高月園子の一覧
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ユーザーレビュー
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学生向けという感じの文章(どの辺りの年代を狙っているのかはちょっと分かりにくい)。
ただ、大人が読んでも現実に起きている紛争について改めて考え直すきっかけになるんではないかと思います。
薄いし読みやすいので、さらっと読んで次のステップに進むのにおすすめです。
Posted by ブクログ
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災害時になぜかユートピア的な利他的なコミュニティがたちあがることについてのソルニットの本。
ソルニットは、社会変革のアクティヴィストだったり、フェミニズムの論者だったり、歴史社会文化に関する著作家であったり、さまざまな側面があって、それぞれに素敵な本を書いている。
そうしたソルニットの作品の一つ
...続きを読むで、以前から気にはなっていたが、なんとなく本の内容は想像できる感じがしたので、読むのを先送りにしていた。
2020年に定本という形で全訳版がでたのを発見して、遅ればせながら、読んでみた。
まずは、本が届いてその厚さに驚いた。注までいれると500ページを超える大著である。なんとなく、300ページくらいのエッセイ集のようなものを想像していたのだ。
で、読んでみると、これまた本格的な文献と可能な範囲でのインタビュー調査を踏まえた本格的な論考になっている。
話は20世紀初めのサンフランシスコ地震から始まる。地震とその結果生じた大火事の影響で避難民がでたのだが、かれらのなかで自発的な利他的なコミュニティが立ち上がっていく姿が感動的に描かれる。そして、このことによってその後の人生が変わった人たちの話が紹介される。一方、良いことだけではなく、大災害にともなってエゴとエゴとのぶつかりあい無法状態、財産の略奪をおそれた権力側が、軍隊や警察をつかって法と秩序をもたらそうとして、より被害を拡大していく、いわば災害を人災化していくプロセスも描かれている。
この話しを起点にハリファックスの大爆発、ロンドン大空襲、メキシコシティ大地震、911と議論は進み、最後はカトリーナによるニューオリンズの被害などで、同じようなことが生じていることを丁寧に紹介している。
アメリカの事例が中心であるが、まずは、ここまでしっかり調査してくれていることが素晴らしいと思った。
その上で、災害時などにおいて、
・厳しい状態のなかで人間は利他的な行動をとり、ユートピア的なコミュニティが生まれ出るということは、しばしば起きるということ
・一方で、権力者側では、秩序が崩壊すると、略奪行為、残虐行為など無法状態が生じるという固定観念が強く、実態を悪化させる傾向があること
・そして、災害がおさまると、また日常が戻ってきて、ユートピア的なコミュニティは消滅する傾向にある
ということが傾向としてあることを指摘している。
いわれてみれば、そうだろうなと思うのだけど、現代の社会の常識では、やはり災害時においてはエゴイスティックな無法状態になるのではないかという恐れが相当に強いことを再確認した。これは人間性に関する近代的な利己的な個人という仮定が自明のこととして埋め込まれている感じ。
この本で書かれていることは、わたしがここ数年ぼんやりと考えていた問題意識にとても近いことがわかった。
まずは、ハンナ・アーレントの議論で、市民参加の直接民主主義的な評議会が革命時などにおいてしばしば生じるというものがあるのだが、ここでソルニットのいう災害ユートピアはきわめて近いものがある。(パリ・コミューンについては、アーレントもソルニットも言及している)
アーレントは、その評議会は短時間しか生じないのだが、それを持続できる可能性はないかということを考えていて、そのあたりへの関心も共通するものだと思う。(ソルニットがアーレントに言及していないことが不思議だ。これだけたくさんの文献調査をやっているわけだから、読んでないわけでもないと思うのだが)
そして、もう一つの関心時は、組織開発などで、組織がカオスになるとそこから自己組織化であたらしい組織が生まれ出てくるという議論があって、そういうことがあることはそのとおりなのだが、そうした自己組織化のコミュニティの脆弱性やそれを抑圧・管理しようとしたりする権力の働きも自然な反応ででてくると思っていて、そのあたりがずっと気になっていた。
組織は、社会よりも規模は小さいので、そこはうまくマネジメントできるのかもしれないが(マネジメントというところで自己組織化ではないわけだが)、カオスが生み出すネガティブな側面についても意識する必要性、そして自発的な活動の持続性への意識をもつことの重要性を再確認した気がした。
もちろん、この本が、災害時、そして社会的な活動を行なっていく上で重要な視点を与えてくれることは間違いない。(個人的には、利他的な市民側コミュニティと利己主義にもとづき既存の権益をまもろうとする権力側という対立構造を強調しすぎるのはあまり良くないと思っているが。。。)
Posted by ブクログ
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ボリューム多いが色んな事例が具体的に紹介されて面白かった。不倫したら即別れる、という考えの人に勧めたい。また他人の不倫にも簡単に判断するべきではないと考えさせられる。禁断や秘密は必ずしもマイナスではなく、人が生き生きするためのパワーともなり得る。不倫に至る背景、不倫から得ようとしたものも見るべき。
Posted by ブクログ
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◯他の方の感想でも書かれているが、この本を読むと日本人は災害の時に暴動を起こさないということについて、民族とは関係がないのでは、と考えさせられる。
◯もしくはそれ自体を前提とした上で、暴動等の比率の小ささを言っているのだろうか。
◯少なくとも、地獄に仏、地獄に天国とは言い得て妙で、助け合う心が人には
...続きを読むあるんだと思えるだけでも救われる。
◯この本のもう一つのテーマとしては、行政のスタンスであると思う。実に悩ましい。本書で取り上げられているのはアメリカの事例である。銃社会であることから、秩序が失われたと想定される際の危険性の増加具合は日本の比ではない。この場合、州兵が派遣されるのも分からないではない。
◯日本ではエリートパニックがないとは言えないが、軍隊による治安出動がないだけ良い状況なのかもしれない。また、災害対応という点では地方自治体の頑張りもなかなかのものだと思う。
◯奇しくもコロナによって右往左往する政府を見ていると、どこに向いて政策を打ち出しているのかやや疑問である。コロナがなくなることは現実的ではないが、もう少し感染対策を打ち出してからの宣言解除でも良かったのではないか。
Posted by ブクログ
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神戸地震の時、日本人は暴動も起こさず、礼儀正しく忍耐強いと世界で報道されていた。
それは、間違ってはいない。
しかし正しくは、大抵の人間は非常事態でも暴動も起こさず、礼儀正しく忍耐強いということ。
実際に起きた少数の犯罪行為と、事実と異なる偏見やイメージにより、アメリカでの災害では黒人が略奪行為を行
...続きを読むうと思われている。
ハリケーンカトリーナの際に、その偏見のために黒人は被災者ではなく、暴動を起こす犯罪者として扱われ、避難と救助が遅れた。また、その偏見に囚われた白人が、自衛と称して黒人を銃で殺していた。
一方、災害時には日常生活が失われて、生き延びることが人間共通の目的となる。お互いの差が消えて、他者との一体感や利他的な気持ちが生まれる。それにより孤独が癒やされ、一種の幸福感すら生む。
個人個人の悩みが各人の固有のものとして扱われて、他者と隔絶してしまう日常生活は一種の災害とも言える。他者との壁が、取り払われる災害時は。一種のユートピア状態が生じる。
いざという時に何が起きるのか理解しておき、起こしてはいけないことが起きないように、知識をつけておきたい。
Posted by ブクログ
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