岡本隆司のレビュー一覧
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漢字を使い、その他文化も一見日本に似ているように見える中国だが、実際は全く違う論理をもとに動く国である。その論理を歴史から解き明かそうというもの。
まずは史学から始まる。儒教は諸子百家の一つだったが前漢時代に勢力を広げて一種の国教となった
中庸を重んじるように常識的であるため、一定以上の合理主義が育たない。そして自分を中心に上下関係で外界を整理する思想となり、平等といった概念が希薄となった。また、思想の具体例となる史学から正統といった観念が生まれ、例えば偽満洲国といった呼び方をするなど、建前が史実を動かすパワーを持ちうる。
前漢からの安定した400年間の間に貧富の差や身分が生まれ、貴族制となっ -
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ネタバレp105の図が衝撃的。私たちが「国家」というと、近代の国民国家を想定してしまうが、清が達成した盛世はそれとは全く違った社会であることがわかる。未だに、明が直面した課題に中国は格闘し続けているのだなぁと掴むことが出来た。清の「成功」は、「因俗而治」で、緩く統合することに成功し、平和を達成したこと。そこには、西洋から大量の銀の流入がインフレをもたらし、空前の繁栄をもたらした。
p89「分岐」は、世界史としての問いを浮き彫りにしてくれた。現代にも通じる移民の問題。そして、なぜイギリスが「財政=軍事国家」として、資本主義を発達させることができ、同時期、同じように発達できる条件を備えていた清が、そうなら -
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ネタバレ通史かと思って適当に読み始めたら相当にヘビーな内容でとても面白かったです。
大学で東洋史を勉強していたので、中国の歴史には親しんではいたはずですが、目から鱗というか。
日本は中国文明の影響を受けて発展してきましたし、渡来人も来てたし、それなりに貿易もあり、何より書籍が大量に入ってきていて、中国のことはよく知っている…という思い込みが、確かに自分の中にもあったのかも。
それで今の中国人は「日本人の知ってる中国人と違う」
王朝時代と共産党時代で中国人が変わったわけではなく、もともと中国人はそうなんだ、と。確かに日本人は中国人のことを全く知らない。どんな考え方で行動し、何を信じ、何を大切にしてい -
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【そんな百年,中国の思考・発言・行動は,目まぐるしい転変をくりかえした。けれどもその経過を貫いていたのは,中国の言動を根底で枠づける社会構造,論理枠組の本質が,いかに変わらなかったか,という事実ではなかろうか】(文中より引用)
思考の枠から中国を紐解いてみようという中国入門書。史書や科挙といったキーワードを元にしながら,いかにして中国が思考し,現実と直面したかを概観していきます。著者は,京都府立大学で教授を務め,近代アジア史を専攻している岡本隆司。
大枠で中国という存在を捉えるのにうってつけの作品かと。しかもそれが平易な言葉で記されているというところがまた高評価を与えたくなる点。中国の論理 -
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岩波新書のシリーズ中国の歴史全5巻の完結編は、岡本隆司氏の「「中国」の形成 現代への展望」。扱われるのは、清代を中心に現代まで。
16世紀から18世紀までの時代は最近流行のグローバル・ヒストリーでいう「大分岐」の時代に当たるが、著者はグローバル・ヒストリー学説に対しては、「アジアを端から異質で、落伍していた存在とみていた従前とちがって、確かに新しい。西欧中心史観の非を悟りはじめた西洋人なりの反省なのだろう」と一定の評価(?)を与えつつ、しかし、「経済指標に目を奪われるあまり、社会構成・統治体制のあり方に対する洞察に乏しいことがあげられよう」(pp.viii〜ix)と述べる。
17世紀幕開け