あらすじ
岩井俊二が描く、生と死の輪郭線。
モデルが例外なく死に至るという“死神”の異名を持つ謎の絵師ナユタ。その作品の裏側にある禁断の世界とは。渾身の美術ミステリー。
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読みながら映像が浮かぶ小説ってあるけれど、これは岩井俊二監督で映画化してほしくてたまらない作品。文章でも文句なしに面白かったけど映像や音楽の力でどんな世界が生まれるのかすごく観たい。北海道の風景の中で刹那的な青春のきらめきと歪みを撮ってほしい。
カナエは岩井俊二作品の女の子って感じで、自由だけど不自由、幸せそうだけど不幸せそうで、綺麗で目が離せなくて彼女の人生をもっと知りたくなる。
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このアプリ内でフォローさせて頂いてる皆様の本棚の中から評価の高い作品を選んで読んでみた本。
名作。
読後、出会わせてもらったと感じた。
ストーリーは全体を通してミステリーなのだが、「運命」がテーマなのだと感じた。
ここまで色んな人の運命が重なりあいながら絡み合いながら、終盤に向けてほどけていくように謎だったものがほどかれてゆく。
最後も希望に溢れた終わりをみれた。
そこまでの派手な事件などがあるわけではないストーリー展開なのに凄い深い物を読んだ気になる。
岩井俊二さんの文章力と創造力がそうさせるのだと感じた。
この作品に出会ったのも皆様の本棚のおかげ。これも「運命」的な出会い、そう感じさせられた。
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絵というものの存在に関わる画家への考察理解に圧倒された。
画家の正体だけでなく散りばめられた謎、ボーイミーツガール的恋愛模様、正社員になるべく頑張るお仕事小説などたくさんの要素をてんこ盛りにしながら美しい言葉で料理し最後の着地はお見事。
登場する絵の描写力はそこにあるかのようで素晴らしかった。
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絵画に魅せられた謎を解いていく…
その過程にまんまと乗せられたと言うべきか。
どっぷりとはまってしまい酔いしれた。
こういう作品は、初めてだ。
ナユタが描く絵のモデルたちは、すべて死んでしまってるというのに怖さは感じられない。
それが、惹きつけられる魅力だったのかと思う。
ラストにもはや言うべき言葉はなかった。
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深い森の静けさの中にある強い炎なような作品。と言えばいいのか、ストーリーも文章もすっと溶けるように頭に心に入って来る。最後、やっぱりとは思っても、全てはそこに辿り着くための伏線だったと、胸が詰まった。
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就職は福袋。わかるのは店の店構えだけ
印象的な言葉
そしてなかなか印象的な作品。
独特の雰囲気に徐々に引き込まれていつのまにか抜け出せなくなってる主人公と同じ感覚に陥る。
日常と非日常の狭間にもっていかれるような作品。
家じゃなくて読書カフェで読んで正解だった
2021.11.14
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文章が簡潔で読みやすく透明感がある。絵師ナユタの謎に魅了され一気読み。芸術家の狂気に震え、コロボックルの正体に驚き、零の「晩夏」に辿り着いた時の安堵感…豊かな読書時間でした。
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零の晩夏という画材の秘密が最後のオチになった。そこに至るまでのプロセスも面白く読ませてもらった。ミステリー要素も盛り込まれていた。映画監督として有名な一方こういった緻密な小説も書くのだな感心させられました。
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ジョセフ・ジャストローが描いた「アヒルとウサギの騙し絵」をご存知だろうか
見ようによって左を向いたアヒルにも見えるし、右を向いたウサギのようにも見えるというあれだ
はたしてこの絵を見てどんな感想を抱くだろうか
「アヒルにもウサギにも見えるなんてすごい!」と思うだろうか
「下手くそなアヒルの絵だな〜」と思うだろうか
これは別に誰かの何かを試す質問ではない
では何なのか?
