが、この(6)で感じた恐怖は、看守である浮雲さんが揮った圧倒的な暴に、だった。『嘘喰い』で登場する立会人レベルの暴だわ、これ。
看守だからこそ、モグラを守る、それが浮雲さんにとっては大事。そのモグラが囚人として過ごせない状況になったのならば、相手の理など容赦なく捻じ伏せ、無慈悲な攻撃を加え、命を刈ろうとする。この世には、色んな恐ろしいタイプがいるけど、自分の職務に、どこまでも忠実だからこそ、自分の役目を果たすためなら、手段を一切、選ばないタイプは一線を画した怖さがある。
そんな浮雲さんの、文字通り、人間離れした怖さで読み手を震わせたのと同時に、この騒動を起こしていたゲームマスターの抱えていた闇を露わにし、読み手に「これは果たして、悪と言えるのか、悪として裁くべきなのか」と考えさせるのもまた、江口先生、テクニシャンだなぁ、と感じさせてくれる。
実際、誰でも持っていると思うんだよな、この劣等感と自己顕示欲、「好き」を共有したいって欲が綯い交ぜになったものは。そんな人間らしい心から、この騒動を起こしてしまったのは、一人の天才少年。子供だから何をしても許される訳じゃなく、やっちゃいけないラインを越えてしまった以上、その罪は裁かなきゃいけない。そう、この少年は、自分が犯した罪を裁かれるべき所で踏み止まってくれていた・・・逆に言えば、そこで踏み止まらなかったのなら、私は子供であっても、裁く事はせず、その命を断つべきだ、と思っている。
最後の最後で、毒繭アケロンティアこと熊谷誠治(故48)に好い働きをさせるってのも、江口先生かつこの『出禁のモグラ』らしいな、と感じた。何がどうってのは説明し辛いんだが、藤田和日郎先生の『双亡亭壊すべし』の凧葉やみなぎ得一先生の『足洗邸の住人たち。』の福太郎のような、本来であれば、非戦闘員であるはずの絵描きが、戦いの勝敗を引っ繰り返すような一手を打つ爽快感に近いものを、この熊谷の言動に、私は感じた訳である。
この「呪いのゲーム」編の着地点は、ハッピーエンドじゃないけど、バッドエンドやビターエンドでもなく、結局んとこ、こういうのが一番、落ち着くんだよな、と思えるものだった。他のシリーズに負けない、色々と考えさせてくれるものだった。
ちょっとじゃ済まないレベルで「呪いのゲーム」編が重かった事もあってか、江口先生、「猫附ゼミ夏合宿編」は結構、はっちゃけてるっつーか、明るさに全振りしてるわ。こういう、明と暗の使い分けも、江口先生の武器だ、と私は思う。
悪い奴じゃないし、むしろ、良い奴なんだけど、絡み辛いっつーか、積極的には関わられたくないタイプである、陽キャの更なる先にいる藤村に対する苦手意識を、ほんのちょびっとであるが、ドッヂボールで克服した真木くん。そんな彼の背を、モグラが良い感じに押してくれているのが、これまた、グッと来る。この背中の押し方、やる気の出させ方は勉強になるわ。
この台詞を引用に選んだのは、モグラは真木くんのことをちゃんと見てくれているんだなぁ、と感じたものだったので。
短所や弱点を悪い、とせず、それも個性を形成する大切なものと見た上で、優れている部分をしっかりと、本人よりも把握してくれているのは嬉しいもんだ。
「真木の弱点は、全てにおいて、『ビビリ』なとこだ!他の点では、判断力も行動力もある!!ビビリを取っ払えば強いぞ!!」(byモグラ)
この台詞を引用に選んだのは、深いなぁ、と感じたので。
熊谷誠治(故48)って、アクが弱くないキャラが言うからこその説得力。
毎度のことながら、名言は言うキャラも大事だな、と思う。
人生は儘ならない、でも、だからと言って、何の努力もしないってのは違う。
どうにもならない、と解っているからこそ、少しでも、どうにかしようって足掻くのが人間だ。
その足掻きを止めてしまった時、人は、気付かない内に、自分の「大切なもの」を自分で捨てちまってるのかも・・・
「生きたい人が早死にして、生きたくない人が苦しみながら生きています。世の中、上手くいかないです。世の中、変です。いつだって、一番欲しいものは手に入りません。3番目くらいに欲しいものの方が、何故か、手に入りやすいです。皆、それはわかっていて、それに対する対応の仕方が、多分、人生の分かれ目です」(by熊谷誠治)
この台詞を引用に選んだのは、上にも書いたが、モグラの発破の掛け方は学ぶところが多い、と感じているので。
社会人としてやっていくには、ある程度、こういう能力が必要なんだよな、と悩む事が度々。
後輩の、困難に立ち向かう勇気を引き出したい時、このスタンスを参考にしたい。
また、モグラのこれで、戦う気持ちを持つ真木くんも良い奴だな、と思える。
「それにな、真木も一回、戦った方がいいな。『藤村』って、よく、お前の話に出てくる、『気のいいジャイアン』ぽい奴だろ?見てわかったよ、ドッジボールの件も、また押し切られたんだろ。お前、見るからに気が進まなさそうだもんな。ただな、いつも我慢して意見を譲るのはお前の勝手だが、譲る以上、相手の土俵で戦うのを許すってことでもあるな。なら、ちゃんと戦ってみないか、まぎ太くん」(byモグラ)
こちらの台詞もまた、モグラの人(まぁ、神様なんだけど)としての器がデカいってことを魅せてくれるものだ。
モグラの中で、藤村に対する恨みは、相当に深かったはずである。
しかし、藤村に敗北の味を舐めさせた事で、その恨みをキッパリと捨てるのは、漢にしか出来ない、と私は思った。
許す力、これもまた、人間には必要か・・・
「よォーし!!これで許―す!!!」(byモグラ)