【感想・ネタバレ】物語 江南の歴史 もうひとつの中国史のレビュー

あらすじ

「中国」は古来、大陸に君臨した北方「中原」と経済文化を担った南方「江南」が分立、対峙してきた。湿潤温暖な長江流域で稲作が広がり、楚・呉・越の争覇から、蜀の開発、六朝の繁華、唐・宋の発展、明の興亡、革命の有為転変へと、江南は多彩な中国史を形成する。北から蔑まれた辺境は、いかにして東ユーラシア全域に冠絶した経済文化圏を築いたのか。中国五千年の歴史を江南の視座から描きなおす。

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Posted by ブクログ

中国が古代では江南が辺境であり、長く北方に対して優位に立てない歴史が続いたことが良く理解できた。現代でも文化的な差が北と南ではある様な印象があるが、その根拠がこの本に記されていた。

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2024年07月16日

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中国史において長らく政治の中心であった北方「中原」に対し、それとは気候風土がまったく異なる中で経済文化が発展してきた南方「江南」に焦点を当て、中国史を描きなおす。
北方と比べ日本とも関わりの深い江南から見た中国史ということで勉強になった。
現在の中国共産党政権は「1つの中国」を強調しているが、中国が北と南で相互に影響を与えながらも全然異なる道を歩んできており、そして江南の中でも地域ごとの個性があるということがよく理解でき、中国の多元性を感じさせられた。朱子学や陽明学の発祥の地であったり、孫文や毛沢東などの近現代の重要政治家を多く輩出していたりなど、江南が中国史に大きな足跡を残してきたということも改めて理解した。

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2024年06月28日

Posted by ブクログ

中国の歴史は長く、地域も広い。
“江南”という地域を限定しても、やはり通史概論的にならざるを得ない。

この本では、現在の地名でおもに「四川」「江蘇 安微 広西 浙江」「福建 広東」「湖北 湖南」の四つの地域でまとめてある。
その為か何度も同じ時代が地域を替えて出てくるなど、なかなか読み込みに力がいった。

それでも、政治 経済 文化などが丁寧に解説されており、「中国史」としてはやや脇役的立場の地域が果たした役割が、よく知られている「中国史」への影響と結びついて、とても新鮮だった。

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2024年04月19日

Posted by ブクログ

漢民族の目は概して北に向いていた。太古の長城の時代からソ連との対立の時代まで。

しかしソ連は解体し、ロシアもライバルからパートナーへと力が落ちて来た(=中国が強大化した)事により、ここ30年の間にすっかり南方(江南)が中華となった感がある。沿岸部の経済発展然り、香港・澳門の返還然り、台湾への攻勢然り。

そして今その目は海に向かい日本やフィリピン、一帯一路にまで向かっている。その膨張をどう歯止めをかけるのか、そういう所に思いを馳せた一冊だった。

江南の地位が低く見られていたのは、中国が政治に重く経済に軽かったから。経済に比べ政治のプレゼンスが低かった江南はどうしてもそう見られがちだった。
中国の経済が台頭する今、必然的に江南の存在感は高まる。

華北に対する江南の逆襲、と言った所か。

ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。

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2024年01月20日

Posted by ブクログ

中国の歌やゲームで江南を題材にしたものがあり、江南は特別な場所であるという認識をしていた。江南だけに焦点を本は日本には少ないと個人的に思っていたため、本著にとても興味があった。

結果的にやはり、中公新書のこの著者の本は、一般大衆向けではないように感じた。まあそれは当然のことかもしれない。中国の首都は北京で北方が主であることから、北がメジャーで、南がマイナー。江南は中国の南方の歴史なので、そもそも扱っている題材が一般大衆向けではないのか...?

この本で一番良かったのは、最後について来る江南の歴史 関連年表だった。空白部分も多いが、分かりやすくまとまっていた。江南を中国の南方とかなり広範囲としていた。本を読む前、江南は杭州とその周辺地域と思っていたが。

この著者の本にはいつも、通貨やモンゴル帝国、気候地形、宦官、シルクロード、科挙、アヘン戦争のくだりなど基本的な歴史の軸があるので既視感はいつもある。

この著者の中国史に関する本を何冊か読んでみて、自分は個人的に、中国史はそこまで深く知りたい欲がなく、中国語の文法のほうが知りたい欲が明らかに多いことが分かった。

江南には個人的に興味があるので、本著を2回読んだが、感想は1回目とおおむね同じ。

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2023年11月20日

Posted by ブクログ

中国史の中では辺境として扱われる江南(南方)の歴史を辿る。ただ、江南も中国の一部であり、北方や中国全体の動きに連動する。本書を通じて思ったのは、中国全体や北方の話にもそれなりに紙面が割かれていたこと。
長江下流域は、唐宋以降は経済の一大中心地であり、その帰趨は中国のみならず、世界史的な影響を及ぼしていた。それだけに、長江下流域の士大夫エリート層は政権中枢に対して、複雑な思いを抱えて斜に構える態度を取っていた。それに比べると、四川や湖広は史書に登場するのは早いものの、目立たない役回りだった。福建や広州は中国化されたのは遅かったが、外界とのつながりを持つことで、独自の存在感があったようだ。
政治の中心はいつの時代も北であったが、南方それぞれの地域で独自の歴史や発展があり、一つと考えてしまいがちな中国の多様な面が垣間見れた。

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2024年10月07日

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