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核兵器禁止条約:「人道イニシアティブ」という歩み
核戦争を止める「国際法」がわかる、現代史の一級資料 ノーベル平和賞受賞「ICAN」国際運営委員兼会長、川崎哲さん推薦 「核兵器を作ったのも人間、なくすのも人間です。」 国連において122の国と地域の賛成で採択された核兵器禁止条約。実現不可能とも言われた条約成立(2017年7月)に貢献したとして、国際NGOのICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)が同年のノーベル平和賞を受賞したことも歴史的快挙だ。 核兵器禁止条約はどのように実現したのか、なぜ重要なのか? 本書は、人間の安全保障をかかげる「人道イニシアティブ」が誕生するまでの経緯と核兵器禁止条約(TPNW)が発効するまでの歴史の全容を解明する。オーストリアの現役外交官の著者が、内部の戦略文書や関係者の証言をもとに、数々の戦術的・政治的決定を振り返り、成果を徹底検証。 核戦争を止める「国際法」がわかる、現代史の一級資料。軍備管理や外交など国際関係を学ぶ者に待望の書。唯一の戦争被爆国が果たす役割とは何か、日本人が考える契機になる一冊。巻末付録・注記付き。 -
白い骨片:ナチ収容所囚人の隠し撮り
撮影行為のアルケオロジー ナチ収容所では、囚人たち自らが秘密の写真撮影に成功していた──はたして、それらの写真はどのように見るべきか? ドキュメンタリー映像作家でもある著者は、囚人たちが命がけで隠し撮りした秘密写真を手がかりとして、それら秘密写真が撮影された現場(アウシュヴィッツ=ビルケナウ、ブーヘンヴァルト、ダッハウ、ミッテルバウ=ドーラ、ラーフェンスブリュック)に赴く。そしてマニアックなまでの正確さで場所や時刻、シャッターが切られた瞬間を探しもとめ、写真を凝視し、撮影者や被写体について掘り下げ、細部を浮かび上がらせてゆく。 本書は、カルロ・ギンズブルグのミクロストリアの手法さながらに、ホロコーストの歴史を“無修正で”物語ることにより記憶と歴史の関係を問い直す。そしてそれは同時に、スーザン・ソンタグやロラン・バルトの写真論、クロード・ランズマンやディディ=ユベールマンらによるイメージ論を更新する「撮影行為の考古学」でもある。アネット・ヴィエヴィオルカが本書序文で「鮮烈なほど革新的な書」と称える所以だ。 『夜と霧』や『ショア』の記憶を確かめるため、未公開資料も参照しつつ五つの収容所を実地調査した、戦慄の「写真論」。 -
ビザンツ文人伝:言葉で戦った男たちの矜持と憂愁
尋常ならざる知性の持ち主たちの奮闘記 演説と文章のプロフェッショナルたちの波瀾の生涯 世俗の支配層が武人とほぼ同義の西欧中世と違い、ビザンツ帝国では文官・文人が存在感を示した。彼らは、美辞麗句ばかりで中味が空っぽとか、言っていることと腹のなかがまるで違う二枚舌だとか、同時代の西欧人から現代の研究者に至るまで、ことあるごとに非難を浴びせられ、「ビザンツ的」と言えば、権謀術数や虚飾や空虚な議論の代名詞のようなイメージが出来上がってしまっている。だが、それはプロの修辞家として、依頼された仕事を誠実に果たした結果であり、個人としての著作や生き方には、また別の顔があった。 本書は、八世紀のコンスタンティノープル総主教ゲルマノス一世から帝国滅亡の十五世紀のプレトンまで十四人を取り上げ、マケドニア朝期の反骨の聖職者アレタス、たび重なる政変を泳ぎ切りつつ膨大な著作をあらわしたプセルロスら、毀誉褒貶入り乱れた異才たちの人生を活写する。そして、固定観念から少し離れて、偏見なしに実際のビザンツ知識人の姿に触れ、言葉の力を武器に戦い抜いた生身の彼らの、暮らしと思想をできるだけ彼らが生きた時代のなかで浮き彫りにすることをめざしている。 