完結作品一覧
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-すべてがうまくいく撮影の成り行き 写真家がいる。パートナーとして優秀な編集者もついて新しい写真集の企画が持ち上がる。写真家と編集者は語り合う。アイディアが拡がる。そして、瀬戸内の島でヌード、ということになる。これだけなら凡庸に聞こえかねないが、ここから完璧な島と完璧なモデルを見つけ出す。島は瀬戸内の歴史を色濃く残す奇跡のような島であり、モデルはその体の均衡、撮影に対する理解力など、パーフェクトだ。撮影が進んでいく様子が、次々に小気味よく描かれる。もっともらしい試行錯誤の場面などはなし。それが片岡義男の小説である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-雑誌とは、リラックスした一つのトーンである 雑誌であり、同時に本でもある稀有の試みだ。前半部は片岡義男に対するインタヴュー、という形式が取られ、インタヴュアーのクレジットはないがどう考えても作家本人である。そして写真がくる。かつて自身が出演していたラジオ番組『気まぐれ飛行船』のスタジオを撮った貴重な1枚があったりする。セルフインタヴューには植草甚一さんの思い出が召還され、そして気が付くと、主題というほど前景化していないが作者の「フェミニズム」に対する深い関心がうかがえる。この雑誌=本には、あきらかな一つのトーンがある。 ※写真:片岡義男 【目次】 長いインタヴュー 『語ることによるエッセイ』1 7枚ずつひと組の、ジャズのLPをながめる 五十年まえの「名画」を二本、観た。そしてぼくは、昔の二枚目男優たちの限界を知った 彼の後輪が滑った あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-アメリカと日本の風景を、雑誌として集めてみる TVニュースを通した、アメリカ的光景の観察。愛してやまない東京湾岸の風景を中心とした、日本のさまざまな場所についての考え。アンセル・アダムズの圧倒的な風景写真について寄せた言葉。サーフィンと海についての考察。初雪のあるショート・ストーリー。これら五つの雑誌的なバリエーションに最後は他人(写真家の佐藤秀明氏)の言葉がくる。これは、あえてまとめれば風景についての、そして英語と日本語といずれが母国語かわからない状態で育った人によるアメリカと日本の、極めて「個人的」な思考の記録である。 ※写真:佐藤秀明 【目次】 アメリカ的光景の遠近法 1 軽飛行機の使い方 2 日本がニュースになるとき 3 いつかはかならず失業する 4 ニュースのなかの音楽 5 大統領を鑑賞する 6 国際情勢という対立関係 7 グラフィックであること 8 外観と内容の関係 9 まさにアメリカ さまざまな場所での、いろいろな想い 1 湾 岸 2 首都高速道路 3 謎の核心 4 バス・ルート 5 東京湾岸地帯 6 散歩道 7 下北沢 8 半 島 9 海 岸 10 斜めに交差する川 11 甲州街道と新宿 めぐり逢う風景の物語——アンセル・アダムズと彼の写真 彼らはなぜ海へ来るのか 1 長い海岸線の全域にわたって 2 彼がはじめて太平洋を見たとき 3 薄く立ちあがり、まっすぐに走る 4 聖地への入口としての駐車場 5 完璧にちかい正三角形がひとつ 6 冬のハーモサ・ビーチ、六フィート波 7 霧の海でひとり叫ぶとき 8 桟橋(ピア)で聞いた話 初雪より一日早く——ショート・ストーリー 僕と僕の写真について、すこしだけ語ります ——語りと写真 佐藤秀明 あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-「先生、俺の子を孕んでよ。」ある日突然αしかいない特別クラスへの転任を命じられた緒川。まさかΩの自分がそんなところで働くなんて…と、上の空で電車に乗るとなんとそこはα専用車両!慌てて降りようとするがタイミング悪く発情期に入ってしまう…!突然のΩフェロモンに興奮する男たちに囲まれ、襲われかけたその時、とっさに助け出してくれたのは年下のイケメン君。ほっとしたのも束の間「あんた処女なのか?俺がイロイロ教えてやろうか」ってなぜか迫られて!?あれ…でも待てよ…?この制服ってもしかして、α特別クラスの生徒!?αとΩなんて住む世界が違いすぎるのに…教師と生徒なんてイケないのに…僕たちはどうしようもなく発情してしまう。
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4.0人は面倒くさい、独りがいちばん楽だ。わずらわしい感情に振り回されるくらいなら、気楽なボールにでもなりたい――。そう思っていたら「まさかオレ、ボールになった!?」。おせっかいなクラスメートの塩瀬に拾われ、そのまま彼の家へ持っていかれるオレ(ボール)。そして汚れを落とすために、風呂場で裸の塩瀬にやさしく洗われていた。そのうち、塩瀬の手の感触がやたらとリアルに、まるで生身の体をもまれてるように感じられてくる。胸から腹を辿って、ゆるく勃ちあがるアソコも尻の双丘も、塩瀬の手で愛撫されてるような、この感覚…!「もう駄目だ…、このままじゃイッちゃ…!」おかしい、オレはボールのハズなのに、塩瀬に触れられる感覚が生々しすぎる。そのうち、何を考えたか塩瀬がオレ(ボール)を使って、「柔らかい…、まるで口のナカに挿れてるみたい…」ひとりHを始めやがった! オレも口の中にリアルに塩瀬の形も味も感じられて、本当にこいつとセックスしてるみたいに…!
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5.0「キス以上しないって言ったじゃない」幼なじみの海斗は寝ぼすけでバカ!!昔から海斗のお兄さんの大地さんに憧れてて、高校卒業をきっかけに告白したのに、海斗が突然「お前のことが好きなんだ!!」って叫んで大地さんの目の前で私にキスしてきて…。本当に最低!!ムカついたから、毎日寝ぼすけのアイツを起こしに行ってたけど、これから起こしに行かないって伝えたら、朝のベッドに潜り込んできて、キスしたり、もっといやらしいことまで…本気だって言われても信じられないよ。だって、海斗は高校卒業したら遠くの大学に進学しちゃう。そんな状況で私のこと好きって言われても…、ずっと一緒だったのに遠くに離れちゃうなんて絶対嫌!!
