しらびのレビュー一覧
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ネタバレ 購入済み
自由と平等の酷薄さ
今回の話はこれまでに比べてもかなり面白いテーマであったと思う
自分は作中で表現されるところの羊としての素質と王としての素質を半々くらい持っていたらしく
どちらの言い分も分かってしまい、脱走兵達の不平不満に共感すると同時に、連邦軍人達のように呆れと嫌悪感も抱きながら読んでいた
悪者になりたくないから、無能は何もするな、という残酷な本音を言いたくないだけの卑怯者という言葉は読んでいて思わずハッとさせられてしまい、思わずその前後の文章を何度も繰り返して読んだほどだった
その後のミアロナ中佐の本音もまた、彼らの行動を嫌悪しつつも押し付けられた自由と平等の残酷さに振り回される羊への哀れさを悼むもので、それがどこか自分にとっても救いを得られたような気分で今までとはまた違う意味で強烈に印象に残った
一方で同じような元農奴出身でも諦めずに中隊長の
言葉を信じて必死に避難民を守り抜いた兵士の心情の吐露は短くまとまっていながらとても心を揺さぶるものだった
不安に挫けそうになるだろうことを見越して彼らがそれでもなおヒーローとして歯を食いしばれるようにと残した言葉とその後の泣き崩れた兵士のくだり
人間の善性の美しさ、弱くてもそれでも出来ることを果たそうという尊さ
それらがコンパクトに、とても美しく描写されていたと思う。個人的にはこの巻でのベストバウトはここだと言ってもいい
もしも、信じた者が優秀であれば、脱走兵達もまた違う未来があったのだろうかとも考えた
トーチカに籠った兵達は中隊長によって使命を与えられ、信じるものを与えられ、誇り高き軍人としての誇りを自覚させてもらえた
この差は非常に大きいものであったと思う
死してなお支えとなり兵達を守り抜いた中隊長と、死ぬその瞬間まで結局は保身に走ってしまったノエレの対比は極めて残酷に感じる
誰もが強くあれるわけではない。ノエレの行動は愚かで嫌悪すべきものだったが、私は彼女を痛ましく思う
無能であることは罪だと思う。しかしそれを当人が自覚したところでどうにかなるものでもなく、自己責任の一言で片付けられてしまう自由と平等の美辞麗句の酷薄さもまた真理であると思う
一方で己の無能を他者のせいにする無様さもまた嫌悪されて然るべきであると思う
自由と平等、強く生まれた者、弱く生まれた者
改めて考えさせられる1冊だった -
購入済み
没入感が凄い
将棋はルールがわかる程度で時勢にも詳しくはないが、本当に今の将棋界で起こっているのではないかと錯覚してしまうほど、丁寧に作り込まれていて面白い!
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Posted by ブクログ
スーパーコンピュータ「淡路」で100年後の将棋を探究する九頭竜八一。
タイトルを取り3段リーグをへず編入試験を求める雛鶴あい。
女流棋戦をすべて制しようとする夜叉神天衣。
療養を続け復活しようとする空銀子、空笙子から聞かされた遺伝の心臓病。
前竜王の碓氷尊と雛鶴あいとの碓氷システム(藤井システム)復活の戦い。
29連勝をかけた椚創多(藤井聡太)と捌きのマエストロ生石との戦い。
夜叉神天衣と祭神雷との女流帝位戦。
田舎へ帰っていた鏡洲飛馬を椚創多が迎えにいく。
千日手か入玉というコンピュータ将棋の結論は予想どおり。
最終的には人間がAIを反省させるという現実に追いつけるか? -
購入済み
姉弟子
ナンバリングは16.5だけど、実質0巻的な一冊。
姉弟子がひたすらに可愛かった。本編は是非ハッピーエンドを迎えてほしい。
あいの才能の怖さが垣間見えた。 -
購入済み
母
あいがなぜ髪を切ったのか、または切らなかったのか、それは是非読んで確かめてほしい。
あいのお母さんは、本当に真っ直ぐに、温かく娘を見守っているんだと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ将棋というゲームのありかたや、その未来はどうあるのか、という本質に迫ってきた感じがする今回でした。一方で、表紙の髪が伸びた愛らしい銀子ちゃんの姿に心打ち抜かれりもします。ほぼ一年ぶりの再会にも関わらず、ずっと一緒にいたような気安さで接する二人の絆が盤石であることを嬉しく思います。それだけに、銀子母から告げられた事実は衝撃的で言葉を失ってしまいますね。さて今回描かれた全対局は、将棋の歴史を背負うあいと、AIとともに未来の将棋で臨む天衣の決戦のための舞台を整えるためにあったように感じます。あいvs天衣の対局はどう決着するのか。続きが楽しみです。
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Posted by ブクログ
〈シリン〉の犠牲により自分達の行き着く死を直視してしまい揺れるエイティシックス。その葛藤が最終的にあのような結論を導き出すとは……!
