山本やよいのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
原田マハさんの『リボルバー』の文中に“ウォーショースキー ”の名前が出てきて興味を持ったので、こちらを手に取りました。
本書は「ウォーショースキー ・シリーズ」の第一弾です。
シカゴの私立探偵・V・I・ウォーショースキー 、通称“ヴィク”の元に、銀行家を名乗る男性が訪れて、息子の恋人が行方不明なので探してほしいと依頼してきます。
早速調査を開始したヴィクですが、件の銀行家の息子・ピーターのアパートで彼の射殺死体を発見。さらに、依頼人の男が被害者の父親とは別人だったことが判明して・・・。
“探偵モノ”といっても様々で、こちらはコツコツ推理を重ねて謎解きをするというより、ガンガン身体を張りまくる、所謂“ハードボイルド系”でございます。
冒頭から、気の強さ全開のヴィクですが、ギャングにボコボコにされようが、自宅や事務所を滅茶苦茶にされようが、屈することなく立ち向かうタフさがカッコイイですね。
ピーター殺害の真相を追ううちに、浮かび上がってくる、労働組合と保険会社が仕組んだ大規模保険金詐欺と、反社会的勢力との癒着・・・。
こうした巨悪が絡む社会派な部分や、アクションシーンと併せて、ハードボイルドものではお約束(?)の“アバンチュール”もご用意されています(個人的には探偵の“火遊び”パートは特にいらないのですけど、まぁいいかww)。
ということで、王道のハードボイルド・ミステリというかサスペンスを堪能させて頂きました。
こちらは既に20作程出ている人気シリーズのようで、こういった系は巻を追うごとにキャラが練れてきて面白くなっていくと思うので、もうちょい追ってみようかなと目論んでおります~。 -
購入済み
設定はなかなかに面白い
諜報員であり美術修復師という設定はなかなかに面白いと感じた。ストーリーとは別に美術修復というもののトリビアが興味深い。登場人物たちの持って回ったようなユーモアをたたえた話しぶりがいかにも翻訳物っぽくてそれなりに面白い。
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Posted by ブクログ
古本市で購入。
650ページの長編。
シカゴに住む私立探偵ヴィグ。
窃盗の容疑をかけられた青年の行方を捜してほしいとの依頼を受ける。
青年はどうやら老いた女優と一緒にカンザスの田舎町に行ったらしいという情報を元にカンザスに向かう。
カンザスの田舎で行方不明の二人を捜すのだが、途中のストーリーはほとんど二人は関係なくなっている。
二人を捜すうえで、ヴィグが殺人事件、軍の隠蔽、出生の秘密などに巻き込まれ?ていく。
後書きで知ったのだが、私立探偵ヴィグ・I・ウォーショースキーはシリーズになっていて早川から何冊も出ている。
ちらっと調べたら、書作は30年以上も前に刊行されていて、その時のヴィグは携帯もPCも使っていないが、本作は21世紀もバリバリなのでSNSにスマホ、タブレットを活用している。
愛犬パピーはいつから出てくるのかな。 -
Posted by ブクログ
ホロコースト否定者であるアーヴィングに、名誉毀損で訴えられたリップシュタット教授。
無視することはアーヴィングの勝利に繋がり、多額の賠償金がかかってくることになる。
実際にあった法廷闘争を、リップシュタット教授の視点からまとめた一冊。
いやあ、長かったー。
もちろん、より細かに答弁が記載されていたら、こんなもんではなかっただろうけど。
あの大量虐殺は、在ったのか。
という問題提起は、今日、あらゆる形に言い換えることが可能だ。
その際に、我々が対峙するのはアーヴィングやナチス、ヒトラーではなく、今なお権勢を誇る「国」そのものであるかもしれない。
この話の中で、アーヴィングの資料に対する歪曲が明らかになり、結果的に他のホロコースト否定者にも影響を及ぼすという結末を辿る。
そもそも、アーヴィングはホロコーストを否定すると同時に、ユダヤ人に対する差別的意識もあって、その発言にまた傷付く人々が出てくる。
語ることで、傷を与える。
歴史家とは、そういった人の心とは距離のあるところにいるように感じていたが、そうではないのだと知った。
反面、歴史的見解における挑戦の必要性も感じる。
アーヴィングを支持するわけではなく、グレイ裁判官の「過激な意見を言う者の保護」にも、一つの意味があると思うからだ。
面白いのは、アーヴィングを毛嫌いしているリップシュタット自身に、もしかしたら?という疑念が生まれる場面がある。(モチロン、ホロコーストの中核に関わる部分ではないけど)
「アーヴィングは歪曲と捏造を重ねてきた人物なのに、わたしたちはふたりとも彼に翻弄され、ほんの一瞬ではあったが、アーヴィングの説を真剣に受けとめたのだ。」
ランプトンの言う、目を合わせ続けると絆が生じる、という言葉は確かにそうなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
便利になったものだ。机上のモニターにグーグル・マップでリージェンツ・パーク界隈を開いておいて、作中に現れる場所を打ち込んでいくと、人物たちの移動ルートが手に取るように分かる。特に主人公が住んでいるパーク・ヴィレッジ・ウェストなどの高級住宅地では、建っている建築物の写真が見られ、なるほどこんな感じのところなんだな、と分かる。おそらく、作者もその辺を分かって書いているのだろう。異様に詳細に移動経路を示している。