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-人工の女、自然の女 作家は常にストーリーを考えている。女性だ。彼女の担当編集者もまた女性。彼女は時に一人でストーリーを考え、それを今一度確認するように編集者に披露する。今書きつつあるのは、ジェンダーを越境する人物の小説。女なのに男の意識で生きてきた人。女になりたい男。その男から「女であること」の何たるかを吸収したい女。作家の趣味が全国の防波堤を見て回ること、という設定が象徴的だ。防波堤とは、陸の力と海の力が激突する場であり、それは性の境界を思わせるものでもある。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-淡いブルーとスカイブルー 女性同士の出会いと恋愛を描いた短篇小説。女性二人が、もう一人の女性の結婚式に出席するため夜の国道を2台のクルマで、つまり、一人1台に乗って連なりながら走っていく冒頭のシーンからして鮮やかである。1度目は電車の中。2度目はバーで。ごく短い時間のうちに2回会ってしまえば、それは偶然を超えて、運命になる。一人が一人に言う。「誰にも、その人を支配している色があるのよ」。そして一人は、淡いきれいなブルー。もう一人がスカイブルー。二人は絶妙なブルーの相違を互いの内に抱きながら生きる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-誕生日のドアは、一人で通れ 一緒に生活している男女がいる。まもなく男の35歳の誕生日がやってくる。3日後には、今度は女の35歳の誕生日だ。しかし、家の中の空気はおだやかではない。彼と様々な女性との関係がバレてしまったのだ。一つひとつ暴露されているあいだも腹が減ったといっては食事を作り、コーヒーを飲み、書いた小説(男は作家なのだ)をさんざんにけなされてもその小説について悪びれずに語ってしまう男がなんともユニークだ。誕生日、というものが毎年やってくるドアだとすれば、今年は一人でくぐるしかなさそうだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-「ストーリーは過去であり、過去はストーリーだ」 波乗りを好む男が、雑誌の取材でインタヴューに赴く。相手は57歳。その人も波乗りの練達で、しかもその人の祖父こそが、日本で初めてのサーファーの可能性もあるという。加えて彼の家には、日本最古のサーフボードが保存されている。過去はどんどんどこからか湧いてきて「波が呼ぶんだよ」という小説の話、その映画の話、ハワイの話に広がってゆく。「波が呼ぶんだよ」とはまさに片岡義男の小説のタイトルであり、ハワイは作家の父方のルーツである。自伝的要素を巧みにフィクションに混入した、手の込んだ作品だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-嫉妬心から好奇心へ、自分自身へ 愛する人の死。深く、悲しい喪失からこの物語は始まる。自分が表現する才能は無いが、音楽に係わる仕事をしたいと考えた主人公の女性は自分が世に送り出そうと考えていた女性歌手の遺品の整理をし、遺されたノートを見ていく過程で、亡き彼女の「恋愛生活」を知る。親しかったのは自分だけではなかった嫉妬心に震えるが、やがて嫉妬心は好奇心に変わり、トランスジェンダーの魅力を備えた女性、また別の作家の女性まで現れ、そこに身を投げることによって、今まで知らなかった自分の可能性が花開いていく。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-その複数の声を、一人で聞くということ ホテルに一人の女性が滞在している。彼女は朝食を取るために下まで降りていくがウォークマンを携帯させている。そこにはテープが挿入されており、いま、彼女は、その音声をイアフォンごしに聞きながら朝食の時間を楽しんでいる。そのテープには、2週間前に女性3人でさんざんに語り合ったことが録音してあるのだ。その時の熱気。口調。辛らつさとあけすけな内容。それらが朝の彼女の頭蓋の中に響き渡る。そしてその会話のあとの行為についても思い出している…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-記憶に残りたい、影響を与えたい、と願う素直さについて 物語の舞台は1950年代と思われる。敗戦から立ち直りつつある東京の発展を考慮して「これからは不動産だ」とハワイから来日した日系二世の男がいる。主人公はその男の息子(18歳)と、隣家の5歳年上の娘だ。父親から言いつけられた庭の整備を通じて二人は親密になるが、やがてハワイに戻る日がやってくる。互いに好意を持っている自分たちを励ますように彼女はある行動に出て、それは翌年、19歳の彼の晴れやかな姿となって結実する。年下の男子に影響を与えたい、と願う健全な女性の思いがまぶしい。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-海をめぐる二つの小説 ビターな味わいの小説である。まずは、おだやかな家族の風景から一転して悲劇が訪れ、しかしその悲劇は小説として書かれたものだった、という仕掛けから始まる。そして物語の視点は、その悲劇の小説を編集者として受け取った男のものとなる。その男は海辺で偶然、かつての知り合いと会い、その知り合いが小説を書こうとしていることを知る。知り合いの書いたものを読んでみると……そこに悲劇は無いが、編集者には不徹底な失敗した小説としか思えない。最初も最後も小説に係わる、あくまでビターな作品である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-ヒントに近づくのか、遠ざかるのか 結婚をめぐる座談会が複数行なわれ、それらを収録した書籍が作られようとしている。担当者は独身の女性だ。この小説は二部構成になっていて、一部は全員が独身男性の座談会。二部は全員が男性作家の座談会だ。女性との付き合い、友人知人のエピソードなどを持ち出し、結婚、というものについて彼らは縦横に議論を交わす。一部も二部もたいへん饒舌である。この饒舌は虚無か? 必ずしもそうとは言えないが語るのが全員が男性であり、構成者だけが女性というところにもしかすると作家のシニシズムがあるのかもしれない。 【目次】 第一部 第二部 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-縛る、とはどういうことか 二人の女性がいる。その姿、身長、着ている服に共通したものがあり、そして年齢も共に28歳。非常によく似た二人だ。春の夕暮れ、世間ではまだ多くの人が働いている時間に彼女たちはホテルの11階の部屋に入る。ここからが自分たちだけの時間だ。自分たちだけ、でありつつ同時にそこに、二つの道具が挿入される。カメラとロープ。カメラは三脚で固定され、身体はロープで固定される。縛る、ということ、縛られる、ということの果ての無い快感がそこにある。縛ること、縛られることは彼女たちの生き方だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-誰にも知られることなく起こり、そして終わる 主人公は、およそ生活感のない一人の女性。彼女はピストルと、ピストルがもたらす狙撃に興味がある。しかしピストルの入手は日本では許されない行為だからカリフォルニアに渡ってピストルと、自分が持って生まれた狙撃の名手である、という事実を入手する。その後に行なわれる行動は、日常に亀裂を入れたい、という彼女の欲求のままに行なわれ、モラルや感情は一顧だにされない。すべては冷静に、最も怖ろしいままに進行する。そして被害者がすべて男性である、という事実をはたしてどう受け止めるべきなのか? 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-それを終わらせるのは銃弾 主人公は殺し屋。女性だ。彼女は、謎の組織からの依頼を淡々とこなす。容赦はない。ミスもない。しかしこの作品ではそうした仕事人としての側面以外にプライヴェートな彼女のパーソナリティも描かれている。彼女の恋人は、男性としての身体機能を残した女性であり二人の愛情に曇りはない。二人はやがて唐突な事件に巻き込まれるが、自力で解決してみせる。さらに彼女の友人との悲しい別れについても躊躇なく判断し、やり遂げてみせる。すべては、銃弾と共に。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-二人しか知らない会話の内容 自信に満ち、幸福な女性二人は共に28歳。二人は熱心な会話に余念がない。コーヒーを飲みながら、あるいはベッドの上で尽きることのない会話はあふれてくる。その内容はズバリ、男性が勃起する、ということの笑ってしまうほどの豊かさについてだ。二人は勃起についての経験を語り合い、女性との係わりについて考察し、それを常に手許に置いておくために模型を作ろうかと話し……彼女たちをあれほど充実した表情にしているものの正体を知っているのは作者と読者だけ(他の作中人物は知らない)だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-やってきて、去っていくアメリカの青 金髪。そして美しい青い瞳。アメリカからジャズ・ピアニストの女性がやってくる。右も左もわからない彼女を迎えに行き、なにかと世話するのは、彼女と同じエージェントに所属する男。彼もまた同じくジャズ・ピアニストだ。アメリカと日本、二つの国で共有されている古い歌、それらの演奏を通じて彼らは親密になり、彼女の日本滞在は心地良いものとなる。しかしながら彼女には、実は壮絶な過去があった。親密になれたからこそ語られたその過去と、ある預かり物を残して、彼女は次なるアジアの国へと旅立って行く。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-彼は指輪をくれた、彼女は写真を始めた 男性が女性に指輪を贈る、といえばプロポーズ、ということになりそうだが必ずしもそうでない場合もある。しかもその指輪は男性が作ったものであり、波とサーフボードまで精巧に刻まれているとなると、これはなかなかめずらしい事例ではないか。贈ったほうももらったほうも、それから別々の道を歩み、女性のほうは写真の魅力に目覚め、そしてカメラを指輪の上に落として波形をつぶしてしまったことで二人は再会する機会を得ることになった。ところが……その再会が、二人の最後の機会になってしまったのだ…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-姉という無限のバリエーション 女は大学教授。男は小説家。