【感想・ネタバレ】世界史序説 ──アジア史から一望するのレビュー

あらすじ

遊牧・農耕・交易。この三つの要素が交叉する場所で世界史は誕生した。遊牧と農耕の境界で交易が興り、シルクロードが現れる。やがて軍事力が機動性を高め、遠隔地を結ぶ商業金融が発達し、技術革新が生じ、生産力を拡大して、ついにモンゴル帝国の出現にいたった。そして、大航海時代が幕を開け、西欧とインドが表舞台に登場すると……。こうした視座から歴史を俯瞰するとき、「ギリシア・ローマ文明」「ヨーロッパの奇跡」「大分岐」「日本の近代化」はどのように位置づけられるのか? ユーラシア全域と海洋世界を視野にいれ、古代から現代までを一望。西洋中心的な歴史観を覆し、「世界史の構造」を大胆かつ明快に語るあらたな通史、ここに誕生!

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Posted by ブクログ

西洋の視点から語られがちな“世界史”を、アジア史から見つめ直すという内容。気候変動や遊牧・農耕・商業の交流や影響について文字を追う内に、現代社会がどこから来て、どこへ行くのかを考えさせられる。

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2019年01月24日

Posted by ブクログ

東洋史家の手になる「アジア史から一望」した世界史概説書である。
学校教育以来、西洋史中心の世界史に馴染みが深い私にとっては、大変新鮮な視座を提供してくれる快著だった。

近年、世界史のトレンドとして「グローバル・ヒストリー」の名の下に、西洋史家も自分たちの西洋中心史観を反省して、アジア史にも目配せした世界史の構築に勤しんでいる。
著者自身も、人類全体の歴史を構想しようというその姿勢自体は歓迎なのであろう。しかし、著者に言わせると、グローバル・ヒストリーの担い手たちは、あくまで西洋史の成果から脱却できていらず東洋史の成果を顧みもしないで、間違った分析ばかりしている、とかなりお怒り。その偏向を正すために、東洋史から見た世界史というテーマで本書をものしたとのこと。

さて、本書は全体の2/3を占める18世紀頃までのアジア史の展開と、その後主導権を奪取することになる西洋の近代史と、最後に本書の論調に照らし合わせた日本史の性格、の3部から構成されていると言える。

18世紀頃まで、世界史の中心はアジアにあったとの論旨は大変興味深い。その歴史的構造は「遊牧=騎馬民族=軍事・機動力」とその周縁の「定住=農耕民族=商業」との二元構造に立脚している。この両者が相互に利用しあい、繁栄を築いていくプロセスが、徐々に洗練されていきモンゴル帝国にて頂点に達する過程と整理されている。この視点で、モンゴル帝国分裂後のアジア各地の政権も、遊牧民族国家が生み出した統治構造に立脚していたという整理されており、学校教育ではどうしても一つのまとまりとして頭に残らなかったアジア史に、一本縦糸が通った気分。

一方、この時期までのヨーロッパは、世界史の周縁でしかなかった。
では何故、騎馬遊牧帝国が築いた文明のプレゼンスがその後低下していったのか。
機動力の主役が馬から船に移ったからである。

この画期を成したのは、西洋のいわゆる「大航海時代」である。先進地域アジアの物品の貿易で富を貯めこんだイタリアにルネサンスが起こり、それが大航海時代に繋がり、新大陸を発見するに至る。
そこで得た莫大な富を官民挙げて投資に回し、海洋帝国を築き上げ、洗練していき、遂には産業革命を達成し、圧倒的な物量を持ってアジアと地位を逆転していく。
西欧(特にイギリス)にてこの展開を可能ならしめたのは「法の支配」を前提とした「信用」に基づく金融の発展の影響が大である。
アジアでは、18世紀までにまさにアジアを発展せしめた多文化・多民族による多元的構造こそが、統一的な「法の支配」や「信用」の発展の妨げとなったという。
アジアが覇権を築いていた同時期に、西洋は暗黒時代とされた中世を経験していたが、支配者と被支配者が近い距離で関係を保つ「封建制」こそ、後の官民一致の帝国形成の基礎となったとする点は非常に面白い。

またこのような東洋と西洋の歴史的展開を見たうえで日本史を振り返ると、東洋的な要素はほぼ見受けられず、西洋に近い展開を経てきていると読み取れる。
グローバル・ヒストリーを志す当の日本人がこのことを見落としており、東洋史家の著者は、まだまだ東洋史家の自分の仕事に終わりは来ないとして。本書を結ぶ。

その他、気候変動を歴史展開の重要な要因としている点も興味深かった。
浅学ゆえ本書の記述の正確性などは全く分からないけど、新たな世界史の視座を与えてくれて、興味の広がる一冊だった。