【目次】 地図 1 コンスタンティノープル/2 十一世紀半ばのビザンツ帝国 はじめに 1 先駆的な総主教たち 一 ゲルマノス一世――イコノクラスムに抗した聖人総主教 二 ヨハネス七世グラマティコス――総主教は妖術使い 三 フォティオス―― 「マケドニア朝ルネサンス」の開幕 2 マケドニア朝ルネサンス期の首都の文人 一 カイサレイア府主教アレタス――愛書家教会人の武闘派人生 二 「逸名の教授」――市井の文人の不穏な日常 3 「ビザンツの平和」の光と影 一 ヨハネス・ゲオメトレス―― 「再征服」時代の桂冠詩人 二 クリストフォロス・ミュティレナイオス――都会の片隅から見える風景 4 ミカエル・プセルロス――「哲学者の統領」の華麗なる宮廷遊泳術 5 行けば容易に戻れぬテサロニケ 一 テオドロス・スミュルナイオス――冥界のグルメ弁護人 二 テサロニケ府主教エウスタティオス――片意地な学者主教は愛されない 6 ニケタス・コニアテス――帝国衰亡の目撃証人 7 ニケフォロス・ブレミュデス――ニカイア帝国の知恵袋 8 テオドロス・メトキテス――哲人宰相の宿す闇 9 ゲオルギオス・ゲミストス・プレトン――千年帝国最後の奇才 別表 ゲミストス・プレトン『法律総論』目次 地図 3 十二世紀半ばのコムネノス朝期ビザンツ帝国/4 テサロニケ市街/5 第三回十字軍、フリードリヒ一世の行軍ルート/6 十三世紀のニカイア帝国周辺部/7 十四世紀半ばのパライオロゴス朝期ビザンツ帝国と周辺 あとがき 図版一覧 文献目録 註 -
ジャック・デリダ講義録 時を与えるⅡ
存在論的に語りかける、デリダからの「時の贈り物」 「贈与とは、思考と存在との、思考と存在の真理との関係を語ることを可能にするものである以上、それはもはや派生的な意味などではない。贈与はもはや存在者の特定の形式ではなく、ある存在者から別の存在者へ手渡すことでも、二つの主体のあいだにある対象でもない。すなわち贈与は存在者にかかわる経済にはもはや属さない。しかしそればかりではない。贈与は、それなくしてはもはや存在を思考することができなくなるようなものである。」(本書「第9章」より) ジャック・デリダが「贈与論」を脱構築したセミネール、その核心部が、ついに明らかに! 第一部から30年の時を経て、待望の刊行(デリダが生前公刊した第一部は邦訳未刊)。 モースやレヴィ=ストロースやラカンを踏まえつつ、「贈与そのもの」についてじっくりと考えるために、ハイデガーを紐解く! 社会学や文化人類学における交換様式ではなく、哲学における「存在と時間」の問題として追究してゆく、脱構築的贈与論。デリダ没後に公刊された第二部というべき本書には、1978~79年に行なわれた九つの連続講義を収録。 [目次] 序言 編者による覚書 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 第14回 第15回 訳者あとがき 註記/ジャック・デリダ講義一覧 -
ジャック・デリダ講義録 生死
生死をめぐる「差延」の論理について語る、1975~76年の高等師範学校での講義 1970年代、デリダは高等師範学校において哲学教授資格試験準備講座を担当していた。すなわち、高等学校以上の教育資格であるアグレガシオンや、中学校での教育資格である試験のテーマについて、受験希望者に対策をほどこす講座である。1976年度アグレガシオンの哲学の試験のテーマのひとつが「生と死〔la vie et la mort〕」だった。だが、デリダは生と死が対立するという伝統的な論理に疑義を呈し、生と死が不可分であること、ひいては死こそが生を可能にすると説く。そしてそのために、試験のテーマから接続詞の「と〔et〕」を削除した「生死〔la vie la mort〕」を自らの講義のテーマとした。 生と死は、はたして対立すべきものであるのか? DNA、遺伝子、細胞……生き物にプログラムされた「非音声的エクリチュール」を踏まえながら問いかけ、ジャコブ、ニーチェ、フロイトを脱構築的に読解することで、再生産や新陳代謝のメカニズムを哲学する──「生死」をともにする全14回の講義。 生命科学を探究する、差延の論理! 性的差異、自伝、二重拘束、補綴、隠喩……デリダ的な圧巻のテーマが語られてゆく驚くべき講義録。 -
ヒトラー