二人はホテルで会い、そこで男女の営みをふんだんに行い、ある時は日本の経済や社会構造について長く突っ込んだ会話を交したりもする。いささか奔放な、とはいえそれなりによくあるインテリ同士のカップルといえそうだがしかし、小説の冒頭からこの二人が姉と弟であると知らされる読者としてはやはり戸惑いと共に読み進めることになるかもしれない。弟が書く小説の女性はすべて、この姉なのだという。姉は無限の色彩を持つクレヨンであり、弟は真っ白な紙だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-眠ったら、けっして目を覚まさない女性の傍らで 28歳の女性がいる。出張先でさんざんな思いをして疲れ果てた彼女は同い年の友人を呼び出し、食事をし、酒を飲み、息を吹き返す。そこに友人の親しい男友達を呼び出し、宴は3人になった。ところで出張から帰って来た彼女にはお酒が入ると眠ってしまうクセがあった。その日もやはり眠ってしまい、残り二人はようやく部屋に運び込む。一度眠ったら絶対に起きない彼女の隣で二人はセックス。そして戯れに、この眠っている彼女に挿入してみよ、とそそのかす。さあ、男はどうする……という、秋の夜長の短篇小説。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-ないないづくしの関係が最高である 姉と弟がいる。何の不思議もない関係だが、ひとたび「男と女」になってしまうと一気に事態は変わる。互いに妻でなく夫でなく、結婚できず入籍できず恋人でも愛人でもなく、知らぬ仲でもなく他人に戻ることもできない。つまり、「姉と弟」でありながら「男と女」であることはそれだけで社会を歪ませるに十分なことなのだ。しかも弟は作家。彼は姉の言葉を、その教えを小説の中に吸収しようとし、その構想をまた姉の前で語り……こうしてますます、社会から逸脱した世界が広がっていく。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-あの瞬間はもはやどこにもなく、そして目の前にあるものはなにか? 作家がいる。作家はストーリーを自分の頭で考えるが何らかの外部からの刺激も必要だ。例えば一人の女性。バーに、あの女性がいたらいいな、と思えばいるし、思いがけず京都で再会したりもする。そんな都合よく……って当然だ、だってこれは片岡義男の小説なのだから。そして女性との会話の中には彼に書くことをうながしたまた別の女性、今では自分も作家になった女性の話題が出て会話に奥行きが生まれる。ある時、タイトルの着想が生まれ、そしてその時間もまた去っていき、さて今、彼の目の前にあるものは? 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-そして十年後も豪雨の日を迎える 女には、恋人と呼んで差し支えない相手がいた。その男が、話をしたい、ということでセダンで迎えに来る。女は激しい気性で、日本車の惨めさについて、戦後日本社会の貧弱さについて意見をぶちまける。やがて天候が変わり、湾岸線を走る車の上に豪雨が訪れる。彼女は豪雨の中、危険も顧みず、途方もない行動に出る……それからちょうど10年後の同じ日。また同じような天候だ。はたして彼女は何を思うのか? 短篇「八月の上半身」に話題としてのみ出てくる女性がここでは主人公。ぜひ、併読をお勧めしたい。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-凧がもたらしたあたらしい時間 一人暮らしの男性がいる。独身。彼には離婚歴がある。出勤前にコーヒーを飲みながら、写真立てを彼は見る。そこにはかつての妻の姿がある。そしてその妻が、凧を手にしていることに気がつく。さて、あの凧はどこにしまったのだったか? 思い立ったら探さずにはいられず、見つかったら、このまま出勤などしていられない。彼は外房の砂浜まで、一人で凧揚げに出かける。過去が急になつかしくなったのか。そうかもしれない。しかしその後、自分でも思いがけない行動に出て、あたらしい時間が始まることになる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-彼と過ごすこと、撮ること、外出すること 29歳の女性がいる。女優だ。訪ねてきた男性とベッドで過ごし、男性が帰る際はキチンと服を着て見送り、見送った後は自分も外出する。それがルールだが、もう一つ大事な行為がある。撮影だ。彼女は25歳から自分を撮り続け、30歳になったら写真集にまとめようとしている。ところで、彼女が外出して赴く先に、あるバーがある。この短篇のほかに「八月の上半身」「思い出の十二号埠頭」など『人生模様』に収録された短篇はどれも連作短篇としてそのバーと、登場人物の絶妙の重複がある。併読をおすすめしたい。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-彼は賢明な子だ、それにベーゴマがある 34歳の演歌歌手がいる。女性だ。最初の章では主に、彼女のたたずまいが描かれる。37歳になった元プロ野球選手がいる。二つ目の章が、彼の来歴と現在の素描だ。二人は離婚した元夫婦だが、主役は9歳の息子かもしれない。母と父は直接会うことはなく少年は母とホテルに泊まったり、父のほうに預けられる際には親戚にも囲まれたりしている。少年は多くを語らず、大人しいが聞かれたことの回答は明確で聡明だ。それにベーゴマがある。父とその兄から教わったベーゴマを、ほら、もう母親と楽しんでいる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-男は願い、想像し、そして書いた 片岡作品には、小説を書こうとしている人物がしばしば登場する。さらに付け加えるなら、こんなストーリーはどうだろうかと主人公が想像を思い巡らせている様子がそのまま小説になっている、という形式のものがいくつかある。この作品もまたそうだ。編集者として勤めている雑誌が廃刊の危機にあり、その状況を突破し、想像を巡らせ、そして見事に完成した作品を読者に提示して終わる。本作中にも出てくる他の片岡作品、「海をもらった人」「指輪の中の海」「波が呼ぶんだよ」と併読すると読む楽しみは倍増するはずだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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3.0謎の女を書く ある日、急に目の前に現れ、またある日、まさかこのままになるとは思わず、別れてしまった女がいる。男はそのことを悔やみ、いつまでも忘れられない。そのことをバーの主人に切々と語っているがまさにそのバーカウンターの内側にこそ、その女がいたのだった。女々しい、と形容することは簡単だが、主人はその女を「小説に書きなさい」と言う。書くことで、いつまでも謎の女であり続けるのだ。しかし、その前にまた女が現れたらどうなる? それはわからない。なにしろ男は、まだ書き始めてもいないのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-二度めには道があった 一組の男女がいるホテルの部屋。この小説は、その部屋から一歩も出ない。いや、正確には出るのだ、彼らの頭の中の思い出として。今日は、二人が出会ってちょうど1年目の日。そして女性の誕生日だ。二人の会話は、あからさまに二人がこれまで交わしてきた行為のこと。互いの身体をほめ合い、自分たちの相性を喜び、論じ、時に発見があって、飽きることがない。男嫌いと言われてきた女性が変わったのだ。彼女の中には男性を受け入れる「道」がなかった。しかし2度めからすぐに道ができ、彼は喜んでそこに挿入する。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-別れた男は今、かき氷を作る 35歳の作家がいる。つい5ヶ月前に離婚し、妻子と別々に暮らすようになった。取材で瀬戸内まで出かけ、東京に帰ってきた彼はふと、かつて3人で暮らしていた家に行ってみようと思い立つ。わずか5ヶ月しか経過していないのに最寄りの駅の様子や商店街、住宅地のたたずまいなどあまりになつかしく、強いときめきすら覚える。ところが……訪ねていったかつての住まいでは意外な経験をすることになる。そしてその後、姉と一緒に住んでいる現在の住まいに帰り、そこで今度は読者が、意外な経験をすることになるのだ…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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5.02人の家は、今夜、3人になった 男性の住まいに、居候させてほしいと女性がやってくる。同居しているもう一人の女性の都合でしばらく家を明け渡さなくてはならないようだ。快諾した男性とくつろいでいると彼の姉が帰ってくる。ここは彼と姉の家なのだ。いつもは姉弟の家に、今日はプラス女性が一人。そのあと3人で観る映画がまた、兄弟と女性一人の関係を描いたものだった(この映画、あきらかにある作品を想定したものと思われるが、当ててみてください)。このあと、特別な何かが起きる? 起きない? それはぜひ、読んでお確かめください。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-そして彼女も彼も、没入する 自身が写真家でもある片岡義男の小説には、しばしば登場人物が写真を撮る行為や写真について人々が語り合う場面が描かれる。この小説においては、友人の姉を男が撮る、という形になっている。ジャズ・ドラマーであり歌手でもあるその女性は彼の部屋を訪ねてきては水着に着替えてみせたり、欲求に従って大胆な行動をとる。撮る男と撮られる女は惹かれあっていく。撮ること、写真について語ることに加えて片岡作品の大きな力になっているもの、それは女性が撮られる際の、圧倒的な没入のあり方である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-「へぇ夜這い?」そう耳元でアイツは囁いて、私を押し倒す。誤解だって言いたいのに、彼のテクで口から溢れるのはイヤラシイ喘ぎばかり。私“処女”なのに! でも彼があまりに上手すぎて…。私・莉奈は親友と南の島に卒業旅行にきたの。ずっと片想いしていた浩樹くんに偶然再会できて喜んでいると、なんと彼は親友の恋人!? 旅行開始そうそう失恋だなんて(涙)。ホテルのバイトは「あんた彼氏いないだろ?」とか失礼な事言ってくるし、軽いし!! しかも、その日の夜は、恋人同士熱い夜を過ごしたいから部屋を代わってと言われる始末。かわりに行った部屋にはあのバイトがいて、私が夜這いしたと誤解されてしまい!?
