「ドラえもんが世界をすくう」そんな日が必ず来る。しかもこの百年以内に‥‥そう信じています。
後書きにて、里中満智子さんは20年前にそう書いています。グローバル社会の現代、あり得るなあと思います。
実際ついこの前、中国で発見された新種の肉食恐竜に「のび太」の名前がつけられました。「エウブロンテス・ノビタイ」という。中国の研究者がドラえもんの大ファンだったのです。この本でも詳しく扱われている「のび太の恐竜」は、F・不二雄さんが思い入れも持って、しっかり調べに調べて、「まんが技法」を駆使して描かれたようです。少なくとも、既に古代生物研究者「世界」は「変えた」わけですね。
本書は、1988年子ども向けマンガ入門書として刊行された「藤子・F・不二雄 まんがゼミナール」(てんとう虫ブックス)を再構成して刊行された文庫本です。
ドラえもんのようなマンガを描くためのホップ・ステップまでを懇切丁寧に紹介しているので、子どもたちにも有用ではあるけど、「物語」を書いてみたいと思っている大人にも有用なアドバイスが、そこかしこにあるし、「のび太の恐竜」の始まりから終わりまできちんとその狙いや隠されているスパイスまで語っているので、この作品のファンならば楽しめること請け合いです。図らずも、マンガ入門の形を形を借りた、自らが語るドラえもんの魅力話になっていました。
私は、「ドラえもん」は掲載誌はかすっていないし、放映チャンネルは契約していなかったので、この国民的アニメの洗礼は全く受けていません。どうして「ドラえもん」が、あんなに人気があるのかわかりませんでした。だって、ドラえもんのポケットなんて、なんでもアリじゃないですか!その代わり、「オバQ」と「パーマン」は、今でもスラスラっと描けるほどの私の特技になっています。大好きなマンガです。「藤子不二雄」は、マイレジェンドとは言わないまでも、私の重要な作家の1人です。
特に興味深いのは、ドラえもんのアイテムの中には、マンガ技法「そのもの」がかなり使われていたということです。まぁF・不二雄さんはアイデアつくりにかなり苦労していたので、ストーリーにそういうとっておきの技術が反映されるのは当たり前なのでしょう。驚くのは、ここで紹介されている解説を読んで初めてわかるので、読んでいる時はマンガ技法を使ったな、とは思わせない所です。
・時間を止める「タンマウォッチ」は、「俯瞰描写」の作例になっている。
・「必ず実現する予定メモ帳」はシナリオ作りの基本。
・「シナリオライター」で、目にみえるようにシナリオを実際に作って見せたりしている。
・地図を貼り替えれば引越しができる「引越し地図」は、環境設定つくりで使える。
・プロの漫画家を目指しているジャイ子は、のび太を観察してマンガを描こうとする。何度ボツになっても諦めない。「みんなもその意気を学ぼう」とF・不二雄さんは言います。
私的には、ともかくなかなか進まない時には「扉絵」を描けば、登場人物、構想、強調すべき点が整理できる、とアドバイスしているのがとっても参考になりました。小説的に言えば、「次号より連載開始を告げる作者の言葉」だろうか。創作する者にとって、一つのヒントになります。