「ヒトラー研究」の金字塔、評伝の決定版! 学識と読みやすさを兼ね備え、複雑な構造的要因の移りゆきを解明。英国の泰斗による圧巻の評伝(全2巻)。世界28カ国で刊行、ロングセラーを記録、待望の邦訳! 上巻は誕生から独裁成立までの前半生を活写。口絵写真32頁収録。 「ヒトラーの歴史は、したがってヒトラーの権力の歴史として書かれなければならない。いかにしてヒトラーが権力を手にしたか、その権力の特質は何だったか、ヒトラーはその権力をいかに行使したか、なぜヒトラーはあらゆる制度上の障壁を越えてその権力を拡大しえたか、ヒトラーの権力に対してなぜあれほど弱い抵抗しかみられなかったのか。ただし、こうした問いは、ヒトラーだけではなく、ドイツ社会に向けられねばならない。」 (本文「ヒトラー省察」より) [内容詳細] 本書(全2巻)は、歴史における個人と社会構造の双方を重視しており、従来のヒトラー研究にありがちな、ヒトラーを「悪」としたうえで、それを中心にナチ時代を再構成するアプローチは採らない。一見、ヒトラーの個人的性格から生じたかにみえる破壊衝動も、社会構造史の研究成果を踏まえつつ、ナチ体制の本質に規定されたものとして捉えている。そして、ヒトラーに無制限な権力を委ね、それを維持させた複雑な政治・社会構造を、さまざまな逸話を織り交ぜて解き明かしていく。その筆致は、読者を惹きつけてやまない、ある種の「サスペンス」に満ちており、まさに英国の歴史家らしい、物語的な書きぶりといえるだろう。本書がヒトラー伝の「決定版」と評価されるのは、根底に著者の長年にわたる徹底した史料渉猟があり、ドイツ史を知り尽くした歴史家ならではの、冷静かつ精密な分析、目配りの効いた記述ゆえだろう。 本書上巻は、ヒトラーの誕生から独裁成立までの前半生を活写。ドイツ現代史、ナチズム研究の世界的権威による圧巻の評伝。世界28ヵ国で刊行、ロングセラーを記録、待望の邦訳! [目次] 凡例 序文 謝辞 ヒトラー省察 第1章 夢と挫折 第2章 転落 第3章 高揚と憤激 第4章 才能の発見 第5章 ビアホールの扇動家 第6章 「太鼓たたき」 第7章 指導者(フューラー)の登場 第8章 運動の掌握 第9章 躍進 第10章 権力に向かって 第11章 独裁体制の確立 第12章 権力の全面的掌握 第13章 総統のために 口絵写真一覧 参考文献 原注 略語一覧 [原題]Hitler 1889-1936:Hubris -
ドイツ史1866-1918:労働世界と市民精神
名著の誉れ高い「新しい古典」、待望の続巻! 本書は、『ドイツ史1800―1866 市民世界と強力な国家 (上・下)』に続く、「十九世紀ドイツ史三部作」の第二巻目だ。ドイツ帝国の成立を挟んで第一次世界大戦に至るまでのドイツが、「アンビバレント」な側面と問題性を孕みながらも、「モダン」な社会と文化に向かってダイナミックな発展を遂げていく様子が、社会・経済から宗教・教育・学問・芸術まで、分野ごとに詳述される。 ハンス=ウルリヒ・ヴェーラーは本書を「極めて傑出した総合を成し遂げた」歴史書と称えている。またゲルハルト・A・リッターも、「ほとんどいかなる人にもまさって、私たちの祖父や曾祖父の世界を知り、理解することを教えてくれた」と述べている。 本書は、「生活世界の全体を包括する歴史を提供する」こと、「経済、国制、階級、階級闘争、産業化、日常生活とメンタリティ、そして大いなる文化などについての多くのそれぞれの歴史を包括する歴史」を企図して執筆された、まさに圧巻の全体史だ。「ドイツ歴史家賞」受賞の巨匠による、社会史と精神文化史。 -
ワン、ツー、スリー、フォー:ビートルズの時代
ピーター・バラカン氏推薦! 異色のビートルズ伝 時系列を大胆に再構成し、多種多様なエピソードをモザイク状に配置しながら、4人の生きた時代、ビートルズと関わった人々の人生を万華鏡のように映し出す。英国の著名なジャーナリスト、諷刺作家による悲喜こもごものポートレート。 長短さまざまな150章から成る本書は、数あるビートルズの伝記、関係者の回想録、インタビュー、日記、ファンレター、同時代の報道など膨大な資料から目ぼしい記述や発言を選りすぐり、著者自身のルポや思い出、噂話、架空の話も交えて、独自の視点で編まれたもの。第一章は伝説的なマネージャー、ブライアン・エプスタインが初めてビートルズの演奏を聴きに行く運命的なシーンで幕を開け、続く章からはエピソード同士がゆるやかに連なり、ときに思わぬ展開を見せ、読者を驚かせる。 著者一流の諷刺とユーモアを散りばめ、ビートルズの人と音楽、同時代への影響を多種多様な人々の声に語らせ、浮き彫りにする。「ビートルズがあまりに明るく輝いたため、誰でもその光線に当たった者は、それがたとえほんの一瞬だったとしても、ビートルズ神話の一部になる」(本書より)。2020年度ベイリー・ギフォード賞受賞作。 -