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-理由があろうがなかろうが、泣く時はいくらでも泣くといい 二人の中年女性。46歳。学生時代からの親友だ。一人はピアノ弾きをしており、彼女がカクテル・ラウンジで弾いている所へもう一人が不意に、予告もなく現れたりする。46歳。過去も未来もある年齢だ。そして若い頃には感じなかったであろう、不思議な現象も訪れる。例えば涙。夕陽を見るだけでわけのわからない衝動にかられたり、どうにも不可解な涙が流れたりすることがある。そんな二人が再会して、世間的な親友概念を逸脱した時間もまた、やってくる。二人は今また、いくら泣いてもいい場所を手に入れたのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-「逢いたい」と「逢いたかった」は同じか、違うのか ふとしたことで、流れが変わってしまうことはある。「逢いたいな」と思って何度か電話をした女性に逢うことができず、ふと一人になった時に、バッタリ別の女性に逢ってしまう。その日はずっとそのまま二人で……ということになったりする。問題はそれ以降だ。最初に逢いたいと思った女性と連絡が取れ、そして2度目の偶然が訪れるとなると事態はやや複雑になる。その時、この男はいったいどうしたのか? 答えはこの短篇を読んでみてください。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-寅さんを導入として日本を語る 小説による日本論と言っていいかもしれない。片岡義男の小説で「日本」が問題になる時、そこには必ず「日本語」の問題がある。今回はなんと、素材は「寅さん」、つまり、映画『男はつらいよ』だ。寅さんの映画を、金髪の外国人女性、今は女性だが大工として男でもある人、その人の連れ合いの女性、そしてその連れ合いの兄である小説家の4人で見て、その感想を延々と楽しく語らいながらいつしかそれが前後の日本批判になっている、という構えの作品だ。自由な「寅さん」のように、ここでは「性」もまた自由になる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-彼女たちが先に進む時、そこにステーション・ワゴンがある ステーション・ワゴンは、片岡義男の小説では特別な存在だ。なにしろ「ステーション」なのだからその居住性は抜群であり、移動もできればそこで快適にすごすこともできる愛すべき友である。不眠の男性を乗せて走り、ようやく彼に眠りを与えてやれるのも、仕事のために別々の町で暮らす夫と会う時に乗っていくのも、バカな男性に別れを突きつけたあと、自由になるために乗る相棒もすべてステーション・ワゴンである。彼女たちがステーション・ワゴンを停める場所に妥協はない。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-嫉妬<落胆<短篇小説 ミステリー作家の女性がいる。20代で選考委員全員から絶賛されてデビューしたものの外国生活を経て結婚し、今は書いてない、という設定だ。彼女はアタマの中だけで作り上げたフィクションに関心がなく、体験から発想したミステリを得意とするタイプ。結婚生活も時が経ち、そろそろ書きたくなってきた彼女は夫が持っている複数の鍵に注目する。どうやらその鍵の中に、夫の嘘があるようだ。そこから彼女が取った行動と感情には妻としてのダメージよりも、短篇を一つ仕上げることの欲求が大きなウェイトを占めている。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-その間、彼女が話したのは一言だけ 午後4時から4時40分くらいまでの時間帯、この小説の舞台となる店は、一日中で最も暇になるらしい。暇だから、数少ない客には目が届きやすい。そこに常連の、一人の大人の女性がいる。年齢のいくらか違う二人のウェイターが、その彼女について、あれこれ想像をめぐらせた会話を交わす。勤務中の私語ではあるけれど、声のトーンはごく控えめで、失礼にはあたらない。しかも噂話などではなく、賞賛に近い、願望のような会話だ。その間、客としての彼女の発した言葉はただ一言。そんな優雅な午後のひととき。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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4.0男たちが「しなかった」話 登場人物は5人だ。女が2人と男が3人。仕事が終わり、誘い合って食事をし、次の店に移る。3人の男たちはそれぞれ、過去の「しなかった」話をする。つまり、明らかに女性の側からモーションをかけられていながら何もしないままに時を過ごした、いわば「据膳食わぬは……」という経験だ。これが前振り。その他愛も無い経験談を受けて、二人の女性のうちの一人がもう一人の女性の部屋で無防備にも寝てしまい、そこを3人の男たちが囲んでいる、という状況ができる。さて、そこから何がどうなるか、ならないか。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-存在しないボールは、いつまでも到達しない いま37歳の人間にとって、ちょうど20年前の17歳は、はるかな過去だろう。しかしそれは同時に、もうそんなに経ってしまったのかと、唖然とするような事態でもあるはずだ。実家の建て直しの前に家族全員が集まることになり、久々に故郷の町に帰ってみると、実家よりいち早く街は大いに市街化し、通っていた高校の建物は跡形もなく消え去っていた。かつて野球部員として上がったマウンドも、今は記憶の中にしかない。そして再会した女性との2ショットも、どんどん遠ざかる過去になる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-似たもの同士、とは言わないが…… かつて音楽活動のグループを組んでいた5人が、久々に再会する。5人の内訳は女3、男が2。カップルが二つあり、一人だけ残された女性のバックアップ・コーラスを、二組が務める、というなかなか不思議な成り行きだ。人が集まればうまくいかないこともあり、互いの弱さがあり、しかしそうした弱さにはどうやらパターンがあるようだ、という認識がこの小説では「フラクタル」の概念を使って説明されている。海岸線の卓抜な比喩が、5人の存在にどことなく重なり合うはずだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-二つの過去は、やがて一つの現在になる 外から自分の部屋に一人で帰って来た時、何を感じるか。その感じ方の移ろいが、いわばこの短篇小説の主題かもしれない。37歳。夏休みはむなしく徒労に終わり、ビールも食事もうまくない。40歳。ある1枚の写真と、自分の誕生日をきっかけに、変化が生まれる。男はいささかの興奮と精彩を取り戻す。43歳。3年前のアクションのおかげで、彼は新たな時間を手に入れた。1枚の写真が引き金になってもう1枚の写真が生まれ、そして今、部屋はまったく違う部屋に変わったのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-料理に始まり、そこに戻り、何事かに気づく、ということ 親密になるきっかけが料理だったとすれば、再びよりを戻すきっかけもまた料理だった、ということがどうやらここで起きている出来事のようだ。あなたは現実の私を見ているのではない、イメージを投影してそれを好んでいるだけだ、と女は男に言う。そして男から離れようとする。しかし約半年後、女が再び引力のような力で引っ張られていくのはやはり男の作る料理のあるほうへ、だった。そして料理に加えて写真が介在することでまわり道をした女は、ある種の「素敵」に気がつくのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-更新すること、所有できないということ 33歳。それなりの過去があり、それ以上に未来のある年齢だ。一人の女性が久々に日本に帰国することになり、かつて親しかった男女6人が再会しようとしている。帰国する女性は6人のうちの一人の男性と結婚をしたいという気持ちをかつて持ったことがあり、今もそうかもしれない、ということをみんなは知っている。しかし彼らはいまや、かつてのような男が3、女が3という対称にはならない。時間の経過と共に、性をも越境した更新が行なわれ、それは常に新鮮である。誰も、誰かを所有したりすることはできない。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-抑えること、でも忘れないこと。それがメロディー 後輩に対する先輩の好意から、あるお見合いの機会が訪れる。男性側にも女性側にも、相手がどんな人物か一切教えないというかなり変わった、ミステリアスなお見合いだ。