岡本隆司のレビュー一覧
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いま現在の中国理解を深めるためにも、困難な日中関係に苦悩し、中国をみつめつづけた(近代日本の)先人たちがどう中国を認識してきたかを探ってみることが重要との問題意識から、石橋湛山、矢野仁一、内藤湖南、橘樸、谷川道雄などを取り上げ、その著作を引用紹介しつつ、彼らの中国観を批判的に検討している。
石橋湛山や橘樸、戦後の時代区分論争に関わった東洋史学者など多くの近代日本人は、「中国の政治・社会を西洋・日本と同一視したうえで、西洋を基準として対比する」形で中国を認識しており、「「中国社会の構造を論ずることができ」ない「近代主義」・西洋思想で中国に向きあって」いたと批判し、中国に対する内在的な理解を試みて -
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中国史を専門とする学者による近代中国史についてまとめたもの。緻密な研究に基づく詳細な記述がなされている。特に統治や経済のシステムの分析は詳しく、説得力がある。極めて論理的かつ学術的な良書。
「(日本に比べれば)中国は行政上の都市化率がはるかに低い。つまり権力のコントロールがゆきとどいていないのである」p50
「現代中国の歳入規模は、日本円に換算しておよそ90兆円、税収がその9割をしめる。GDPに大差のない日本では、税収は37兆円くらい。政府組織の差異や公債の発行を考慮に入れていないので、厳密な比較にならないものの、納税負担は中国が倍以上大きい計算である」p59
「(モース)中国の官僚は、自己 -
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・「いまの日本で、どんな職業・地位のものであれ、中国のことをまったく知らずに自由にふるまってよい、というのは軽率に失する」
というようなことがこの本のあとがきにあって、いやはやごもっとも、
と考えてしまうほど、日を追うごとに日本に差す中国の影がどんどん大きくなっています。
・「伝統」経済とは、つまり中国独自の社会趨勢や経済観に依拠した弾力的な構造であり、
すなわち根本的に、中国人の価値観・行動原理に深く根刺しています。
そしてそれはやはり、現代の中国人のなかにも脈々とうけつがれているようです(別の本も合わせて読んだ感想ですが…)
・どうして日本と中国は違うのか?という些細な問いにヒントをく -
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著者の岡本隆司氏は、中国近代史を専門とする歴史学者。
我々日本人にとって一見不可解な中国(人)の思考・発言・行動に通底している論理について、「いわゆる理屈のこね方・論理のパターンは、一朝一夕にはできあがらない。時間をかけて身に染みついた、いわば歴史的な所産である。目前にあらわれる言動から観察するより、論理の形成過程にそって考えるほうが、中国の謎の理解にたどりつく捷径になると信じる」と述べる著者が、歴史的なアプローチによって考察したものである。そうした意味では、社会・政治・国際関係の根底にある考え方を軸に見た、中国の古代から現代までの通史にもなっている。
著者は、その根本を貫いているものを以下の -
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100年前の1914/5/9袁世凱政権は対華21ヶ条要求を受け入れた。袁世凱はこの弱腰な態度に加えその翌年に自ら皇帝になろうとしたことなどから中国でも嫌われている。著者の岡本氏にしてから「まだ若いころ、少し知って、嫌いになり、立ち入って調べて、いよいよ嫌いになった。」と述べている。
当時の日本から見た一般的な袁世凱の見方はこうだ。辛亥革命で清から寝返り中華民国の臨時大統領となり要求を受け入れながら、その日を国恥記念日に指定し排日運動を裏でけしかけた信義なき俗物と。ではなぜそんな人物が皇帝に即位するところまで登りつめたのか。その時代背景を描写しながら、「日本人こぞって嫌中の時代である。嫌いなの -
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日中関係が難しい局面にある現在において、過去の日中関係を振り返り、中国に対する「完全な認識」を得ようとすることは意義あることであると思われる。その点で、本書は、古代から近代までの日中関係の歴史を大局的に把握できる良書である。ただし、本書ではあえて1920年代以降の日中関係に触れていないので、その部分は他書による補完が必要である。
本書によると、日本と中国は地理的に近く、要所要所では関係を取り結んでいたものの、基本的にずっと疎遠な関係が続いていた。また、「政冷経熱」という現今の現象は、日中関係の長い歴史に一貫したモチーフにほかならず、政治と経済が噛み合わないのが歴史的な構造だったという。江戸時代 -
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明・清・中華民国期の経済・政治空間の有り様を描く。「官」と「民」の乖離。その橋渡しをする郷紳と彼らが中心となった中間団体。この存在にスポットをあてて、近代中国社会の動きをとらえようとする。著者によれば、「官」の力の及ばない「民」の世界が、欧米や日本より大きいのが中国の特徴、とのこと。それを大きく変えたのが毛沢東による革命、との評価。ならば、やはり毛沢東時代に、経済・政治空間が具体的にどのように変わっていったのか、そして改革開放後のそれがまたどう変わったのか。そここそ知りたくなる。(現代の中国社会が、単に毛沢東以前に戻ったわけではもちろんないだろう)。著者による続刊を望む。
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朝鮮と清朝の関係は陸続きで国境を接しているだけに微妙である。隣国とはいえ我が国と両国との関係とは大差がある。
朝鮮王朝が清朝に対していかに苦労したかが見えるようにわかった。「属国自主」を掲げ、朝鮮は清に対して儀礼的朝貢はする「属国」であるが、政治的には「自主」であることを貫こうとする。それに対し清は徐々に干渉を強めていく。そしてそこに日本が介入しなければならなくなっていく。
教科書では教えてくれない、日清戦争へ向かう経緯などがよくわかり、近代の日清韓関係を知るのにとても良い著作だと思った。また、この手の著作は偏向する傾向があるらしいが、本著は大変中立的立場で書かれていると思われた。