あらすじ
ある文学者の遺品から見つかった奇妙な暗号文。明治期に隆盛した田鎖式速記で書かれた暗号を解読すると、そこに書かれていたのは江戸時代の噺家、名人・三遊亭円朝、幻の落語だった!? 安政の大地震以前、江戸城から盗まれた四千両、その金に絡む色と欲。円朝よりも円朝らしい噺には、もうひとつ大きな噺が隠されていた……。磨き上げられた文章で円朝の怪談噺を蘇らせた手練れの一作。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
物語の本筋だけでなく、あちらからもこちらからも、面白い話題が湧いていて、満腹。落語のこと、もう少しちゃんと知っていたら、もっと楽しめるのかも。
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新たに園朝の速記が発見され、速記が解読されるように円朝の落語は名調子で語られていく。これって、創作なんだよね?(苦笑)と思いつつ、発見されたから、各章ごとに注釈なんかついちゃって、これまた「速記」が副テーマのように。そうして、最後の最後まで、円朝の息子と芥川龍之介まで出てきちゃって、作者の博学がストーリーに余すところ無く。あっというまに読み終えた。楽しかった。寄席に行きたくなった。全生庵の幽霊画が又見たくなった(一度きりしか見たことないけど)。
Posted by ブクログ
とにかく凝った作品です。
中盤は速記で書かれた円朝の芝居話を翻訳して紹介するという設定ですが、まずこの話(フィクション)がなかなか良く出来ていて面白い。
その上に、途中で文体を変えたり、それを訳注の形で指摘したりと、色々な小細工が施され、楽しませます。
もっとも最後は眩惑され過ぎて、読み解くのも面倒になってしまいましたが。。
少々、凝り過ぎですかね。
ちょっと読み急いだ感じもあるので、今度機会があったらじっくりと読み直してみましょう。
Posted by ブクログ
著者の作品は、遊動亭円木、花はさくら木、など読んだが、この作品もまた文体が違う。
三遊亭円朝。新聞に速記の連載が載り、二葉亭四迷や山田美妙など黎明期の作家に影響を与えた。著者の作品「黒髪」の登場人物、橘菊彦の遺品から見つかった速記の束。円朝の芝居噺「夫婦幽霊」の発見。しっかり、騙して貰おうと読み始める。
五夜にわたる噺。色々と話題は広がり、著者の注もたっぷり。モオパッサンいうところの「明け六つの考え」などという円朝の台詞にも注あり。読んで驚く。もう、遣りたい放題。登場人物もそれぞれ一癖も二癖もあり、読み応え十分。若かりし頃の円朝本人も登場。第四夜の注には、「群像」掲載後、文学研究者や円朝関係者から問い合わせしきりと注書き。ところが、速記符号の中に奇妙な事態が出来とある。あれあれ、と思っているうち一気呵成に大団円。
予想を裏切られたが、それも作者の計算のうちか。鏑木清方の円朝像とか落語の黄金餅とか知らないことことも多く、本題に関係ない話も面白かった。忠臣蔵と四谷怪談を時代ものと世話物の掛け合わせに嵌めこめんで続けるというのが、一番興味そそられた。
訳者後記が本題で、円朝噺はまくら、という解説あり。そうかもしれないが、本当に倅は実在したのか。一体どこから信じていいものやら。