あるのは取り持ってくれる先輩への信頼だけ。そして当日。引き合わされたのは、互いに唖然とする相手だった。そこには長い時間と、ひたすら抑制してきた意志とそれでも抑えきれない気持ちが、手と手を取り合って奏でているメロディーがある。この小説こそがそのメロディラインだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-おにぎりに泣き、焼き鳥にあこがれる 離婚してしまった相手なのに、無性に会いたくなる。いや、そもそも嫌いで別れたわけじゃないのだ。そういうことはたぶん、あるのだろう。結婚してしまったから離婚してしまった、「しない」ことがいちばん良かったのに、というような関係。離れてみて、話さなかったこと、確かめてみなかったことが、見えてくる。おにぎりを作らせてもらえなかった。焼き鳥を食べに連れて行ってもらったこともなかった。でも再会した今なら、さあどうだろう。まずは焼き鳥。そして、おにぎりは…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-愛になろうがなるまいが、継続を選べ シンプルだが厄介な短篇。男女がいて、付き合いは5年ほどになり、いつも女が男の部屋を訪ねる。ところがある時、女は別の男と結婚すると言い出す。それはしかし、あてつけでも心変わりでもない。そして、二人の関係はこの度の結婚よりも長い継続なのだから今後も続ける、などと女は言う。しかし世間はそれでは許さない。新しい男=旦那も許さない。しかし、「許さない」からそれが何だというのか、というのがこの小説である。無茶と言われようと、継続はかくも図太いものなのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-この怒涛の電話の中に真実はあるか? 14歳。自分で自分をもてあまし、世間からは「多感な時期」などと言われたりもする年齢だ。そんな年齢で、両親が離婚した。友人に向かって彼女は、そのことについて好きになれない父親について、めんどくさい新しい母について、そして誰よりも「かっこいい」と思っている離婚した母について電話口で怒涛のようにしゃべりまくる。対面ではなく、すべて電話でのおしゃべり、しかも相手の友人の応答は一切書かれずひたすらこちらがしゃべるだけ、という構えがこの短篇のキモで、そこにはうっすらと孤独が見えるようだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-男のこでなくておあいにくさま さりげない遭遇の冒頭から女と男、二人の高校生がするすると川原でキャッチ・ボールをする場面にたどりついてしまう。気持ちと気持ちの交換を比喩で表現する際に人は「キャッチ・ボール」という言葉をしばしば使うがここにあるのは本物のキャッチ・ボールでありボールを投げることと受けること、その人が投げるボールに対するさわやかな驚きこそが主役である。二人には、両親の離婚、という共通点があり、そしてそれぞれの片親(男子の母、女子の父)もまたキャッチ・ボールの場面に現れるのがユニークだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-すぐに終る、夏も、18歳も 18歳。高校を卒業して5ヶ月。やらなければならないことは特になく、それどころかこの歳にして早くもステーション・ワゴンを手に入れ、日本全国どこへでも気ままに旅する時間が流れていく。その途中、同級生の女性と待ち合わせをして会話を交わすと彼の気ままさ、寄る辺なさ、自由がますます際立つようだ。彼は、この女性の友人ばかりでなく、母にも、姉にも会いにいくはずだが、そこにもとどまることはないはずだ。18歳は、その夏は、ひたすら流れ流れ、すぐに終ってしまうはずなのだから。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-初めて好きになった女性は、スクリーンを経由して…… 季節は夏であり、登場人物はまだ幼さの残るハイティーン。そして両親は離婚もしくは死別している、という共通点を持つ短篇を集めた『夏と少年の短篇』に収録された一篇。この作品の鍵は、異母姉だ。ある男の前の妻と二番目の妻、それぞれの娘と息子という関係の4人は極めて仲が良いが、しかしこの息子と娘は兄弟でありながら他人でもある。そのことに対する隠れた意識に、17歳の男子は母親の故郷の映画館の、スクリーンに映った一人の女優の姿を経由してようやく気づくことになるのだが…… 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-写真は時間であり、小説は時間を生き直すことである 不思議な長篇小説である。一人は写真家、一人は小説家になっている二人の男性がいて、二人は親しい友人同士である。写真家には、少なくとも年に一度はその姿を撮影し、それが何年にも及んでいる女性がいて、小説家には、彼の書くすべての小説のインスピレーションの源になっている女性がいる。しかし彼たち、彼女たちは恋愛関係にはならず、いや、恋愛のもっと向こう側にある、何かもっと痛切なものの中に没入してしまったかのようだ。片岡義男による、異例ともいえる長い「あとがき」にも注目したい。 【目次】 第一部「私は一曲のバラッドです」 第二部 最後の一行を書くために 第三部 八月の午後の一瞬から 第四部 写真についての一通ずつの手紙 あとがき 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-結婚したくなった夏は、さてどうなった? 人はなぜ結婚するのか? この問いに整然と回答するのは思いのほか難しかろうが、この小説の主人公は、一人で生きていては何もかもするりと過ぎてしまいもっと生活に抵抗がほしくなったからだ、と答える。彼は大真面目だ。そして複数の候補者の中から自分が結婚したい相手と、そうでない相手を区別していく。それらの女性の写真を横に並べながら。その行為はグロテスクなようでいて、彼なりの真剣な検討の流儀なのだ。そしてついに決めた相手に彼は結婚を申し込む。さあ、その返事はどうなった? 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-胸のふくらみのエンサイクロペディア 男性にはなく、女性だけが備えているもの。それが、胸のふくらみだ。この中篇小説は、一組の男女を中心にすえつつ、男性による胸の礼賛と、屈託なく胸を開放してみせる女性のふるまいによって、読者をこれでもかと胸のふくらみの世界へと引きずりこむ。やがて二人の対話や実践だけでなく、様々なシーンで見かけた胸のふくらみの魅力、胸の写真コレクション、そして絵葉書など、魅惑的な胸のエピソード集の様相を呈し、あらゆる角度から胸のふくらみについて語る百科全書的な領域へと近づいていく。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-最も「日本的」と言われた作品を通じての「日本」批判 聡明なアメリカ人ジャーナリストの女性と日本人の男性。ほぼ全篇、二人によるディスカッションで成立している中篇小説。内容は、小津安二郎監督の『晩春』『麦秋』『東京物語』、原節子演じる「紀子三部作」についてだ。極めて日本的な映画であり、エディプスコンプレックスがそこにはあると一般的に解釈されているその見解を退け、彼らは核心に「性」をもってくる。限定されようとしている「性」の大きな可能性こそが原節子という類い稀な女優によって提示された映画だと。そしてそれは痛烈な「日本」批判でもある。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-キャッチボールが力を与えてくれた インタヴューされるのは舞台女優。するのはライター。二人は共に、35歳の独身の女性だ。二人は、インタヴューの際に初めて会うのではなく、その前に、あるあざやかな偶然のシーンによって会う機会があった。インタヴューの中で、「キャッチ・ボール」が重要な行為であることが明らかになってくる。会話の比喩としての言葉のキャッチ・ボールではなく、文字通り、身体を使ったキャッチ・ボールだ。やがて二人は親密な間柄になり、キャッチ・ボールを実際にしながらそれぞれの過去と未来を確かめることになるだろう。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-どんなふうに幸せか、わからないことは謎である 極めて端正な、見たところ破綻もないような女性が無味乾燥な、装飾の無いホテルの一室に落ち着いたかと思うとやおら電話をかけ、あるサーヴィスを依頼する。一人の女性が部屋まで派遣されてくる。迎えたほうも、やってきたほうも、相手の魅力を素直に認め二人だけのひとときを過ごす。それは世間的に見ればやや通常から逸脱した行為かもしれないが、そんなことはどうでもいい。