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2018年10月05日

Posted by ブクログ

近年,グローバル・ヒストリーなるものが流行っているが,それに対する違和感をずっと抱いてきた。本書は,この西洋中心史観を脱却して生態環境など世界に共通する対象・問題を積極的に取り込み,世界史を描こうとする,最近学界で流行している方法であるグローバル・ヒストリーを「その視座・概念やデータの蒐集・使用などは,まったく西洋史の基準・方法そのままであって,それを無前提・無媒介・無批判に拡げただけである」と厳しく批判し,アジア史の個別的史実から歴史像を組み立てなければならないし,そうあるべきだと主張している。まさに同感である。

新書というコンパクトな書物の中で世界のダイナミックな動きを明快に描き出す筆力とぶれない論理構成の力には脱帽せざるを得ないが,一般読者にも比較的平易に読み通せる一冊だと思う。梅棹地図(文明の生態史観)も本書の叙述構成のひとつの柱になっていることにも注目したい。

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2018年07月13日

匿名

購入済み

下敷きにあるのは梅棹忠夫の『文明の生態史観』で、それを近年の学説からさらに強化して説明したような本かなと思いました。政治・軍事に優る遊牧民と経済に優る農耕民の接触や相剋が一見全く異なる文明に見える中国やオリエント(今の中東から東地中海世界)の共通点で、確かにこの辺りはテュルク系やモンゴル系の遊牧騎馬民族が度々侵入しては既存の国家を壊して新たな王朝をたてるということが繰り返されていることが分かります。その集大成がモンゴル帝国で中央アジアやモンゴル高原をベースに中国、イラン、今のロシアやウクライナのあたりを征服し、大帝国を作り上げました。
ポストモンゴル時代に入ると中国では明の後をモンゴル勢力の力を取り込んだ清朝が、東地中海〜中東〜インドではオスマン帝国やティムール帝国の跡を襲ったサファヴィー朝やムガル帝国が次々と成立します。本書では触れられていませんがロシアもジョチ・ウルスから自立し、ヨーロッパに対しては皇帝として、東方の遊牧世界に対しては「白いハーン」として振る舞っています。
さて本書は最後に西欧に触れて終わりますが西欧はユーラシアの辺境にあったという点、あとは運が良かったというのもあるのでしょうが以上述べたような遊牧民による征服と統治という歴史を経験していません。そんな西洋はルネサンスを経て大西洋へと飛び出し、富と力を蓄えていきます。やがて彼らが、特にイギリスがその力を旧世界へと投射し現代の世界が形作られていることは改めて語るまでもないことかと思います。
日本もやはりユーラシアから見れば東の端の孤島でした。要するに西欧と同じど田舎だったわけですが、それ故にユーラシアに見られた歴史のダイナミズムとは無関係に発展していくことができました。日本は西欧とは違い鎖国体制にはいるわけですが、国の規模感やあり方は中国よりは西欧に近かったわけです。もちろん要因は他にもあるでしょうが、それが明治以降の日本の発展のベースにあったというわけです。

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2024年09月07日

Posted by ブクログ

日本の歴史は東アジアよりも西欧の歴史に近似。封建制。日本は儒教を学問として受け入れたが、中国・朝鮮のように体制教学とはならなかった。戦国の下剋上により、下層から成りあがった領主たちが、僧侶・公家など旧来エリートを排撃し、軍事・政治を独占した。織豊から江戸初期にかけて仏教の従属化とキリシタン禁圧により、一種の政教分離が進んだ。西欧の宗教改革の時代とほぼ同じ。マルクス『資本論』曰く、日本はアジアのなかでただ一つ中世を形成した国。土地所有の純封建的組織とその発達した小農民経営。忠実なヨーロッパの中世像。『世界史序説』

明の鎖国。商取引は朝貢という手続きを踏むことを求めた。陸路や海路も交通は遮断。漢人だけを内側に取り込み、それ以外の人を「外夷」として出入りを禁止した。すると、交易を求めるモンゴル人が北から侵入したり、交易をもとめる日本人が南の沿海で暴れ出した(北虜南倭)。仕方なく明は、鎖国を一部、例外的に緩和した。p.181『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』

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2023年04月05日

Posted by ブクログ

アジアから見た世界史、あるいは西洋にある意味簒奪されたアジアの歴史を改めて世界史として語り直す。歴史についての知識が少なすぎて、半分も理解できてないけど、刺激的だった。

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2022年05月13日

Posted by ブクログ

アジアから世界史を見る。

東洋史を勉強してみようと思い、手に取った。

知識があまりなくても読めるが、ヨーロッパ史になると、私自身の弱さが出て、難しいと感じた。

グローバルヒストリーをどう考えていくのかを今一度見つめ直す一冊になった。

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2020年12月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

20190325〜0412 傍らに世界地図を置きながら読むとよいかも。頭の中の世界史地図が半回転位したような感覚で読んでいた。ソグディアナやイスファハンという地名を聞くとシルクロードシリーズ(漫画もNHKスぺも)を読み返したくなる。

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2019年04月19日

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