シャルル・ドゴール伝(下)
「20世紀最後の巨人」の脱神話化を試みる決定版 世界を牽引した指導者、「最後の偉大なフランス人」シャルル・ドゴール。彼は巧みな戦略家であり、ひとつの政策に固執する反面、融通無碍な政治家でもあった。派手さを嫌う性格でありながら、ショーマンシップも発揮した。悲観と楽観のあいだを揺れ動き、自信を喪失したかと思うと、自己をフランスと一体化させ、君主であるかのように振る舞った。人びとの心にほとんど宗教的な崇敬の念を吹きこんだ。国民の統一を希求したが、その手法や政策はフランス社会に分断と対立を生み、ドゴールが憎悪の対象ともなった。 従来のドゴール伝が礼賛か批判かに偏りがちだったのに対して、本書は時代ごとの世界情勢や政治的状況、経済的環境のなかにドゴールを位置づけ、著作、書翰、発言、さまざまな同時代人の証言、新公開されたフランス国立文書館収蔵のドゴール文書など膨大な資料を駆使して、その全体像を中立かつ客観的な視点から記述する。さらに本書の大きな魅力は、資料の綿密な分析に基づいて、「人間ドゴール」の複雑な性格を浮びあがらせている点にある。英国の世界的権威による、ドゴールを主役にした「20世紀フランス史」。 -
シャルル・ドゴール伝(上)
「20世紀最後の巨人」の脱神話化を試みる決定版 世界を牽引した指導者、「最後の偉大なフランス人」シャルル・ドゴール。彼は巧みな戦略家であり、ひとつの政策に固執する反面、融通無碍な政治家でもあった。派手さを嫌う性格でありながら、ショーマンシップも発揮した。悲観と楽観のあいだを揺れ動き、自信を喪失したかと思うと、自己をフランスと一体化させ、君主であるかのように振る舞った。人びとの心にほとんど宗教的な崇敬の念を吹きこんだ。国民の統一を希求したが、その手法や政策はフランス社会に分断と対立を生み、ドゴールが憎悪の対象ともなった。 従来のドゴール伝が礼賛か批判かに偏りがちだったのに対して、本書は時代ごとの世界情勢や政治的状況、経済的環境のなかにドゴールを位置づけ、著作、書翰、発言、さまざまな同時代人の証言、新公開されたフランス国立文書館収蔵のドゴール文書など膨大な資料を駆使して、その全体像を中立かつ客観的な視点から記述する。さらに本書の大きな魅力は、資料の綿密な分析に基づいて、「人間ドゴール」の複雑な性格を浮びあがらせている点にある。英国の世界的権威による、ドゴールを主役にした「20世紀フランス史」。 -
続ドイツ史1866-1918:民主主義を前にした権力国家
「十九世紀ドイツ史三部作」完結 前巻の『ドイツ史1866-1918 労働世界と市民精神 (上・下)』が、ドイツ帝国の社会・経済史と宗教を含む文化史とに充てられているのに対して、本書は政治史を扱い、政治に関わる様々な分野の「状態史」=「構造史」と「出来事史」=「事件史」を詳述する。 1871年の帝国建国から、その諸構造と諸勢力、ビスマルク時代までを扱う「上巻」では、普仏戦争、憲法、行政、財政と税制、法と司法、軍、国民国家、反ユダヤ主義などのテーマを分析し、考察する。 1890年以降の構造的諸問題から、ヴィルヘルム時代、第一次世界大戦までを扱う「下巻」では、国家と憲法体制、政党、対外政策、帝国主義、戦争の展開、革命、終戦などのテーマを分析し、考察する。 単に出来事を叙述するというだけではなくて、息の長い考察が随所で展開されている。独特な語りの文体で著わされた歴史書であるが、物語るような叙述というよりも分析と考察のほうに遙かに大きな比重が置かれている。ニッパーダイは、物語る歴史家であるよりも考える歴史家なのであり、そして自らの考えを十分な根拠に基づいて説こうとする歴史家なのである。 -
