辻原登のレビュー一覧

  • 隠し女小春

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    初読みの作家さん。
    芥川賞、谷崎潤一郎賞など受賞されてる方。
    何かで紹介されてるのを見て購入。

    聡は出版社で校閲の仕事をする独身男性。
    彼は密かにハンガリー製のラブドールを購入し、小春と名付けて毎夜弄び、話しかけ、これが精神衛生上とても良いと考える。
    バーを営む千賀子とは定期的に会う。

    千賀子はバーに現れた男が過去の秘密をネタに脅されている。

    恭子は、一度見かけただけの聡に執着して彼を眺めることのできるマンションに引っ越し、双眼鏡で半年以上も観察し続ける。

    正直言ってちょっとずつ変な人ばかりの物語で、文学や映画の蘊蓄もいっぱい出てくるけれど、どういうストーリーなんだろう...と思いなが

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    2023年07月11日
  • 韃靼の馬 下

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    読書会 課題図書

    課題図書だから手に取った本
    好きな「ほのぼの系とはは遠い

    そのスケールに圧倒される

    史実とフィクションが絡み合
    い、江戸時代の歴史がリアルに描かれている

    対馬、朝鮮、清、果てはモンゴルまで
    個性のある登場人物が繰り広げる壮大なドラマ

    藩命に命を懸ける主人公

    ラストは切なかったけれど
    「あーこれでよかったんだ」と安堵して本を閉じた

    ≪ 道の果て 伝説の馬 待つ家族 ≫ 

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    2023年03月17日
  • 許されざる者 下

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    舞台は1903年、紀州の新宮(本書では”森宮”と表記)の地においてアメリカ・インドで研究を積んで地元に貢献する医師として活躍しつつ、そのリベラルな政治姿勢から影響力を発揮する槙隆光という人物を主人公に、日露戦争開戦や鉄道の敷設など、様々な歴史の中で活きる人々の姿を描く長編小説。

    主人公のモデルは、幸徳秋水らと共に処刑された大石誠之助という実在の人物である。実際、幸徳秋水自身も、新宮で講演に招聘されるというエピソードが本書では綴られ、幸徳秋水をマークする地元警察との緊張感溢れるやり取りなどは強く印象に残る。

    総じて、新宮という決して日本の政治・文化的な中心から距離のある街において、日本が帝国

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    2022年03月21日
  • 許されざる者 上

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    舞台は1903年、紀州の新宮(本書では”森宮”と表記)の地においてアメリカ・インドで研究を積んで地元に貢献する医師として活躍しつつ、そのリベラルな政治姿勢から影響力を発揮する槙隆光という人物を主人公に、日露戦争開戦や鉄道の敷設など、様々な歴史の中で活きる人々の姿を描く長編小説。

    主人公のモデルは、幸徳秋水らと共に処刑された大石誠之助という実在の人物である。実際、幸徳秋水自身も、新宮で講演に招聘されるというエピソードが本書では綴られ、幸徳秋水をマークする地元警察との緊張感溢れるやり取りなどは強く印象に残る。

    総じて、新宮という決して日本の政治・文化的な中心から距離のある街において、日本が帝国

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    2022年03月20日
  • 抱擁

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    ネタバレ

    最後の一文を読んで、「怖~」と思わず口から言葉が出ていた
    怖…

    終盤で不気味さの正体が判明しそうになり穏やかな空気だったのが一変…
    駒場コートに残ることにしたときには取り憑かれてしまっていたのか?
    でもそうなると危害を加えようとしたときに止めたのはなに?