大切なのは、二人が幸福であること。そして、それがどんな種類の幸福かわからず、謎のままであることだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-暗い場所なら、脱出がよく見える 地上21階。ホテルではない。私的な寝室だが、生活感はまるでない。外は雨。そしてここは、かなり暗い空間である。ほぼ初対面の男女が、お互いに裸で、会話を交わす。趣味について話し出すと、女の語る趣味は嘘か本当かわからないような(たぶん本当なのだ)荒唐無稽なものだ。いつかはやってみたいこと、として彼女が語る「夢」はいささか常軌を逸しているようでもあり、同時になにかしら人間という生き物の根源に触れるようなものでもある。この暗がりの中で、二人は生活から、日常から「脱出」している。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-彼であり、彼女である存在が至近距離で学んだこと 男でありながら、美しい女性としての外見を備えている。しかし声は、あきらかに男性のそれだ。というような一人の存在が、恋人である男性を深く愛している。ところが突然、その恋人を奪われる日が訪れる。それは二人のいさかいではなく、時間の経過とともに、人の一生にはこのようなこともありうる、という事態での別れだった。「彼」を失った後の日々、その母親とのやり取りなど遺された人間としてのふるまいの、その美しさ。悲しさ。片岡義男らしい、同情を排しながらも深く優しい傑作短篇である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-「見つけたい」「なりたい」と彼は言った 今日的な用語を持ち出せば、性同一性障害、となるだろうか。男性として生まれながら、女性になりたがっている彼。そこには彼自身の意志だけでなく、彼の生き方に理解があり、それどころかあまりの美しさに半ば女の子として育てた母親と姉の存在があり、さらに父親の不在まで付いてくるのだから念が入っている。ただしかし、うまくいかないことが一つある。口紅だ。男性であることを捨てて女性になるのではなく、男性であるままで女性にもなる、というその存在のジャンプに見合う口紅は果たして見つかるのか。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-あなたの過去は、私の未来である 娘は身長179cm。母は170cm。共にたいへんな高身長の二人が、おもいがけず久々に横浜の町を楽しむ機会に恵まれる。娘は小説を書こうと試みている身であり、母には離婚歴がある。日中、娘が偶然体験したある幸福なエピソードを契機に二人はいつしか小説論を語り合うことになる。そしてその語らいの中から、一つの短篇小説が生まれようとしている。娘は母から生まれたのであり、母、というカタチの過去が娘の未来をもたらしてくれる。そのような母娘の時間が港のある場所で描き出されたうつくしい一篇である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-1年後、少女たちは再び夜に集合する 激しい雨の降りしきる台風の夜。14歳の少女の家に、親友たちが集まってくる。全部で4人。全員が14歳だ。4人は一夜を共に過ごすために悪天候にも係わらず集まったがその一夜の目的は、ある現場を追体験することにあった。1年前の同じ日、同じように台風の夜に起きたある悲劇の現場を彼女たちは訪ねる。その出来事を彼女たちは見ていない。知らされただけだ。しかし彼女たちは今年、わざわざ集まった。そこへ行った。そしてそこでどんなことが起きたか、端的な事実だけを告げてこの小説は幕を閉じる。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-いつか必ず、自分はいなくなる ここでは、おそらく誰もが人生の中で多少なりとも感じていながら突き詰めて考えたり苦しんだりしたことの無いことについて、あまりの純粋さゆえにのめりこんでいく少女の姿が描かれている。それは、自分とは何か、存在とは、時間とは何か、という問いだ。かつての自分と今の自分は別の人間であり、しかしながら記憶、というものがあるからその過去には今の自分として戻ることができるけれど今、その場所にかつての私はいない。私とはそう、いつだって「いなくなる」ことが確実な何か、のことなのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-メドレーのような長篇小説を トリュフォーの映画『ジュールとジム』(邦題は『突然炎のごとく』)のように仲の良い男女3人がいた。男が二人、女が一人だ。男のうちの一人と女が結婚し、もう一人の男は心から祝福する。そして時を経て、その二人が離婚したという。本当の仲良しであった3人には、三角関係は存在しなかったから、結婚の時に嫉妬はなかったし、離婚の時に憎悪はなかった。結婚しなかった男は今も独身、そして小説家だ。離婚した彼女には瓜二つの娘がいて、その娘もまた作家志望だという。あたらしい何かが今から始まりそうだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-今日はすべてがうまくいく日 片岡作品には、世間でマジョリティを形成しているヘテロセクシュアルばかりでなく様々なセクシュアリティの形が登場するが、今回はレズビアンだ。二人は今、40歳という節目の歳を迎えた。40歳。思い出も未来もたっぷりある年齢だ。二人が最初に出会った時のこと、それぞれ異性との結婚の経験がありながら、二人が互いにとってどんなに大切な存在なのかを思い知らされた日のことなどを二人は語り合う。今日は、インストラクターをしているほうの彼女の誕生日。二人の40台のスタートラインは上々だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-彼女が部屋の花に気づく時 登場人物は二人だけ。片岡作品にはめずらしく、中年の男女だ。彼らの様子はあられもない。セックスの後にセックスを語り、語りが一呼吸すると、またセックス。そのあいだに、なぜだろう、仕事のことや、母親(女性のほうの)のこと、その母親の葬儀のことなどが話題にのぼってくる。どうやら二人は女優と映画監督であるらしい。行為の前と後、ふと思い出したように彼女はしきりに「部屋が暗い」という。高層階のホテルの部屋だ。やがて彼女は、青いガーディニアが活けてあるのを見る。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-メイキング・イン・新幹線 一人の小説家がいる。44歳。女性。彼女には離婚歴がある。しかしそれは言ってみれば、幸福な離婚だった。なぜなら、小説を書くために生活から離れる、という自由を夫から与えられたのだから。その彼女は今、書くことについても自由に、ストレートに行為に移していく。編集者が新たな短編集を依頼したいと言えば、その日のうちに編集者の出張先まで同行して、新幹線の中でストーリーを作り上げてしまう。そのストーリーはジェンダーの枠をやすやすと超える自由なものだ。彼女は今、怖いほどに幸福である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-部屋は一つ、ベッドは二つ、女性が3人 久々に女性4人で会おう、ということになった。しかし、うち一人は若き旅館の女将であり、残りの3人の小旅行を受け入れる立場にある。彼女はこの短篇には登場しない。小旅行の目的地である旅館に行く前にホテルに1泊することになっている。4人ではなく3人という奇数であり、泊まる部屋は一つ。そしてベッドが二つ。つまり、一つのベッドに一人、もう一つのベッドに二人が眠ることになる。そしてその晩、部屋で起きたこと。見たもの。聞いた声。それは「一人」だった側にも、新しい歓びをもたらすものとなった。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-パリであんパン、手紙を書きながら 一人の作家が、取材をかねてパリへ旅立つ。そしてパリで、高校の同級生だった女性と偶然に遭う。作家は、実は彼女の姉を慕い続けておりその気持ちは、階段の下から、上にいる存在を見上げるだけで満足、というような言い方で表れたりする。彼はかつて、その姉への手紙で、致命的なミスをしでかしたことがあった。しかしそのミスは皮肉なことに、彼がその姉に手紙を書き続ける力にもなった。そして今、偶然にも妹とパリで遭うとは! やはり何かがつながっている。木村屋で買って、パリまで持ってきたあんパンのように。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-それでもやはりそれは筋道であり、小説になる 結婚してもおかしくはない男女がいて、しかし結婚したいか、まだためらう気持ちがあるか、二人の温度差がある、ということも、しばしば起きることである。