もちろん答えは明瞭である
岩井俊二さんの『零の晩夏』の感想である
見ようによってはすごいレビュー!には…見えない?あ、そう?やっぱ見えない?そっかー、ちぇっー
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ナユタの絵のモデルは、何故死ぬのか?
ナユタは誰なのか?
そして零とは?
ミステリーとして読み進めるのも良い。
子供の頃から絵を描くことが好きで
高校の美術部から滑り止めの美大に進み、
自分の才能の限界に気付き一般就職。
この比較的、平凡な感じの主人公の花音が
あくの強い人たちの中でナユタの謎を追う。
(正直、前半は何だか花音が不安で仕方なかった。
仕事内容ってそんなに、色々な人にしゃべっていいの?)
後半に、段々とピースが集まってきて
想像していく過程が面白い。
最後の最後まで、複雑に絡み合っていて
本当に引き込まれたし、
映画を見終えたような感覚になった。
才能、努力、人間の底にあるもの、
美しさや恐ろしさや、
様々なものが詰め込まれた作品で、
一度読んだだけでは飲み込めない気もする…。
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帯のキャッチとの繋がりが序盤では掴めないまま物語が進み、ナユタ探しの謎解きで推進力が増す。終盤で点が繋がり出してコロボックル推理と煉獄の真相で鳥肌して前ページを読み返した。最後に初めのページに回帰。原田マハ作品のようにアートを検索しながら読む楽しみもあり
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ラストはなんとなく予想できるんだけど、本当にそうなると、全てが繋がって、脳まで鳥肌。終始ワクワクしていた。語り口調もすごい入ってくる感じだった。時系列が動かないパターン。
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うまくまとまったなって感じ。線と線がつながる...
登場人物が多くて
そして一人の人にいくつか違う名前もあり
覚えられずに
何度もページを戻った。
電子書籍じゃなくて良かった。
私は1度しかない人生なんだから
もっと楽に生きたい。
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絵の世界で生きていくことを諦めた花音は広告代理店で働いていたが、あることをきっかけに仕事を辞めてしまう。
その後、紹介してもらった美術雑誌で働くことになる。花音に与えられた仕事は、死神の異名を持つ謎の絵師、ナユタの取材だった。
ナユタのモデルになった人物は必ず死んでいる。
ナユタとは一体何者なのか。
取材を進めていくうちに、ナユタの存在が明らかになっていくのだが・・・。
かなり初期の段階で、ナユタの正体は想像がついたし、零の正体もわかったが、それでも尚、ナユタがなぜナユタになったのかなど、物語の面白さはただの謎解きで終わることなく、先へ先へと読者をより深みへと誘ってくれる。
本作は、ミステリと恋愛と青春が混ざり合った贅沢な物語だ。
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映画監督の著作
流石に映像がすごい。
絵も情景も人の心理さえも目の前に流れる
絵を描くってどんなことだろう
絵のモデルってどんなものだろう
死に至る生
いろんな人が交叉して一枚の絵がうまれる
ひきこまれて読みました
≪ 救えない 臨海線を 生と死の ≫
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表紙の絵が "零"の『晩夏』 だと思って読み始めたのですが、これは三重野慶さんという画家の作品でした。
この表紙の女性が主人公の八千草花音だというイメージが頭から離れず最後まで読んでしまいました。
