佐藤優のレビュー一覧
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佐藤優「先生」の整理された広大な知識を、異色の作家、中村うさぎが引きだしていくという体裁は、よくある対談集だが、対象読者層の知的レベルを、あまり見ないレベルに設定しているのが特色か。専門家でもない、B級でもない。
まあ佐藤の本でも、一連のハウツー物でない、こういった社会的なものを読んで面白いと思うのは、官僚ならばともかくサラリーマンではごく一部だろう。佐藤の役回りはプラグマティックな現代社会思想家というところだ。
そういうのを好む読者は、ふだん中村うさぎを読むことは絶対に無いので、この組合せには妙味がある。同志社+キリスト教つながりということだが、文春はうまいことを考えるものだ。 -
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ネタバレ以下、備忘録的に印象に残った言葉を記す。
竹村「(学者というのは)難しいことをやさしくするどころか、やさしいことを難しくいいたがります」「日本のマスコミは一点集中型で同じ話題を「これでもか」と報道する」
佐藤「語学こそ努力しないと上達しないものです。集中して机に向かう訓練が大事なのです。(中略)この人間は伸びるかどうかを見極めるポイントはたったひとつ、机に集中して向かうことができる能力があるかどうかです」「試験をパスするコツも、机に一定期間集中して向かう能力があるか否かです。集中して記憶をし、それを再現する能力、それは知識人として最低限の能力なんです。試験とは、その基礎能力があるか否かを見るだけのものです。」
佐藤「動物は、敵だと思う相手がいる場所では、決して同じ餌を食べません。一緒に食事をするのは、敵ではないと認識したからであり、安全だと考えているからです」
佐藤「・・・自分にはっきりとした考えがないと、他人には寛容になれない。」「自分の考えを押し付けるのはよくない、結局、悲劇を生む。(中略)最近の社会情勢を見て、異分子を排除する精神が高まってきつつあるように感じます。これは危険です。」
佐藤「濫読は重要ですね」「興味を持つ力をなくしたら、知的なものは入ってこなくなるでしょうね。日本のいま、特に若い世代に問題なのは、興味をもつ力が落ちていることではないでしょうか」
竹村「ロシア式速読法というものがあるとか。」
佐藤「特別な方法でありません。・・・基本書を完全にマスターしておくから可能になる方法です。・・・ロシアの学生は・・・小学校、中学校、高校で教科書を徹底的に丸暗記するからです。・・・丸暗記をして基本データが頭の中に入っているから、それに関連したテーマなら瞬時に理解できる。だから速読が可能になるのです。」
竹村「ということは、基本データがインプットされていない分野は速読できないということですか。基礎知識がない分野は記憶できないということと同じですね」
佐藤「同じです。いくら目の動かし方とか、ページのめくり方を訓練しても、基本データが入っていない分野では無意味だと思います」
憲法に関する諸問題、露西亜に関する議論等は興味深い。竹村氏が概ね聞き役に回っているのが印象的だった。 -
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ネタバレ筆者(私)は、この本の著者(佐藤)があまり好きではない。というのは、①自分の価値観を他人に押し付け、②自分が有している知識をひけらかし、③それを自分独自の考えに発展させず、④他人(読者)にわかりやすく伝える努力を放棄しているからだ。
換言すれば「俺ってこんなに物事知ってるの。すごいでしょ!俺の考えじゃないけど、○○って偉い人が~って言ってるよ。」というスタイル。佐藤の自己満足(マスターベーション)的な匂いが、私にとって鼻につくのである。
そんな佐藤に批判的な私だが、「佐藤の本の中では得るところが多い」という意味と語学に対する参考文献の多さで★4つとさせて貰った。
私がこの本を手に取った理由は、佐藤が獄中でドイツ語をはじめとする語学を勉強していた、ということを知ったからに過ぎない。私の目下の興味は語学なので、その観点からこの本を読んだ。
読めばわかると思うが、この徹頭徹尾、彼のマスターベーションが続く。彼の神学論争やヘーゲル哲学の解釈がずっと続くが、別に理解できなくても飛ばし読みで構わないと思う。佐藤は自分が解釈した神学やヘーゲル哲学を発展させて、読者に「わかりやすく」伝えようとする努力は一切しない。彼は「インテリの世界で一定の発言力を確保したいと考え」一定の発言力を持つために「理解される文章を綴る」べきと考えている。他者に全く理解されない文章は「インクのしみ」にすぎない(p.442)と述べているが彼の著作は到底「理解される文章」だと思わないしこの彼の発言と矛盾するのではないかと考えている。ここで注意したいのは、佐藤は一般人向けではなく「インテリの世界」のみを対象として文章を書いている注意されたい。