男は、故郷の町に女を連れて行って、この女でいいかどうか、確かめたい。女は、彼の故郷に行くのだから、きっと結婚は間近だ、と思う。このあやうい落差を解消するために呼び出されるのが、男の友人である小説家。彼はいったい、どんな役割を期待されているのか? 相当に身勝手な男の計画に、彼は従ってやることにする。なぜならそれはそれで、筋の通ったことだから。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-今まで知らなかった何事かを、小説に書くことについて ベーゴマ、というものがある。ある日突然、朝食を食べている時に、ベーゴマ、という一語が何の脈絡もなく小説家の頭に点滅する。現実にそんなことがありうるだろうか? といえば、おそらくはそういうこともありうるのが現実だろう。そもそも、ベーゴマのベーとは何かも知らない彼は何事も万能の姉を呼び出し、ベーゴマの回し方を伝授してもらう。そしてさっそく、短篇小説のプロットを作成する。まったく知らなかったものに少しだけ触れてそれを小説という、普段から付き合っている器に入れる瞬間の物語だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-きみはグッド・デザイン 好きだし、一緒にいたいが、ずっとは困る。なぜか。「良すぎるからだ」というのが彼の答えだ。彼女は良すぎるから、彼女といることだけで人生の全部になってしまう。他人が聞いたら鼻白むもいいところだが、これは小説であり、二人しか出てこない。「良い」とはすなわち、彼女がグッド・デザインだということでありこれ以上、彼にとって明白な事実は他にない。一組の男女が、互いになぜ好きなのか? を突き詰め、半ば議論のような会話を交わす。片岡義男以外の作家にはなかなか書けない短篇である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-彼女はそこにいる、いない、いる…… 静かで、淡々と進んでいくが、いささか狂いが見えるような小説。雑誌の仕事で広島を訪れた作家がきまぐれに街を散策し、古びた映画館を見つけ、入ってみる。ある意味では荒廃した、そして別の意味では非常に貴重な昔日の映画館で、まずはそのことに心を奪われるが徐々に、そこで観た映画へ、そして映画に出ていた女優へと関心が移っていく。やがて、その映画は作家としての決定的な方向転換を促し、そこから突き詰めた方向に向かって動いていく。まさに「限界」まで向かう奇妙な作品である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-十年が過ぎ、そして彼女は今も魅力的だ 波乗りを愛する二人の男は、大学が同じ、入社した会社も同じで1年後には同じ文面で辞表を提出し、南島の住人になる。会社を捨て、一人は写真、一人は小説へ進んでいく。そこに一人の女性が現れる。二人は強く、彼女に惹かれていく。しかし、均衡は崩れない。それは彼女の願いであり、男たち二人の願いでもある。がしかし……。崩れないことで大切にされたままのこととついになしえなかったこと、その両方がある。10年の時が経過し、男たちにはそれぞれ伴侶がいる。そして彼女は、今でも変わらず、あまりに魅力的だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-誰もいないオフィスで、敏感なところをクチュクチュ弄られて、立っていられないほどイカされて。こんなのダメなのになんでこんなにキモチいいの…!? ―フラれてヤケ酒をしている時に出会った人はカッコよくて優しくて、酔った勢いでついエッチなことしちゃった。でも一夜限りのこと…と思っていたのに、なんと翌日オフィスで再会! しかも上司になるなんてウソでしょ!? それ以来、彼は私を見かける度に迫ってくる。いつもは冷静で仕事のできる人なのに、私に触れるときはケダモノみたいに強引で…この上司、絶倫すぎます!
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-誰もいない部屋にいま、自分がいる 主人公は写真家の女性。 経験豊富で著作もあるが、学びたいことはまだまだあり、 今は花の写真を専門に撮る年上の、同じく女性の写真家のアシスタントを務めている。 使われる身として日本全国を忙しく回っている彼女には同居している男性がいたが、 別々に暮らしたい、という願いがあった。 幾度目かの旅先からの電話で、彼女は打ち明ける。自分のいない部屋に男性にいてほしくない。 そして帰ってきたいま、自分しかいない部屋。あらたな出発がそこにあった。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-20年後の因縁のスコア お盆の季節。都会に出た多くの人々が帰省し、 旧交を温めるタイミングでもある。 集まったのが、かつて甲子園にも出場したことのある 野球小僧の男たち、ともなれば、大いに盛り上がるのは必至だ。 しかし、なにしろかの栄冠は20年前だ。 輝ける17歳は、今や中年の入口の37歳となった。 そしてなんと、このお盆の時期に、 かつて彼らにあこがれていたという女子チームと対戦することになった。 さて、その結果やいかに? そして今、「花」はいったい、どのあたりにあるのか? 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-人はなぜこれほどたやすく17歳に戻ってしまうのか? 再会があった。45歳、という中年の男女の再会。 実に28年ぶり、ということは、かつて二人は17歳だった。 人生における最も輝かしい年齢。その時初めて二人は「女」になり、「男」になった。 この小説の冒頭は、47歳から始まる。 つまり、再会からさらに少し時を経て、デートを重ねた地点なのだ。 女性から男性に贈られるプレゼントと、彼女から打ち明けられた話は30年の時を超えて彼を狼狽させる。 美しく、そしてどうしようもない狂おしい思いがそこにある。 いったい二人はこれからどうなるのか? 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-天にも昇る気持ち 恋人同士ではない。しかし互いに好意は持っている。 会うのは頻繁ではない。半年ぶりくらいか。 そのような微妙な間柄の男女が、百貨店の前で待ち合わせる。 デートのスタートは、ティラミスとエスプレッソ。 「ティラミスとはどういう意味か?」という男性の問いに 女性は即答するものの、微妙に、いや実は大きく誤っており、 そのことについての男性の解説と二人の会話が この小説の方向を決定している。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-美術館が最適 恋人同士、とはどうもいえないようだが、親密な二人だ。 親密であいまいな二人。 彼女が引っ越した新しい部屋、そこからほど近くに美術館があり、 そこがまるで部屋から見て離れのような位置にあり、 あたかも自分だけの美術館のような……という位置の構造が この短篇小説の構造と二人の距離の精妙さに響き合っている。 いうまでもなく美術館は公共空間だが、 なにしろ「離れ」でもあるのだから、 「悪くない」「なにが?」「こういうの」という言葉へと至る そんな行為にも似つかわしい場所なのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-やっと楽園、とは少し別のもの 2組の男女のカップルが、映画館で映画を観ていた。 4人は友人でもあり、偶然、同じ映画を見ていたことを喜びながら、その後の行動を共にする。 コーヒーを飲んで映画について理屈っぽく語り合い プールに泳ぎに行ったり、空腹になれば焼きそばを作って食べたり。 家にたどり着けば、奔放な行いもあったりする。 それは反抗でも刹那主義でも堕落でもなく、 やっと手に入れた楽園でもなければ、さりとて日常でもない「何か」だ。 ちなみにここで登場する映画は、タイトルで端的に示されているように、 そう、あの映画である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-男はやじろべえ、または夢のような抽象論 男が一人。女が二人。そこには恋愛感情がある。 このような状態はしばしば「三角関係」と呼ばれ、 著しい憎悪や不均衡を呼び込むが、ここではそうではない。 これは三角ではなく、やじろべえだ。 左右にそれぞれの女性がいて、 男は支点に位置し、ひどく安定している。 1対1の付き合いよりも、そのほうが男は安定するのだ。 しかし、二人の女はどうか。 小説の全編を通じて、冷たい雨が降っている。7月だが冷たい雨だ。 そこで彼女たちは火花を散らし、そして時間の経過とともに 微笑も加わる。 