岩井俊二のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ表紙の写真、若い女性を横から写したものであるが、この写真の意味が本を読んでいる間、けっこう気になっていた。
題名になっている「零」は画家の名前で、「晩夏」はその零が書いた作品の名前である。そして、主人公が、その「零」の「晩夏」を見るところからこの本は始まっている。その作品、すなわち、「晩夏」を示すものが表紙になっていると考えるのが普通だと思うが、本書の最初で紹介されている、零の「晩夏」は、「女子高生と思しき女性が窓辺に佇んでいて、制服のような衣装と紺のジャンパースカートと白のブラウスを着ており、胸元に紺のリボン」というものであり、本書の表紙の写真とは明らかに異なる。そうすると、表紙の写真の意味 -
Posted by ブクログ
これは君の死から始まる物語。
どこにでもありそうな、無さそうな始まり。相手も居ないのに誰に贈るのだろうと読み始めた。
読んでみると、確かに君の死から様々な出逢いが、謎が生まれ、最後には解明される。
個人的には遺書の中身に一番驚いた。みさきにとっての一番良い時代はその時代だったってことなのでしょうか。
色々な人の視点から書かれる割に、丁寧に複数回同じ描写がされるので、ほけ〜っと読んでもついていけます。
確かに、齢40のおっさんの初恋ウジウジ物語なので、女性には理解しがたいかも?笑 男性としては綺麗な初恋が描かれていて(成就しませんが)良い気持ちになれるのではと思います。
魔法が使えた -
Posted by ブクログ
どんどん惹き込まれていく不思議な感覚の本でした。あらぬ噂で退社して失意のうちに美術誌出版社の試用員になった女性がとある肖像画が自分に似ていると言われてその絵画を見たことに端を発する物語。もともと子供の頃から絵は好きだった主人公、その画家について調べを進めるうちに信じられないような不可思議な事実が次々に判ってきて彼女自身も第三者では居られない状況が.....
絵画とその画家に纏わるミステリーではあるのだけれど深淵な青春恋愛作品でもあるような印象も受けます♪
映画監督以外にも多彩な才能を示す岩井さん、作家分野でも非凡さを遺憾なく示されております。 -
Posted by ブクログ
*
岩井俊二さん
『零の晩夏』読みました。
瑞々しくも壮絶な物語でした。
『どういうこと?』と謎を投げかけられて、
絡まった糸をほぐすように、一つひとつ丁寧に
結び目を解いていくのですが、すごく難しい
話ではなく、ドンドン読み進めたくなる
物語でした。
姿が見えない存在すら不明な人を追う行為は、
自分の遠い記憶を辿る行為に似ているような、
変な既視感がありました。
ああ、読み終えれて良かったと感じました。
個人的な読後感です。
ある部分は爽快。
別の部分では、純粋な心が狂っていく様に
息が詰まりました。
失った物にもう一度向き合う逞しさが、
眩しくて尊いと感じました。
全ては零 -
Posted by ブクログ
ネタバレ岩井俊二氏大好き人間なわたし。
読んでる途中(終盤に差し掛かったあたり)で映画観たもんで、続き読むとセリフ部分が映画のキャストさんの声で脳内再生されるし、脳内映像化ももう映画通になってしまって…それはそれで良きでもあるが、やっぱりわたしは原作を先に読んどきたいタイプだなと改めて思った。
小説家による、新たな小説を書くにあたって作られた文章の並びが、これ自体がその出来上がった新たなる小説なのだと。
構成が好きだった。岩井俊二氏の小説は脳内映像化すぐにされる、感情移入しやすい作品だわ。
何度か読んで、どの登場人物にピンポイントで感情移入する遊びでもしようかな。
何度でも読みたい。そんな作品で