ラヴェンナ:ヨーロッパを生んだ帝都の歴史
「ヨーロッパの祖母」となった都市の盛衰 ローマ帝国の中心がコンスタンティノープルに移った4世紀末、西方に新しい都が台頭する。イタリアの都市ラヴェンナにおいて、アリウス派のゴート人とカトリックのローマ人は競って、比類なき建造物とモザイクを次々と創りだした。以来300年にわたりこの町は、学者・法律家・職人・宗教人を魅了し、まぎれもない文化的・政治的首都となる。この特筆すべき歴史をみごとに蘇らせて、本書はイスラーム台頭以前の地中海世界の東西の歴史を書き変え、ビザンツ帝国の影響下にラヴェンナが、中世キリスト教世界の発展にとっていかに決定的な役割を果たしたのかを明らかにする。 全37章の多くは、皇后ガッラ・プラキディアやゴート王テオドリックら支配者から、古代ギリシアの医学をイタリアに蘇らせた医師の業績まで人物に注目しつつ、多様な民族・政治宗教勢力のるつぼであったこの都市がヨーロッパの基礎を形づくっていくさまを追う。そして、都市史をより広い視野から地中海の歴史のなかに位置づける。 美しい図版と最新の考古学の知見によって、ヨーロッパと西方の文化へのラヴェンナの深い影響について、大胆かつ新鮮な解釈を提供する1冊。 -
神のゴーストライター:聖書を作った古代ローマの奴隷たち
聖書の文章を「書いた」のは誰だったのか 古代ローマ時代、文書・文芸作品を「創作」するのはしかるべき立場の人間だったが、それを「筆記」するのはもっぱら、秘書・書記・写字生職の奴隷や解放奴隷であった。それはローマ時代に成立した新約聖書も例外ではなく、「書いた」人物の名前まで記されている箇所がある。考古学上の理由から「書いた」のが使徒本人ではないと考えられる手紙もある。当時の口述筆記に、いったん速記記号に圧縮して書き取り後から文章にふくらませる方法が使われていたことを考えると、そこには「書いた」人物の編集能力や、解釈すら含まれている可能性もあるかもしれない。 では、古代ローマ社会の奴隷の目に、イエスはどういう存在に映ったか。福音書に書かれているイエス像は、当時の社会から見てどういう存在なのか。有力者が改宗すると、しばしばその家――ファミリアに属する大勢の奴隷たちもまとめて改宗となった時代、そうした奴隷たちにとって宗教とは、キリスト教とは何だったのか。 古代ローマに生きたさまざまな立場の奴隷たちの世界を見わたしながら、ローマ社会とくに奴隷制度という角度から、新約聖書について考察する。 [目次] 地図 著者からの注記 はじめに I 目に見えない手 第1章 エッセンシャル・ワーカー 第2章 パウロとその秘書たち 第3章 イエスの物語を読み直す II メッセンジャーと職人 第4章 神のメッセンジャー 第5章 言葉のキュレーター 第6章 福音書の顔 III 遺産 第7章 忠実なキリスト教徒 第8章 不従順な者への罰 エピローグ 謝辞 訳者あとがき 図版一覧 注 略語と著者による引用の翻訳についての注記 -
フランス知と戦後日本:対比思想史の試み
なぜ、あれほど読まれたのか? 誰しも人生を変えた一冊があるはずだ。困難や逆境にあるとき、思わぬ力を与え、生きていく糧となった本。あるいは進むべき道を示してくれた本…… 本書は、「戦後日本」におけるそんな一冊を探し求める試みである。 敗戦を受け、「近代化」や「民主主義」を求めた戦後日本は、いわゆる知識人が活躍した時代であり、数多くの名著が生み出された。 とりわけ、「フランス知」が果たした役割は大きかった。 フランス文学からフランス革命史学まで、あるいは哲学・思想から社会・文化論まで、これらの知識人たちの著作は、フランスを対象にしながら、その根底に日本社会への強い問題意識がはっきりとみられた。 このフランスと戦後日本をつなぐ回路はいかなるものだったのか? そこには果たして必然性があったのか? こうした問いが本書の最大の焦点になる。 個々人の関心が多様化し、学問も細分化したと言われる。読書という経験も大きく変容している。だからこそ、社会全体がかなりの熱量をもって集約的に本を読んだ戦後の記憶は貴重である。戦後思想を読む異色のブックガイド!