あらすじ
日中の関係は、古来、ほぼ疎遠であった。経済的な交流は盛んでも、相互理解は進まなかった。現代の日中関係を形容する際に「政冷経熱(経済面では交流が盛んなのに、政治的関係は冷淡であること)」と表現されることがあるが、そもそも千五百年間、日中間はずっと政冷経熱であったともいえる。遣唐使とは、少なくとも中国の側からすれば「敗戦国」からの朝貢使節に過ぎず、この時代、日本は東アジアから隔絶していた。江戸時代になると、寺子屋で漢文を庶民に教えるなど「漢語化」の傾向がみられるものの、中国文化を全面的に信頼することはなかった。一方、近代中国が西洋文明を学ぶ際、原文ではなく「和製漢語」を通じてその概念を把握しようとした。ゆえに彼らは西洋文明の本質を理解しなかった。そもそも和製漢語を生んだ日本語と日本に対する理解も、表面的なものに過ぎなかった――。サントリー学芸賞受賞者が、最新の研究成果を踏まえて真摯に綴る一冊。
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中国を好きな人でも嫌いな人でも日本と中国が多くのものを共有し、あるいはかつて日本が多くのものを中国から学んだことは否定しない。漢字はその最たる例だし、仮名も漢字から派生したものだ。仏教もその起源はインドにあるけれど漢籍仏教を受容した。儒教の中でも特に朱子学は江戸時代には支配的だった。本書を読むとしかしそれでも歴史上大部分の時期において日本と中国は政治的に疎遠だったことが分かる。
Posted by ブクログ
古代から日中戦争まで両国はどのような関係にあったのかを辿る。歴史を知ったうえで両国関係を認識する必要がある。
好き嫌いといった感情論だけで語るべきではない。教養を身につける意味でも良書と思う。
Posted by ブクログ
日中関係が難しい局面にある現在において、過去の日中関係を振り返り、中国に対する「完全な認識」を得ようとすることは意義あることであると思われる。その点で、本書は、古代から近代までの日中関係の歴史を大局的に把握できる良書である。ただし、本書ではあえて1920年代以降の日中関係に触れていないので、その部分は他書による補完が必要である。
本書によると、日本と中国は地理的に近く、要所要所では関係を取り結んでいたものの、基本的にずっと疎遠な関係が続いていた。また、「政冷経熱」という現今の現象は、日中関係の長い歴史に一貫したモチーフにほかならず、政治と経済が噛み合わないのが歴史的な構造だったという。江戸時代以降、「漢語化」ともいえる中国文物の土着化・日本化が起こるが、漢文訓読体により理解することにより、本当の意味で中国を理解することにはならず、かえって脱中国が進んだ(日清戦争以降に日本を学びに来た中国人にも同じ構造がみられる)という指摘が印象に残った。