    もう一度読んでみる

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    2022年02月26日
  • 冬の旅

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    辻原登は1945年和歌山県生まれ。1990年に芥川賞を受賞しているが、良い意味でマイナーポエットとでも言うか、作品が玄人好みであるというか、これまで不勉強に全く知らない作家であった。とある本で大絶賛されていたことから本書を手に取ったのだが、「なぜこんなに素晴らしい作品を書く作家を今まで知らなったのだろう」と反省するくらいに心を揺さぶられた。

    1人の男がとある事件を起こして5年の刑期を終え滋賀の刑務所を出所する場面から物語は始まる。既に老いた母親はこの間に亡くなっており、単身の主人公は一人、滋賀からかつて暮らした大阪へと電車で向かう。大阪にたどり着いてからの出来事とかつての回想場面が交互してい

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    2022年02月12日
  • 不意撃ち

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    タイトルがネタバレになってしまっているところが惜しいような、しかしピッタリの題名だ。表紙なしですべて読んで、最後にタイトル聞いたら面白かったなぁ。
    人生いろいろ、長く生きれば不意打ちたくさん。

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    2021年11月10日
  • 冬の旅

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    いくつかの話が淡々と進みそれが多少の時間差を持ちながらつながっていく。しかしついていないのか不幸なのか、一度躓くと最後までそれが繋がっていく怖さやるせなさ。
    怖いのにそこには純粋さのようなものがある。ダメなことにも純粋さはあるんだな。

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    2021年07月28日
  • 東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ

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    谷崎はどうしても好きになれないんだけど,こういう解釈を聞くと,読んでみようかと思う.
    何よりすごいと思ったのは,巻末の東大生のレポート.

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    2021年06月11日
  • Yの木

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    初読みの著作。1990年に「村の名前」で芥川賞、1999年に「翔べ麒麟」で読売文学賞、その他の作品では谷崎潤一郎賞や川端康成文学賞や大佛次郎賞等々受賞されている。

    先日「卍どもえ」と言う本を見かけて気になっていたのが、この著者だった偶然。これは表題作+短編3作を収めた作品で、まぁ芥川賞だなと。

    最初の「たそがれ」では弟の感情に移入。他人がする親族の話に対する不快感。読者には分かる姉の嘘と仕事。「首飾り」では疚しくないのに帰国後の妻の発言にドキリ。誤解ってどこまで解けるものなのか。「シンビン」の強かな女性がラグビー観戦。

    まぁ全編不思議な感情になる。先日Twitterでこんな呟きを見た。「

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    2020年04月30日
  • 不意撃ち

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    辻原さんの小説は全然望んでいない方に進んで行く展開のものが多く、えぇ...と唸るのが多いけどこの本もまさに不意撃ち!
    匂わせておいて結局その後の回収がなかった事柄もあったけど、それはそんなに重要でないということなのかしら。
    随所に散りばめられるモチーフがわたしも気になるネタだったのでとても楽しめた

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    2020年01月09日
  • 不意撃ち

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    「渡鹿野」
    ラストで不意撃ちをくらった。
    デリヘルや三重県の島のこと、ある程度は知っていたつもりだが、ディテールが興味深かった。
    「仮面」
    どういうラストになるのかと思ったら不意撃ちだった。
    この小説集はこういう小説集なのだ。
    「いかなる因果にて」
    私小説風。恩師の小声が怖かった。
    「月も隈なきは」
    岡本さんの気持ちがとてもよくわかった。

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    2019年02月16日
  • 不意撃ち

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    人は自由な意思によって行動しているかに見えて、実はあらかじめ敷かれたレールの上を歩いているにすぎず、ひとたびそこから外れたら、永久に己の場を失う恐ろしい危険に身をさらすことになってしまうのか。そんな運命の悪意に翻弄される者たちを描いた5作品を収める。実際に起こった事件をうまく挿入して、実話かと思わせる巧みな筆力に引き込まれた。…まるでおとぎ話の結末のような深い余韻を残すデリヘル嬢とドライバーの物語「渡鹿野」、「すわ、ホーソーンの『ウェイクフィールド』か!?」って思わせた「月も隈なきは」が面白かった。

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    2019年02月05日
  • 抱擁

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    最近新聞書評に出ていたので読んでみました。
    独特の世界観。検事の前で話しているという形で物語は進みます。
    二・二六事件の頃の日本の雰囲気も出ていて、公爵のお屋敷を想像しながら読みすすめました。
    主人公の女性の不思議な体験をどう語りつくされるかがこの小説の面白みです。
    作者がインスピレーションを受けたという「ねじの回転」。昔読んだはずですが、読んでいる時は全く意識しませんでした。この作品を読んでから読み直すときっと違う印象になるのかなと思います。