最初の3ページで「零の晩夏」という作品の説明があり、写真みたいな横顔という以外は表紙の絵とは違うのですけどね、、、
バンクシーのような正体不明の画家の記事作成のため、取材に駆け巡る女性編集者のお仕事小説でもあるし、
その画家が描いたモデルの女性は必ず死に至るという謎解きミステリー小説でもあるし、
取材中に再会した高校の美術部の後輩に心がときめいてしまう恋愛小説でもある。
なぜかノンフィクションのように感じてしまったのだが、これも表紙の写真のようなリアルな絵のせいかもしれません。
沢山人が死にますが、死の描写は「○○で死んだ」と事務的に説明する程度だし、自殺の原因にも深入りしないのでドロドロ感はありません。
おかしな言動をとる人も何人か登場しますが、この物語の語り部でもある八千草花音の平凡なキャラが、そのおかしさを吸収しています。
いろんな要素が含まれる物語でしたが、読後感はさわやかでした。
テーマの中に死を含ませておいて、結局は生まれてきた意味を考えさせる、「零の晩夏」にまつわる恋愛小説だからだろうと思いました。
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圧倒された。
表紙の女性が「絵」であることが先ず凄かったし、内容も同様。色々最後には繋がって、心配していたようなホラーでなくてよかったです。
芸術の世界に身を置く人達は、技術的なことだけでなくある意味壮絶な内面世界をお持ちなのだと思いました。最近展覧会行っていないなと鑑賞欲がムズムズと疼いてきました。
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表紙の写真、若い女性を横から写したものであるが、この写真の意味が本を読んでいる間、けっこう気になっていた。
題名になっている「零」は画家の名前で、「晩夏」はその零が書いた作品の名前である。そして、主人公が、その「零」の「晩夏」を見るところからこの本は始まっている。その作品、すなわち、「晩夏」を示すものが表紙になっていると考えるのが普通だと思うが、本書の最初で紹介されている、零の「晩夏」は、「女子高生と思しき女性が窓辺に佇んでいて、制服のような衣装と紺のジャンパースカートと白のブラウスを着ており、胸元に紺のリボン」というものであり、本書の表紙の写真とは明らかに異なる。そうすると、表紙の写真の意味は何だろうか?小説の中に、横顔を見せる主人公の印象的な場面はなかったはずであるが。
本書を読み終わり、ふと、最初の部分を読み返そうとしたときに、「装画 三重野慶」という文字が目に入った。もしかしたら、と思い、ネットで調べてみると、三重野慶は画家、それも、超写実絵画と呼ばれる作品を描く画家であった。そう、表紙の「写真」と思ったものは、実は三重野慶が描いた絵画だったのである。
物語の中で主人公、八千草花音が見た、零という作家の「晩夏」という作品も、主人公は最初、写真であると思うのだが、実際には絵画だったのである。この作品は、物語の最後にも登場し、作品を締めくくる。なかなか簡単にはうまくは伝えられないのであるが、最後は、なるほどと思わせながら感動的な場面をつくるのに成功している。ストーリーから言って、「晩夏」は写実的な、写真と見まがうような作品でなければならず、そういった作品を書いている三重野慶の作品を表紙に持ってきたということであった。
ミステリー仕立ての恋愛小説というか、恋愛小説仕立てのミステリーというか、といった作品。ミステリーとしては少し無理を感じるが、恋愛小説として読むと、なかなか読ませる。
Posted by ブクログ
どんどん惹き込まれていく不思議な感覚の本でした。あらぬ噂で退社して失意のうちに美術誌出版社の試用員になった女性がとある肖像画が自分に似ていると言われてその絵画を見たことに端を発する物語。もともと子供の頃から絵は好きだった主人公、その画家について調べを進めるうちに信じられないような不可思議な事実が次々に判ってきて彼女自身も第三者では居られない状況が.....
