【感想・ネタバレ】闇の奥のレビュー

あらすじ

太平洋戦争末期、北ボルネオで気鋭の民族学者・三上隆が忽然と姿を消した。彼はジャングルの奥地に隠れ住む矮人族(ネグリト)を追っていたという。三上の生存を信じる捜索隊は、彼の足跡を辿るうち、ジャングルの奥地で妖しい世界に迷い込む──。ジョセフ・コンラッド『闇の奥』に着想を得、その思想を更に発展させた意欲的な一大冒険ロマン。2011年、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。

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Posted by ブクログ

フィクションなのに、実在した冒険家の手記を読むようで、壮大なドキュメンタリーに感じる。
熊野の山奥、ボルネオ、チベット、、、小人伝説と蝶を追って消えた1人の探検家を追う、彼の教え子たちの更なる冒険譚。
大陸を跨ぎながらも森の奥は全て繋がっているようで恐ろしい。
前に進む怖さより、何もしないことが怖くなる気がした。
現実と夢がどろりと底なしに一緒くたの、本気のファンタジー。

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2015年10月15日

Posted by ブクログ


作者らしい洒脱で意欲的な構成の作品だった。
小人伝説を追い失踪した“ミカミ”に惹かれ、時を越え捜索隊が数度出されるが、まるで大江健三郎を下敷きとしたような捜索参加者の妄想レポートや煩雑なチベット情勢がギミックのように挟まり、時制の前後も相まって混沌とした進行となる。話の主軸を掴み得ないまま読者は表題の追体験をするのだが、こういった複合的な作品は個人的に好みだった。

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2025年07月28日

Posted by ブクログ

おすすめ!これは二回読まなきゃいけないやつ。big issueの書評にあって気になっててbookoffで見つけて一気に読んだ!もちろん買って笑。

小人族を探して行方不明になったミカミ博士と、彼を捜す人たちの話し。

「空想があってこそ現実が生まれて、またその現実によって空想が大きくなる」っていうのがテーマだったのかな。読んでると、ファンタジーなのか実際にあった話なのか区別がつかなくなる。読み終わって色々事実確認のためにググってしまって、まさにテーマ通りになった気がする。

もととなった同名の小説、コンラッドの「闇の奥(Heart of Darkness)」も是非読んでみたい。コンラッドの「闇の奥」はイギリスの植民地政策を暗に批判したものらしい。

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2015年09月25日

Posted by ブクログ

円朝~でもうまいなあとうなったけど今作も思わぬところでゾクっとさせられる。
まず、入りは思いっきり怪談調。
熊野の奥に「小人の村」があるから行こうと意気込んで男三人が山へ入る。
そこで経験したことについては誰も語らない。

そして主人公が父親の家の遺品を整理しに行き、偶然見つけた手紙に誘われるように物語は進む。

戦中戦後父親が探していた三上隆という博物学者。彼は小人の存在を信じ、調査を続けていた。
主人公の父親がメンバーの一人だった三上隆捜索隊のジャングルでの冒険譚、首狩族、小人たち、ふっと話に現れては消える三上隆らしき人物の影。

通常、物語は最初「え、なにこのエピソードたちどうやってつながるの」って思って後半に行くにつれて視界が晴れる。でもこの物語は真逆。

和歌山カレー事件が絡み、捜索隊は第5次にまで至り、熊野の奥を探検したうちの一人の息子から父親が吹き込んでいたテープを受け取り、ここでまた主人公の私は言葉を精査して物語を作り上げる。

終盤、主人公らは第5次捜索隊として中国のマツタケツアーに紛れ込んで山の奥深く、外国人が通常立ち入りを禁止されている奥地にまで行って三上隆の実像を探り当てようと奮闘する。最後の一行であんなにシンプルに救われるなんてすごいです。

狙ってジャングル、ピグミー、宗教的なものを選んだわけじゃないのに「13」のあとにこういう物語を読めた偶然に感謝。

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2014年03月15日

Posted by ブクログ

矮小族に魅せられた民族学者・三上隆を追ってボルネオ、チベットへと、とりつかれたように捜索する人たち。タイトルはコンラッドから着想を得たもの。冒頭から話に引きずり込まれ、あれよあれよと読まされた。
辻原登って、なんか文学文学して時期もあったような気もするが、適度なエンタメ度が加味されて妙に読みやすかったりする。小説を読む体力が落ちてきたなと思っていた時期に読んだので、ちょっとスタミナを回復させてもらった気がする。

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2013年02月17日

Posted by ブクログ

小人族と1人の日本人を巡る世代を超えた冒険物語的なもの。
ノンフィクションか、フィクションか、はっきりしていればもう少し楽しめた気もするのだけど、中途半端に毒カレー事件とか、数学者のナントカとか、物語に没入しづらかった。

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2015年10月24日

Posted by ブクログ

太平洋戦争末期にボルネオで姿を消した民族学者の三上隆を四度にも渡り、捜索する友人達。三上が追い求めていたのは矮人族。友人達は三上を捜し出す事が出来るのか。

ジョセフ・コンラッドの『闇の奥』に着想を得た作品という事なのだが、ジャングルに消えた三上隆はクルツというより南方熊楠のような人物に映った。この作品もコンラッドの『闇の奥』と同様、ジャングルを舞台に虚構と現実が混沌とした世界が展開して行くのだが、コンラッド『闇の奥』のような重苦しい暗さは感じない。コンラッドが描いた『闇の奥』ではクルツの心の闇にまで迫っており、善と悪の境が解らなくなるような妖しい雰囲気が展開するのだが、この作品では登場人物の誰の心の底も見えなかった。

数十年前にフランシス・フォード・コッポラの傑作映画『地獄の黙示録』を観て、虚構と現実の混沌とした難解な雰囲気にのめり込み、五回も映画館に足を運んだ。『地獄の黙示録』の原作がジョセフ・コンラッドの『闇の奥』と知り、最初はかなり苦戦しながら原書を読み、次には岩波文庫の翻訳版も読んでみた。この作品はテイストは似ているものの、コンラッドの『闇の奥』には遠く及ばない。

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2013年08月20日

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