エイティシックスにとっては、いずれ訪れる死の瞬間まで戦い続ける事が誇りだった。それにより残酷な世界に負けまいとした。けど〈シリン〉により戦い続けた果ての死を見せつけられれば、エイティシックスとしての矜持は揺れる
それは自分達がエイティシックスで居続ける意味さえ疑問視させるもの
これまでエイティシックスは自分達とそれ以外を分ける事により世界を睥睨していた。外の声など聞く価値がないとしてきた
けど、矜持が揺れている状態では外の声は以前より聞こえてしまう。それはレーナの声だったり、ダスティンの声だったり、〈シリン〉の声だったり
エイティシックスの中でも最も揺れていたのがシンだね。特にシンは聞こえてしまう声だけでなく、レーナの声を拾い漏らさないようにしているから余計に揺れる
元々シンとレーナでは持つ価値観が大きく異なるから、聞けば聞くだけシンは断絶を感じてしまうわけだ
それでもレーナと共に居る為に痛みを感じても変わろうとするシンはそれだけで充分に変化の兆しを手にしていると言えるけれど…
変化には痛みが伴う。それは戦場でのミスによる負傷だったり、レーナへの意図せぬ暴言だったり
でも、かつて無い程の痛みを抱えたからこそ、これまで我慢できていた痛みを「痛い」と感じられたからこそ、自分が今何をしなければならないかを自覚できるわけか
レーナの方も自分の言いたい事だけを言うのではなく、シンの想いを聞き取ろうとし始めたのは印象的
自分の価値を正しいと押し付けてしまえば、別の価値観を持つシンを余計に傷つけてしまう
そこで一旦距離をおくのではなく、シンの価値観と自分の傲慢さを知って、それでも尚レーナはシンを理解する為にシンに近づこうとするんだね……
シンとレーナには絶望的に足りていない理解の為の対話。その約束を交わして
そうして始まる竜牙大山攻略戦は壮絶の一言。そもそも火山に飛び込んで敵基地の破壊やら首領の鹵獲を行おうというのだから生易しい作戦にはならないのは当然として、ここにフォニクスも参戦してくるのだから堪らない
一方で己の死を直視してしまうような環境では、逆に死にたくないという感情を呼び覚ますのか
かつてはシンがレーナを置いていってしまった。今回もシンが火山に飛び込む側
だというのにあのシンが「おいていかないでください」と言うなんてなぁ……
あの時は先に進むシンに追い付こうとレーナは必死になった。けど今回の言葉は二人として生きていく為の言葉。だからレーナも「帰ってきなさい」と返す
二人はようやく対話に繋がる始まりの言葉を言い合えた気がするよ
だというのに、フォニクスを撃破したシンの前に広がるのは絶対死の光景だった点は震えそうな心地になってしまったよ……
あのシンが死なずに帰る気持ちを固められたというのに、その直後にこのような仕打ちを……
それでも理不尽な絶対死を前にして、戦う意志を再度固めて「死にたくない」と思えたシンは本当に変わったね…
エイティシックスとして戦い続け、何度も死にそうになって、それでも生きたいと願って
そうした葛藤の果てに「誰かと生きたい」と言えたシン。その想いを確かに出来たから辿り着いた実家の誘いよりも優先したい人がいると伝えられる
レーナは「お帰りなさい」、シンは「ただいま」
どちらかが先に進むのではなく、共に歩んでいくのだと。そう理解できる素晴らしいラストでしたよ…… -
Posted by ブクログ
油断したよ…。そりゃ油断したよ……
前巻ラストにて分かたれていたレーナとシンが遂に対面を果たし共に戦うと誓いあった。今巻の序盤なんて本作らしくない程にラブコメしているレーナとシンの様子が描かれたらそりゃ油断するよ……
