辻原登のレビュー一覧
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著者の作品は、遊動亭円木、花はさくら木、など読んだが、この作品もまた文体が違う。
三遊亭円朝。新聞に速記の連載が載り、二葉亭四迷や山田美妙など黎明期の作家に影響を与えた。著者の作品「黒髪」の登場人物、橘菊彦の遺品から見つかった速記の束。円朝の芝居噺「夫婦幽霊」の発見。しっかり、騙して貰おうと読み始める。
五夜にわたる噺。色々と話題は広がり、著者の注もたっぷり。モオパッサンいうところの「明け六つの考え」などという円朝の台詞にも注あり。読んで驚く。もう、遣りたい放題。登場人物もそれぞれ一癖も二癖もあり、読み応え十分。若かりし頃の円朝本人も登場。第四夜の注には、「群像」掲載後、文学研究者や円朝関係者から問い合わせしきりと注書き。ところが、速記符号の中に奇妙な事態が出来とある。あれあれ、と思っているうち一気呵成に大団円。
予想を裏切られたが、それも作者の計算のうちか。鏑木清方の円朝像とか落語の黄金餅とか知らないことことも多く、本題に関係ない話も面白かった。忠臣蔵と四谷怪談を時代ものと世話物の掛け合わせに嵌めこめんで続けるというのが、一番興味そそられた。
訳者後記が本題で、円朝噺はまくら、という解説あり。そうかもしれないが、本当に倅は実在したのか。一体どこから信じていいものやら。 -
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いろいろ調べていたら、この本を知ったので読んでみた。
JTの女性社員が逆恨みで殺された実際の事件をモデルにした小説。
実際の事件はひどい内容だった。被害に遭ったことを警察に通報し、自分が逮捕されたことを、被害者に裏切られた、と加害者が恨みを募らせて被害者は殺された。
小説なので、実際の事件とは違って、被害者が加害者が出所したこと、自分が恨まれていて殺されそうということを知り、女探偵に調査を頼む。その探偵自身がストーカー被害を受けているという設定。
なぜ女探偵は警察に通報しないのだろうか?と思った。不法侵入や傷害など実際に被害に遭っているのに。何か合理的な理由があるのかと思ったら、特になかった。
最後の決着の付け方もスッキリしなかった。本筋と関係ない映画の話が長いので飛ばして読んだ。 -
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辻原登『卍どもえ』中公文庫。
ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事件、オウム真理教事件、耐震偽装事件、五輪エンブレム盗用事件といった昭和から平成に掛けて起きた事件、映画や文学、ジャズをちりばめながら、瓜生甫とちづる、中子脩と毬子の二組の夫婦の奇妙な人生が描かれる。
同時代を知る者なら面白いシチュエーションなのだが、如何せんメインのストーリーは余り面白いとは言えない。
LGBTのLの世界がテーマなのか、二組の夫婦の出自がテーマなのか判然としないままにまるで騙されたかのように結末を迎えた。
東京の青山にデザイン事務所を構える瓜生甫は妻のちづるを構うことが無くなり、仕事や趣味などで知り合った女性と浮気を重ねていた。
もう一組の夫婦、語学学校を経営する中子脩と旅行プランナーの毬子も同様で、夫婦関係は冷え切っていた。
ちづるは知人に紹介されたネイリストの塩出可奈子に誘われ、性愛関係を結ぶ。やがて、ちづるは夫婦同伴のパーティーで意気投合した毬子も誘い、可奈子と三人で性が愛の深淵に足を踏み入れる。
その裏で、瓜生甫と中子脩の二人の夫は自由気ままに手当たり次第に女性に手を出し……
本体価格1,000円
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出版社の知り合いが薦めてくれた本です。タウン情報や本、映画が満載なので、神保町とか好きなら、この本も好きかも、と教えてくれました。確かに街のディテール、サブカルチャーの破片があふれんばかりに埋め込まれていて、そのリアリティがラブドールが意志を持つ、という荒唐無稽な設定を現実に定着させている、と思いました。1980年の「なんとなく、クリスタル」が当時、知らない固有名詞で構築された時代気分のシンボル小説であったことから42年、今は日常に散りばめられた固有名詞で時代気分ファンタジーを成立させています。なにしろレオパレスなんて単語、小説で出会ったのは初めてです。没後30年、松本清張のような暗い昭和の情念も令和の今に召喚されているし、もっとストレートに業田良家の空気人形の純愛も参照されている、と思いました。著者の作品は朝日新聞に連載されていた「花はさくら木」ぐらいしか読んだことがなく、最初、こういう小説書くんだ、という戸惑いもあったのですが、しかし、特異な趣味で物語を煌びやかに紡ぐ、というのは一貫しているのかな、と感じました。
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ネタバレ2.26事件直後の昭和の時代。
侯爵の屋敷で5歳の娘の小間使いとして働くことになったわたし。
少女と一緒に生活するにつれて感じるようになる、見えないなにか。
自分の前任だったゆきのさんに関わる話。
姿のないなにかによって少女が次第に現実から遠ざかってしまうと感じたわたしは
彼女の身を守るために、自分の立場を犠牲にしてでも行動を起こしたこと。
少女に取り憑いていたと思われていたなにかは
実はわたし自身に取り憑いていたのかもしれない。
最後が意味深で、結局真相は読み手側に委ねられている〜。
不気味故の後味なのか。もっとすっきりしたい。