岡本隆司のレビュー一覧
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紀元前から現在までの中国の通史のシリーズ「中国の歴史」第5巻(最終巻)。最終巻は、清朝の始まりから現在までの通史が書かれているが、通史のため教科書的に事実を中心に解説されているため、それぞれの内容は薄い。残念ながら、岡田英弘氏や宮脇淳子氏の著作ほど興味がわかなかった。
「自らを「支那人」、自国を「支那」と呼んだ。China/Chineを漢字に置き換えた語であり、西洋人・日本人が当然と考える国民国家を含意する。だから当時の「支那」とは、まったく差別用語ではない。清新なニュアンスをもった新語・外来語であった」p161
「「社会主義市場経済」とは、依然として「社会主義」を信奉する共産党が、政治を -
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世が「嫌中」一色となる中、中国研究者である著者は、自身も中国・中国人が好きか嫌いかと問われれば「嫌い」と答えると言う。
その一方で、こんなにおもしろくて興味をかき立てられる国はないとも言う。
そして、そのおもしろさの源泉を歴史からのアプローチで紐解いていく。
中国的な史書のあり方は「紀伝体」、人物本位で書いた歴史。
客観的事実ではなく、個人個人の事績でドグマを説明しようとする。
その根底には儒教的な思想がある。
そして、上下分離の社会構造。
かつての貴族制は、唐宋以降、科挙を土台にした官僚制へと変わる。
いずれにしても、「士」と「庶」の厳然たる峻別が社会構造を規定する。
さらに、独特の空 -
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近代日本の中国観と区切っているのは戦後のそれが階級論一色に染まったつまらないものであるという著者の評価を端的に表したタイトルなのだろう。谷川道雄は戦後世代であるが、面識のある京都学派の最後の系譜として登場させた様である。歴史学者がイデオロギーに依拠した論述を行うことの是非は最早中国史界隈では決着が着いた感があるのだが、戦後のつまらない時期は支敗戦や新中国で突然生じたものではなく、戦前戦中のマルクス主義史観が東洋史に及ぼした影響を軽視すべきものではなかろう。むしろ戦争末期に徹底弾圧され消滅した反動が戦後に「歴史認識の正しさ」という印籠を得て復活したとも言える。現在日本ではほぼ消滅したマルクス主義
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・儒教は個人主義。儒教を軸にしていくと、紀伝体(天子の記録と個人の伝記を中心に編むもの)になるのは自然な流れのように思えるが、それが「歴史」として正しいかは疑問が残る。日本人が思う正しい史実と、中国にとっての「正史」は昔から違うものなのだ。
中国を統一するものこそが天子、それこそが正統とする中国。ありのままの史実を第一とする日本。ここに差が生まれることになるほどと思った。
・貴族たちの支配から科挙制度に変わっても結局士と庶の溝は埋まることはなかった。
・その後の時代も「華」「夷」として社会的に分けられていた。
・18世紀後半、イギリスとの貿易でも、清国はイギリスを野蛮人(外夷)として扱った。イ