哲学・神学を基礎とした彼独特の政治思想・政治哲学に興味を持つ人が多いのか、彼の巷間での評価は高いみたいだが、私はほとんど評価していない。一例を挙げると、この本の中で「(自分は)国益のために働いてきた」という記載が多くみられるが、その「国益」の定義を一度もしないまま議論が進んでいく。彼の考える「国益」と読者が考える「国益」が相違する可能性があるのに、佐藤と読者の国益が同一だという前提があるのではないでしょうか。
いろいろ思うところはあるんだけど、気づいたことや、印象深い記述を備忘録的に以下紹介することで、この本の感想としたい。
○「私は知識人というのは(中略)、事故の置かれた状況をできるだけ突き放してみることのできる人間だと考えています。この訓練が一般教養であり哲学なのだと思います。」(p.172)(←追記3を参照されたい)
○「語学などというのは、覚えなければならないのは二つのことだけだ。文法と単語だ。」(p.180)
○「仕事への適性というのは3-5年で明らかになり、10年くらいの経験を積んだところで一応その道で専門家として食べていくことができるかどうかが明らかになります。さらに5年くらい経ったところで、専門家の世界でどれくらいのところのに行けるかも見えてきます。」(p.229)
○「私が日本の政治家、外交官に対して何を物足りなく感じているかがわかってきました。自らの発した言葉に対して責任を負わない人が多すぎるのです。」(p.289)(←外務省にいたならこんなこともっと早く気づくべきだろう。佐藤の愚鈍さが表れている。)
○「知らず知らずのうちに恐怖政治を行うのがカルバン・タイプである」(p.362)(←カルヴァンについての言及が短絡過ぎる。なぜカルビニズムが恐怖政治を産むのか?)
○「小泉が自民党総裁に再選され、日本んはあと三年間ハイエク型新自由主義モデルを追及することになる。持続的経済成長がハイエク型新自由主義モデルデ国民全体が裨益するための大前提であるのだが、この大前提が満たされなければ、今後三年で日本社会内の貧富の差がかつてなく拡大する。これが総体として「がんばって勝ち組に入るぞ」という人の数を増やし、日本全体の活力を増すのか、それとも「競争、競争と追われてもなかなか勝ち組には入れないので、どうせ食べていけないほどの貧困はないのだからそこそこ生きていければよい、むしろ自分の時間を大切にしたい」という人々の数を増やし、日本の活力が低下するのか(中略)、僕は後者の可能性が高いと思う。」(p.425)(←経済は佐藤の専門外が故に非常に的確かつ客観的に分析できている。経済分析を行う佐藤は大変思慮深く、僕は評価する。)
○「人間の平均化は危険だ。それを打破するためにはきちんとした学識・教養を身に着け、自分の頭で考える習慣をつけるしかない。」(p.439)(←「自分の頭で考える」ことが不足気味なので身につまされた)
追記1:筆者は外交といえば米国一辺倒といういう政治姿勢に甚だ疑問を持っている。冷戦の影響もあり、露西亜およ露語(露西亜文化)への理解不足が日本では顕著であるが、米国とならぶ大国である露西亜の関係を新たにするべきではないかと考えており、その意味で付録でついている露西亜との北方領土に関する経緯を記した文書は秀逸である。大変わかりやすい。
追記2:獄中への洋書の持ち込みは禁止とのことである。もし僕が何かの理由で投獄された場合には、洋書を読んで勉強しようと思っていたのに、その野望(?)が達成できないことを知って落胆した。佐藤は獄中で、ドイツ語・ラテン語を中心に勉強していたようである。
追記3:この本はないが、別の彼の本で教養を身につけるための外国語は仏・独・英語(中国語などは本来実務言語であり、教養課程の勉強につながらないので、単位を出すべきでないとも語っている。)で最低2か国語、できれば3か国語を(大学で)習得すべきで、加えてラテン語・ギリシャ語も習得することが望ましいと主張している。個人的には英語以外の外国語を知ることは多様な価値観を身につけることにつながるので望ましいと考えるが、単位云々の話とは別次元の話ではいかと考える。 -
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ソ連崩壊を内側から見届けた日本の外交官と、その周囲を取り巻く人間たちの壮大なドキュメンタリー作品。社会主義国としては最大の規模を誇るソ連という帝国が崩壊する過程を、共産党の知的エリートやサーシャなどのインテリらの政情分析を交えて臨場感あふれるノンフィクションとして著した佐藤優氏の手腕は、圧巻の一言に尽きます。
ただ、私自身がソ連の民族的・宗教的・政治的な歴史には明るくないので、所々分からない部分があり、更なる勉強が必要であると痛感しました。