紙の地図で、登場する通りの名を調べようとしたら、多分すぐにあきらめてしまうだろう。人物が角を曲がるたびに、次から次に出てくるアベニューやレーンの名前は地図ではなかなか見つからない。一度や二度ならロンドンにも行ったことはあるし、リージェンツ・パークも歩いて横切ってはいる。記憶に残っているのは、広い緑地を小径が走り、ところどころにベンチが設けられていて周囲は木立で囲まれているといった景観だ。野生の栗鼠が足もとで木の実を食み、リードもついていない大きな犬が走り回っていた。
謎解きミステリではない。無論、連続殺人は起きるし、犯人は最後に逮捕される。ただ、それを追うのがストーリーの中心ではない。犯人の目星を付けるための必須アイテムである、例の、主な登場人物の紹介もない。主人公は、メアリという若い女性である。DV男と縁を切るため、それまで住んでいた家を出て、長期のバカンスをとる祖母の友人の家の留守番をしようとしている。男は未練たらたらで、後を追ってくるのは見え見えだ。
メアリは、過去に骨髄移植のドナーになった経験がある。団体から手紙が届き、移植を受けた相手の名が分かり、偶然、留守番先の近くに住んでいることが分かる。当然二人は出会い、恋に落ちる。三角関係のもつれで殺人事件が起きるかと思いのほか、殺されたのはホームレスだ。植え込みや、草地の多い公園内は、夜間は施錠されるが、ホームレスが夜を過ごす絶好の場所になる。ところが、それを憎む者がいたのだろう。死体は、わざわざ公演を囲む鉄柵についたスパイクに串刺しにされていた。二人目の死体が出るころには犯人には<串刺し公>という異名が付いていた。
ある意味、主役はメアリではなく、リージェンツ・パークそのものではないか、と思えてくる。それというのも、この公園を根城にしたり、そこを毎日の仕事場にしている複数の人物が、事件に絡む。その人物たちをつなぐのが、公園という、身分の上下、階級の差を問うことなく、誰もが利用できる公共の<トポス>である。メアリは、公園の東に隣接する高級住宅地パーク・ヴィレッジ・ウェストから北西に位置する仕事場まで、公園を抜けて通勤している。そこで、よく目にする一人のホームレスがいる。
青い目に顎髭を生やし、Tシャツにジーンズ、くたびれたスウェットシャツ姿の男の名はローマン。オックスフォード訛りが残るのも当然で、かつては近くで友人と二人出版社を経営していた。交通事故で、妻と二人の子をなくしてからというもの、思い出が染みついた家を売り払い、ホームレス暮らしを続けていた。そんな自分に普通に挨拶をしてくれるメアリのことが気になり、ひそかに彼女を見守っていたのだ。
もう一人、メアリの家の持ち主が犬の散歩に雇っているビーンという男がいる。もとは、資産家の家に勤めていたが、SM狂いの主人が、彼に遺産としてその家を残してくれたので、今でもそこに住んでいる。ただ、年金だけでは家を維持していけないので、資産家の犬の散歩を何軒も抱えて、運動を兼ねてアルバイトしていた。公園の周囲に住む顧客から犬を預かっては公園内で運動をさせる。コースを考えれば、無理なく運動ができるのだ。ただ、この男は悪党で、弱みを握ったら相手をいたぶることを厭わない。
最後に、麻薬を買う金欲しさに、人に金をもらっては相手を傷めつけるのを仕事代わりにしているホブという男がいる。コカイン中毒で、公園の柵を乗り越えては、茂みに隠れて吸引し、ハイになったところで仕事にかかる。これらの怪しい男たちが、金や自分の嗜好のために、相手を利用し、使い捨てる。本邦の二時間ドラマのように、深い怨恨や愛憎ばかりが殺人の理由ではない。
さすがにルース・レンデル。普通なら交わらないだろう階層にある人物を、その人物がそれまで送ってきた人生の中で、すれ違うようにして持つに至った極めて薄い縁を巧妙に生かして話を組み立てている。あまり重要でない、と読み飛ばしそうな、つまらないうわさ話や、ふと目に留まる情景のなかに、丹念に手がかりを埋め込んでいる。祖母の遺産を相続することになるメアリの財産を狙う男の首尾を見極めるのに汲々として読み終えた後、もう一度、今度は連続殺人事件の真相を最初からたどらなくては気が済まなくなる。
ええっ、こいつが犯人?とぼやきたくなる真犯人に、突っ込みの一つも入れたくなるが、ミステリの常道をあえて無視した展開も、サスペンス小説なら許される。ではありながら、再読時には、ここをしっかり読んでいれば、犯人が何故、ホームレスの串刺しにこだわるのか、事件がある一定の範囲で起きる理由も分かっただろうに、と思わされる記述が、実に丁寧に書かれていたことに思い至り、老練な作家の手腕に讃嘆しきり。サスペンスの女王という呼び名に偽りはない。
それにしても、地図上に描かれた道をたよりに、人物の行き来をたどっていると、よく歩くものだなあ、と感心せざるを得ない。しかし、考えてみれば無理もない。鉄柵で囲まれた園地内に車は入れない。周りを走る地下鉄を乗り換え乗り返して、それを降りてからまた歩くより、公園内を突っ切ってしまうのが一番はやいのだ。読んでいて、またロンドンに行ってみたくなった。