絵画とその画家に纏わるミステリーではあるのだけれど深淵な青春恋愛作品でもあるような印象も受けます♪
映画監督以外にも多彩な才能を示す岩井さん、作家分野でも非凡さを遺憾なく示されております。
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*
岩井俊二さん
『零の晩夏』読みました。
瑞々しくも壮絶な物語でした。
『どういうこと?』と謎を投げかけられて、
絡まった糸をほぐすように、一つひとつ丁寧に
結び目を解いていくのですが、すごく難しい
話ではなく、ドンドン読み進めたくなる
物語でした。
姿が見えない存在すら不明な人を追う行為は、
自分の遠い記憶を辿る行為に似ているような、
変な既視感がありました。
ああ、読み終えれて良かったと感じました。
個人的な読後感です。
ある部分は爽快。
別の部分では、純粋な心が狂っていく様に
息が詰まりました。
失った物にもう一度向き合う逞しさが、
眩しくて尊いと感じました。
全ては零から始まり、際限無く続くが、
いつしかまた、零に還ってくる。
Posted by ブクログ
ミステリー調の純愛もの。
こうなるかなと読み初めに思った通りの結末になってしまった。少し物足りない。
岩井氏の作品はどれも好きだが、このお話は少し先を急いで書いてる感じがした。
ふたりの関係性は素敵だったけど、鍵になる人物がエキセントリックすぎたしなぜそういった最期を選んだのかの理由が薄いように思えた。
Posted by ブクログ
那由多(ナユタ)から 零(ゼロ)へ
一枚の絵に魅せられた女性花音の 画家とその作品を巡る旅のように
死神の異名を持つ画家、ナユタ
絵のモデルとなった人は遠からず「死」を迎える
絵を介して描かれる死と生の境界
花音がナユタを追う道筋に出会う人達
その全ての人達がナユタという画家を知る重要なピースとなっている
生と死の一瞬を積み上げる為か、神戸の震災、サリン事件、幼児誘拐殺害事件等 映像のように流れていきます
多くの登場人物 舞台となる幾つかの土地を渡り
「晩夏」にまとめあげた素敵な作品です
Posted by ブクログ
ブグ友まことさんの熱いレビューに魅せられて、いつか読もうリストに入れておいた一冊。
あれからずいぶんと時間が経ちました。
言わずと知れた映画監督岩井俊二さんの著作。
【彼女(モデル)たちは例外なく死に至る
”死神”の異名を持つ謎の絵師ナユタ。
その作品の裏側にある禁断の世界とは?
岩井俊二が描く、生と死の輪郭線。
渾身の書き下ろし絵画ミステリー。】
おもしろかったです。
本業が映画監督さんのせいか、とても簡素な文章で読みやすく、テンポも速くてさくさく進みます。
帯には怖そうなことが書いてありますがホラー感は弱め。
怖いのが苦手な方にもいいでしょう。
絵画というか、ミステリアスな絵描きを巡り、不思議な縁に操られる人間たちの物語。
恋愛要素もあり。
おもしろく読めたのですが、あえて難を言えば、少し都合が良すぎるかな、と。まあフィクションだから仕方ないか。
あと、テンポよく進むのはいいけど、次々と人が出てくるので後で「この人誰だっけ」ってなることもあった。人物を名前だけで進めずに、教師の○○とか、○○の母親のとか、誰かわかるヒントを付けてくれればなお良かったのにと思った。まあ、このへんは映像化すれば解消できるのかも知れない。
詳しくはまことさんのレビューをどうぞ^^
なんだろう。
読んでいる間、岩井俊二監督の映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」を観たときのことを思い出してた。
自分の中の「一日中映画を映画館で観ようキャンペーン」(?)で4,5本観た内の1本で、時間がちょうど良かったから選んだだけだったが、たまたま最終日だったらしく、綾野剛人気もあったのか、小さな映画館はほぼ満員で、しかも9割は女性という、なんだか落ち着かない気分の鑑賞だった(笑)
あれも死の香りが漂うような若者たちの話だったな~。
Posted by ブクログ
久々に岩井俊二作品読みましたが、やはり繊細な雰囲気を書くのがとてもうまい。ビジュアルの人というイメージですが文章もいいです。
自分の持ち味と思って磨いてきた武器が、世の中では凡庸だと気が付いたとき、筆を置く、楽器をやめる、筆を折るそういう風に離れていってしまう事が多いですが、自分の心からにじみ出てくるものは、誰かに認められなくても表現せずにはいられない。そういうものだと思います。
この本は恋愛譚の部分はありますが、表現者の苦悩をぐいっと力強く書いているので、そちらの方が読み応えあるかなあ。ミステリー部分もなかなか読ませる。