おまけに今回攻略する事になった敵拠点だって当初の想定じゃ、ただの制圧戦で終わると思われていたのに全然違ったし……
共和国に迫害されたエイティシックス、そしてレギオンが取り巻くこの世界がどれだけ残酷なものか改めて突きつけられた気分になったね…
共和国にて戦っていた者達も連邦に拾われ、独立機動打撃群なんてちょっとアレな部隊に再編されたシン達エイティシックス。そんな彼らに任されたのはまさかの共和国における奪還作戦ですか。エイティシックスに共和国内部を守るような作戦を任せるなんて趣味の悪い…と思わなくもないけど、逆に純粋な連邦軍だとそこまで進軍する難しさも有るか…
襲い掛かる侮蔑と迫害の嵐。レーナが当然のように義憤するそれを気にしないエイティシックス達。初見時は何処か違和感の有る描写では有ったんだよね、これ。以前彼らが捨て置かれていた環境を思えばあの程度の悪意に反応する理由はないだろうと思える
でもあまりに反応しなさ過ぎではないかと思えたし、レーナを過剰に特別扱いする様子にも違和感は有った
その点は話が進み、北域に棲み着いたレギオンの有り様を見ていく中で理解させられたのだけど
第1巻を読んだ際に強く感じたのはレーナとエイティシックスの間におけるコミュニケーション不全。それは空間や精神があまりに隔絶している為にコミュニケーションが成立し得ないという感想だった
ならすぐ近くに居られるようになった今巻ではそれを感じなくなったのかと言えば、むしろその逆。近くなったが為にレーナとエイティシックスの隔絶がより鮮明になった印象
ただ、その隔絶はレーナとエイティシックスの間に有るというよりも、エイティシックスとそれ以外の間に有るといった感じなんだよね
その事実がエイティシックスが共和国に帰ってきた状況により…というよりも変貌するレギオン掃討を行う中で見えて来たのは意外を通り越して恐ろしいの一言
共和国で鹵獲した市民を元に大量の〈羊飼い〉を生み出したレギオン。レギオンにとって鹵獲した人間が白系種であるかエイティシックスであるかなんて関係ない。ただ、人間であると言うだけで鹵獲と虐殺を行う
白系種だけでなくエイティシックス内でも様々な迫害が行われたエイティシックスの少年少女たちにとって、自分達以外の人間を名乗る者達の色なんて関係ない。「自分達」でないならそれは仲間ではない
人を効率的に狩るために不要なものを切り捨て続けた果てに機械知性を手にしたレギオン
高機動型に対応するために戦闘に不要なものを消し捨てようとしたシン。他のエイティシックスにも大事な何かを消し捨てた印象を覚える
レギオンとエイティシックス、どうしようもなく異なる存在の筈なのにどこか類似点が見られた両者。なら、謎の存在が「探しに来なさい」とエイティシックスであるシンに告げたのは何か特別な意味があるように思えてしまう
もう一点気になったのはレーナとライデンの違いかな…
立場的な違いも有るだろうけど、レーナはアネットが生息不明になった際に彼女を切り捨てる決断をした。それは結局シンが「大佐には似合わない」と言って救援に向かったから大事には至らなかったけど
ライデンはレーナがシンを切り捨てるか迷った際、それに反発する姿勢を見せた。これにはレーナが救援する方向で考えを固めたからライデンは命令無視することはなかった
ここに見られた違いはやはりライデン達がエイティシックスとそれ以外を分けて考えているかのように感じられる描写だったよ…
追い付けた筈なのにどうしようもない遠さを感じ取ってしまったレーナ。彼女がこれからもシン達エイティシックスと共に戦う理由は何であるのか?それが改めて問われているような気がするよ