その時、男はそこにいない。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-ごく内輪だけの写真展 一人の女性と一人の男性が会うのはいつもホテルの部屋だ。 そして男は「見てほしいものがある」と言いつつ 躊躇もあり、もったいぶって、しかしとうとう「それ」、つまり 写真を見てもらうことになる。 被写体はすべて同じ。明瞭で、かなりの枚数がある。 すべて自分で自分を撮ったものだ。 だが果たして「それ」は自分か? 嫌悪よりも笑いを表す女性だからこそ、こうして見せることもできる。 とても公共の場に晒すことはできないが やがてホテルの部屋が、ごく内輪だけの展覧会場と化すかもしれない。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-動いていた1週間、動かない1週間 一緒に住んでいて、恋人と呼べなくはないが 家庭を営むには至らない男女がいる。 男は不意に会社を辞めるが、理由は明らかではない。 そして彼は1週間、実家に帰省する。 その際、女は、自分の親友で、彼の帰省先の近くに住んでいる もう一人の女に会うことをしきりにすすめる。 まるでその女と結婚させたがっているかのように。 しかもその女は離婚を経験し、娘を一人で育てている境遇だ。 ここで起こっていることは何か。 その1週間で男の何かが確実に変わってしまい、 しかし女は以前のように部屋から動かなかった。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-ついていかなくてもよくなった二人 スーパーマーケットの中で、バッタリ友人に会う。 ごく日常的な出来事だが、ここでは同じ35歳の男が二人で、しかも偶然の一致があった。 妻から追い出され、今はひとり暮らし、という共通点だ。 二人はスーパーを出て、コーヒーを飲みながら語り合う。 それぞれの別れの原因になったのは 時間と色彩。その決定的な不一致である。 抽象的なようでどこまでも具体的な不一致は、 歩み寄る努力の余地のないものだった。 ごく近い過去として語る男二人の会話には 哀感と解放感が、ほぼ同量で漂っている。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-自分を中心にして組み換える エッチ、という言葉がこの短篇では使われる。 エッチな投稿写真を中心に構成されるエッチな雑誌があり、 一人で編集をこなしている女性が主人公だ。 彼女を雇う社主もまた女性。 社主が相当数の「エッチ」雑誌を発行しているのは利益が上がるためであり 編集者の彼女がこのような仕事をするのは 「ちょっと人には言えないような仕事」をしてみたかったからだ。 そして女性編集者の書くエッセイこそ その「思想」を体現するものであり、すなわち 男のすべての夢が終わったあとに その空虚を引き受けるのが若い女性の肉体なのだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-物語を生きること、現実を死ぬこと 衝撃の小説、と言っていいと思う。 ここには14歳の少女4人が登場するが、 彼女たちの固い結束は、ズバリ、自殺願望によって形成されている。 陳腐な、つまらない死ではなく、 いかに美しく、そして早死にすることができるか、 そのことが彼女たちの最大の関心事だ。 世間は、大人たちは、そしてもしかすると読者も どこか無邪気ですらあるそうした願望が 現実によって裏切られることを想像するのではないだろうか。 それに対し、この小説が与えた結末は? さわやか、ですらあるその涼しい恐ろしさを見よ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-私ともう一人の私とは、けっして会うことがない 少女小説にして哲学小説。それも高純度の。 少女が「死」に魅入られる物語は世の中にいくつかあるだろう。 しかしここまで理論的に、少女同士の会話を通して 「私」とは何か、「私」が「私」であるとはどういう事態か、 そしてそのことと「死」の関係を考察した小説はそうはないだろう。 大人になり、次第に曇ってゆく眼では見えないものを 彼女たちは見ている。 怖ろしい小説である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-時間というものはない。私はどこにもいない 14歳から15歳へ。 この小説は、移り行く季節の中での、二人の少女による 切実な時間論だ。 過去から現在へ伸びてくる時間に対し、 彼女たちは時間が逆行すること、つまり どんどん過去へ遡り、若くなり、幼くなり、 ついには「私」が消滅することを夢想する。 そしてそこに、かつての旧友の、その悲しい母親の 「死」をめぐる奇妙で美しい行為が関わってくる。 時間を、死を考えることは、この不条理な生について考えることと同義である。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-雨のバルコニーで紅茶 ふとした瞬間に誰かを思い出し、お茶に誘い出す。 誰にも経験のあることだろう。 電車を降りた男は思い立って女に電話をし、 そして女は自分が出向くのではなく、この家に来いと言う。 そこでふるまわれるのは紅茶だ。しかも、雨が降っているのに わざわざテーブルに和傘を差し、バルコニーでそれを飲む。 そこには偶然の、ささやかな、しかし確かな時間の輝きがある。 二人はそれを楽しむ。親や家や恋の話をしながら。 さて、この二人の関係は? それを推測するのが、読書の愉しみというものだろう。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-「彼」は放り出され、一人で歩いていく 6つのエピソードからなる短篇だが、一筋縄ではいかない。 なにしろ、6つがバラバラなのだ。 最初の章に男が6人(6人、とわざわざ書いてある)出てくるから、 その6人の、それぞれのエピソードを書いたもの、 という解釈も成立するだろうが、まったく違うかもしれない。 6人の男は女を見て、会話をして、電話で話し、結婚もせず、 別れ話を受け入れ、その後の自分の人生を歩いていく。 この短篇のテーマは、あるいは「孤独」かもしれない。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-きれいに晴れ上がった空のあった時代を、カラダの中に住まわせること 18歳で高校を卒業し、そこからまた18年。 結婚して、離婚して、ヨリを戻す、というようなこともチラホラ。 紆余曲折もありつつ、未来もまだまだ大いにある年齢だ。 東京を離れた場所でのクラス会、という機会が訪れる。 それは不思議とくすぐったい再会の時間だ。 その中に、今、歌謡曲、それも古い歌謡曲の歌手をしている女性がいる。 彼女が魅せられている古い歌の中にあるのは 今の時代が失った空であり、希望だ。 この小説のタイトルはもちろん、 岡晴夫の「あこがれのハワイ航路」のあの歌詞から取られているはずだ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-父親であることを知らなくても、父親は父親 再会がある。二つの再会だ。 最初に男同士の再会があり、そこである疑問が浮かび そのことの確認も含め、2度目は男と女の再会がある。 そこで明らかになったこと。 それは子供の存在であり、そのことを自分が知らせてもらえなかったことであり、 さらにジェンダーもからみ、ニューヨークと日本の差もあり、 そして何より、彼女の生き方のことがある。 ケンカや怒号や訴訟があってもおかしくない場面だろう。 しかし片岡義男の小説でそれはありえない。 代わりにそこにあるのは…… そう。雨のなかの日時計だ。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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-「自分自身が、自分自身を見ている」 カメラというものは、機械だから、 何の感情も偏見もなく、目の前の対象をありのままに映し出す。 そうした性能に対する信頼から、男と女は 自分たちの性の時間を、3台のヴィデオ・カメラに収めていく。 自分はあんなことをしているのか、あれが本当の自分なのかと 録画されたものを見ているのもまた同じ自分なのだ。 本当の自分とは何か? 「本当」なんて本当にあるのだろうか。 それは、わからない。 しかし、カメラが確かに捉えた事実は、まぎれもなく、そこにある。 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/
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