社会主義国として最も成功した国であると揶揄される我が国にとって、ソ連の自壊は「良いお手本」であり、「反面教師」でもあることを知るためにも、是非学ぶべきであると思わせられる教訓の一冊でした。 -
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作家、佐藤優氏にとって初めての育児教育本です。対談がメインで、その相手は5人の子どもの母親である元衆議院議員の井戸まきえさんとによるもので、段階を踏んだ解説がとても参考になるものでございました。
本書は「知の怪物」の異名を持つ作家、佐藤優氏と、自らも5人の子供を持つ母親である元衆議院議員の井戸まきえさんの2人が、共著で著したもので、佐藤優氏にとっては初めての子育て教育本になるのだそうです。
「佐藤さんのような教養人にはどうすればなれるんですか?」
という井戸まきえさんの直球の質問に対して佐藤氏は実に丁寧な形で答えていて、読んでいてとても面白かったです。それも段階的に示されており、本を読む力に始まって文章を読み、書く力。習い事や受験勉強に至るまでのロードマップが記されており、僕もこれを読みながら自分の来し方行く末を思い浮かべておりました。
紹介されているテキストも東西の古典から、角田光代さんの傑作『八日目の蝉』に至るまで、幅広いものがございました。そして、巻末のほうでは育児をめぐる相談に対する二人からの回答が収録されており、とても参考になりました。
しかし、僕がとても感銘を受けたのは育児の話ではなく、かつて佐藤氏が外交官時代にロシアのモスクワ大学で教鞭をとっていた際、生活に困っていた学生を自らのポケットマネーで仕事を与え、援助していたというエピソードがあり、現在、職業作家となっても自らのできる範囲で、経済的に困窮している学生達を支援しているのだそうです。その中で公認会計士などになり、佐藤氏の下を巣立っていった方がいるという話で彼の持つ軸がぶれていないことを再確認いたしました。
僕にはまだ育児の経験がありませんが、将来の参考になればと。また、現在育児をされていらっしゃる方は、とても参考になるかと思われます。 -
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佐藤優と手嶋龍一。外交面とインテリジェンスの『裏街道』を歩んできた両氏による国際情勢の『舞台裏』を語りつくすとってもディープな対談です。『あの話の裏側はこうだったのか!』と何度も驚かされました。
『外務省のラスプーチン』佐藤優氏と国際ジャーナリスト手嶋龍一氏のディープな国際社会の『裏側』をめぐる対談本の第2弾です。
佐藤氏のおっしゃるように、国際社会は『新・帝国主義』の時代を迎える中、日本は『3.11』の東日本題震災で弱体化し、それを狙って韓国が竹島(独島)を、ロシアが北方領土を。そして中国が尖閣諸島の領有権をあの手この手で主張し始めた事に関する『危機』をめぐるスリリングなやり取りに始まって、『民族問題』の萌芽が芽生えつつイある沖縄の問題や、プーチン政権とナって『甦る怪物』となったロシアがめぐらす『北方領土戦略』第二章では中国の『インテリジェンスのゲーム』を無視してあの手この手の『汚い』工作に明け暮れるさまを注視しております。
さらにここでは歓楽街の『ロシアン・パブ』のおねいちゃんがなぜ、ウクライナ出身が多いかについても解説がなされ、思わずニヤリとしてしまいました。
第三章では最悪の外交として各方面からたたきにたたかれた鳩山由起夫元首相のイラン訪問を外交上の評価としては『論外』と切って捨てる一方で、イラン側鳩山首相に仕掛けた『インテリジェンス工作』の手口の鮮やかさを語っております。これは佐藤氏がラジオでも解説しており、当事者であった大野元裕氏をゲストにすさまじいまでの追及を行っている回がYoutube上にありますので興味をもたれた方は一度お聞きになってはいかがでしょうか?
第四章ではイランと北朝鮮の各事情について、これまた『裏事情』がたっぷりと語られており、『サード・パーティー・ルール』というインテリジェンス・コミュニティにある『掟』についての箇所が面白く、またためにもなったと思っております。
第五章では東日本大震災でアメリカ軍が展開した『トモダチ作戦』のその『真意』。内閣に様々な「ガバメンツ」ができて『インテリジェンス・サイクル』が回らなかったという話や、情報都市としてのTOKYOが現在斜陽を迎えているという話し、さらには日英同盟がゆっくりと解体に向かっているということや、ギリシャ危機の『真相』は『ローマ法』という概念があの国にないがゆえに深刻であるということ。TPPの是非。アフガニスタン・イラク戦争で国力を使い果たしたアメリカが東アジアにどのような戦略をとっていくのか?さらには日本が意図せずして行った『選択』がプーチン大統領を驚かせた話まで…。新書サイズでこれだけの『高カロリー』な話が繰り広げられるのはとてもすごいことだなと、ただただ、脱帽の一言でございました。