ファンタジー作品を紹介する展示の候補の一つとして読み増した。
主人公が冒険したり、魔法を使ったりするのではなく、現代日本の普通の定食屋が週に1日だけ「異世界とつながる」という設定の物語です。
祖父から店を引き継いだ店主が、魔法の扉をくぐって訪れえるエルフ、リザードマン、ゴブリン、ドラゴン、そして異世
...続きを読む界の人間たちへ、「コロッケ」や「豚の角煮」といった私たちの世界では当たり前の料理を振る舞うという、単純な構図の短編集ですが、異世界にはない料理法であることや、彼らの文化とは異なる食文化であることに衝撃を受けながら舌鼓をうつ異世界住人の姿をほほえましく読むことができます。
そして、本書のもっとも魅力的な部分は「味の描写」です。一人ひとりの登場人物に丁寧に設定が付与されていることもさることながら、読みながら思わず「食べたい!」と強く思わせる表現が多く、「安くて旨い」という日本の定食屋の底力を感じさせてくれる作品でもあります。
現在、シリーズは6巻目まで刊行されていますが、この後、常連客同士の関係性がどうなるのか、そしてどんな料理が紹介されるのか、非常に楽しみで続刊も読みたくなる一冊です。