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    2018年09月11日
  • 東京大学で世界文学を学ぶ

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    近代文学のおおよその流れが分かって面白かった。著者の言うように「19世紀の文学」にどっぷりはまってみたい気分になった。但し、作家になる気はないので全集は読む気はないが・・・

    小説や物語を分析的に読むのは、あまり好きではなく、読んでて面白ければそれでいいと思っていたが、やはり、色々お勉強してた方が、より深い理解もできるだろうし、より楽しめるでしょう。

    それにしても、名作と言われる物のかなりの作品が恋愛物で、不倫、三角関係いわゆるドロドロした何でもアリの男女関係を扱っているのに今更ながら驚きました。世の中も人間もそんなには変わってないと言う事なのでしょうか。

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    2017年05月07日
  • 冬の旅

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    人生の機微と、計らずも運命の波に翻弄される人びとを描いた文学小説。第二十四回伊藤整文学賞受賞作。敢えてそうしたのだろうか、エンターテイメントの要素もありながらも、極めてそれを抑えたかのような作品だった。

    物語は主人公の緒方隆雄が5年の刑期を終えて刑務所から出所するところから始まる。そして、緒方に関係する人びとの人生が走馬灯のように描かれ、次第にこの物語の核心である緒方の転落の人生が炙り出されていく。

    最初の不幸な躓きから、堰を切ったように崩壊していく緒方の人生。緒方の人生の向かう方向を変えた人びとの人生もまた決して順風満帆ではない。目まぐるしく移ろいゆく時代の中で、人生の機微に翻弄され続け

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    2015年12月26日
  • 東京大学で世界文学を学ぶ

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    久々に読み終わってすぐ再読しなければならないと思った。という読みながら思った。

    ロシア文学は十代のうちに読まなければダメと。私は既に手遅れだな。けど相容れないとばかり思っていたロシア文学で、ゴーゴリはなんか違うっぽいぞと思って実際短編を読んでみたらかなり好きな感じだった。誤解していた。

    自然描写と心理描写の関係については自分のなかで漠然とした仮説みたいになっていたことをクリアにしてくれてスッキリ。

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    2015年09月23日
  • 恋情からくり長屋

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    江戸が舞台の恋愛もの。菊人形異聞、夢からの手紙(ハード版はこのタイトルだった)、もん女とはずがたり、が特に好き。
    辻原登って何書いても嫌味なぐらいうまいなーと改めて感じました。時代物は初めて読んだかな。

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    2015年05月09日
  • 東大で文学を学ぶ ドストエフスキーから谷崎潤一郎へ

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    『東大で文学を学ぶ』
    辻原登

    ……小説の中から何かを教えてもらうとか、教訓を得ようとか、そういうことをしてもほとんど意味がありません。……小説は、われわれの見る夢である。たとえそれが現実と似ていても夢である。……ですから、小説というものは頭で読んでもわからない。背筋で読む。(p78)

     小説に意味を求めない。頭で理解しようとしない。背筋、それはプロットとも考えられる。夢を見る器官と同じところで小説は読むということ。

     ここで、『古事記』を『旧約』に、『源氏』を『新約』になぞらえてみるのも面白い。(p225)

     はっとさせられる。なるほど。

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    2015年01月04日
  • 東京大学で世界文学を学ぶ

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    『東京大学で世界文学を学ぶ』
    辻原登

     小説家は、フィクションをもって隠喩を解体し、また別の隠喩をつくっていく。……隠喩を解体するのは、隠喩でもってるすしかない。(p26)

     ……作家は何かを現実に訴えかけるときもやっぱり隠喩に頼ってしまう。それは別に作家でなくてもそうですが、ひょっとしたらここに落とし穴があるかもしれない。(p28)

     暗喩について。ここでよく読まないとわからないが、村上春樹氏を批判している。大江健三郎に対するスーザン・ソンタグのように。

     我々の生きているふつうの次元を超えた時間と空間を文章に盛り込んでいく。そいういう世界です。(p34)

     時間の描き方。時は、一

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    2014年05月18日