岡本隆司のレビュー一覧
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岡本隆司『李鴻章』(岩波新書 1340)
李鴻章の伝記的な本。
知っているようで知らない(二人目 笑)李鴻章の本です。
日本の近現代史を勉強していると、否が応でも目に入ってくる人ですが、どういう人物なのかはまったくといっていいほど知りませんでした。
日中近代史を少し囓った事もあり、新書なのでちょうどいいと思って手に取りましたがなかなかいい本でした。
なるほど、李鴻章は古い時代の比較的新しい人間といったところでしょうか、袁世凱なんかは古い時代の新しい人間ですが。
陸奥に「大した事はない」と言われ、小村に「でくの坊」と言われた残念なイメージしかありませんでしたが(…)随分と印象が変 -
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●内容
・京都府立大准教授の歴史家による評伝
・李鴻章は清代末期の中国の政治家で、外交と海防の実力者。
著者はかれを“落日の孤臣”とし、中央の西太后による院政「垂簾聴政」と、地方軍閥への権限委譲「督撫 重権」を噛み合わせ、安定に導いたと評価。一方で、彼が権勢を失うにしたがって、中央と地方との対立が激化したとする。
●感想
・ドラマにもなった、浅田次郎『蒼穹の昴』にも登場する”かっこいい爺さん”
英雄史観で李鴻章の個人スキルに注目するより、社会情勢と絡めて「そうせざるを得なかった」と冷静な評価を行なっており、さすが学者の著作!な雰囲気。
・師匠の曽国藩が「大功を立てすぎては返って身の危険を -
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李鴻章の生きた19世紀後半の清朝は,激動の時代。科挙をはじめ,自分が頭角を現す舞台だった古いシステムを打破する必要性を痛感するも,ついにその実現を見ることなく生涯を終えた。それでも彼の働きは決して欠かすことができないものだった。この巨人の人生と,瓦解へ向かう清朝の運命が印象的に描かれる。やはり中国史における王朝末期の物語はドラマチック。
科挙に受かった典型的エリート官僚だった李鴻章。内憂外患のまっただ中,淮軍を組織して太平天国を平定し,北洋大臣として厳しい外交にあたり「洋務」「海防」に邁進。実務官僚として位人臣を極める。
淮軍は,曾国藩の湘軍にならって作ったもので,地方の有力な武装集団を -
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中国史の中では辺境として扱われる江南(南方)の歴史を辿る。ただ、江南も中国の一部であり、北方や中国全体の動きに連動する。本書を通じて思ったのは、中国全体や北方の話にもそれなりに紙面が割かれていたこと。
長江下流域は、唐宋以降は経済の一大中心地であり、その帰趨は中国のみならず、世界史的な影響を及ぼしていた。それだけに、長江下流域の士大夫エリート層は政権中枢に対して、複雑な思いを抱えて斜に構える態度を取っていた。それに比べると、四川や湖広は史書に登場するのは早いものの、目立たない役回りだった。福建や広州は中国化されたのは遅かったが、外界とのつながりを持つことで、独自の存在感があったようだ。
政治の -
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中国史の泰斗・岡本隆司による、マジメ一徹の儒教・宋学信者である曾国藩の人物伝。
「李鴻章」と「袁世凱」にならぶ岩波新書の三部作の一冊。
曾国藩の人柄には好感が持てて、その生きた歴史も面白く読んだが、前作の李鴻章が面白過ぎたせいで、なんだか物足りなくも。
やはり近代化の中心を生きた李鴻章の評伝は時勢のスリリングさもあって抜群に面白かった。
中国が比類のない激動期に突入したその端緒となる太平天国の乱についての興味は新たにしたが、それを平定する側の曾国藩の政治手腕や軍頭指揮は凡庸で全然面白くない。
ただ、こういうマジメ腐った人間がその後崇拝を受けているのはなんだかアジア的でいいと思った。 -
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日本の周辺諸国、中国・韓国・北朝鮮に台湾と、歴史も文化も異なるこれらの国々。特に最近(2023年)は北朝鮮が活発にミサイル発射を繰り返し、偵察衛星も打ち上げようとするなど、周辺諸国へ積極的に影響を及ぼそうとしている。当の北朝鮮は確信的に周辺国、特に日本とその背後にいるアメリカを意識しつつも、発射実験を繰り返すのは自国の技術の確立が第一である。中国は相変わらず自国の権威と強引な外交政策により、その経済力があるうちに、一帯一路構想に見られる他国の経済破綻に任せて縛り上げていこうとしている。甘い見通しと追いつかない技術力を過度に全面に押し出しては、鉄道敷設などで日本と競合させて利益を横取りしていく。
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太平天国の乱を鎮圧した湘軍の長、曽国藩の生涯。科挙エリートが騒乱を通じて、私兵をまとめ上げて中興の名臣までなる姿が描かれる。中興の名臣とはいえ、与えられた役割を全うしたに過ぎないと思えた。軍事は軍事指揮は振るわず、北京との関係も微妙と苦労は絶えない。また、西洋と現実的に付き合うと、郷紳ら在地エリートからの評判も悪い。
中国ではよくあることだが、政治的立場によって、死後の評価が著しく変わった。現在の共産党下では、農民運動と評価されている太平天国を鎮圧したことや、蒋介石が高く評価してたことで、否定的に取り扱われている。
同じ著者の岩波新書で出版されている、李鴻章や袁世凱は読み応えがあったが、業績の -
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中華思想から、つまるところ我のみが正しい。我以外は、間違っている。
とは言っても現実には相対的なもので不安定だから、我が正しいことを証明し続けなければならない。ぶっちゃけ、間違いを認めるわけにはいかない。無謬の存在であることを、暴力を使ってでも認めさせ続けなければならない。
だから、今度は暴力革命でぶっ倒されるんだな。倒した方が正しいという、究極の野蛮な後付けだ。
元々、国民国家に馴染まないところに、華夷体制ではまあ、国交のあるところを中華からしたら、属国とか属地とか失礼に言ってたのを、国境線を考えるときに、本来の意味と変わっているはずのその言葉を盾に、うちのもんじゃと言い張ってるわけだ。
著 -
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「中国四千年の歴史」(←かつてのCMで言っていた)を一冊でざーっと概観しようという本。
最近、世界史を復習しようと思っているのだが、世界史の教科書というのは、国や地域が変わるたび、時代を行ったり来たりするので、通史がわかりにくい。
それで、各国史や「タテ読み」の世界史本が流行っているようだ。
手始めに、まず中国史を読んでみる。
この一冊で、たしかに現代までの王朝の移り変わりはわかる……のだが、やはり地名・人名の羅列で、途中ちょっと……いや、かなり……眠くなってしまった。。。
ある程度、それらが頭に入っている人なら、効率的に復習できるかもしれない。
数十年前に受験生だった私のさび付いた記憶では、